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第5章 自治体における民間賃貸住宅施策の実態と課題

5 まとめ

以上、本章では、法規制の対象とされておらず、他方で、サブリース業において借上げ賃 料減額や契約解約のトラブルが生じている賃貸住宅管理業についての規制制度のあり方に ついて、賃貸住宅のサブリースにおける法的トラブルの裁判例の分析を行うとともに、国に おいて任意制度として試行されている賃貸住宅管理業者登録制度の評価を行い、構築すべ き規制制度について、規制の保護法益や、宅地建物取引業法など他の規制制度との整合性の 観点も含め検討を加え、以下の内容を明らかにした。まず、裁判例の分析により、サブリー ス業者が借地借家法における借主として保護を与えられるなかで、サブリース契約の解約 等のトラブルに関する確たる裁判規範がない状況を明らかにし、貸主の利益保護、トラブル の未然防止のためには、裁判による事後解決等では十分ではなく、貸主と業者の情報格差を 是正するための賃貸住宅管理業者への規制制度の構築の必要性を指摘した。その上で、規制 制度の具体的内容について、賃貸住宅管理業を営む際の届出等の義務付け、賃貸住宅管理業 者による専門的資格者の設置、借上げ賃料減額のリスクを含めた重要事項の貸主への説明 の義務付けなど、事業規制・業務規制の両面にわたる規制制度を提示した。

他方で、現行の賃貸住宅管理業者登録制度を、そのままの形で規制制度に置き換えること や、賃貸住宅管理業に係る資格制度だけを法制度化することは、適当ではないことを示した。

更に、入居者(転借人)への賃貸住宅管理業務についての説明義務を課する規制制度は、貸 主に対する規制制度として検討することが適当であることも明らかにした。

これらの点で、本章の研究は、賃貸住宅管理業への行政関与のあり方に関する議論への材 料を提供し、検討の基礎的な整理に資するものであると考える。

今後は、本章でも言及した賃貸住宅管理業の実態や問題状況について更に実態把握・検討 を進め、より詳細な制度設計ができるよう、検討を進めていく必要があると考える。

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1 なお、経済センサス基礎調査では、賃貸住宅管理業者は、「不動産管理業」(ただしビル管理業、マンシ ョン管理業等も含まれる)や「不動産代理業・仲介業」に含まれる業者が多いと考えられるが、平成 26 年調査では、それぞれの事業は、全国で、事業主体で 27,133(事務所数では 51,643)、41,655(事務所 数では 49,538)あるとされている。

2 国土交通省「賃貸住宅管理業者登録制度に係る検討委員会」資料より引用

3 「「レオパレス問題」で浮き彫りになる将来リスク」金融財政事情(2012.8.13 号)。この問題に関して は、2013 年 4 月 15 日衆議院予算委員会第一分科会においても取り上げられたところである。また、国民 生活センター発行の『国民生活』(2014 年 8 月号)では「不動産サブリース問題の現状」という特集記事 が組まれ、NHKクローズアップ現代でもサブリースをめぐるトラブルが報じられている(2015 年 5 月 11 日放送の「アパート建築が止まらない」)。

なお、ここで取り上げられた株式会社レオパレス 21 は、全国賃貸住宅新聞 2016 では管理戸数ランキ ングで3位の大規模業者である一方、賃貸住宅管理業者登録制度に登録していないと見受けられる。

4 ①最判平成 15

10

21

日民集

57

9

1213

頁(センチュリータワー対住友不動産事件)、②最判 平成

15

10

21

日判時

1844

50

頁(住友不動産対横浜倉庫事件)、③最判平成

15

10

23

日判

1844

54

頁(個人対三井不動産販売事件)④最判平成

16

11

8

日判時

1883

52

頁(長谷工 ライブネット対三和リール事件)、⑤最判平成

20

2

29

日判時

2003

51

頁。

5 事業用物件におけるサブリースの裁判例を見ると、賃貸人からの更新拒絶・中途解約が認められない事

例がほとんどである(太田 2014a・196頁参照)。

6 学説では、賃貸人の更新拒絶について、ⅰ)最高裁平成 15

年判決の考え方に基づいて、契約の基礎あ

るいは前提となっている重要な事情に鑑み、衡平の見地から「正当事由の存否」を総合判断したうえで、

更新拒絶を認める判決が下される可能性が強いとするもの(下森

2004・2

頁)、ⅱ)最高裁平成

15

年判 決で示された尺度は、バブル崩壊という予期しない事態に対処するための賃料減額請求の問題に関する ものであり、更新拒絶の正当事由の判断にあたって契約締結時の事情等を特段に考慮する理由はなく、

当事者双方の使用の必要性等の通常の「正当事由」の枠組みで判断することで足りるとするもの(本田

2010・86—87

頁)があり、見解が分かれているところである。

7 その他、全国賃貸不動産管理業協会において、「賃貸不動産管理標準化ガイドライン」(2014 年 6 月)が 策定されているが、その内容は、賃貸不動産管理に関係する者が管理に際して行うべき標準的な事項を 取りまとめたもので、行政関与について直接言及しているものではない。

8 2015 年 10 月~2016 年 2 月、座長中城康彦明海大学不動産学部長。なお筆者も委員として参加してい る。

9 なお、規制制度に関して参考にみておくと、戦前の県等による土地家屋管理周旋営業取締規則では、家 賃等の取立・保証等を業とする土地家屋管理業について、手数料保証料の報酬額等の許可を受けること とされていた(ただし、県等の規則に基づくもので、必ずしも全国的に行われていたものではない)。

10 一般的な制度設計の方法としては、太田 2015・96~98 頁参照

11 倒産等による敷金等預り金の保全については、日本賃貸住宅管理協会において預り金保証制度が設けら れる等、業界での取組みが行われており、また、取立行為については、現状では、以前のような大きな問 題は生じていないことから、ここでは検討の対象とはしていない。

12 詳細については太田秀也「宅地・建物の賃貸借における重要事項説明」(松尾弘・山野目章夫編『不動 産賃貸借の課題と展望』(商事法務 2012)208 頁参照)

13 なお、貸主に対する規制については、貸主は零細事業者が多く、賃貸経営のノウハウも低く、経営主体 も多いため、貸主に説明義務を課すのは、過度の規制であり、また現実的でもないという見解が想定さ れる。しかしながら、貸主は賃貸住宅経営を事業として行う者であり、本来、そのようなノウハウも備

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えるべきであり、当該見解は本末転倒であると思われる。さらに、貸主に説明義務を課したとしても、

賃貸住宅管理業者に管理を委託している場合は、実際に説明するのは、当該賃貸住宅管理業者であると 思われ(定期借家契約における契約更新がない旨等の説明も同様)、貸主に過度の負担を課する非現実的 な規制とは必ずしも言えないと考えられる。

14 ここでは立ち入らないが、賃貸住宅管理業者の財政基盤等の審査を行うような規制とするなら、登録、

免許などとなり、それが必要ないなら届出で足りると考えられる(私見では、届出で足りるのではない かと思われる)。

15 最判平成 15 年 10 月 21 日民集 57 巻 9 号 1213 頁・判タ 1140 号 68 頁

第7章

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