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臨場感に関する考察

2.3 総合考察

2.3.2. 臨場感に関する考察

臨場感が身体に引き起こす反応を示すと考えられた心電の結果では,LF/HF 変化率およ び HR 変化率に室内条件の主効果,映像表示条件の主効果,交互作用の全てにおいて有意 な差はみられなかった。また,有意差は認められなかったものの,LF/HF 変化率において 明室条件・暗室条件共に3D条件よりも2D条件のほうが自律神経系の活性化を示していた。

これは渡邊・氏家(2011)による先行研究に反する結果であった。しかしLF/HFとHRの両 方の値において個人差が非常に大きかったこと,刺激映像がコミカルな内容だったため映像 鑑賞中に笑い出してしまい心電図や呼吸曲線に乱れが生じた者もいたことを考慮すると,実 験参加者の人数を増やし,心電の測定環境を整えた上で再度検討する必要があるだろう。

主観指標である臨場感尺度では,迫力因子に 3D 映像の方が迫力がある傾向が 10%水準 でみられた。これは映像が立体的に見えることで「迫力」が増すという3D映像の持つ価値 を示すものである。また,明室条件である2条件よりも暗室条件である2条件の方が有意 差が認められた項目が 8 つ多かったことから暗室条件の方が映像から受ける印象が強かっ たと考えられる。これはValentijn et al.(2010)による先行研究のCAVE条件において感情 強度が強くなるという結果に類似している。しかし,有意差のみられた項目の大半が 4 条

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件全てで同じであったことを踏まえると臨場感は室内条件や映像表示の方式だけでなく鑑 賞した映像の内容に強く影響されている可能性が考えられる。

臨場感に関する結果では,主観指標では3D条件において迫力が増す傾向がみられ,暗室 条件において有意差の認められた項目の数が多かったが,生理指標では有意な差はみられず どちらかといえば2D条件の方が自律神経系の活性化を示していた。本実験では心電の分析 対象を45分間の鑑賞時間の中央の15分間としたが,主観指標の臨場感尺度は45分間の映 像全体の臨場感を問うものであったためそれぞれの指標が示す結果に相違が生じた可能性 がある。刺激映像のシーンごとに分析対象を細かく区切り映像鑑賞中の心電の変化を分析す るとともに,シーンごとの主観的な臨場感を評価させるなど,生理指標と主観指標の測定対 象を対応させることで臨場感の影響が明確に測定できるのではないだろうか。

引用文献

林美里(2011). 3次元映像の鑑賞が生体に与える心理・生理的影響 2011年度卒業論文 Kuze, J. & Ukai, K. (2008). Subjective evaluation of visual fatigue caused by motion

Images Displays, 29, 159–166

加藤象二郎(2006). 心臓・血液系の働きを測る 加藤象二郎・大久保尭夫(編著),初学者 のための生理機能の測り方第2版 日本出版サービス pp.97-115.

加藤象二郎(2006). 疲労を測る 加藤象二郎・大久保尭夫(編著)初学者のための生理機能 の測り方第2版 日本出版サービス pp.212-216.

河合隆史・盛川浩志・太田啓路・阿部信明(2010).3D 立体映像表現の基礎―基本原理か ら製作技術まで― オーム社

森田寿哉・安藤広志 (2012). 3Dテレビ鑑賞による疲労における鑑賞条件の影響 映像情 報メディア学会技術報告,36(7),33-36.

大野さちこ・鵜飼一彦(2000). Head Mounted Displayをゲームに使用して生じる動揺病 の自覚評価,映像情報メディア学会誌,54(6),887-891.

鈴木陽一・寺本渉・吉田和博・浅井暢子・日高聡太・坂本修一・岩谷幸雄・行場次朗 (2011).

鑑賞覚コンテンツの臨場感と迫真性,マルチメディア情報ハイディング・エンリッチメ ント 111(74), 29-36.

Valentijn, T. Visch, Ed S., Tan & Dylan, M. (2010). The emotional and cognitive effect

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of immersion in film viewing Cognition and Emotion, 24(8), 1439-1445.

渡邊洋・氏家弘裕 (2011). 実写立体映像内に含まれる両眼映像差要因等が生体に与える 影響 社団法人映像情報メディア学会技術報告,35(15),17-20.

矢野澄男 (2011). 立体画像が視覚機能に及ぼす影響 社団法人映像情報メディア学会技 術報告,35(15),21-26.

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付録 1

映像による疲労自覚症状尺度

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ID_____ (前 ・ 後)

あなたの現在の状態にあてはまる数 字に丸をつけてください。

例: 1_2_3_

4 _5

1. 目が疲れている 2. 目が痛い 3. 目が重くなる 4. 目がごろごろする 5. 目がしみる 6. 目が乾いた感じがする 7. 涙が出る

8. 目がちかちかする 9. 目がしょぼしょぼする 10. 目がかすむ 11. 見つめていると像がぼやける 12. 遠くのものが見づらい 13. 近くのものが見づらい 14. 目が熱い

15. ものが二重にみえる 16. こめかみが痛い 17. 後頭部が痛い 18. 眉間が痛い 19. 頭がぼんやりする 20. 頭が重い 21. 気分が悪い

22. 吐き気がする 23. めまいがする 24. 肩が凝る 25. ふらふらする 26. 全身がだるい 27. 眠気がする 28. 首が痛い

1 2 3 4 5 6 7

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非 常 にそ う 思 う 全

くそ う 思わ な い

そ う 思 わな い

あ ま り そ う思 わ な い

ど ち らで も な い

や や そう 思 う

そ う 思 う

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付録 2