2) 系統電力における動的 LCCO 2 排出係数の作成
4.3 各指標の影響の確認
4.3.2. ケース検討結果
まず建物単体において最適化指標が年間一次エネルギー消費量か年間 LCCO2 排出量かで、
CGSや蓄電池、蓄熱槽の設定が変化したかを検証した。表 4.11に各地域におけるエネルギー供給 設備の設定が変化した非住宅建築物数と地域の全非住宅建築物数に対する割合を示す。A,B,C 地 域では CGS および蓄熱槽のどちらも 4 割近く変化しているのに対し、蓄電池の変化件数は少な い。一方でE地域ではCGSおよび蓄熱槽の変化件数は他の3地域に比べて小さくなっている。
CGSの最適設定が変わる原因として、図 4.13に、代表日における系統電力とCGSのLCCO2排 出係数を示す。発電のみを考慮した場合、CGSの係数は冬期(1月17日)においても日中の系統 電力よりも大きい時間帯があり、また中期(5月4日)や夏期(8月8日)では1日のほとんどで 系統電力のLCCO2排出係数の方がCGSより小さい。しかし、暖房の排熱供給分を考慮した場合、
CGSの係数は冬期の系統電力よりも小さくなる。一方で、冷房に排熱を使用する場合の排熱変換 効率は低く、また冷房期の系統電力における太陽光発電の割合は暖房期よりも大きくなるため、
冷房への排熱供給を考慮しても LCCO2排出係数は夏期や中間期の日中における系統電力のもの よりも大きくなる。さらに、ジェネリンクが冷暖房需要への供給にガスを消費した場合のCO2排 出量は、一般的な空冷式ヒートポンプが同じ熱量を供給する場合のCO2排出量よりも多きくなる ため、これらの点で、晴天日においては、CGSは電力供給量と排熱による熱供給量が、対象建物 の電力需要と熱需要とほぼ一致している時刻以外は、CO2排出量を削減できないため、有効な発 電時刻や発電容量が一次エネルギー消費量の最適ケースと比べて小さくなった。
蓄熱槽が変更された原因はその導入によるCO2排出量が大きいためであると考えられる。実際 に変更された非住宅建築物のほとんどは蓄熱槽の容量を減少させていた。またE地域のCGSおよ び蓄熱槽の変化件数が小さい原因は、E 地域は小規模の建物の割合が他3地域と比べて大きく、
多くの建物が年間一次エネルギー消費量の最適ケースの時点で小容量のエネルギー供給設備を導 入していたため、年間LCCO2排出係数の最適ケースが年間一次エネルギー消費量の最適ケースか ら設備容量を縮小化させる余地が他の3地域と比べ少なかったからだと考えられる。
蓄電池 蓄熱槽 GFA <
20000㎡
GFA ≧ 20000㎡
1 5 100 1 電力追従 0 0
2 35 700 2 熱追従 250 5
3 100 1200 4 - 1250 25
4 - - 8 - 2500 50
CGS 容量 [kW]
台数 [-]
運転設定 [-]
容量 [kWh]
容量 [GJ]
蓄電池 蓄熱槽
容量 [kW] 台数[-] 運転設定[-] 容量[MWh] 容量[GJ]
1 1200 1 電力追従 0 0
2 3800 2 熱追従 10 200
3 5200 4 - 40 800
4 9600 8 - 80 1600
CGS
表 4.11 エネルギー供給設備の設定が変化した非住宅建築物数[件]と 地域の全非住宅建築物数に対する割合[%]
図 4.11 代表日における系統電力とCGSのLCCO2排出係数
さらに建物単体においてCGSや蓄電池、蓄熱槽の設定が変化した非住宅建築物が、建物用途ご とに偏っているかを検証した。表 4.12に各地域におけるエネルギー供給設備の設定が変化した非 住宅建築物の建物用途ごとの件数と、地域の建物用途ごとの全非住宅建築物数に対する割合を示 す。どの地域も非住宅建築物数が大きい事務や商業用途の建物における各エネルギー供給設備の 変化割合が、表 4.11に示した各地域の変化割合と同じくらいに変化している。他の用途の変化割 合は表 4.11に示した各地域の変化割合と異なるが、これは地域内の件数が少ないために結果が極 端になったためだと考えられる。これらの結果から、最適化指標の違いによるCGSや蓄電池、蓄 熱槽の設定変化には建物用途による影響は小さいと判断した。
CGS 136 (45) 108 (43) 194 (44) 103 (34) 蓄電池 31 (10) 25 (10) 28 (6) 9 (3) 蓄熱槽 144 (48) 98 (39) 181 (41) 60 (20)
非住宅建築物数[件]
(全非住宅建築物数に対する割合[%])
A B C E
0.4 0.5 0.6 0.7
0:00 2:00 4:00 6:00 8:00 10:00 12:00 14:00 16:00 18:00 20:00 22:00 0:00
CO2排出係数[kg-CO2/kWh]
時刻[hh:mm]
冬期(1/17)系統 中間期(5/4)系統
夏期(8/8)系統 発電電力あたりCGSガス
暖房への排熱供給も含めたCGS 冷房への排熱供給も含めたCGS
表 4.12 エネルギー供給設備の設定が変化した非住宅建築物の建物用途ごとの件数[件]と 地域の建物用途ごとの全非住宅建築物数に対する割合[%]
続いて最適ケースでの省エネ効果検討対象指標における省エネ効果を以下の式(4.4)で計算した。
𝑅𝑏𝑒𝑠𝑡 = (𝐶𝑑𝑒𝑓− 𝐶𝑏𝑒𝑠𝑡)/ 𝐶𝑑𝑒𝑓・100
ここで、Rbest:最適ケースのエネルギー削減率[%], Cdef:エネルギー供給設備を何も導入しない場 合の、省エネ効果検討対象指標の年間計算値[kg-CO2, MJ, kWh], Cbest:最適化対象指標のベストケ ースにおける省エネ効果検討対象指標の年間計算値[kg-CO2, MJ, kWh]
まず建物単体において、年間一次エネルギー消費量か年間LCCO2排出量それぞれの最適化指標 によってエネルギー供給設備の設定が変化した建物が、1 方の指標に基づく最適化による省エネ 効果が片方の指標に基づく最適化に比べてどの程度増加したかを検証した(図 4.12)。どの地域で も平均して、年間一次エネルギー消費量に基づく最適化では年間LCCO2排出量に基づき最適化さ せた場合から年間一次エネルギー消費量が約1ポイント、年間LCCO2排出量に基づく最適化では 年間一次エネルギー消費量に基づき最適化させた場合から年間LCCO2排出量が約2ポイント増加 した。また年間LCCO2排出量に基づく最適化では年間LCCO2排出量が10ポイント以上増加して いる建物があるが、これは年間一次エネルギー消費量に基づき最適化では容量の大きいCGSを導 入していた建物が、LCCO2排出量に基づく最適化ではCGSの容量を削減したことでCGSの発電
事務 114 54 (47) 0 (0) 72 (63)
医療 4 2 (50) 1 (25) 0 (0)
商業 161 70 (43) 17 (11) 72 (45)
宿泊 0 0 (0) 0 (0) 0 (0)
飲食 23 10 (43) 13 (57) 0 (0)
教育 0 0 (0) 0 (0) 0 (0)
事務 117 56 (48) 1 (1) 75 (64)
医療 4 1 (25) 0 (0) 0 (0)
商業 85 36 (42) 11 (13) 23 (27)
宿泊 21 6 (29) 7 (33) 0 (0)
飲食 16 7 (44) 6 (38) 0 (0)
教育 9 2 (22) 0 (0) 0 (0)
事務 181 91 (50) 0 (0) 103 (57)
医療 1 0 (0) 1 (100) 0 (0)
商業 218 94 (43) 15 (7) 78 (36)
宿泊 7 2 (29) 2 (29) 0 (0)
飲食 31 7 (23) 10 (32) 0 (0)
教育 2 0 (0) 0 (0) 0 (0)
事務 203 69 (34) 0 (0) 47 (23)
医療 7 2 (29) 0 (0) 0 (0)
商業 62 23 (37) 2 (3) 13 (21)
宿泊 6 1 (17) 1 (17) 0 (0)
飲食 20 7 (35) 6 (30) 0 (0)
教育 4 1 (25) 0 (0) 0 (0)
非住宅建築物数[件]
(用途別全非住宅建築物数 に対する割合[%])
A
B
C
E
用途別 地域内件数
CGS 蓄電池 蓄熱槽
(4.4)
によるCO2排出量を大きく削減したためである。
図 4.12 最適化指標の違いによる設定変更建物の各最適化指標における省エネの増加量
表 4.13に、各最適化対象指標の最適ケースにおける地域全体の削減率のまとめを示す。全最適 ケースで年間一次エネルギー消費量を10%以上、電力需要の年間需給標準偏差を50%以上削減し た。建物単体における年間一次エネルギー消費量やLCCO2年間排出量が、A,B地域よりもC,E地 域の方が大きいが、これは C, E地域は低層の建物が多いため、PVパネルの発電による電力需要 の削減割合が大きくなるためである。
配置間で比較すると、年間一次エネルギー消費量に関しては、DHC は建物単体よりも1~3ポ イント省エネ効果が大きい。これは第 3 章で述べたように DHC によるエネルギーの集約効果が 熱搬送動力や搬送熱損失による増エネを上回ったためである。また電力需給の年間標準偏差に関 しては、地域によって最適な配置は変化するが、全体的に削減率が大きい。
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14
A B C E A B C E
年間一次エネルギー消費量 年間LCCO2排出量
削減率の上昇量[ポイント]
表 4.13 最適ケースにおける削減率[%]
一方、いくつかの最適ケースでは、年間LCCO2排出量が数パーセントから数十パーセント増加 した。さらに、DHCでの年間LCCO2排出量の最適ケースは、全地域でデフォルトケース(= DHC を導入しないケース)となった。この理由に関連して、図 4.13(a), (b)に、A地域の年間一次エネ ルギー消費量に対する最適ケース(表 4.13図 4.13の下線値)での、年間LCCO2排出量の内訳を 示す。 CGSのガス消費からのCO2排出量が、建物単体およびDHCの両方で年間LCCO2排出量 の半分以上を占めている。さらに、DHCはプラント建屋が大部分を占めているエネルギー供給設 備の建設によるCO2排出量(図 4.14)が年間LCCO2排出量を増加させている。 CGSのガス消費と DHC 設備の建設によるCO2排出量の増加が、消費電力の削減による省エネ効果を上回ったため、
DHCは年間LCCO2排出量を削減できなかったと考えられる。
最適化指標 年間一次エネルギー
消費量
LCCO2
年間排出量
電力需給の 年間標準偏差
年間一次エネルギー消費量 13.9 9.2 87.3
年間LCCO2排出量 13.4 9.5 86.1
年間一次エネルギー消費量 15.3 -19.5 89.4
年間LCCO2排出量 0.0 0.0 0.0
電力需給の年間標準偏差 15.2 -20.3 89.4
年間一次エネルギー消費量 14.8 10.4 86.5
年間LCCO2排出量 14.4 10.6 86.6
年間一次エネルギー消費量 17.1 -17.1 85.5
年間LCCO2排出量 0.0 0.0 0.0
電力需給の年間標準偏差 17.1 -17.3 85.5
年間一次エネルギー消費量 15.3 10.7 84.9
年間LCCO2排出量 15.0 11.1 86.5
年間一次エネルギー消費量 18.0 -13.2 84.8
年間LCCO2排出量 0.0 0.0 0.0
電力需給の年間標準偏差 18.0 -13.2 84.8
年間一次エネルギー消費量 22.0 15.4 67.2
年間LCCO2排出量 21.8 15.9 69.2
年間一次エネルギー消費量 23.7 -33.3 66.8
年間LCCO2排出量 0.0 0.0 0.0
電力需給の年間標準偏差 21.2 -36.2 67.3
B 建物 単体 DHC A
建物 単体 DHC
C 建物 単体 DHC
E 建物 単体 DHC
図 4.13 A地域の年間一次エネルギー消費量に対する最適ケースの年間LCCO2排出量の内訳
図 4.14 A地域におけるDHCの年間一次エネルギー消費量に対する最適ケースの
設備建設による年間LCCO2排出量の内訳