• 検索結果がありません。

oche and Pouyssegur 2007)。細胞増殖試験の結果から、グリシンによる細胞増 殖の抑制が細胞周期の進行抑制に起因している可能性が考えられた。そこで次に、

ドキュメント内 授授授授  教教 (ページ 42-48)

グリシンが細胞周期の進行に影響を与えている可能性を検討した。細胞周期の検討 のために、グリシン添加24時間後に細胞を採取し、フ一一サイトメトリーによる DNA定量を用いて各細胞周期を評価した。その結果、10mMグリシン添加培地を用い

て培養した場合、24時間後のS期細胞の割合が増加した(+Gly:49.747%、コント ロール:32.24%、Fig.11a)。これに対してG2期/M期細胞の割合は減少した(+

Gly=6.74896、コントロール:21.81%、 Fig.11a)。 Gl期細胞の割合に優位な変化を認

40

めなかった(+Gly:43.5050fO、コントロール=45.95%、 Fig.11a)。これらの結果は、

グりシン添加によりmSGP細胞の細胞周期がS期で停滞もしくは遅延していること

を示唆した。そこで、細胞周期関連タンパクであるサイタリンの発現についてフロ

ーサイトメトリー法を用いて検討した。その結果、グリシン添加培地を用いて24 時間培養した場合には、S期中期から後期にかけて発現するサイタリンA陽性細胞 が増加していた。G1期を示すサイタリンD1陽性細胞、 G2/M期を示すサイタリンB1 陽性細胞は著しく減少していた(Fig. 11b)。これらの結果から、グリシン添加後、

mSGPの細胞周期はGO/Gl期ではなく、S期に停滞もしくは遅延していることが示唆

された。

 次にグリシン添加による細胞増殖抑制効果がアポトーシスと関連しているかど

うかを調べる目的で、Cleavedカスパーゼ陽性細胞の定量を行った。その結果、グ

リシン添加によるアポトーシス細胞の増加を認めなかった(Fig.12)。以上の結果

から、グリシンの細胞増殖抑制作用はアポトーシスと関連がなく、S期における細

胞周期の停滞もしくは遅延による影響であることが示唆された。

8一(4) 内胚葉性がん細胞に対するグリシンの影響

 がん細胞におけるグリシンの細胞増殖抑制作用を調べる目的で、グリシン、1一ア ラニン、1一セリン添加培地およびグリシン除去培地(δGly)を用いてヒト肝細胞が

んセルライン(HepG2)を48時間培養した。この間のHepG2細胞の細胞数の変化を

Mod i f i ed MTT assayを用いて24時間ごとに調べた。その結果、グリシン添加培地、

1一セリン添加培地を用いて培養した場合、HepG2細胞の増殖が抑制された

(Fig.13a,b)。しかし、グリシン除去培地を用いて培養した場合には、コントロー ルに比較して細胞増殖の変化を認めなかった(Fig.14)。細胞周期、アポトーシスに 対するグリシンの影響を調べるために、グリシン添加培地を用いて24時間培養し、

細胞周期およびアポトーシス解析を行った。その結果、mSGP細胞と異なりHepG2

細胞の細胞周期の変化を認めなかった(Fig.15)。アポトーシス解析ではアポトー

シスをきたす細胞は認められなかった(Fig.15)。以上の結果は、グリシンががん細

胞の増殖に対して抑制的に機能する可能性を示した。また、これらの結果からがん

細胞における細胞増殖抑制作用はmSGP細胞のような組織幹細胞と異なるメカニズ ムを介している可能性が考えられた。

8一(5) 唾液腺由来前駆細胞に対する長期間グリシン添加・除去の影響

 次に、長期間のグリシン添加による細胞増殖の抑制が唾液腺導管由来前駆細胞で

あるmSGP細胞の導管への分化を促進するという仮説を立て、これについて検証し

た。

 まずコントロール培地を用いて長期培養した場合のmSGP細胞の細胞形態と分化 マーカーを免疫蛍光染色およびRT-PCRを用いて調べた。5日置BSを含むコントロール 培地を用いて培養した未分化なmSGP細胞は径20μm前後のN/C比の大きい細胞で 上皮様形態を呈した(Fig.16a)。免疫蛍光染色では未分化マーカーの

alphafetoprote i n(AFP)、CD49f、細胞内ラミニンが陽性であった。また分化マーカ ーのCKI 9は陰性であった。 RT-PCRでは、 AFPの発現を認め、分化マーカーのアル

ブミン、CK19の発現を認めなかった(Fig.16b)。

 次にmSGP細胞の分化に対するグリシンの影響を検討した。596FBSを含んだコン トロール培地を用いてmSGP細胞を24時間培養し、その後3種類の単一アミノ酸添 加培地(+Gly,+AIa,+Ser)またはグリシン除去培地(δGly)を用いて5継代、約2

週間培養した。単一アミノ酸培地で5継代培養した後、mSGP細胞の細胞形態の変化 を観察した。その結果、コントロール培地を用いて培養した場合と比較して、グリ

シン添加培地を用いて培養した場合、celI-cluster形成の増加が認められた(コン

トロール:3.6±2.63cIusters/㎜2、十Gly=14.7±4.17clusters/㎜2*p〈0. OOI、

Fig.16c,d)。またコントロール培地を用いて培養した場合には出現しない管腔構造 の形成が認められた(arrow,Fig.16c)。ほかの単一アミノ酸添加培地を用いて培養

した場合にはcIuster形成の増加や管腔構造の形成のような形態変化は認められな

42

かった。

 グリシンの細胞分化に対する影響とEGFシグナル経路が関連しているかどうかを

調べる目的で、無血清培養、EGF無添加培地、4種類の増殖シグナル阻害剤添加培

地(UO1265μM、 LY29411220μM、raparnyc i n 5nM、 Akt inhibitor皿20μM)を用 いてmSGP細胞を24時間培養した。その結果、いずれの培地においても、 c l uster 形成の増加や管腔構造の形成が認められた(Fig.16e, f)。mSGP細胞の形態の変化は、

グリシン添加時の細胞形態の変化と類似していた。Westem b l ott ingによる解析で

は、グリシンはEGFシグナル経路の下流エフェクターであるp42/p44MAPKのリン酸

化を抑制していた(Fig.16g)。phospho-p42/p44MAPKの発現はグリシン添加後6時間

ではコントロールに比較して減弱し、グリシン添加後24時間では消失した。免疫 蛍光染色法では、グリシン添加培地で培養した場合、cluster及び管腔構造を構成 するmSGP細胞はCKI 9陽性であった(Fig.16h)。また未分化なmSGP細胞に発現す

るAFP、 CD49f、1amininの発現は減弱した(Fig. 16h)。 RT-PCRでは未分化なmSGP

細胞のマーカーであるAFPの発現が減少し、分化マーカーであるCKI 9の発現が増

強した(Fig.16j)。 EGF無添加培地, UOI26(MEK inhibitor)、LY294112(P13K inhibitor)、rapamycin、 Akt inhibitor E添加培地を用いて24時間培養したmSGP 細胞では、グリシン添加培地で培養した場合と同様にCKI9の発現が増強した

(Fig.16i)。これに対し、グリシン除去培地での長期培養ではAFPの発現が維持さ

れた(Fig.17)。以上の結果は、グリシンがmSGP細胞の導管上皮細胞への分化を促

進したことを示した。

8一(6) 立体培養を用いたマウス唾液腺由来前駆細胞の

       分化誘導におけるグリシンの影響

 長期培養の結果から、グリシンが平板培養上でmSGP細胞の導管上皮細胞の分化

を促進することが示された。mSGP細胞はスフェロイド培養による立体構造の構築に より、インスリンなどの分化マーカーを発現し、膵臓内分泌細胞へと分化する性質

をもつ(Hisatomi, Okumura et a l.2004)。そこで、立体培養によるinSGP細胞の分

化誘導に対するグリシンの作用を検討した。SUMILON 96 wellUshape plate内で

グリシン添加培地を用いてmSGP細胞を7日間スフェロイド培養し、培養上清およ

び細胞破砕液上清に含まれるインスリン濃度をEuSA法にて定量した。その結果、

グリシンの存在下での培養上清および細胞破砕液上清内のインスリン濃度は、コン

トロール培地と比較して減少した(Fig.18)。この結果は、グリシンが立体培養によ

るmSGP細胞の膵臓内分泌細胞への分化誘導に対して、促進的な影響を示さないこ

とを示唆した。

8一(7) 胎児唾液腺の分枝・分葉形成に対するグリシン添加の影響

 細胞実験の結果から、グリシンがtRSGP細胞の分化に影響している可能性が示さ

れた。また、グリシンが細胞増殖シグナルに対しても抑制的に作用している可能 性が考えられた。そこで、唾液腺原基の発生、分化へのグリシンの影響を調べる

目的で、マウス胎児顎下腺原基(E13)の器官培養を行った。組織培養は過去の文献 に述べられた方法に準じた(Morita and Nogawa 1999)。胎生13日目のマウス胎児

から顎下腺原基を採取した。グリシン調整培地を作成し、作成したグリシン調整 培地を用いて唾液腺原基の器官培養を48時間行った。グリシン調整培地を用いて

培養した場合の分枝形成を分葉数(*,Fig.19b)と導管形成(両矢印,Fig.19b)の変 化を指標として器官培養開始(Ohr)、18hr、24hr、48hrに経時的に観察した。

 まず、作成したグリシン調整培地を用いて培養した場合の分葉数の変化を調べた。

その結果、すべての培地において48時間時の分葉数が増加した。EGF添加培地を用 いて培養した場合、分葉数は最も増加した。EGF添加培地にグリシンを加えると分

葉数の増加が抑制されることがわかった(Fig.19a,c)。

 次にグリシンの濃度変化による分葉数の変化を調べた。グリシンとEGFを組み合 わせて添加した培地(Gly+EGF)を用いて培養した場合、グリシン濃度の増加に伴

って分葉数の増加が抑制された(48hr;OmMGly+EGF=6.04±0.41倍,0.4

44

mMG I y+EGF=5. 38±1. 20倍、1.0 mM G l y+EGF:2.93±0.09倍10 mM G l y÷ EGF=2.26

±O. 48倍,**pく0.05, Fig.19e)。しかしグリシンを単独で添加した培地(Gly)を用

いて培養した場合にはグりシン濃度の変化に伴う分葉数の変化を認めなかった

(48hr;O mM Gly:2.715±0.40倍、0.4 mM Gly=2.71±0.28倍、1.0酬Gly:3.29

±O. 05倍、10 mM Gly:2. 01±0.12倍Fig.19c)。 EGFは分葉形成を促進する作用を もつ(Kashimata and Gresik 1997;Morita and Nogawa 1999)ことが報告されてお

り、この結果はグリシンがEGFによる分葉形成を抑制したことを示唆した。

 次に、作成したグりシン調整培地を用いて培養した場合の48時間時の導管形成 の変化を調べた(Fig.19a,d)。グリシン添加培地およびGly+EGF添加培地を用いて 培養した場合、どちらの培地でもグリシン濃度の増加に伴って導管が伸長した

(48hr;0.4 mM Gly11.278±0.04倍、1.O mM Gly=2.21±0.08倍、10 mM Gly=2.22

±0.05倍、48hr;0.4mMGly+EGF;1.49±O. 07倍、1.OmMGly+EGF;1.901±0.03 倍、10mMG醒y+EGF;3.51±0.02倍、**p<O. 05(Fig。19a, d)。伸長の程度は、10酬

Gly+EGF添加培地で培養した場合が最も高かった。すなわち、グリシンは濃度依存

性に唾液腺原基の導管の伸長を促進することが示された。

 次に、グリシンによる分葉形成の抑制と導管の伸張がEGFの下流シグナル経路と 関連しているかどうかを検証するために、EGFシグナル阻害剤を用いて組織培養を

行った。その結果、EGFレセプターの下流シグナル阻害剤であるMEK

inhibitor(UOI26)、 PI3kinase inhibitor(LY294112)を添加して培養した場合に も分葉形成の抑制と導管の伸長が認められた(48hr;UOI26:1.50倍、 LY294112:

2. 41倍、*p〈O. OOI、 F i g. 20a, b)。グリシンを添加して培養した場合と比較してMEK

inhibitorを添加した場合、分葉形成の抑制はより明らかであった。P!3K inhibitor

を添加した場合、グリシン添加と差を認めなかった。いずれの場合も導管の伸長が 促進された。すなわち、グリシンによる分葉形成の抑制と導管の伸張がEGFの抑制

によるものである可能性が示された(Fig.20a, b)。これらの結果はmSGP細胞にお

けるグリシンの作用と合致すると考えられた。

ドキュメント内 授授授授  教教 (ページ 42-48)