• 検索結果がありません。

自治体における民間賃貸住宅施策の実態

第5章 自治体における民間賃貸住宅施策の実態と課題

3 自治体における民間賃貸住宅施策の実態

(1) 自治体における主要な住宅施策の内容

自治体が講じている主要な住宅施策について把握するため、業務量が多い順注3(第 1~5 番)の施策内容注4及び当該施策の業務量の住宅施策全体の業務量に占めるウエイトついて の質問に係る業務量が1番目に多い施策の回答結果は、表 5-2 のとおりである。

公営住宅施策をあげる自治体が全自治体の 8 割超あり、各自治体区分でみても、7~8 割 を占める。また、業務量のウエイトも、全自治体でみて 6 割超となっている。なお、公営住 宅施策の内容としては、維持修繕を含む公営住宅の管理が多くなっている。都市住宅学会関 西支部 1995 の調査において、最も重点を置いている政策として公営住宅施策を挙げる市町 村が回答市町村の約 6 割という当時の実態注5と同様に、(質問の内容が少し異なるところが あるが)公営住宅施策が自治体における住宅施策において圧倒的にメインな施策であるこ とは変わっていない。

業務量が 2 番目に多い施策の回答結果は、順に、耐震化促進施策、空家施策、定住促進施 策、リフォーム促進施策となっており、表 5-2 に掲げた5施策が、自治体における主要な住 宅施策ということができると考えられる。

他方、業務量が第 1 番~5 番目に多い施策として「民間賃貸住宅施策」をあげた市町村は 8 市町村に限られる。8 市町村の内訳は、政令市 2 市(業務量が 2 番目と 3 番目)、特別区1 区(同 2 番目)と、4町1村(同 3 番目あるいは 4 番目)であり、4 町 1 村はいずれも北海

109

道内の町村である。上記2のⅰ)の質問への当該自治体の回答を見ると、その内容は、政令 市・特別区では子育て世帯向け賃貸住宅の供給や高齢者等の居住継続のための家賃補助の 施策であり、4町1村では定住促進のための賃貸住宅供給施策となっており、当該自治体の 地域事情を反映して上位施策とされているものと思われる。このように、民間賃貸住宅施策 を主要な住宅施策とする自治体は極めて限られている状況である。

ただし、表 5-2 の公営住宅施策以外の耐震化施策等の4施策には、持ち家だけでなく、民 間賃貸住宅も対象とした施策も含まれると考えられることから、下記(2)において、民間賃 貸住宅施策に関する質問に対する回答と併せて分析することとしたい。

5-2 業務量が1番目に多い施策としてあげられた上位5施策の該当自治体数及び業務量のウエイト

施策

自治体数 業務量のウエイト

全体

n716

全体

n600

政 令

n12

特 別

n15

そ の他市

n346

町村

n343

政 令

n7

特 別

n8

そ の他市

n280

町村

n305

公営住宅施策

601

(83.9) 10

(83.3) 11

(73.3) 295

(85.3) 285

(83.1) 63% 49% 37% 60% 68%

耐震化促進

43

(6.0) 2

(16.7) 1

(6.7) 22

(6.4) 18

(5.2) 11% 9% 6% 11% 10%

空家施策

26

(3.6) 0 0 14

(4.0) 12

(3.5) 8% 3% 4% 9% 7%

定住促進施策

18

(2.5) 0 0 3

(0.9) 15

(4.4) 5% 1% 5% 4% 7%

リフォーム促進

7

(1.0) 0 0 2

(0.6) 5

(1.5) 3% 0% 2% 3% 3%

(備考

1)括弧内は、回答自治体数(各列の n)に占める割合(%)

(備考

2)業務量のウエイトは、各自治体における該当施策のウエイトを平均したもの

(2) 自治体における民間賃貸住宅施策の実施状況及び内容

民間賃貸住宅施策についての上記2のⅰ)の質問への回答結果は、表 5-3、5-4 のとおりで あり、次のような実態が指摘できる。

ⅰ)表 5-3 のように、民間賃貸住宅施策を講じている市町村は、全体でみると 2 割程度と、

限られたものとなっている。自治体区分別にみると、民間賃貸住宅施策を講じている自治 体の割合は、政令市、特別区においては 9 割程度と高いが、他方で、その他市では 2 割程 度、町村では 1 割程度と低く、取組みに大きな差が見られる注6

ⅱ)施策類型でみると(表 5-4)、まず、入居者負担軽減策、供給促進策を講じている自治体 が(相対的に)多いが、供給抑制・調整策、管理適正化策を講じている自治体は少ない点 がわかる。

次に、具体的な施策内容を自治体区分に着目しながらみると、次のような点が指摘でき る。

・供給促進策では、民間賃貸住宅の建設・リフォーム全般への助成が多く、特に町村では、

その施策のウエイトが高い注7。他の施策は、高齢者居住安定、耐震対策、定住促進等、

目的あるいは対象を特定した施策となっている。その中では、国の制度(高齢者向け賃 貸住宅、地域優良賃貸住宅、耐震改修助成等)に基づく建設助成の取組みが多い。

・入居者負担軽減策では、上記と同様に、高齢者向け賃貸住宅等の国の制度に基づく家賃

110

助成の取組みが多いが、子育て・新婚世帯や定住世帯への家賃助成も、その他市・町村 を中心に講じられている。

・供給抑制・調整策では、賃貸住宅の建設調整(一定戸数以上の集合賃貸住宅を建設する 際における自治体へ事前届出や自治体による指導等)が、特に特別区で多く講じられ ている。

・賃貸住宅供給・管理業に対する取組みを講じている自治体はみられなかった。

ⅲ)自治体における住宅施策における民間賃貸住宅施策の位置づけ、特に、持ち家施策と の関係に関しては、今回の調査で民間賃貸住宅施策の具体的内容を把握した結果、表 5-4 で示すように、(公営住宅施策を除く)表 5-2 に掲げる主要施策に関して、民間賃貸住 宅についても講じられていることがわかり(主なものとしては、表 5-4 の網掛けした施 策)、自治体における住宅政策が、必ずしも持ち家政策中心とはなっていないといえる。

5-3 民間賃貸住宅施策を講じている市町村数

市町村全体 自治体区分別

政令市 特別区 その他市 町村

(20.4%) 153 14

(93.3%) 15

(88.2%) 79

(21.7%) 45 (12.7%)

(備考)括弧内は、自治体区分ごとの回答自治体数(表

5-1)に占める割合

111

表 5-4 施策類型別に見た具体的な施策内容と該当市町村数

施策内容 市町村全

自治体区分別 政令市 特別区 その他

町村

供給促進策

63

(8.4) 9

(60.0) 5

(29.4) 26

(7.1) 23 (6.5)

特定優良賃貸住宅〔建設助成〕

1 0 1 0

高齢者向け賃貸住宅〔建設助成〕

4 2 2 0

地域優良賃貸住宅〔建設助成〕

0 0 4 0

耐震改修助成

6 0 2 2 2

建設・リフォーム全般助成

22 3 1 3 15

まちなか住宅建設助成

6 0 0 6 0

定住促進住宅建設助成

6 0 0 1 5

子育て支援住宅建設助成

3 2 0 1 0

三世代同居住宅建設助成

1 0 0 1 0

若者(世帯)居住支援

2 0 0 1 1

高齢者向け住宅〔独自〕

3 2 1 0 0

空家利活用助成

3 0 0 2 1

その他

3 1 0 2 0

供給抑制・調整策

19

(2.4) 5

(33.3) 6

(35.3) 6

(1.6) 2 (0.6)

サ高住登録・指導監督

5 4 0 1 0

賃貸住宅建設調整

14 1 6 5 2

入居者負担軽減策

92

(12.3) 9

(60.0) 9

(52.9) 56

(15.4) 18 (5.1)

特定優良賃貸住宅〔家賃助成〕

14 7 0 7 0

高齢者向け賃貸住宅〔家賃助成〕

24 7 2 15 0

地域優良賃貸住宅〔家賃助成〕

7 1 0 6 0

民間賃貸住宅家賃補助全般

8 0 2 2 4

ファミリー世帯家賃等助成

4 0 4 0 0

定住促進家賃助成

8 0 0 3 5

子育て・新婚世帯等家賃助成

20 0 1 12 7

三世代同居家賃助成

1 0 0 1 0

ひとり親世帯家賃助成

3 0 0 3 0

高齢者家賃補助

3 1 1 1 0

障害者家賃助成

3 0 0 3 0

まちなか居住家賃助成

4 0 0 3 1

公営住宅入居待機者家賃助成

1 0 0 0 1

住み替え家賃等助成

7 0 6 1 0

入居支援助成(保証料)

2 0 1 1 0

その他

7 0 0 6 1

管理適正化策

10

(1.3) 2

(13.3) 3

(17.6) 4

(1.1) 1 (0.3)

住まい相談

7 2 2 3 0

その他

3 0 1 1 1

「その他」の施策

35

(4.7) 6

(40.0) 7

(41.2) 16

(4.4) 6 (1.7)

空家バンク

11 0 0 6 5

高齢者等の居住安定確保のための入居・

住替支援

9 4 4 1 0

民間賃貸住宅への入居支援

5 2 1 2 0

その他

10 0 2 7 1

(備考

1)括弧内は、自治体区分ごとの回答自治体数(表 5-1)に占める割合(%)

(備考

2)複数の施策を講じている自治体があるので、施策を講じている自治体数の合計は回答自治体数

と異なる場合がある。

(備考

3)表中の網掛けした施策については本文ⅲ参照

112

(3)民間賃貸住宅施策が講じられていない原因・背景

回答が必ずしも多くなかったが、ノウハウ不足、人員不足という回答が多く、また、民 間の住宅に行政が関与する理由が乏しいという回答もあった。「その他」では、民間事業者 との連携が取れていない(3 自治体)、住民からの相談・要望がない(2 自治体)等があっ た。

5-5 民間賃貸住宅施策が講じられていない原因・背景

施策内容 市町村全

自治体区分別 政令市 特別区 その他

町村

ノウハウ不足

9 2

2 5

人員不足

14 2 1 7 4

予算不足

4

2 2

行政関与の理由乏しい

4

4

その他

9

1 6 2

40 4 2 21 13

(4)民間賃貸住宅施策の位置づけ:公営住宅施策の関係に関する分析

(1)(2)でみたように、その他市・町村においては、公営住宅施策は講じられているが、民 間賃貸住宅施策を講じている自治体の割合は低い。その点から、その他市・町村において民 間賃貸住宅施策があまり講じられていない原因として、公営住宅施策が積極的に講じられ ている自治体においては民間賃貸住宅施策があまり講じていないのではないか、すなわち、

公営住宅施策と民間賃貸住宅施策は補完関係にある施策として講じられているのではない かという仮説が想定され、ここでは、公営住宅施策と民間賃貸住宅施策の関係について分析 することとしたい。

その他市・町村において、業務量に関する質問に回答のあった自治体 689 のうち、業務量 が多い(第 1~5 番)施策として公営住宅施策をあげた自治体は 625 あったが、このうち、

民間賃貸住宅施策も講じている自治体は 105(16.8%)、民間賃貸住宅施策を講じていない自 治体は 520(83.2%)であった。この結果をみると、確かに、公営住宅施策を講じている自治 体において、民間賃貸住宅施策を講じている割合が低いが、この割合は、表 5-3 の民間賃貸 住宅施策を講じている「その他市」・町村の割合と同程度のものであることから、民間賃貸 住宅施策に関する全般的な傾向を反映したもので、公営住宅施策を講じているか否かが民 間賃貸住宅施策を講じているか否かに関係していると判断できるものではないと思われる。

また、公営住宅施策が講じられているといっても、前述のように、その内容は、公営住宅 の管理業務が多く、アンケート調査の回答をもって、公営住宅の整備等を含む公営住宅施策 の実施の水準を反映しているものとは言えないと考えられる。そこで、公営住宅施策の実施 の指標として、公営住宅率(当該自治体における公営住宅数/居住世帯のある住宅総数注8) を用いて、民間賃貸住宅施策の実施の有無との関係をみることとしたい。公営住宅率が高い 自治体においては、借家へのニーズが一定程度充足され、民間賃貸住宅施策の実施の必要性 が低くなるのではないかという仮説が想定され、公営住宅率と民間賃貸住宅施策の実施の 有無について、ロジット分析を行ったが、表 5-6 上段のように有意ではなかった。

ただ、公営住宅率における公営住宅数は、当該市町村区域に存する公営住宅の総数、すな