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第三章 草地政策と牧畜政策

2. 草地管理の制度

エヴェンキ族⾃治旗地域において最も重要な資源は草地であり、その利⽤管理を規 定する最も重要な法令は

2001

年に施⾏された「エヴェンキ族⾃治旗草地管理条例」

(出所:⾃治旗

http://www.ewenke.gov.cn/Item/24639.aspx 政府ホームページ発布時間

2016

9

12

⽇、2018年

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8

⽇閲覧)である。中国語では「草原」と表記さ れるが、本稿では意味内容に照らして「草地」と表記する。「草原」は単に地理的区 分としての語感が強いが、⼟地の所有権や⼟地利⽤に関する法的議論では、⽇本語に した場合「草地」と記す⽅が適切をと考えられる。また草地を使⽤請負をする時に中 国語でも「草場使⽤証」などのように「草場」という⾔葉が⽤いられている。このよ うな⽤語の混乱を避ける意味でも可能な限り「草地」を統⼀して⽤いる。この法令は 草地保護、管理、開発、合理的利⽤、牧畜業の発展推進、⽣態環境の保護と改善を⽬

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的としてエヴェンキ⾃治旗において制定された。2000年

3

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⽇開催のエヴェンキ 族⾃治旗第九回⼈⺠代表⼤会第⼆次会にて議決され、2001年

11

21

⽇に内モンゴル

⾃治区第九回⼈⺠代表⼤会常務委員会第

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会議で施⾏が決定された。根拠法は以下の

「中華⼈⺠共和国⺠族区域⾃治法」、「中華⼈⺠共和国草地法」、「内モンゴル⾃治 区草地管理条例」である14

<管理体制>

本条例は⾃治旗⾏政区間区域内のすべての草地に適応される。⾃治旗⾏政区域内の 草地管理の⾃治旗⼈⺠政府畜牧⾏政管理部⾨が責任を負う。各ソム(郷、鎮、⽯炭鉱 地区)では⾃治旗の畜牧総合管理部⾨が各管轄ソム域内の草地管理を担当する。各ソ ムには草地監理員を配置してその区域内の草地の監督管理を⾏う。

<所有主体>

⾃治旗境内の草地は全⼈⺠の所有(以下、⼈⺠所有或いは国家所有と表現する)で あるが、所有の単位はガチャー毎の構成員による集団所有である。個別の利⽤には請 負権を得る必要がある。⼀⽅⾃治旗⼈⺠政府が法的に学校病院等の公的施設及び軍な どに配分した草地並びに未利⽤草地とその他配分していない草地はすべて⼈⺠所有と され、所有単位であるガチャーには属さない⼈⺠所有地である。それ以外に牧畜を営 む企業組織が使⽤する草地は企業労働者集団所有となる。

<権利の種類、その確認と調整>

草地請負権、使⽤権は法律によって保護され、如何なる組織も個⼈も権利を侵害し てはならない。草地の請負経営権(以下特に断りがない場合、単に請負権と表記す る)は、⾃治区関連規定により移転できる。集団所有草原の請負権が本集団内経済組 織或いは個⼈へ移転される場合、請負側と移転側が同時に申請を提出し、ガチャー村

⺠委員会会議の三分の⼆以上の成員の同意の上、ソム(郷、鎮、鉱区)⼈⺠政府が承 認する。⾃治区以外の組織或いは個⼈に移転される場合、⾃治旗政府の承認が必要で ある。元々の集団経済組織以外の組織或いは個⼈へ草地の請負権を移転する場合、期 間は

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年を超えられない。草地の無断売買は禁⽌されている。

14 附票 1 を参照のこと。

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草地の請負権は、⾃治区の定める関連規定によりガチャー外部の企業或いは個⼈へ 移転できる。構成員も含め請負権の移転には、請負側と移転側の両者が同時にガチャ ーに申請をし、村⺠委員会構成員三分の⼆以上の⼈数の同意を得、さらにソム(郷、

鎮、鉱区)⼈⺠政府の承認を得なければならない。⾃治区以外の企業或いは個⼈へ移 転する場合、⾃治旗政府の承認が必要である。この場合の請負期間は

30

年とする。草 地の売買と状態の変更を伴う売買も禁⽌されている。

権利の具体的な帰属が確定した後では、実際に使⽤する個⼈または組織が登記権利 者と異なる場合、使⽤者は使⽤権を登記しなければならない。⾃治旗⼈⺠政府は使⽤

者に「草場使⽤証」を発⾏し、使⽤権が確定される。⾃治旗政府のみでなくガチャー 即ち草地の集団所有単位も、政府機関、企業や個⼈に草地を貸すことができる。

このように⾃治旗政府或いはソムやガチャー単位でも、集団所有の草地をその構成 員或いは企業などに草地を貸しだすことが可能である。この際には、当事者双⽅が法 律に基づいて契約書を作成し、草地貸借に関する双⽅の権利、義務、草地の保護と管 理に関する責任を明確にすることが義務付けられている。同⼀の⼟地に対して、「草 場使⽤証」と「林業権利証」の重複発⾏といった事例も起こりうる。このことで草地 使⽤者と森林使⽤者との間で権利紛争があった場合、⾃治旗は紛争処理申請を⾃治区

⼈⺠政府に⾏い、その承認を必要とする。草地の諸権利の帰属を変更する場合、法律 によって、⾃治旗政府の承認が必要とされ草地管理部署へ申請し、変更登録を⾏わな ければならない。使⽤権の場合には、「草地使⽤証」を更新する。請負権の名義⼈と 実際の使⽤者が異なるケースが多くあるため、草地管理を徹底するためには、使⽤権 の設定と使⽤証明書の発⾏が必要とされたと考えられる。草地使⽤権を持つ組織或い は個⼈が以下の⾏為を⾏った場合、⾃治旗⼈⺠政府が法律に基づき使⽤権を回収し、

「草地使⽤証」を取り消すことが定められている(内モンゴル全体も同様の規定があ る)。以下にその規定を⽰す。

(⼀)草地を使⽤する組織が取り消されている場合、或いは⾃治旗から転出した場合

(⼆)連続⼆年以上草地を使⽤していない場合

(三)承認無しで草地利⽤⽬的を独⾃に変えた場合

(四)期間内に必要な整備を⾏わず不合理な利⽤により⾃治旗草地管理部署にて重度 劣化草地と認定された場合。

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草地請負経営の転出を受ける組織或いは個⼈が以上の何れかの項⽬に反した場合、元 請負⼈が請負経営権を回収し請負権転出契約を解除することができる。

⾃治旗と各ソム(郷、鎮、鉱区)⼈⺠政府は、各⾏政区域内の草地を全⾯的に監視 し、草地の保護、管理、建設、利⽤の総合企画を制定し、草地の⽣態バランスと永続 利⽤を保障することと定められている。⾃治旗の草地に対して、3年毎に⼀回の重点調 査と

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年毎⼀回の全体調査を⾏うことになっている。各ソム(郷、鎮、鉱区)の⼈⺠

政府は⾃治旗⼈⺠政府の草地主幹関連部署と共に各⾏政区域内の草地を分類し年度毎 に家畜の飼育可能頭数(载畜量)を個別に規定している。草地使⽤者並びに請負経営 者はソム(郷、鎮、鉱区)政府の確定した飼育可能頭数に基づいて、毎年⼀⼾毎に実 際の飼育頭数を決めることが求められている。年末の舎飼い頭数、越冬⽤⼲し草の量 を確認勘案して飼育頭数を確定し、牧草と家畜のバランスをとろうとしている。過放 牧による草地劣化、砂漠化に対して、⾃治旗主管部署が草地使⽤者と請負経営者に対 して、放牧禁⽌(禁牧)、草地育成(封育)、輪牧利⽤(轮牧)、牧草の播種(⼈⼝

植草)、境界柵(草库伦)の設置などを⾏わせ、草地維持と同時に、飼料効率を上げ るために家畜への栄養剤等の処⽅、飼料作物種⼦栽培(筆者注:トウモロコシなど)

などを実施している。また、⾃治旗政府は、牧草と飼料の種⼦⽣産圃場整備を⾏い、

飼料種⼦栽培、技術導⼊、飼料穀物の調達(引进)、適応試験(驯化)を⽬指してい る。

また、⾃治旗は法律に基づいて基本牧草地保護制度を実施し、(⼀)専⽤草刈り 地、(⼆)牧草播種地、(三)牧草と飼料の栽培専⽤地、(四)種⼦⽣産圃場(牧草 種⼦⽣産基地)、(五)牧畜試験場、(六)常時放牧専⽤⾃然草地などの基本牧草地 を保護している。また、退耕措置により牧草地に戻した⼟地も基本草地とし、如何な る組織、個⼈も基本牧草地を他の利⽤⽬的に転⽤することを禁⽌している。⾃治旗と 各ソム政府は、草地所有者、使⽤者、請負者の優遇政策を策定するとともに様々な形 式で草地の利⽤開発を推進し、遠辺地域の草地、草地劣化、砂漠化、塩害の可能性の ある草地地等の利⽤開発を⾏う組織或いは個⼈への⽀援を⾏っている。⾃治旗とソム

⼈⺠政府は草地地域内の村々を結ぶ道路の適正な建設を⾏い、交通標識の設置等維持 管理を強化することとされている(ちなみに⾞輛は道路を外れて草地内通⾏すること が禁じられている)。如何なる組織と個⼈であろうとも草地の壊廃は厳重に禁じられ ているが、国家による国⼟総合管理に基づいた草地開発が必要な場合は、その限りで

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はない。この場合、⾃治旗政府の草地主幹部署と⼟地管理部署が、承認権のある直上 の⼈⺠政府(筆者注:この場合はエヴェンキ族⾃治旗⼈⺠政府がフルンボイル市⼈⺠

政府)へ意⾒要望を提出することができる。以下のような地区では草地開発は禁じら れている。

(⼀)表⼟層

50

センチ以内、森林ネット保護のない砂漠化しやすい地区、

(⼆)10度以上の傾斜地、

(三)⼀年当たり平均降⽔量

350

ミリ以下の灌漑施設のない地区、

(四)主な牧畜道と牧畜飲⽔地、岩塩など(筆者注:アルカリ塩基でモンゴル語では

「ホジル」という)の補給地

(五)⼟地に関する権利の帰属紛争がある⼟地

草地の使⽤者または請負経営者が、牧畜業の発展のために関連規定と統⼀規格に基づ いて家畜の集約的飼育と⽣態適合的な経営を⾏う場合には、牧草と飼料⽤作物栽培を認め る。中略。

第第⼆⼗四条 国家建設のために集団所有地を収⽤する場合、その⼟地を使⽤する組 織は補賞⾦(草原補償費)を納付しなければならない。牧畜業の就業者に対する⼀⼾当た り(筆者注:⼀⼾の請負権は各世帯の⼀⼈の代表者名で登記されている)補償⾦(安置補 助費)の基準は、草地の収⽤直前の五年間の平均⽣産額の

8

から

15

倍とする。国家建設 のために集団所有の草地を借⽤した場合でも、元の使⽤機関または個⼈に損失を与えた場 合には、本条上記の規定に従う。

第⼆⼗五条 中略。

(⼀)草原(本⽂では草地と記す)を違法売買或いは転売した場合、違法⾏為を停⽌

するよう命じ、違法所得を没収し、取引額の

1

倍から

2

倍⾦に相当する罰⾦を科す。

(⼆)草原を違法開墾或いは既に開墾した草原からの期限内退去を拒否した場合、

1500

元から

15000

元の罰⾦を科す。

(三)本条例第⼆⼗三条規定を違反して草原で作業と活動を起こした場合は、その作 業と活動を即時停⽌するよう命じ、活動に使⽤された⽤具を没収し、破壊された草原の⾯

積で計算し、公顷単位当たり

2000

元から

30000

元の罰⾦を科す。

(四)本条例第⼆⼗三条規定を違反して草原で過放牧を起こして草原を劣化させ表⼟

層を破壊させた場合は、過放牧を即時停⽌するよう命じ、期間内に草原の改良、表⼟層の 復元を命じ、公顷単位当たり

400

元から

4000

元の罰⾦を科す。

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