8) 一次エネルギー消費量計算
3.5 蓄エネルギーシステムを備えた DHC の導入効果の推定
図 3.21 DHCにおける最適ケースの年間搬送冷熱損失の年間冷熱需要に対する比率
図 3.22 DHCにおける最適ケースの年間搬送温熱損失の年間温熱需要に対する比率
地域合計電力需要のピークカット効果を図 3.23に示す。全地域、全グループでピーク電力需要
が 85~90%にまで減少した。また、全地域でグループ間におけるピークカット効果の差が小さい
ことを確認した。ピーク時刻に関しても全地域、全グループのピーク時刻が冬期の夕方や夜間、
朝方へと変更された。
図 3.23 DHCにおける最適ケースの地域合計電力需要のピークカット率
またこれらの計算結果から、DHC としての CGS 普及効果の方が、同じ逆潮流可能量における 各建物単体の場合のCGS普及効果よりも、年間一次エネルギー消費量およびピーク電力需要の削 減量が全地域、全グループで大きいことを確認できる。
研究で推定や測定が行われている。一方で、CGSを用いた DHC を導入する際の、蓄エネルギー 設備を併せて導入することによる省エネルギー効果や調整力の向上に関しては十分な知見がない。
また、これらの研究では非住宅建築物のエネルギー需要は 1時間以上の間隔で測定、推定されて いる。実際には非住宅建築物の需要は時々刻々と変動しているため、需要に追従して稼働するCGS の導入効果の詳細な把握、および蓄エネルギー設備の導入効果検討は、より細かい時間間隔の非 住宅建築物の需要に基づく必要がある。
そこで本節では、DHCと併せて蓄エネルギー設備を導入した場合の省エネルギー効果を推定し,
CGSのみによるDHC普及時の省エネルギー効果の推定結果と比較することで,DHCへの蓄エネ ルギー設備の組込みによる省エネルギー効果の向上効果を確認した。なお、本検討の対象地域は、
現実的にDHCの導入が可能と考えられるA~C地域の3つに、比較対象としてE地域を加えた4 地域とした。また、蓄エネルギー設備を用いた供給地域内でのエネルギーマネジメント効果を検 証するため、本節では逆潮流可能割合を0%と設定して以降の検討を行った。
3.5.1. 各地域における蓄エネルギー設備なしのDHC 導入効果の推定
蓄エネルギー設備を導入せずにDHCとして最適な設定でCGSを普及させた際にどれだけの省 エネルギー効果が期待できるかを検討した。逆潮流可能割合を0%とした上で、地域ごとの熱源設 置位置を1つとして表 3.23に示す56ケースを検討し、計算結果から最も年間一次エネルギー消 費量が小さかったケースを地域ごとに最適ケースとしてまとめ、式(11)で最適ケースの年間一次エ ネルギー消費量削減率を計算した。
表 3.23 蓄エネルギー設備なしのDHCとしてのCGU設定ケース
各地域の最適ケースと削減率を表 3.24に示す。3.3.4.節における逆潮流可能割合が12%の場合 の各地域の最適ケースと同様の容量、台数、運転設定となった。また削減率についても、3.3.4.節 における逆潮流可能割合が12%の場合の各地域の最適ケースと同様に、A地域よりもB,C地域 の方が大きくなった。これはA地域のエネルギー需要を賄うには大容量のCGUが必要になるが、
CGUの容量が大きくなるにつれて細かい需要変動の追従が困難になるためである。
表 3.24 最適ケースの各設定および年間一次エネルギー消費量削減率 容量 [kW] 台数[台] 運転設定 [-]
1 100 1 電力需要追従運転
2 700 2 熱需要追従運転
3 1200 4
-4 2000 8
-5 3800 -
-6 5200 -
-7 9600 -
-A B C D
容量[kW] 9600 5200 5200 1200 台数[台]
運転設定[-]
削減率[%] 16.8 17.7 17.8 15.8 8
電力需要追従運転
3.5.2. 最適ケースにおける蓄エネルギー設備の導入ポテンシャルの推定
続いて各地域の最適ケースにおける CGS の余剰供給エネルギー量や供給後の残り需要量を確 認することで、蓄エネルギー設備の導入可能性を検討した。時刻別のCGS発電量、排熱量の中で 使われずに余った量と、CGSによるエネルギー供給後に残っている電力需要、熱需要を推定した。
A 地域の夏期、冬期代表日における余剰供給量とエネルギー供給後に残った需要を図 3.24(a), (b)に示す。電力、排熱ともに夏期、冬期の日中に需要が残っている。電力需要追従にも関わらず 電力需要が残る原因は、前述したように大容量の CGU を設置していることで少量の需要の変動 を追えていないためである。このことから、残った電力需要に蓄電池から電力を供給することで、
さらなる省エネ効果が期待できる。また、早朝や深夜にCGSから余剰排熱が発生しているため、
これらを蓄熱槽で貯めることで日中の排熱需要の削減が期待できる。
(a) 夏期代表日(8月26日)
(b) 冬期代表日(1月26日)
図 3.24 代表日の余剰供給量および残り需要
0 10000 20000 30000 40000 50000
0 200 400 600 800 1000
0:00 1:00 2:00 3:00 4:00 5:00 6:00 7:00 8:00 9:00 10:00 11:00 12:00 13:00 14:00 15:00 16:00 17:00 18:00 19:00 20:00 21:00 22:00 23:00 0:00 熱需要収支[MJ]
電力需要収支[kWh]
時刻[hh:mm]
CGS余剰発電量 CGS余剰排熱量
残り電力需要 残り排熱需要
0 1500 3000 4500 6000 7500 9000 10500 12000
0 100 200 300 400 500 600 700 800
0:00 1:00 2:00 3:00 4:00 5:00 6:00 7:00 8:00 9:00 10:00 11:00 12:00 13:00 14:00 15:00 16:00 17:00 18:00 19:00 20:00 21:00 22:00 23:00 0:00 熱需要収支[MJ]
電力需要収支[kWh]
時刻[hh:mm]
各地域の年間余剰供給量と残り需要を表 3.25に示す。どの地域も最適ケースが電力需要追従で あったため、余剰発電は発生せず、電力需要の残りもCGSによる年間電力供給量の3 %~4 %に なった。一方で排熱需要の残りはどの地域も大きく、CGSによる年間排熱供給量の50 %~60 % になった。
表 3.25 年間余剰供給量および残り需要
3.5.3. 蓄エネルギー設備導入による省エネルギー効果の推定
3.4.2.節の結果から、商業地域の一次エネルギー消費量に対してCGSを用いたDHCのみを最適
化させた場合、 CGSからエネルギーの余剰供給や、供給後にエネルギー需要の残りが発生した。
そこで蓄エネルギー設備がCGSの余剰エネルギー供給量を貯蔵し、エネルギー需要の残りが発生 した際に貯めたエネルギーを供給することで、さらに一次エネルギー消費量を削減できるかを推 定した。
表 3.23のDHCの検討ケースに加え、更に蓄電池と蓄熱槽の容量のケースをそれぞれ3つ加え て計算し、CGUの56ケース×蓄電池3ケース×蓄熱槽3ケースの計504ケース(表 3.26)の中か ら地域ごとに最も年間一次エネルギー消費量が小さかったケースを、蓄エネルギー設備を含めた 最適ケースとし、この最適ケースと表 7 に示した DHC のみを導入した場合の最適ケースとを比 較し、一次エネルギー消費量の削減率やCGSの最適設定の変化の有無を確認した。
表 3.26 蓄エネルギー設備を含めたDHCとしてのCGS設定ケース
各地域の蓄エネルギー設備を含めた最適ケースおよび削減率を表 3.27に示す。どの地域もDHC のみを導入した場合の最適ケースから一次エネルギー消費量は 0.4~0.7ポイント削減されたが、
CGUの最適設定は変更されなかった。また、どの地域も最適な蓄電池の容量は10 MWh、蓄熱槽
の容量は200 GJとそれぞれ最も小さい容量のケースとなった。これらの設定が最適ケースに選択
された原因としては、DHC 導入によるエネルギー需要の集約で既に CGSが安定的に稼働できて いること、また本報ではCGSや蓄電池から供給する電力の系統電力への逆潮流を認めていないた
A B C E
容量[kW] 9600 5200 5200 1200 台数[台]
運転設定[-]
16.8 17.7 17.8 15.8 8
電力需要追従運転 CGU
削減率[%]
蓄電池 蓄熱槽
容量[kW] 台数[台] 運転設定 [-] 容量[MWh] 容量[GJ]
1 100 1 電力需要追従運転 10 200
2 700 2 熱需要追従運転 40 800
3 1200 4 - 80 1600
4 2000 8 - -
-5 3800 - - -
-6 5200 - - -
-7 9600 - - -
-CGU
め、残っていた少量の電力需要分(表 8)しかCGSが発電できず、それに伴い蓄熱槽が貯蔵可能な CGSの余剰供給熱量も小さくなっていることが考えられる。
表 3.27 蓄エネルギー設備を含めた最適ケースの各設定および 年間一次エネルギー消費量削減率
A地域の最適ケースによる代表日(1月26日)の電力、熱それぞれのCGS、蓄エネルギー設備の 供給量を図 3.25、図 3.26に示す。電力需要に追従してCGSが発電しているため、蓄電池は需要 の数%程度の調整を行っていた。一方で熱需要に関しては朝の暖房需要の増加をCGSの熱供給が 捉え切れていないため、その分を蓄熱槽からの放熱によって補っていた。しかし、10時から15時 までの間は熱需要の余りが発生していたが、蓄熱槽に放熱できる熱が残っていなかった。これは、
本報のCGSが発電電力を逆潮流しない範囲で運転するように設定しているため、10時から15時 までの熱需要の余りに対して、蓄熱槽が放熱するために必要な熱量をCGSから供給できていなか ったためである。このことから、3.4.3.節で述べたように、CGSの発電単価や電力の買い取り単価 からCGSのランニングコスト収支を計算し、計算結果に基づいてDHC業者が損をしない範囲で 系統電力への逆潮流を可能にすれば、さらなる省エネ効果が期待できる。
図 3.25 代表日の電力におけるエネルギー供給設備の供給量
A B C E
容量[kW] 9600 5200 5200 1200 台数[台]
運転設定[-]
蓄電池容量[MWh]
蓄熱槽容量[GJ]
削減率[%] 17.5 18.1 18.4 16.2 8
電力需要追従運転 10
200
0 100 200 300 400 500 600 700 800
0 1000 2000 3000 4000 5000 6000 7000 8000
0:00 1:00 2:00 3:00 4:00 5:00 6:00 7:00 8:00 9:00 10:00 11:00 12:00 13:00 14:00 15:00 16:00 17:00 18:00 19:00 20:00 21:00 22:00 23:00 0:00 蓄電池電力量[kWh]
電力量[kWh]
時刻[hh:mm]
蓄電池充電量 蓄電池放電量 電力需要 CGS発電量
図 3.26 代表日の熱におけるエネルギー設備の供給量