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付録 2

- 38 - 気持ちの良い

好きな 良い 楽しい 調和して

リアリティのある はっきりした 広い 迫力のある 立体的

静かな 静的な 安定 違和感のない くつろいだ 日常的

冷たい 暗い 人工的な

弱い 小さい 遅い 複雑な 重い 連続的 全体的な

1__2__3__4__5 1__2__3__4__5 1__2__3__4__5 1__2__3__4__5 1__2__3__4__5

1__2__3__4__5 1__2__3__4__5 1__2__3__4__5 1__2__3__4__5 1__2__3__4__5

1__2__3__4__5 1__2__3__4__5 1__2__3__4__5 1__2__3__4__5 1__2__3__4__5 1__2__3__4__5

1__2__3__4__5 1__2__3__4__5 1__2__3__4__5

1__2__3__4__5 1__2__3__4__5 1__2__3__4__5 1__2__3__4__5 1__2__3__4__5 1__2__3__4__5 1__2__3__4__5

ID._____

気持ちの悪い 嫌いな 悪い つまらない ばらばらな

リアリティのない ぼんやりした 狭い

迫力のない 平面的

騒がしい 動的な 不安定 違和感のある 緊張した 非日常

温かい 明るい 自然な

力強い 大きい 速い 単純な 軽い 断片的 部分的な 映像についてあてはまると思う数字に丸をつけてください。

例:良い 1_2_

3 _4_5 悪い

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3)1.異なる空間的解像度の映像観視時における主観的臨場感と 眼球運動特性の検証

「目的」

超高精細(4k)映像に関する臨場感の検討は江本ら(2007)による報告があるが、主観 報告以外の指標は重心変化などの他はまだ報告が少ない。ここでは超高精細映像に対し て抱く臨場感の指標として眼球運動データの有効性を検討する研究への予備的な実験 を行った。視線情報は人がシーンを認識する際に注意を向けている対象を示すとされて おり、視覚情報の物理的な特性の解析からその位置を特定しようという「顕著性マップ」

が提案されている(Itti, Koch, & Niebur, 1998)。このことから本研究では、映像の解像度 という物理的な視覚情報特性の違いによって引き起こされる映像の見方の違いが眼球 運動に反映される可能性を検討する。一方で、視線情報は同じ画像を見た場合でも心的 な課題によって異なることが知られており、コンテンツ自体の特徴だけではなく、観視 する人間の経験や知識、嗜好、興味といったトップダウン要因の影響も受けることが報 告されている(Henderson, 2003)。そのため解像度の違いによる観視者の映像への印象 の変化が、画像の見方にも影響を及ぼし視線に反映されることも考えられる。以上の可 能性を検討する目的のために本実験では高精細度(HD)映像観視時と標準(SD)画質映像 観視時の眼球運動測定を行い、眼球運動データと主観的な映像への印象報告に関して映 像の解像度による異なる特徴が示されるかを検討した。

「方法」

映像観視者:成人4名(うち男性2名)が参加した。

映像提示装置:東芝製デジタルハイビジョン液晶テレビREGZA55X3(幅121.0cm、高

さ68.0cm、対角138.8cm)にPanasonic製ブルーレイディスクプレイヤーDMP-BDT320-K

を接続し、映像を再生した。再生時のフレームレートは30Hzであった。

眼球運動測定装置:トビーテクノロジー製眼球運動測定装置Tobii X120を使用し、眼球 運動を測定した。空間的精度は0.5度、サンプリングレートは120Hzであった。

臨場感尺度質問紙:寺本ら(2010)によって作成された映像観視時の臨場感に対する印 象評価項目を使用し、5件法での回答を求めた。具体的な項目内容については付録1に 示した。

提示映像:使用した映像はチーム1B佐藤一彦教授らがOLYMPUS Octavision SH-880™ を使用して撮影した映像作品である”Rの風景”から5種類の映像コンテンツを抜粋し、

それぞれをSD画質(低解像度)映像とHD画質(高解像度)映像に変換した。コンテンツの

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オリジナルはQFHD(3840×2160ピクセル)であった。QFHDからHDへの変換は、NTT アドバンステクノロジーのJPEG 2000リアルタイムコーデック SI-J2KRによるハード ウェア上で行い、HDからSDへの変換は、パソコンによるソフトウェア上で行った。

SD画質の空間解像度は640×480ピクセルであり、HD画質は1920×1080ピクセルだ った。全ての映像観視者が SD、HD 画質の両方を観視したため、観視コンテンツの内 容が一致しないように、各コンテンツをあらかじめ前半と後半に分け、前半部分を使用 したSD映像とHD映像、後半部分を使用したSD映像とHD映像を作成した。各コン テンツの全体的な内容は一致するよう、それぞれのコンテンツの前半部分と後半部分と に分けられた映像内のアイテムや動き、色彩、など映像特性が揃うよう努めた。このた め映像刺激は4 種類(SD前半、SD 後半、HD 前半、HD後半)あり、それぞれをSD 映像についてはDVDに、HD 映像についてはブルーレイディスクに記録した。各映像 観視者はSD映像とHD映像の前半か後半のどちらかを異なる日に観視した。各映像に 含まれる5種類の映像コンテンツとその提示時間はそれぞれ、”馬術”が約53秒、”弓 道”が約39秒、”ダンス”が約47秒、”花と花器”が約78秒、”寺と紅葉”が約73秒、

であった。各コンテンツ間に5秒の黒色画面をはさんでいたため、全ての映像を通して 観視すると約315秒であった。以上の映像編集に関わる作業については全てチーム 1B 石山智弘助教らによって遂行された。

手続き:観視者は液晶テレビ画面を正面に観視できるように座し、画面から110~150cm 離れ、映像の観視を行った。映像観視の際には頭部の運動をできる限り抑えながら、自 由に目を動かし映像中の気になった箇所を見るよう指示された。映像を観視した後で、

映像に関して臨場感を評価させた。加えて、映像を観視中に印象に残ったこと、何を意

図しながら映像を見ていたかを自由記述形式で回答させた。

「結果」

主観的臨場感尺度:図1に各被験者の主観的臨場感得点に関して、SD条件からHD条 件を減じた値を全被験者分で積み上げ加算したグラフを示した。すなわち、HD条件と 比較した時にSD条件が左右の項目のどちらの傾向により偏っているかが示されている。

全被験者でほぼ一貫して同様の傾向が示された項目は「好きな、嫌いな」「はっきりし た、ぼんやりした」「連続的、断片的」であった。それぞれの項目で、HD 映像の方が より、好きで、はっきりしており、断片的なものであるという印象が強かった。

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図1 主観的臨場感得点のSD映像条件とHD映像条件との差

SD映像条件時の得点からHD映像条件時の得点を減じた値を被験者ごとに算出し、積 み上げて示してある。それぞれのバーは、HD 映像条件と比較して、SD 映像条件では 各質問項目対において、観視者の評価がグラフ左右に記されている印象のどちらに偏っ ていたのかを表している。

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自由記述:HD映像に対しての方が人の表情、色、といった物体のディティールへ注目 した回答が多かった。実験ではSDとHDのどちらの映像を観視させるか、前もっての 教示を行わなかったが、SD 映像の方が解像度が荒いということは全ての観視者が感じ ていた。また、空間解像度によらず、動いている物に対しては注意が向くという感想が 多くみられた。

眼球運動データ:眼球運動データの有効計測値が40%を下回った被験者1名に関しては 分析から除外した。液晶テレビ画面全体の範囲内のいずれかを注視していた時間と注視 回数を分析した。注視の基準は60msecsとし、これ以下の時間幅のデータは注視から除 外された。注視同士の時間間隔は75msecsとした。図2と図3には注視時間と注視回数 それぞれについて、HD映像観視時のデータに対するSD映像観視時のデータの差分の 割合を被験者間で平均した値と個人ごとの値を示した。すなわち、値が正の方向へ行く ほど、SD 映像観視時の方がより注視時間が長く、注視回数が多いことを示す。注視回 数に関しては“弓道”や”花と花器”や”神社と紅葉”といった、映像中のアイテムの 動きが少ない映像コンテンツに関して、HD映像に比べて SD映像観視時に多くなる傾 向があった。注視時間では特に個人差が大きく、被験者ごとに傾向にばらつきがみられ た(図2b)。ただし、被験者内では一定の共通する傾向があり、ある観視者では一貫し てSD映像に対して注視時間が長く、他の観視者では逆に一貫してHD観視時に注視時 間が長いという傾向があった。

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図2 SD、HD条件間での注視時間の差分のHD条件に対する割合

(a) コンテンツごとにSDとHD条件での注視時間の差をHD条件に対しての割合とし て計算し、3人の被験者の平均値を示した。正の値にいくほどSD条件での注視時間が 長いことを示す。(b) 注視時間について、被験者ごとに(a)の値を示した。

図3 SD、HD条件間での注視回数の差分のHD条件に対する割合

(a) コンテンツごとにSDとHD条件での注視回数の差をHD条件に対しての割合とし て計算し、3人の被験者の平均値を示した。正の値にいくほどSD条件での注視回数が 長いことを示す。(b) 注視回数について、被験者ごとに(a)の値を示した。

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「考察」

映像を観視した際の主観的な臨場感評価と映像に対する印象を検討した結果、両方の 主観的指標において、空間解像度の異なる映像に対して異なる特徴を記述することがで きた。眼球運動測定の結果からは、映像の注視回数について、映像中のアイテムの運動 性の度合いが低い方が、高解像度映像への注視回数が低下するという空間解像度の違い が示された。このことは空間解像度の異なる映像に対する観視者の映像の見方の違いが 眼球運動情報によって評価できる可能性を示している。

今回の予備的な実験から得られた実験手続きの改善点として、主観的臨場感得点と映 像に対する印象の評定方法に関しては、コンテンツ内容の影響を検討するために、映像 ごとに印象評定を行う必要性が挙げられる。眼球運動の測定の結果からは、注視対象を 明確にすることと合わせて眼球運動計測のより詳細なデータを分析し、主観的な印象評 価得点との相関について検討することが挙げられる。更に、コンテンツ間の映像の長さ を揃えることでコンテンツ同士のデータを直接比較可能にすることも必要である。また、

コンテンツ内容そのものだけでなく、画面の大きさや観視空間の照度といった、観視環 境からの主観的な印象への影響の検討へも発展させて行く必要があるだろう。

今後の研究に使用するコンテンツはチーム1Bとのミーティングを重ねた上で映像の 撮影を依頼し、作成された映像コンテンツを使用する予定である。現在すでにいくつか の撮影済み映像が選定されている。映像の空間解像度に伴う主観的印象と眼球運動特性 の分析を行うことで、映像の物理的特性からの影響を主観的指標と客観的指標の両者か ら検討し、スーパーハイビジョン(4k 映像)といった超高精細映像の撮影時に映像の テーマを明確に表現する手がかりが得られると期待できる。

「文献」

江本正喜・正岡顕一郎・菅原正幸 (2007). 広視野映像システムの臨場感評価,電子 情報通信学会技術研究報告. Cq, コミュニケーションクオリティ, 106(495), 29–34 寺本渉・吉田和博・浅井暢子・日高聡太 (2010). 臨場感の素朴な理解, 日本バーチ ャルリアリティ学会論文誌, 15(1), 7-16

Itti, L., Koch, C., & Niebur, E. (1998). A model of saliency-based visual attention for rapid scene analysis. IEEE Transactions on Pattern Analysis and Machine Intelligence, 20(11), 1254–1259.

Henderson, J. (2003). Human gaze control during real-world scene perception. Trends in Cognitive Sciences, 7(11), 498–504.