~平成21年度高齢者虐待防止法に基づく対応状況等に関する調査等より~
(1)養護者による高齢者虐待についての相談・通報対応
養 護 者 に よ る 高 齢 者 虐 待 に つ い て の 相 談・通報総件数は、平成 20 年度までほぼ横 ばいでしたが、21年度は1,498件と増加しま した(表1)。
21 年度の相談・通報対応件数1)1,502 件 中、1,464件(97.2%)に事実確認調査が実 施され、市町村が虐待を受けた又は受けたと 思われたと判断した事例(以下、「虐待判断 事例」という)は、1,057件でした(図1)。
その中で法第 11 条に基づく「立入調査を 行った事例」は4件(0.3%)でした。また、
相談・通報総件数は、市町村による差が大き い状況が見受けられました。
*1) 図1の平成21年度の相談・通報対応件数1,502 件は、平成20年度に相談・通報があったもののう ち、平成21年度に入って事実確認を行ったものが 含まれるため、相談・通報総件数1,498件と一致 しない。事実確認を行っていない理由は、相談・
通報を受理した段階で、明らかに虐待ではなく事 実確認調査不要と判断し、後日、事実確認調査を 予定している又は事実確認調査の要否を検討中で あった。
相談・通報者は、介護関係者(介護支援専 門員、介護サービス事業所(職員)が最も多 く、その割合も徐々に増加していますが、民 生委員、近隣住民といった地域住民の割合に ついては大きな変化がみられていません
(図22))。
*2) 図2の相談・通報者数の総数は、1件の事例に
対し複数の者から相談・通報があった場合、それ ぞれ該当項目
に 重複して計上されるため、合計人数は相談・通報総件数と一致しない。
・養護者による高齢者虐待についての相談・通報総件数、事実確認調査件数は増加
・事実確認調査による虐待でないとの判断事例の割合は年々増加
・相談・通報者は、介護関係者の割合は増加、民生委員、近隣住民の割合は減少
●虐待でないとの判断事例割合の増加は、高齢者虐待防止法施行4年目になり、虐待対応経験 の蓄積から、その判断ができる状況となっていることが考えられる。
●通報・相談者をみると、介護関係者の周知・理解は進んでいるものの、地域住民はまだ十分 でないことが伺われ、高齢者虐待の入り口である相談・通報に係る地域全体の啓発、市町村 での初動期対応の仕組みづくりがさらに必要である。
Ⅴ 高齢者虐待防止対応の体制・地域づくり
18年度 19年度 20年度 21年度
相談・通報総件数 1,121 1,154 1,137 1,498 事実確認調査件数 1,107 1,120 1,105 1,464 虐待判断事例総件数 951 973 902 1,057
表1 相談・通報対応等件数
951 973 902 1,057
63 103 118
246
93 44 85
161
14 34 32
38
0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600
18年度(1,121) 19年度(1,154) 20年度(1,137) 21年度(1,502) 事実確認を行ってない事例件数
事実確認で虐待判断に至らなかった事例件数 事実確認で虐待と判断されなかった事例件数 虐待判断事例総件数
図1 相談・通報対応の中の事実確認と虐待判断件数
508 466 522
793
30 71 58
61
61 78 66
53
150 159 154
152
119 127 141
177
11 16 18
30
164 144 44
63
34 48 61
76
87 96 115
136
0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600
18年度 19年度 20年度 21年度
その他
警察
市町村職員
虐待者自身
家族・親族
被虐待高齢者 本人 民生委員
近隣住民
介護関係者
図2 相談・通報者(重複計上)
56
(2)虐待を受けていた高齢者本人と虐待者の状況 ア 虐待を受けていた高齢者本人の状況
虐待の種別・類型では、身体的虐待が679件(64.2%)と最も多く、次いで心理的虐待415 件(39.3%)、経済的虐待263件(24.9%)、介護放棄248件(23.5%)の順でした(複数回答)。
虐待を受けていた高齢者の実人数1,095人は65歳以上人口10万対74.9人であり、性別は、
男性259人(65歳以上男性人口10万対39.6人)、女性835人(65歳以上女性人口 10万対 103.2人)、不明1人で、女性は男性の2.6倍となっていました。年齢は、65~69歳が133人
(同年代人口10万対28.2人)、70~79歳が400人(同62.2人)、80~89歳が419人(同144.2 人)、90歳以上が115人(同205.1人)、不明が28人(2.6%)でした。
介護保険の利用状況は、申請を行い「認定済み」の者が 763 人(69.7%)であり、その要 介護区分は「要介護1~3」が438人(57.4%)でした。未申請者は234人(21.4%)、認 定非該当(自立)は47人(4.3%)となっていました。
認知症日常生活自立度からみると「Ⅱ以上」の者が488 人で虐待を受けていた高齢者全体
の44.6%を占め、増加傾向となっています。
虐待判断事例の世帯の状況は、虐待者との同居が 891 件(84.3%)であり、世帯構成は未 婚の子と同一世帯が408件(38.6%)で最も多く、次いで既婚の子と同一世帯が272件(25.7%)、 夫婦二人世帯が204件(19.3%)となっており、未婚の子と同一世帯が年々増加傾向にありま した。
イ 虐待者の状況
虐待者1,154人の状況は、息子が447人(38.7%)で最も多く、次いで夫201人(17.4%)、 娘190人(16.5%)でした(複数回答)。
(3)虐待への対応策としての分離の有無 分離を行った事例は297件(27.8%)で、そ の割合はやや減少傾向がみられます(図3)。
分離後の対応は、「契約による介護保険サー ビスの利用」が 131 人(44.1%)と最も多く、
次いで「医療機関への一時入院」17.8%、「緊 急一時保護」15.2%であり、「やむを得ない事 由等による措置」は9.1%でしたが、その割合 はここ3年間同じ傾向でした(図4)。
・女性、高齢化、要介護状況、認知症など高齢者の状況と、介護スキルが十分でないと考えられ る男性等、養護者の状況などが虐待ハイリスク要因
・介護保険未申請者や認定非該当(自立)に対する虐待への視点
●虐待は様々な要因が重なり合って発生する。加齢に伴う高齢者の状況とかかわり方・介護の仕 方などについてのスキル不足は虐待につながりやすい。これらの情報発信に加え、相談窓口の 周知、サービス利用勧奨など住民への情報提供が必要である。
●要介護でない高齢者をも視野に置いた虐待対応システムの検討が必要である。
図3 分離の有無
57 分離していない事例の対応としては、
「見守り」が 136 件(18.5%)で(図 5)、
「その他」599件の対応は、複数回答で「養 護者に対する助言・指導」303 件が最も多 く、次いで「既に介護保険サービスを受け ているが、ケアプランを見直し」184 件、
「被虐待高齢者が介護保険サービスを新 たに利用」94件であり、これらは増加傾向 にありました(図6)。
(4)権利擁護に関する対応
成年後見制度利用開始済が19件、成年後見 制度利用手続き中が10件で、これらを会わせ た中での市町村長申し立ての事例は11件とな っており、利用は増加しています(表2)。
(5)虐待等による死亡事例について
介護している親族による、介護をめぐって発生した事件で、被介護者が65歳以上かつ虐待 等により「養護者の虐待による被養護者の致死」に至った事例は「心中」1件でした。高齢 者夫婦世帯で、被虐待高齢者は介護保険を利用し、認知症日常生活自立度はⅠ、養護者は夫 でした(平成19年度は、「養護者のネグレクトによる被養護者の致死」が3件あり、被虐待 高齢者は3件とも認知症があり、養護者は、養護者及び他家族と同居している「娘の配偶者」
1件、「妻」1件、「息子」1件でした。)。
・虐待対応で分離を行う事例は約3割。分離しない事例の約2割が見守り対応となり、見守 り以外の対応は、虐待者に対する助言・指導、介護保険サービスのケアプラン見直しが多 くこれらは年々増加傾向
●養護者への支援は、高齢者虐待防止法にも規定されており(高齢者虐待防止法第14条)、 虐待対応上重要である。養護者支援は、虐待背景にある様々な要因の問題解決が必要であり、
虐待を受けている高齢者対応と同様、支援体制を作りながら進めていく必要がある。
115
112
183
136
587
518
408
599
0% 20% 40% 60% 80% 100%
18年度 (702件)
19年度
(630件)
20年度
(591件)
21年度 (735件)
図5 分離していない事例への対応 見守り その他
0 20 40 60 80 100 120 140
18年度
(213件)
19年度
(294件)
20年度
(268件)
21年度
(297件)
図 4 分 離 後 の 対 応
契約による介護保険サービスの利用 やむを得ない事由等による措置 緊急一時保護
医療機関への一時入院 その他
0 100 200 300 400 500 600 700
18年度 19年度 20年度 21年度
図6 分離していない事例へのその他の対応(複数回答)
養護者に対する助 言・指導 養護者介護負担軽 減のための事業参 加 被虐待高齢者の新 たに介護保険サービ ス利用 既介護保険サービス のケアプラン見直し
被虐待高齢者が介 護保険サービス以外 利用 その他
18年度 19年度 20年度 21年度
成年後見制度利用開
始済 1 7 7 19
成年後見制度利用手
続き中 2 8 8 10
上記のうち市区町村
長申立ての事例 (1) (6) (1) (11) 日常生活自立支援事
業の利用 10 16 13 16
表2 表2 権利擁護に関する対応件数権利擁護に関する対応件数
0 20 40 60 80 100 120 140
18年度
(213件) 19年度
(294件) 20年度
(268件) 21年度
(297件)
契約による介護保険サービスの利用 やむを得ない事由等による措置
緊急一時保護 医療機関への一時入院
その他
図4 分離後の対応
115
112
183
136
587
518
408
599
0% 20% 40% 60% 80% 100%
18年度 (702件)
19年度
(630件)
20年度
(591件)
21年度 (735件)
見守り その他
図5 分離していない事例への対応
0 100 200 300 400 500 600 700
18年度 19年度 20年度 21年度
養護者に対する助言・指導 養護者介護負担軽減のための事業参加 被虐待高齢者の新たに介護保険サービス利用 既介護保険サービスのケアプラン見直し 被虐待高齢者が介護保険サービス以外利用 その他
図6 分離していない事例「その他」の対応(複数回答)
58
(6) 市町村における高齢者虐待防止対応のための体制整備について
・対応窓口となる部局の設置は19年度に全市町村で完了
・地域包括支援センター等関係者への研修実施は8割、独自マニュアル、業務方針作成は7割、
居宅介護サービス事業者へ法についての周知は約8割で年々増加
・住民への講演会・広報等での啓発活動は約 6 割、老人福祉法による措置に必要な居室確保の ための関係者調整は約6 割、法に定める警察署長に対する援助要請等に関する警察署担当者 との協議は約5割で横ばい状態
・「早期発見・見守りネットワーク」の構築への取組は3割から6割、「保健医療福祉サービス 介入支援ネットワーク」の構築への取組、「関係専門機関介入支援ネットワーク」の構築への 取組は3割から5割となっているが、それぞれ約半数の市町村の取り組みがない。
●高齢者虐待防止は虐待の事後対応だけでなく、未然の防止を含めた高齢者虐待防止のネッ トワークの整備が重要である。ネットワークづくりは組織的で迅速な対応と継続支援を可能 にし、予防・発見・対応・再発防止の包括的な虐待対応につながる。体制整備に向け、それ ぞれの取組の計画的な推進が必要である。
表 3 市 町 村 にお ける 高 齢 者 虐 待防 止 対 応の ための体 制 整 備につい て 市 町 村 数 (%) 項 目 18年 度 実施 1 9年 度 実施 2 0年 度 実施 2 1年 度 実施 対 応 窓 口と な る部 局の設置 6 0(95 .2) 6 1(1 00)
対 応 窓 口 部 局の 住 民への周 知(窓 口 設置後) 4 4(69 .8) 6 1(1 00) 6 1(1 00) 5 7(1 00) 対 応 窓 口 部 局の 住 民への周 知(年 度中) 5 2(8 5. 2) 5 0(8 7. 7)
地 域 包 括 支 援 セ ン ター 等 の 関 係 者への研 修 2 8(44 .4) 4 0(6 5.6) 4 1(6 7. 2) 4 6(8 0. 7)
独自 の対 応 マ ニ ュ ア ル 、 業 務 指 針等 の作成 3 0(47 .6) 4 1(6 7.2) 4 0(6 5. 6) 4 0(7 0. 2)
居 宅介 護 サ ー ビ ス 事業者 に法につい て の周 知 3 1(49 .2) 4 3(7 0.5) 4 3(7 0. 5) 4 4(7 7. 2)
講 演 会や広報誌等 に よ る 住 民への啓 発活動 3 2(50 .8) 3 4(5 5.7) 4 1 (6 7.2) 3 6(6 3. 2)
介 護 保 険施 設に法につい て周 知 3 2(50 .8) 3 6( 59 .0) 3 8 (6 2.3) 3 7(6 4. 9)
老人福 祉 法に よ る 措 置 に必 要な居 室確 保 の ため
の 関 係機関 と の 調整 3 2(50 .8) 3 7(6 0.7) 3 6(5 9. 0) 3 5 (6 1.4) 法に定める 警 察署長に対 する援 助要 請等 に 関す
る 警 察署担当者 と の協 議 2 9(46 .0) 3 3(5 4.1) 3 2 (5 2.5) 3 2(5 6. 1)
「 早 期 発見 ・ 見 守 りネ ット ワーク 」の構 築への取 組 2 2(34 .9) 2 9(4 7.5) 3 2(5 2. 5) 3 5(6 1. 4)
「保健医療福 祉サ ー ビ ス 介入 支 援ネ ッ ト ワーク 」
の構 築への取 組 1 7(27 .0) 2 1(3 4.4) 2 8(4 5. 9) 2 8(4 9. 1)
「関 係専 門機関 介入 支 援ネ ット ワーク 」の構 築へ
の取 組 1 9(30 .2) 2 8(4 5.9) 2 9(4 7. 5) 3 1(5 4. 3)
成年後見制度 の 市 町 村長 への申 立 への体 制強
化 3 1(49 .2) 4 6(7 5.4) 4 5(7 3. 8) 5 0(8 7. 7)
虐 待 を 行 った養護 者 に対 する 相 談、 指 導または
助 言 4 7(8 3. 5)
日 常生活を営む の に支障があり ながら、必 要な サ ー ビ ス を 利 用して い な い 高 齢 者 の権利 利益の 養護 を図る ための早 期 発見 の取 組や 相 談 等
4 2(7 3. 7)