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第 8 章 作業検査法の可視化 96

8.3. 色弱者モード

第8章 作業検査法の可視化 104

第8章 作業検査法の可視化 105

等用のカラーユニバーサルデザイン推奨配色セット”基づいて色覚異常のカウンセラーに対し て色弱モードを組み込んだ.

図 90 東京大学カラーユニバーサルデザイン推奨配色セット

簡単なキーボート操作で,色弱者モードと一般モードを切り替えることができる.

図 91 内田クレペリン検査の作業量の3D螺旋グラフ(色弱者モード)

第8章 作業検査法の可視化 106

色弱者モードのグラフは「バリアントール」を掛けてみる.

図 92 内田クレペリン検査の作業量のデータ色弱者が見える色変換後3D螺旋グラフ(色弱者 モード)

図 92 では,一般色覚者を「バリアントール」が掛けて見える様子である.図から,色弱者 モードでは色弱者が分かりにくい色がないことが分かる.

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まとめと今後の課題

先行研究では,例えば,不登校児童・生徒を対象にした電子カウンセリング支援システムの 構築がある.このシステムでは相談者とカウンセラーの間の相談内容を保存するために中間メ ールを使って両方の送信したメールを転送する.しかし,その中間メールを使用することが,

セキュリティの問題を生じている.中間メールで転送する時に,人的エラー,例えば外部の人 への誤送信等が発生する可能性がある.この例のように,先行研究の多くが一般のメールをカ ウンセリングに直接利用しているために,セキュリティの問題を持っている.本研究では,こ のような問題点を意識して,Webカウンセリングの基本設計を行い,試作版を開発した.本シ ステムの主な特徴として,Web上でクライアントとカウンセラーが相互にメッセージを送信す ることによりカウンセリングを行うものである.すべての作業をサーバ上に置かれたデータベ ースを利用してやりとりを行う.また,入力したメッセージが外部に漏れることのないように,

すべてサーバの内部に貯蓄して管理する.さらに,システムのユーザを,クライアント,カウ ンセラーと管理者の 3 つの種類に類別し,各ユーザの種類ごとに異なる GUI を実現した点が あげられる.そして,コンピュータの専門家ではないクライアントとカウンセラーにとって使 いやすいシステムとすることが重要と判断した.そこで,最初にクライアントがより使いやす くなるようなGUIを中心としたヒューマンインタフェースの実現を目指した.次に,カウンセ ラーについては,カウンセリングの作業を支援する機能を検討し,開発した.開発手法にはシ ステム開発者とカウンセラーが共働するアジャイル開発を採用した.試作版をA病院のホーム ページで実際に応用した.

また,Webカウンセリングシステムのユーザとして想定される人が使いやすいシステムとな

第9章 まとめと今後の課題 108

るために被験者 79人に対して Web カウンセリングシステムを実際に使用してもらいながら,

Webカウンセリングシステムについてのアンケートを実施した.併せて,この被験者 79人を 精神的な課題のない人とある人に分けるために,心理検査を行った.アンケートと心理検査の 項目および検査結果を集計し,Webカウンセリングへのニーズに関して因子分析を行った.精 神的課題を抱えた利用者のニーズを因子分析により把握した.その結果に基づいてWebカウン セリングシステムを改善し,よりニーズに合ったものとした.

さらに,将来的なWebカウンセリングシステムの国際版の開発のためにWebカウンセリン グシステムのデザインのニーズに関する分析の国際比較を行った.本ニーズ分析において,一 般のネットショッピングとオンラインカウンセリングの比較も行った.その結果では第1因子 はどちらも同じ“デザイン”であったが,オンラインカウンセリングでは,画面構成,ネット ショッピングでは,字体の読みやすさが求められており,同じ“デザイン”という因子でも内 容は異なっていることがわかった.それで,被験者91人に対してWebカウンセリングシステ ムのデザインを中心にアンケートを実施した.本研究の結果を踏まえ,国別のニーズをシステ ムのデザインを反映することにより,より親しみやすいものになり,心の問題を抱えた人々に もより多く利用してもらえるようになると考えられる.本システムは,以前のバージョンより 安全性が向上し,使いやすくなったと考えられる.また,本システムのデザインについても,

以前のバージョンよりGUIが向上し,綺麗になったと考えられる.心の問題を相談するのは,

心に問題を抱えている人のごく一部であり,大半の人々はまわりの目を気にしてカウンセリン グなどの十分治療を受けていないのが現状である.今後は,この人たちのニーズを把握するこ とが必要である.

本研究では,年間を通してWebカウンセリングシステムに蓄積されていく大量の多種・多様 な心理データを3Dグラフで可視化する手法を提案した.本3Dグラフ表示はProcessingプロ ジェクトを用いて螺旋形状の可視化を実現した.さらに,項目ごとに数量に応じて色付けして,

螺旋全体を回転させることで,全体的な傾向や特徴を視覚的に把握することができた.解析し た定量的な結果の数値だけからでは掴みにくい,各データの傾向などの情報を例題に対して直 感的に分かりやすく提示することができた.

提案した3D螺旋表示をWebカウンセリングシステムにおける履歴データ,具体的には,ク

第9章 まとめと今後の課題 109

ライアントの相談内容に関するテストデータに適用した.Webカウンセリングシステムはまだ 本格的な運用はしていないので,カウンセラーと共働で想定される項目と相談内容をデータ化 した.本テストデータはカウンセラーの長年の臨床経験に基づくものである.一年分の相談内 容を,X 軸方向と Y 軸方向で作られる平面とほぼ平行の平面上に一周期分として表示し, Z 軸方向に時系列・年代順に並べて配置した.その結果,一年間を通じてどのような時期(季節,

月)に相談量が多くなっているか,そしてその相談内容の詳細も同時に容易に把握することが できた.

また,本3D螺旋表示の質問紙法(GHQ28項目版とS-H式レジリエンス検査)と投影法(SCT)

の結果への応用を試みた.実際に 54 人の被験者に質問紙法と投影法の心理検査を行った結果 のデータを対象とした.投影法の回答文に対して計量分析を行い,その結果と質問紙法(GHQ28 項目版と S-H式レジリエンス)の結果を組み合わせて Processing プロジェクトを用いて螺旋 形状で分かりやすく3次元グラフで視覚化することを実現した.さらに,ある共通の特徴をも つ人たちの各項目の数値が具体的にどのようになっているかを 3D 螺旋をズームするだけで詳 細に読み取ることができ,容易に把握することも可能となった.例えば,7 章で詳しく説明し たS-H式レジリエンス検査のA(家族,友人,同僚などの周囲の人たちからの支援や協力など の度合に対する本人の感じ方)項目の値が高い人は,形容詞の肯定の量が否定よりも多く,A 項目の値が低い人は,否定の量の方が多い傾向あることを容易に読みとることができた.

さらに,本3D螺旋表示を作業検査法の結果に応用した.作業検査法については,内田クレ ペリン精神検査を可視化の対象とした.データは書籍となっている内田クレペリン精 神検査のデータブックから借用した.この内田クレペリン精神検査の実際の結果のデー タを3D螺旋表示した.また,3D螺旋表示で読みやすく,解釈を分かりやすくするために,色 を効果的に使うようにした.さらに,カウンセラーの中に 0.5割程の人が色覚異常であること を考慮して色弱者モードを組み込み,キーボートで簡単にモードを切り換ることができるよう にした.

今後の課題としては,本論文で述べた心理検査やその他の心理検査において,実データに対 して評価実験を重ねて,本手法の有効性を検証する必要がある.また,評価実験で得られ結果 やカウンセラーからの意見をフィードバックして改良しなければないらない.さらに,Webカ

第9章 まとめと今後の課題 110

ウンセリングシステムと本可視化システムを統合化し,実際の運用での評価も行う必要がある.

本システムをもっと便利で,安全で,さらに汎用的になるよう,改善を継続する必要がある.

また,内田クレペリンのデータと他の心理調査のデータと組み合わせて表示するなど質の異な るデータ間にある関係性などを見つけるためのよりよい可視化手法に発展させることも重要な 課題である.また,複数の 3D 螺旋を同時に表示して,全体的な傾向の比較をするなども発展 的課題として考えられる.この他には,精細化とより使いやすいインタラクションの工夫など が考えられる.より便利な機能を導入し,グラフをもっと見やすくして,他分野の様々な問題 にも応用できるような拡張も必要である.