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給与水準

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第二部 欧州主要造船グループのミクロ経済分析

3. 労働コストに関する詳細分析

3.2 給与水準

多くの国について、造船業界の給与水準は、ジュネーブの国際金属労働組合連盟

(IMF)が発表する情報 6から推測することができる。最新の情報は 2005年のも のである7

2005年の欧州諸国における造船および船舶修繕業の労働コストの概要を表3.1に まとめた。労働コストについては、以下の 3種を表示した。

1.手取り給与: 従業員負担分の税金・社会保険料等を控除後、従業員が受け取 る額

2.現金給与総額: 従業員負担分の税金・社会保険料等を控除前の、従業員が受

6 「The purchasing power of working time, 2006」

7 当時の為替レートを使い米ドルに換算されており、統計の取り扱いには注意が必要。

け取る額

3.総労働費用: 現金給与総額と雇用主負担の法定福利費を含めた、雇用主が支 払う全額

表には平均契約勤務時間も表示されている。これは、残業を除いた週当りの通常 の勤務時間である。

表 3.1-2005 年の欧州における造船及び船舶修繕業の労働コスト概要 国名 現 金 給 与 総

額(時給・米 ドル)

手 取 り 給 与

(時給・米ド ル)

総 労 働 費 用

(時給・米ド ル)

週 あ た り の 平 均 契 約 勤 務 時 間 ( 時 間)

ドイツ 28.82 23.02 34.61 35

ノルウェー 30.28 27.97 34.55 37.5

フランス 23.64 18.32 34.28 35

フ ィ ン ラ ン ド

( ホ ワ イ ト カ ラー)

25.17 23.51 31.44 37.58

スペイン 20.59 19.27 26.88 409 フ ィ ン ラ ン ド

( ブ ル ー カ ラ ー)

20.35 19.05 25.24 36.6

イタリア 17.05 15.49 23.01 40

ベルギー 14.70 12.77 20.65 38

キプロス 13.54 12.11 15.51 NA

ギリシャ 8.58 6.43 8.58 40

マルタ 7.71 6.94 8.48 40

クロアチア 5.96 4.77 6.99 NA

ポルトガル 5.62 5.00 6.92 40

ポーランド 4.81 3.91 5.81 40

この統計にはデンマークとオランダの労働コストは含まれていない。このため、

8 これは契約上の時間数である。フィンランドのホワイトカラーは実質で週に約 40.5 時間働く。

9 法律上の労働時間は週 40 時間だが、実際には団体協約によって労働時間は平均 38.5 時間とな っている。

別の統計を表 3.2 に示す。データは 2005 年 4 月に行なわれた「欧州労働コスト 調査」(資料:http://www.mercerhr.com/)から取った。ここでは、福利厚生費が 以下の 2 つに分けられている。

①義務的福利厚生費 - 法律や団体協約に従って雇用主が支払う福利厚生費

②自主的福利厚生費 - 退職金、死亡・傷害保険などの法定外の福利厚生費

表 3.2-2005 年の年間労働コスト(単位:ユーロ)

国名 給与 社 会 保 険 料

義 務 的 福 利厚生費

自 主 的 福 利厚生費

合計

デンマーク 45,235 136 - 679 46,050

ドイツ 40,163 8,274 - 2,008 50,445

英国 38,901 2,972 - 4,668 46,541

ベルギー 36,527 12,667 - 4,383 53,577

ス ウ ェ ー デ ン

36,363 11,891 1,273 3,273 52,800

フランス 31,544 10,913 1,529 1,893 45,879

オランダ 29,354 3,023 - 2,348 34,725

イタリア 22,763 7,257 2,023 228 32,271

スペイン 20,605 6,511 - 2,060 29,176 フ ィ ン ラ ン

20,544 1,953 3,489 205 26,191

ギリシャ 17,654 4,936 - 3,354 25,944

ポルトガル 14,123 3,354 - 1,412 18,889 ポーランド 6,495 1,307 65 390 8,257

時間当りのドル建て表示とした最初の表と違い、この表では年額をユーロ建てで 示している。このため、この 2つを直接に比較したり、組み合わせることは難し い。

2 つの情報源に整合性はないが、これらの表を、他の情報源と照合しつつ客観的 に再検討すると、欧州の主要な造船国における 2005 年の労働コストを、次のよ うにランク分けすることができる。1 時間当りの推定労働コスト(米ドル表示)

を合わせて示す。

①高労働コスト国(1時間あたり 30ドル超):デンマーク(34.26ドル)、ドイツ

(34.61ドル)、ノルウェー(34.55ドル)、フランス(34.28ドル)10

②中労働コスト国(1時間あたり 20ドルから 30ドル):スペイン(26.88ドル)、

イタリア(23.01ドル)、フィンランド(25.24ドル)、オランダ(25.84ドル)

③低労働コスト国(1 時間あたり 10 ドル以下):ポーランド(5.81 ドル)、クロ アチア(6.99ドル)、ルーマニア(データなし)

これらは 2005 年の数値である。現在のコストについての推測値は、賃金コスト の上昇について検討した上で、次のセクションに示す。

IMFの情報を使うことによって、産業界全体の平均賃金水準と造船業の雇用コス トを推定・比較することができる。2005 年についての比較を図3.1 に示す。

0%

20%

40%

60%

80%

100%

120%

140%

160%

Romania Cyprus Malta Spain Croatia Norway Sweden Belgium Finland (white collar) Italy Finland (blue collar) Germany

図 3.1-2005 年時点での全産業平均と造船業の賃金水準比較(100%=全産業平均)

ある国では平均値よりも高い賃金が支払われているが、他ではそうでないという ように、かなりのばらつきがある。この違いは主に、対象となった国の経済状況、

特に、その国の主要産業が何であるかによると思われる。例えばキプロス、クロ アチア、スペイン、マルタなどでは人口の多くが比較的賃金の低い観光業などに 従事しており、工業部門では労働者が高い賃金を支払われる傾向にある。ルーマ ニアでは経済の大部分が低賃金の農業で占められており、造船業では比較的良い 給与水準を得ることができる。より発展した国では、造船業界の賃金は全産業平

10 フランスには、賃金が比較的低いわりに義務的な福利厚生費が高い特色がある(表 3.1 を参照)。

週あたりの労働時間も短く、これは現在、同国における争点となっている。

均と同等かそれ以下になる傾向にあり、フィンランドとドイツで最も低い。これ は先進国においては重工業以外に高い賃金を得ることのできる部門があることが 原因と思われる。ドイツではさらに外国人労働者の利用(以下のセクション3.4.1 を参照)と造船業における低コストの旧東独の影響が大きいと考えられる。

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