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艦船建造と環境戦略

ドキュメント内 Microsoft Word - 高速船-表紙.doc (ページ 167-170)

第三部 競争力と企業戦略 -アーカーヤーズのケーススタディーを中心にー

4. 艦船建造と環境戦略

4.1 艦船建造の得失

欧州では、商船建造と艦船建造の結合は比較的よく見られる。ブレーメン大学の2006年度レポ ート(セクション3を参照)では、次の企業区分が、調査対象となった130の造船所(欧州全体 で推定合計241カ所のうち)の実例として記されている。

- 艦船の新造:38 (潜水艦11、水上艦33、補助艦27)。 - 商船の新造:65

- 艦船新造と商船新造:20

- 修繕:68(艦船修繕10、商船修繕24、商船及び艦船修繕34)。 - 商船新造と艦船・商船の修繕:36

しかしながら、本調査で分析された3グループ(アーカー、フィンカンティエリ、オデンセ)の うち、艦船建造で活発なのはフィンカンティエリのみである。このことから、艦船部門への参入 は、欧州造船における成功への前提条件ではないと結論することができる。

艦船の最大のプラス側面が「価値」の大きさであることは明らかで、また、少なくとも国内での 契約では競争が限定されていることである。造船所にとっての第一線の戦闘艦の価値は、客船が CGT当たり最高約3500ドルであるのに対して、4000~5000ドル22に上ると推定される。最大 のマイナス側面は、同産業の特性ともいえる作業量の大幅な変動、多くの場合、単一の顧客へ依 存すること、リードタイムが長いことによる高コスト、輸出が困難であることにある。

生産面においては、作業と品質のレベルの違いと、より長期に渡る建造工期が、同一施設におけ る商船建造と軍艦建造の組み合わせを困難にしている。欧州では、キールのHDWの例のように、

同一造船所内で両方のタイプを建造する例もあるが、多くの場合、2 つのビジネスはそれぞれ専 用の施設で分担されている。フィンカンティエリのMuggianoやRiva Trigoso造船所の例のよう に、イタリアの造船所の一部も、ダーメンが小型の巡視船艇のためにそうしているように、艦船 建造と商船建造を同じ事業所で実施している。その他の多くのケースでは、艦船建造専用の施設 が使用されている。

「艦船部門におけるリードが商船建造を助けるかどうか」の問については、その反対が正解とい える。艦船建造の実務を商船建造の作業に移転させることは、特に間接費の構造の面でマイナス

22これは該当する造船所、国、契約の中身に大幅に依存している。巡視船艇などの小型の艦船の価値は低い。

影響を生む可能性がある。艦船に要求される品質やその他の標準も、商船建造においては維持し えない傾向がある。

技術的には、最新世代のクルーズ客船は多くの軍艦よりも複雑であると思われる。また、通常、

武器システムなど、艦船の中で最も複雑なシステムは発注主及びその下請け事業者によって供給 され、設置されることにも留意するべきである。しかし、ある側面では、利点となる可能性もあ る。それは薄板構造と薄板の表面の平坦さにおける専門技能である。その専門技能は、ドイツの LurssenやBlohm und Vossがヨットを建造するうえで助けとなった。

4.2 環境戦略

CESAとの議論では、欧州造船業が、環境保護への圧力は欧州造船所に潜在的に競争上の優位を 提供するかもしれないと認識してはいるものの、これは今のところ戦略的な思考に過ぎず、如何 なる具体的なプログラムも実現していないとされている。

欧州において、環境分野でもっとも進歩したのは、内陸水路輸送に関してである。内陸水路輸送 は、貨物の道路輸送に比べて遥かに環境に優しいと認識されている。欧州では利用可能な内陸水 路輸送網が発展しているため、これらの利用が奨励されており、内水輸送用船舶の環境性能最適 化のための概念研究は、EUの第6次枠組み計画(FP6)の一環で資金を供与されている。この 作業が、小型船建造造船所のための一定の戦略優位に繋がることはあり得るが、影響は限定的な ものと思われる。

作業の大半は、推進器やその他のシステム製造業者の競争力強化に関係するため、成果について は、欧州にとどまらず世界中のあらゆる造船所に販売されるところとなる。欧州造船所はすでに、

例えば客船への革新的な推進システムの配備と共に、この技術を設計に応用している。しかし、

このことが何らかの重要な競争優位をもたらすかどうかは不明である。一方、こうした技術を活 用しないことは、競争上の不利をもたらす。

船舶による排ガス削減への圧力は強まると思われるが、これが欧州造船所に好機をもたらすとは 認識されていない。必要な技術は業界全体を通じて利用され、欧州においてよりも、極東のバル クキャリアの建造造船所に競争優位をもたらすものと思われる。こうした論点は、欧州造船所が バルクキャリアの建造に再び参入する何らかの道筋を提供するとは思えない。オデンセが最近ケ ープサイズ部門に参入したことは、高価格と余剰建造能力の有用性によって促されたものであっ て、精密な設計によるものではない。

環境問題は、小型船建造造船所に一定の競争優位をもたらす可能性はあるが、大型船にとっては、

環境への配慮は将来的な造船設計に大きな影響を及ぼすと思われるにせよ、競争力強化にはあま り貢献しないと思われる。しかし、欧州舶用部品メーカーにはこのケースは当てはまらず、メー カーにとっては環境保護に起因する潜在的競争力が大きなものとなる可能性がある。

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