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労働力の高コストはいかに克服できるか

ドキュメント内 Microsoft Word - 高速船-表紙.doc (ページ 157-167)

第三部 競争力と企業戦略 -アーカーヤーズのケーススタディーを中心にー

3. 労働力の高コストはいかに克服できるか

2002年以来、新造船価格は少なくとも倍増し、世界の手持ち工事量は2年分から3年分に増加 した。これらの条件は、疑いもなく高コストの造船所の競争を助けてきたが、活況を呈する最近 の市場条件がどんな影響をもたらしたかを正確に述べることはできない。しかし、高コストの欧 州諸国の受注と竣工量の推移を見ることにより、手掛かりは得られる。

第一部で紹介された受注と建造量統計では、欧州の多くの造船所は公的助成の終了と共に下方傾 向にあったが、市場の好調に沿って再び上向いたことが注目される。しかし、欧州造船グループ・

企業の明らかな成功を、優れた戦略と実践によるものと、市場の好調に起因する幸運によるもの に区別することは難しい。一部のケースでは両方に、その他のケースでは好市場による幸運だけ に起因している。

3.2 製品と顧客フォーカス

第一部で紹介された分析では、最も成功した造船所は、特に国内の需要に着目し、強力な製品フ ォーカスと顧客フォーカスを有していることを示している。こうした戦略は、ノルウェー、ドイ ツ、デンマーク、フィンランド、イタリアの造船産業にとって特に際立っていたが、これらの高 コスト国は第一部で「力強いが脆弱」と記されている。こうした戦略は、造船所の長期的な生存 のために極めて重要であった。このような強力なフォーカスを持たない造船所は、公的助成の終 了に際し閉鎖するか、現在苦闘しているか(ポーランドやクロアチアのように)、あるいは、より 一貫した戦略アプローチを伴って市場の好調という幸運の利益に他の造船所以上に浴しているか である。主な高労働コスト国のドイツ、デンマーク、ノルウェーでは、国内受注が大きな割合を 占めており、ドイツとデンマークはコンテナ船に、ドイツはそれに加えて客船に、ノルウェーは 地域的なマーケットとしてのオフショア船にそれぞれ強力なフォーカスを置いている。

このことから、高コスト国では、バルクキャリアやタンカーなどの大型船で競争する以上に、高 価格を生む持続可能なニッチ市場を見出すことが重要戦略の一端を担ってきたと結論できる。タ ンカーは現在、欧州内では、造船業が公的助成を受けているクロアチアでしか数多く建造されて いない。この結論の例外は、製品構成がより幅広いオランダであるが、それでも、大型船よりも 小型・特殊船に依然重点を置いている。オランダ、特にダーメン・グループは、提携プロセス(セ クション 3.5)を上手く利用している。反対に、欧州でそれほど順調でない業界では、このフォ ーカスが欠如していた。特にスペインとポーランドは、高付加価値部門への十分に強力なフォー カスが欠如していたと思われる。

3.3 欧州の一般戦略と高付加価値工事

欧州造船業のための戦略は、一般的にCESA(欧州造船協議会)の主導の下に造船産業の発展を 指導する「LeaderShip 2015」に記載されている。この戦略の下に、欧州造船業界は、「かつての 労働集約型産業に対比される、知識ベースの資本集約型産業」15となることを意図している。

CESA会長の2005年6月の発言によると、「欧州造船所は(販売高の)平均10%を研究・開発・

イノベーションに投資している」。2006/07年レポートは、研究・開発・イノベーションへの投資 が引き続き実施されており、CESA加盟国全体で年間10億ユーロに達していることを示してい る。

CESA は、通常の量的統計に加えて、造船の生産高の推定値を公表している。これらは、2006 年までの5年間の商船建造を売上高(ドル)、内容を考慮した建造量(CGT)、作業単位当たりの 平均価格(ドル/CGT)で表した次表で示されている。

表 3.1 - 推定新造船売上高(100 万米ドル)(出典:CESA)

2002 2003 2004 2005 2006 CESA 12,344 16,189 12,996 11,226 16,279 韓国 9,527 10,659 11,922 14,507 17,616 日本 9,123 10,042 12,545 12,276 13,102 中国 2,417 3,602 6,173 10,572 12,877

表 3.2 - 推定新造船建造量(1000 CGT)(出典:CESA)

2002 2003 2004 2005 2006 CESA 4,896 4,498 4,194 3,851 4,642 韓国 6,650 7,401 8,339 10,136 11,868 日本 6,596 6,823 7,897 8,749 9,551 中国 1,561 2,604 2,726 4,343 5,148

15 CESA 年次報告 2004-2005 年。

表3.3 – 作業単位当たり平均価格(米ドル/CGT)

2002 2003 2004 2005 2006 CESA 2,521 3,599 3,099 2,915 3,507 韓国 1,433 1,440 1,430 1,431 1,484 日本 1,383 1,472 1,589 1,403 1,372 中国 1,548 1,383 2,264 2,434 2,501

CGT当たりの労働価値は欧州造船業では一貫して高いことが見られ、欧州造船業が高付加価値の 市場部門に取り組む戦略が見て取れる。

しかし、労働価値は、欧州造船国間でばらつきがある。CESAの2006/07年年次報告書の情報は、

作業単位当たりの推定価値を各国ごとに算出している。これらは、大型船と小型船の建造造船所 に分けて総括されており、(第一部で定義されているように)2つのサイズのカテゴリー間の費用 構造の相違を示している。

表 3.4 – 2002-2006 年期の大型船タイプの建造造船所の CGT 当たり平均収入 平均船舶サイズ

(CGT)

平均収入

(CGT当たり €) フィンランド 67 376 3 642

フランス 14 561 3 443

イタリア 25 129 3 158

ドイツ 16 424 2 593

デンマーク 29 167 1 764 ポーランド 18 659 1 477

ルーマニア 9 768 1 428

クロアチア 19 262 1 306

表 3.5 – 2002-2006 年期の小型船タイプ建造所の CGT 当たり平均収入 平均船舶サイズ

(CGT)

平均収入

(CGT当たり €) ノルウェー 6 798 3 274

スペイン 5 752 3 132

ポルトガル 7 358 2 706

オランダ 3 869 2 257

大型船タイプにとっては、表3.4で示された結果から高価値の客船の契約の影響は明らかである。

その影響は、ドイツとデンマークの平均価値の違いにおいて最も明瞭である。ドイツのプロダク トミックス(製品組み合わせ)においてはコンテナ船に加えて客船があるために、作業が大型コ ンテナ船に集中しているデンマークよりも、CGT当たりの価値が大幅に高い。ポーランド、ルー マニア、クロアチアなどの低コスト国における低い平均価値も、この表から明らかである。小型 船部門では、グループで唯一の高コスト国のノルウェーの平均作業価値が、他と比較すると高い ことが表3.5により明白である。

簡潔に言えば、賃金コストが高い国がより競争で優位に立つための一つの方策は、個々の作業単 位に対して高い金額をチャージすることである。この意味において、欧州で客船を建造すること は特に重要である。客船は、ここで論じられる他の戦略以上に、欧州造船産業の持続可能性につ いての最重要な要素となりうる。

3.4 造船助成

造船業に対する直接補助金は現在、一連の造船指令と、2005年3月までに受注され、2008年末 までに引き渡される一部のタイプの船舶を対象としたいわゆる暫定的防衛メカニズム(TDM)の 失効とともに終了した。2006年秋季の「国家助成スコアボード(State Aid Scoreboard)」レポ ート16は、「造船に対する国家助成総額は 2001-2003 年期の平均 7 億 3000 万ユーロから 2003-2005年期には平均5億8300万ユーロに落ち込んだ」と指摘している。2005年には、推定 で2億6400万ユーロが、主としてドイツ(EU全体の28%)、ポーランド(17%)、オランダ(15%)、 イタリア(11%)の造船部門に供与された。TDM の影響は依然この数値に現れているが、この 助成を受けた船舶が手持ち工事量から抜けていくにつれて、当該影響はさらに減少する見込みで ある。

造船国家助成に関するEUフレームワークのもとで、加盟国は限定的な助成を、研究・開発・イ ノベーションのために供与することができる。この助成は、イノベーションの余地の大きい、よ り複雑なタイプの船舶建造に最大の利益をもたらす。欧州では、これは、より複雑な小型船を建 造するオランダ(ノルウェーはEU規則に拘束されていないため本セクションでは扱われていな い)や、フィンランド、ドイツ、フランス、イタリアの造船所に最大の利益をもたらしている。

船種の複雑性のおおまかな目安は、平均CGT係数を見ることによって得られる。船舶のサイズ が同じ場合、CGT係数が高いほど複雑性が高い。表3.6と3.7は大型船建造所と小型船建造所の 最近の手持ち工事における平均CGT係数を示している。

16 Brussels、11.12.2006、COM(2006)761 Final。

表 3.6 – 大型船造船所の平均 CGT 係数(2007 年 10 月時点の手持ち工事)(出典:ロイド統計)

平均CGTファクター フィンランド 1.13

フランス 1.25

イタリア 1.22

ドイツ 0.96

デンマーク 0.59 ポーランド 0.85 ルーマニア 0.76 クロアチア 0.67

表 3.7 – 小型船造船所の平均 CGT 係数(2007 年 10 月時点の手持ち工事)(出典:ロイド統計)

平均CGTファクター ノルウェー 1.95

スペイン 1.36

ポルトガル 1.25

オランダ 1.57

これらの表から、大型船造船所については、客船を建造する国の平均CGT係数が非常に高いこ とがわかる。ドイツにおける客船とコンテナ船の結合は係数を減少させ、大型船のみを建造する デンマークでは、平均係数はさらに減少する。小型船タイプについは、ノルウェーの平均係数が 他の生産国を大幅に上回っている。

EUの情報リソースによると、次の助成計画(イノベーション助成)がこれまでに承認された:

1. 2005年2月、ドイツの造船所に4年間で総額2700万ユーロの国家助成。

2. 2005年3月、フランスの造船所に6年間で年間2500万ユーロの国家助成。

3. 2005年3月、スペインの造船所に2年間で総額2000万ユーロの国家助成。

4. 2006年、オランダの造船所に3年間に年間2000万ユーロの国家助成。

5. 2007年4月、イタリアの造船所に2009年12月31日を期限として年間総額3000万ユーロ の国家助成。

ドキュメント内 Microsoft Word - 高速船-表紙.doc (ページ 157-167)