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(1)地域の連携協力体制整備の必要性

高齢化が急激に進み、介護の社会化の要望の高まりに応じて介護保険制度は整備された ものの、高齢者に係る介護や、要介護状態でなくても必要な支援の個別性は幅広く、ニー ズが多様化しています。

虐待が起きてしまう養護者側の要因として、養護者自身が疾病や障害を抱えている、高 齢者の加齢に伴う心身の機能の低下や認知症など病気についての理解不足がある、家事・

介護・仕事などを一人で担わなければならない環境にある、親の面倒は自分がみなければ という責任感や世間体を気にするなどの周囲からのプレッシャーがあるなど、介護負担が 心身に高いストレスを及ぼしていることがあります。また、身近に相談者がいないことな どから周囲に相談できない場合があります。そして、介護の問題だけでなく、これまでの 人間関係や経済的な問題など、多くの要因が重なりあって虐待は発生しています。

高齢者の人権侵害、生命・健康・生活が損なわれないよう、虐待から高齢者を保護する ためには、組織として虐待の判断を行い、迅速かつ適切な支援が必要です。虐待の背景に ある介護疲れ、孤立、アルコール問題、金銭トラブル等の複数要因による生活上の課題に 対して担当者は、①高齢者と養護者それぞれに対応の必要があること、②医療、保健、福 祉、法律等の専門家の協力・支援により適切な対応ができることを踏まえ、関係者とチー ムによる支援(チームアプローチ)を進める必要があります。そして、地域において関係 者、関係機関が連絡を取り合い、連携して対応できるよう連携協力体制(ネットワーク)

へ発展させることが重要です。高齢者虐待防止法では、虐待の事後対応だけでなく未然防 止を含めた高齢者虐待防止のネットワーク整備を求めています。

私たちがめざすのは虐待のない社会ではないでしょうか。現状は高齢者虐待防止体制ス テージ(図 7)のどの時期にあるかを確認していただき、国が示している機能別の 3 つのネ ットワーク「早期発見・見守りネットワーク」、「保健医療福祉サービス介入ネットワーク」、

「関係専門機関介入支援ネットワーク」を参考にしながら、どのような地域になるといい のか、どのように実現させていくかを関係者と検討・共有し、予防期を目指して計画的に 体制整備に取り組みます。

あなたの地域はどのステージ?

潜在期

(ネットワーク未整備)

•住民の関心の低さ、躊躇

•情報の収集不足

•相談・通報件数ほとんどなし 顕在期

(ネットワーク構築と取り組み)

住民の関心の高まり

情報収集力の向上

相談・通報件数増加

対応期

(ネットワークによる対応)

•相談・通報対応の実績

•ネットワークの活用

•対応のスピード化

予防期

(ネットワークの維持・発展)

•相談・通報件数減少

•地域の抑止力向上

•セーフティーネットの構築

相談・通報 件数

図7 高齢者虐待防止体制のステージ

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表4 高齢者虐待防止体制のステージ

ステージ ネットワーク 対  応  状  況

潜在期 ネットワーク 未整備

・高齢者虐待対応に関しての認識が低く情報収集不足

・市町村高齢者虐待防止ネットワーク会議について未設置、準備中

・機能別の高齢者虐待防止ネットワークについて、関係者間の連携不十分で  効果的に機能していない

・関係者や住民への高齢者虐待対応に関する情報発信ほとんどなし

顕在期

ネットワーク 構築とネットワー クによる取り組み

・高齢者虐待(特に緊急事例)への対応

・市町村高齢者虐待防止ネットワーク会議の設置

・機能別の高齢者虐待防止ネットワークについて、構築への取り組み

・地域住民への高齢者虐待対応に関する情報発信開始

・高齢者虐待防止マニュアルの作成準備

対応期 ネットワーク による対応

・高齢者虐待対応のスピード化

・市町村高齢者虐待防止ネットワーク会議の効果的、機能的な運営

・機能別の高齢者虐待防止ネットワークについて、効果的な連携、協働に  より効果的な支援の実施

・ネットワーク関係者や住民への高齢者虐待対応に関する定期的な情報発信

・高齢者虐待防止マニュアルの作成、活用

予防期 ネットワーク による維持、発展

・高齢者虐待対応の予防的な支援に向けた取り組み(関係者が虐待を未然  に防ぐような働きかけに取り組む)

・市町村高齢者虐待防止ネットワーク会議の継続的な発展(職員異動に影響  されない組織的・継続的な仕組みづくり)

・機能別の高齢者虐待防止ネットワークの継続的な発展(関係機関の関係者  異動やに影響されない組織的・継続的な仕組みづくり)

・より効果的な支援に向けた新たな社会資源の開発(実施緊急一時保護の場  の確保や虐待者への教育プログラム等)

・高齢者虐待防止のまちづくりに向け住民の積極的参画へ働きかけをする

・高齢者虐待防止マニュアルの実情に合わせた改訂、活用

表5 機能別のネットワーク

ネットワーク 構成メンバー 機  能

早期発見 見守り

民生委員、家族会、自治会、老人クラブ 社会福祉協議会、ボランティア、NPO団体等

①虐待の早期発見

②身近な支え合い、見守り

③安心の得られる地域づくり

保健医療福祉 サービス介入

居宅介護支援事業所、訪問介護、訪問看護、

短期入所生活介護等の居宅サービス事業所、

特別養護老人ホーム等の社会福祉施設、

病院等の医療施設等

①虐待事例への介入、支援、継続  支援へのつなぎ

②サービス提供による関わりから  の虐待の早期発見

関係専門機関 介入支援

警察、消防、保健所、精神保健福祉センター、

精神科等を含む医療機関、弁護士会、

権利擁護団体、家庭裁判所、消費者センター等

①保健医療福祉サービスの範囲を  超えた場合に必要な介入、支援

※関係機関の役割については「愛知県高齢者虐待対応マニュアル(総論編)P19~32 を御参照 ください。

図8 高齢者虐待防止ネットワーク構築の例

出典:厚生労働省マニュアルP19

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(2)高齢者虐待防止のネットワークの充実に向けて ア 市町村の役割

高齢者虐待防止法においては、市町村が連携協力体制(ネットワーク)の整備をするこ とになっています。市町村が地域包括支援センターに業務を委託した場合、地域包括支援 センターが中心的な役割を担いますが、市町村はその支援、ネットワーク構築には主導す ることが求められています。

市町村において「市町村高齢者虐待防止地域連絡協議会」などの名称で開催される代表 者による会議では、①ネットワークの基盤整備、②運用上のルール作り、③市町村におけ る課題集約・整理、④運営等の合意形成等の協議を行い、連携協力体制(ネットワーク)

整備を推進します。高齢者虐待防止対策に関わる多様な関係機関の参加を求め、個別の支 援から、予防に向けた体制整備まで、高齢者虐待対策の検討を図ります。市町村全体の対 策推進ができる機動性のある会議にするためには、市町村職員と関係者による実務者の会 議も組織して、日常業務の課題やその対応を検討し、代表者による会議へそれが反映でき るようなしくみ作りをしていきます。代表者会議と実務者会議が十分に機能することが、

地域における機能別の 3 つのネットワークのさらなる発展につながっていきます。

市町村の連携協力体制(ネットワーク)整備とその充実を図るためには、関係者の共通 理解を高めるための取り組みが重要です。現状把握のための実態調査などについての情報 提供や学習会の開催を行いながら、市町村高齢者虐待防止携協力体制(ネットワーク)の 代表者会の設立、要綱整備、ネットワークシステムの整備へと計画的に取り組みます。

イ 高齢者虐待防止ネットワークの充実に向けて

ネットワークをより充実させるためには、2 つのアプローチがあります。

まず個人のアプローチから入るものですが、「愛知県高齢者虐待対応マニュアル(総論編)

P15~18」にあるように、以下の 6 つのポイントでネットワーク構築に取り組み、それを個 別支援に関する関係者間の連携として評価し、次のステップの検討内容を代表会議等に報 告することでネットワークを確立、発展させていく方法です。

① 関係者を束ねるための中核機関、コーディネーターを決める

② 情報の一元化と対応の意思統一を図る

③ 虐待者及び被虐待者それぞれに対して支援と関係者による役割分担を行う

④ お互いの専門性を認め合い、実践を行うためのネットワークを考える

⑤ ネットワークを行う関係者間の連携の課題を意識する

⑥ ネットワークに必要な機関を整理する

もうひとつは、地域のアプローチから入るもので、地域全体を焦点にして、地域の団体・

機関の関係者を集め、現状分析から課題を明確にし、地区全体としての対応策を検討して いく方法です。

個人からのアプローチでは利用者のプライバシー保持に係る配慮を行い、地域のアプロ ーチでは、地域内の組織関係や歴史を理解しながら、この両者の一体的な推進を図り、高 齢者虐待対応ステージを予防期へ進めていくことが必要です。

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