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第2章 民間賃貸住宅の供給・管理及び政策の展開

第1節 近代以降の民間賃貸住宅市場・民間賃貸住宅政策の展開

7 戦後の民間賃貸住宅政策

ここでは、戦後の民間賃貸住宅政策、特に、民間賃貸住宅の供給・管理に関する政策に ついて、その変遷と主な政策の内容について、整理分析する。

我が国の戦後の住宅政策は、持家取得に対する支援を第一の柱とし、自力では持家取得 のできない層に対し公的賃貸住宅の直接供給注13を行うという施策体系を採用してきたと ころで、民間賃貸住宅は住宅施策の柱として前向きに取り上げられることは少なかったと される(山島

1998・27

頁)注14

そうした中でも、民間賃貸住宅に関しても、一定の政策が採られてきたが、当初は、木 賃住宅等低質な住宅の改善に重点が置かれた(山島

1998・28

頁)。その後、1970年代以 降に、市街化区域内農地(A農地・B農地)の固定資産税の宅地並み課税(1973年)とも あいまって、土地所有者等による賃貸住宅の供給を促進する政策が採られた(後述の公 庫・特定土地担保賃貸住宅融資、公団民賃、農住等)。また、地価高騰による大都市地域 での住宅取得困難等の状況の下、中堅所得者向けの賃貸住宅の供給を促進する政策が採ら れた(後述の特優賃)。1990年代以降は、高齢者や障害者、子育てファミリーなど、対象 を絞った住宅の供給を円滑化する施策がとられた(国土交通省

2012)。

住生活基本法制定(2006年)等により、住宅政策が市場重視の政策等へ移行する中で、

高齢者等住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給促進策等、住宅セーフティネット機能 の強化の施策が講じられている。

また、政策対象に着目した政策類型でみると、㋐民間賃貸住宅供給事業者への政策と、

㋑民間賃貸住宅入居者への政策、加えて、㋒民間賃貸住宅市場(供給・管理等)の環境整 備に関する政策に分けることができるが、㋑に関しては、海外諸国で導入されているよう な一般的な家賃補助の政策はとられておらず、㋐の政策により供給される賃貸住宅への入 居者に対する家賃負担の軽減措置が主なものとなっている。

以下、(1)~(4)において、主に㋐の政策について、政策の主体、手法別に内容を みていくが、その特徴としては、農地等土地所有者による賃貸住宅の供給を促進するため の政策が大きな部分を占めている点をあげることができる。

あわせて、(5)において、㋒の政策についてふれる。

加えて、(6)において、自治体における住宅政策についてもみておくこととしたい。

29

(1)住宅金融公庫等による賃貸住宅建設融資

ⅰ)1950年に設立された住宅金融公庫では、当初、住宅協会等公的団体向けの融資

(「一般賃貸住宅融資」(①))に限定されていたが、1954年度に、土地の所有者に土 地を担保に提供することを条件に賃貸住宅建設資金の融資を行う「土地担保賃貸住宅 融資」(②(通称「公庫土賃」))が創設された。この貸付対象は、当初は法人に限定 されていたが、1965年度から個人も対象となった(また、1974年度からは、土地の 所有者・地上権者だけでなく、借地権者も対象に追加された)。

1973

年度には、三大都市圏の特定市街化区域内農地の宅地化促進を目的とした「特 定土地担保賃貸住宅融資」(③)、1989年には、都市部における小規模な農地等の低・

未利用地の活用による賃貸住宅供給を促進する「小規模敷地活用型賃貸住宅融資」

(レント・ハウスローン)(④)が創設された。

(そのほかに、1983年度には、第一種住居専用地域における賃貸住宅建設を目的 とした「タウンハウス賃貸住宅融資」が設けられている。)

(備考)その後、①は公社賃貸住宅融資、②③はファミリー賃貸住宅融資・農地転用賃貸住宅融 資、あるいは民間賃貸住宅融資と呼ばれた。

ⅱ)②③④については、1989年度以降、サブリース事業による賃貸住宅建設も追加さ れた注15

ⅲ)住宅金融公庫は、2007年

4

月に独立行政法人住宅金融支援機構に再編されている が、同機構による民間賃貸住宅向け融資は、子育て世帯向け省エネ賃貸住宅建設融 資注16、まちづくり融資、サービス付き高齢者向け賃貸住宅建設融資、省エネ賃貸住 宅リフォーム融資・賃貸住宅耐震リフォーム融資等、政策目的を限定したものにな っている。

2015

年度における住宅金融支援機構の賃貸住宅向けの貸付契約実績は、8,362 戸、86,345百万円となっている。

(2)日本住宅公団等による賃貸住宅供給促成施策

日本住宅公団等(※)は、自ら建設・管理する賃貸住宅のほかに、民間賃貸住宅 の供給促進のための施策を推進してきた。

※日本住宅公団(1955~1981)、住宅・都市整備公団(1981~1999)、都市基盤整備公団

(1999~2004)。2004

7

月に、独立行政法人都市再生機構に再編。

その実績は、都市基盤整備公団解散時点(2004年

6

30

日)で以下のとおりと なっている(都市基盤整備公団史刊行事務局編

2004・142

頁)(なお、分譲住宅は

301,096

戸あり、あわせて合計

1,549,932

戸となっている)。

・賃貸住宅

853,167

30

(団地住宅

531,515

戸、一般市街地住宅

65,129

戸、面開発市街地住宅

256,523

戸)

・賃貸用特定分譲住宅

395,669

(民営賃貸用特定分譲住宅

164,004

戸、給与用特定分譲住宅

231,665

戸)

ここでは、民間賃貸住宅の供給促進策の中核であった「民営賃貸用特定分譲住 宅」と、サブリース事業である「特別借受賃貸住宅制度」についてみていきたい。

ⅰ)民営賃貸用特定分譲住宅制度(通称「(公団)民賃」)

同制度は、1974年度創設されたもので、原則として大都市圏及び地方中心都市に おいて貸家経営を行おうとする土地所有者等に対し、公団が賃貸住宅を建設し、長 期の割賦で譲渡するものである。制度概要は以下のとおりである。

〔制度概要〕

・譲渡対象者:貸家経営を行おうとする土地の所有権・借地権を有する個人・法人

・建設地域:原則として京浜、京阪神、中京及び北九州・福岡圏の既成市街地及び その周辺地域並びに地方中心都市

・建設敷地面積:2000㎡ (既成市街地の場合は

1000

㎡ 程度)以上

〔1種住専の場合、3階建1棟

12

戸を最低2棟建設する想定〔日本住宅公団史

78

頁〕〕

・公団充当資金の償還期間:35年(住宅)(1978年度までは

30

年)

(※第3期住宅建設5箇年計画(1976年度~1980年度)の発足を契機に、地方都市の人口及び 世帯の増加に対応するため、賃貸住宅の経営が可能な地域であれば上記以外の地域でも建設 できる、敷地面積の要件を緩和して12戸程度以上の住宅建設が可能な敷地面積があれば建 設できる等の要件緩和がされた。)

〔供給実績〕

1974

年度

1,227

戸から毎年戸数を増やし、1979年度

13,328

戸でピークとな った(その後、経営不振となる賃貸住宅も生じた(会計検査院の決算検査(1981 度)でも指摘あり)。

累計

164,004

戸(2004年

6

30

日時点)

(都市基盤整備公団史刊行事務局編

2004

による)

ⅱ)特別借受賃貸住宅制度

同制度は、1988年に創設されたもので、(大都市圏を中心に賃貸住宅用地が不 足していたことに対応し)住宅を賃貸する事業を行おうとする土地所有者の土地 に住都公団が住宅を建設し、当該住宅を土地所有者に割賦により譲渡した上で、

これを住都公団が一定期間賃貸住宅として借り受けるものである。制度概要は以 下のとおりである。

〔制度概要〕

・借受期間:20年(1回に限り更新可)

31

・割賦金:土地所有者が

35

年の割賦により支払い(繰上返済可)

・借受料:住都公団が住宅所有者に

20

年間支払い

(なお、住都公団は、地価、物価、住宅需要その他の経済事情の変動が あった場合には、住宅所有者との間で借受料の減額についての協議を 行うことができるとされていた。)

〔実績〕

126

団地・6,442戸(2012年度末現在)

(借受住宅として運営している

83

団地・5,291戸と、制度の発足以来

24

年度末 までの間に住宅所有者に返還した

43

団地・1,151戸の合計)

(会計検査院検査結果(2012年度)から引用)

〔その他〕

会計検査院検査結果(2012年度)では、借受住宅として運営している

83

団 地のうち、1団地を除いた

82

団地の全てで赤字が生じ、24年度の収支全体とし ては約

31

億円の赤字(家賃収入約

63

億円、借受料等支出約

94

億円)となって いると報告されている。この原因として、市場家賃の低下に加え、借受住宅に 空家が多いこと(最大の団地で

51.6%、平均で 19.1%)、借受期間の満了前は住

宅所有者と減額協議を行うことが困難である等の制度的な問題も指摘されてい る。

(3)国・地方公共団体による賃貸住宅建設補助(利子補給等を含む)

ⅰ)国の「農地所有者等賃貸住宅融資利子補給制度」(通称「農住」) ・1971年度創設

(根拠法:農地所有者等賃貸住宅建設融資利子補給臨時措置法(1971年))

・大都市地域等の住宅不足の著しい地域において、居住環境が良好で家賃が適正な賃 貸住宅の供給を促進するとともに、水田の宅地化を図ることを目的とし、農地所有 者等がその農地を転用して行う賃貸住宅の建設に要する資金の融通について政府が 利子補給を行う制度

・三大都市圏の既成市街地、近郊整備地帯及び都市開発区域等内の市街化区域におい て、一定規模の賃貸住宅を行う農地等の所有者に対する利子補給(利子補給期間

10

年)

ⅱ)国・自治体による「特定賃貸住宅建設融資利子補給補助制度」(通称「特賃」)

・1973年度創設

(根拠:特定賃貸住宅建設融資利子補給補助制度要綱(1973年建設省通知))