虐待対応の基本的なプロセスのながれついては、事例 1(P6~33)で示したフローに沿っ て整理しています。
相談者: 介護支援専門員
相談先: 地域包括支援センター(以下、包括と略す)受付者は保健師
包括に介護支援専門員から電話で「利用者の息子が利用者をたたいているのを、デイ サービスの職員が見たという報告があったのですが・・・」という相談がありました。
包括による相談の受付
息子(60 代、無職)は母親(80 代、要介護 2、認知症)を自宅で介護していますが、母親 は息子の姿が見えないと何度も呼び続ける、入浴を拒否する、時々徘徊がある、などの行動が あり、息子には介護疲れがみられました。介護保険サービスは週 2 回のデイサービスを利用し ています。
Ⅳ 認知症の高齢者に対する虐待
事例2 介護疲れから暴力を振るってしまった事例
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市町村と包括の相談内容の共有
包括内で打ち合わせを行い、身体的虐待の疑いがあると考えました。
包括から市高齢者担当課に連絡し、虐待の有無と緊急性の判断のためコアメンバー会議を開 催することとしました。
包括による事実確認
【自宅訪問より】
包括の保健師と担当の介護支援専門員で自宅を訪問しました。
母親の身体には①腕に 2 か所の内出血跡が見られました。
息子に話を聞くと、「母のことを家で看たいと思うが、何度も同じことを聞かれたり、外へ 出て行こうとするため精神的に疲れてしまい、たたくつもりはなかったのに手が出てしまった。
今後は二度としないようにします。」と発言しました。
母親は②「息子に今までたたかれたことはない。息子は私の世話で疲れているから・・・」
と言い、息子は「自分の母親だし、これからも母親の世話をしたい。母もそれを望んでいるか ら。」と言いました。
【関係機関より】
母親が利用しているデイサービスに身体状況を確認すると、③特に腕以外の傷やあざなどは 見られず、今までにもこのような傷やあざは見られたことはない、とのことでした。
また、母親の主治医は「介護保険の申請時点で受診があり、認知症の専門医療機関への受診 を勧めたが、その後は一度も受診していない。」とのことでした。
民生委員に普段の母親と息子の関係を聞くと、④母親の通院時には息子が病院へ付き添って 行くなど、仲の良い親子だと思っている、とのことでした。
市町村による事実確認
市高齢者担当課は、住民票、収入状況、介護保険、医療保険、医療機関利用等について情報 収集を行いました。
【母親】
年金月 8 万円、後期高齢者医療保険料、介護保険料等の滞納はなし。
高血圧により月 1 回 A 病院へ通院。
③ コアメンバー会議に向けた事実確認 (P12~)
② 相談内容の共有 (P9~)
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市町村と包括によるコアメンバ―会議
包括と市高齢者担当課は事実確認を終え、市高齢者担当課が中心となってコアメンバー会議 を開催しました。
出席者は市高齢者担当課(課長、係長、担当者)、包括(保健師、社会福祉士)の計 5 名で す。
それぞれからの事実確認情報を共有し、当面の支援方針を以下のように決定し、役割分担を 決め、期限を 1 週間後としました。
【支援方針】
事実確認①~④より、虐待の程度や頻度から、現段階では高齢者の生命への危険性は低く、
養護者の介護疲れが軽減されれば虐待がなくなる可能性がある。
したがって、まずは養護者への支援を積極的に進めていく。
【内容】
①息子の介護負担軽減や休息を考慮して、デイサービスの回数を増やすことと、ショートス テイの利用を勧める。
②介護支援専門員は母親、包括は息子の悩みや訴えを聞くように役割分担し、包括は息子に 対して認知症の知識(P47 参照)と対応方法を伝える。
③認知症の専門医療機関への受診がされていないため、受診するよう促す。
④新しいあざが頻繁に見られるようになる、暴力がエスカレートする等、生命に危険がある と判断された場合には、一時的にでも分離するような緊急的な対応を視野に入れる。
⑤ コアメンバー会議の決定に基づく対応 (P21~)
市町村と包括のコアメンバ―会議後の支援内容
支援方針に基づき、デイサービスの回数を増やすことと、ショートステイの利用を勧めま した。
ショートステイの利用に対しては施設入所というイメージがあり、拒否的な反応が見られ たため、デイサービスの回数を増やすことで施設に慣れていくことを勧めました。
また、今後包括と介護支援専門員にはいつでも相談できること、認知症の介護電話相談の 情報提供や(P97 参照)、家族教室・家族会などへ参加することもできることを伝え、一人で 抱え込まないようアドバイスをしました。
認知症の専門医療機関への受診を早急にするよう勧めました。
④ コアメンバー会議 (P16~)
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関係者を集めた個別ケース会議
2 週間が過ぎ、この間に母親は認知症の専門医療機関を受診することができ、医師の強い勧 めもあって週 4 回のデイサービスを導入することができました。
次の月には 2 泊 3 日のショートステイの利用が決まりました。
また、息子は認知症の母親への接し方を知ることにより、ストレスが軽減され、表情も良く なってきました。デイサービスの送迎時には、母親と笑顔で会話する様子も見られるとのこと です。
今後の支援方針を関係者間で検討し、共有するため個別ケース会議を開催しました。
出席者は市高齢者担当課(課長、係長、担当者)、包括(保健師、社会福祉士)、担当の介護 支援専門員、民生委員の計 7 名です。
【支援方針】
①見守りチームを結成する。
・母親を担当の介護支援専門員、息子については包括が中心となり、民生委員を含めて交替 で定期的に訪問することで、母親の認知症の進行状態と生活状況、息子の介護疲れ等の現 状を確認する。
・包括は継続して、息子の悩みや不安を受け止めながら、認知症についての正しい知識と対 応方法を伝えていく。
・デイサービス事業者へ、入浴時などの身体の状態確認を依頼し、何かあれば包括へ連絡を するようにする。
②息子からの虐待が確認されたときは、包括に連絡が入るようにし、緊急時には関係者が集 まるようにする。
その後
息子が母親の認知症を正しく理解し、母親に合わせた対応をとることができるようになったこと、
認知症の専門医療機関を受診し、薬物治療を行うことにより、母親の認知症の症状は落ち着いてき ました。デイサービスでも他の利用者と談笑する姿も見られるようになっているとのことです。
また、息子はデイサービスやショートステイを利用することで、自分の時間を持てるようになり、趣 味である魚釣りへ出かけることができるようになりました。認知症への理解も少しずつできてきてい るようで、母親への対応に前ほどストレスを感じなくなってきているとのことです。
⑥ 個別ケース会議とその後の支援 (P25~)
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⑦ 虐待対応の終結 (P32~)
終結に向けて
息子の母親への対応の仕方が変わったことや、薬物治療により、母親の認知症の症状が落 ち着いてきました。
また、母親の介護サービスの量を増やしたことで、息子は自分の時間を持ち、趣味に時間を 使うことができるようになりました。
そして、地域の家族会にも入会し、他の介護者と情報交換をするようになりました。
息子は自分の時間ができた余裕と、相談できる相手がいる安心感から精神的安定が保たれ るようになり、母親への暴力も見られなくなりました。
この状況を踏まえて市高齢者担当課と包括は個別ケース会議を開催し、虐待対応は終結とす ることを決定しました。
虐待対応は終結しましたが、その後も関係者による定期的な訪問等が行われ、見守りは続 けられています。
② 認知症の高齢者が徘徊で行方不明となった時には、包括を窓口とし、そ こから市高齢者担当課、警察、自治会へ連絡をするという緊急連絡体制 を築く。
① 母親を含めた認知症の高齢者への理解と、徘徊時の見守りや声かけが地 域全体で取り組めるよう「認知症サポーター養成講座」を開催した。
包括はその後の支援として、次の①②を地域の虐待対応の体制づくりとし て展開していきました。
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相談者:介護支援専門員 相談先:市高齢者担当課職員
業務連絡会終了後、市高齢者担当課に介護支援専門員から「利用者の家族が介護サー ビス利用料を滞納し、催促しても支払ってくれないのですが・・・」と相談がありまし た。
① 相談・通報の受付 (P6~)
市町村による相談の受付
父親(80 代、要介護 4、重度の認知症)は訪問看護(月 2 回)とデイサービス(週 7 日)、
ショートステイ(2 週間/月)を利用していますが、3 か月ほど前から介護サービス利用料の滞 納があります。
父親は息子(50 代、事業の失敗により現在は無職、借金あり)と 2 人で生活しており、介 護は息子が行っています。5 か月前までは息子の妻も一緒に暮らしていましたが、離婚して家 を出て行きました。
父親の年金(月 12 万円支給、通帳管理は息子)は息子の生活費や遊興費、借金返済等に充 てられているようで、サービス事業所が息子に対して何度も支払いの催促をしてきましたが、
一向に支払われないので、このままではサービスの利用ができなくなります。
市町村と包括の相談内容の共有
市高齢者担当課内で打ち合わせを行い、経済的虐待の疑いがあるのではないかと考えま した。
市高齢者担当課から包括に連絡し、虐待の有無と緊急性の判断のためコアメンバー会議 を開催することとし、包括にコアメンバー会議に向けての事実確認を依頼しました。
② 相談内容の共有 (P9~)
事例3 重度の認知症のため、経済的虐待を受けていた事例
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