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ドキュメント内 授授授授  教教 (ページ 68-85)

      9       品 o

      UO126 LY294112

!  4

マウス胎児顎下腺原基の分枝・分葉形成と細胞増殖シグナル

Fig.20無血清培養および増殖シグナル阻害剤による

       胎児唾液腺の分葉数の変化。

C57BU6マウス(E13)の胎児唾液腺原基を採取した。各種調整培地を用いてGrowth Factor Reduced Matrigel内にて48時間器官培養を行った。調整培地はDMEMにEGFを加えた培地にUO1265μM(U)、

LY29411225μM(LY)を添加して作成した。

Ial顎下腺の分枝形成の変化。 UO126添加培地とLY添加培地で培養した場合、導管の伸長  が促進された。

【b】各培地における分葉数の変化。UO126添加培地とLY添加培地で培養した場合、いずれの

 場合も分葉数が減少した(48hr:UO126:1.50倍、 LY294112:2.41倍)。18時閲(black bar)、

 24時間(white bar)、48時間(gray bar)。

9.考察

 今回、私は哺乳類の非必須アミノ酸の一つであるグリシンがマウス唾液腺由来前

駆細胞(mSGP)の増殖を抑制的に制御し、分化を促進していることを報告した。

9一(1) 実験系

 実験系における個々のアミノ酸の効果を正確に判定するためには、注意すべきい

く.ツかのポイントが存在する。とくに今回使用した細胞は組織前駆細胞であり、血 清濃度の変化は幹・前駆細胞の未熟性、分化能に大きな影響を与えることが知られ ている。私は、アミノ酸の効果を正確に判定するために以下の3つのポイントを工 夫した。第1に基礎培地の検証、第2に維持培養に用いる血清の検証、そして第3に アミノ酸の効果を判定するための評価系の選択である。まず第1に基礎培地中のビ タミン、ミネラル、電解質、糖質、アミノ酸を均一に調整するために、本研究のた めの特殊培地調整を行い、安定した調整培地を作成することができた。詳細には、

Dulbecco Modified Eagle’sMediumに準じたミネラル、電解質、糖質、ビタミン 組成からなる特殊培地(ゼロ培地)を作成し、このゼロ培地を用いて、それぞれの アミノ酸調整培地を作成した(Table.8)。次に血清中のアミノ酸の干渉を最小限 に抑えるために、最低限の血清濃度とアミノ酸濃度の変化を検討した。HPLC-MSを 用いたアミノ酸濃度の検討では、我々が用いたウシ胎児血清中のアミノ酸濃度は

Gly: O.3 mlie, 1-A l a: O.4 mM, 1-Ser: O.1 mM, 1-Thr: O.05 n”ve, 1-Cys: e.006 mM,

1・一一Met: O. Ol FrrlVl, 1-eG l n: O.2mM, 1-Asn: O. OlmM, 1-G l u: O.4mlVl, 1一一Asp: O.05 mM,

1一一Va 1: O.2 mM, 1-Leu: O.1 mM, 1-Ile: O. 07 mM, 1-Phe: O. 06 mM, 1-Tyr: O. 04 mM,

1-Trp: O.02 mM, 1-Lys: O.07 mM, 1-Arg: O.03 mM, 1一一H i s: O.04 mM, 1-Pro: O.1

mMであり、5%FBSを含む培地の調整後の最終濃度はGly:0.6mfin,1-A l a=0.9mM,

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1一一Se r: O.1 mM, 1一一Thr: O.2 mM, 1-Cys: O.2 mM, 1-Met: O.1 mM, 1-G I n: O.2 mM,

1-Asn: O.1 mlVI, 1-G l u: O.4 rnlVl, 1-Asp: O.2 mM, 1-Va l: O.4 mM, 1-Leu: O.5 mM,

1-11e: O.4 mM, 1-Phe: O.2 mM, 1-Tyr: O.2 mM, 1-Trp: O.05 ngve, 1-Lys: O.3 mM,

1 一一Arg:0.2mlVI,1-H i s=0.1niAe,1-Pro=0.2mNlであった。 mSGP細胞の未分化能を

維持しつつ増殖を抑制しない血清濃度は596であり、できる限り血清由来のアミノ 酸の影響を除外した。第3にアミノ酸の効果を判定する指標として、細胞増殖と分 化の変化を検討項目とした。アミノ酸の効果を判定する対象として、細胞増殖・分

化の検討が可能な唾液腺由来前駆細胞(SGP)、マウス胎児線維芽細胞、胎児唾液腺、

がん細胞に対する効果の判定のためにヒト肝細胞がんセルライン(HepG2)を選択 した。細胞増殖の評価には生細胞のミトコンドリア活性を検出し、細胞の生存活性 を指標とするMTTアッセイと、増殖細胞のDNA合成時に取り込まれ、細胞増殖の指標 となるBrdUラベリングの2つの方法を用いた。

9一(2)細胞増殖・分化とグりシン

 私は唾液腺発生における上皮細胞の増殖と分化を培養系において同時に観察す る手段として、唾液腺由来前駆細胞を選択した。唾液腺由来前駆細胞(SGP)は唾

液腺に障害を与えた際に出現する。-kit+/SGa-1+小型導管上皮細胞由来の組織前駆

細胞である。分離されたmSGP細胞は、平板培養上ではCKI9などの分化マーカーを発

現せず、AFPや細胞内ラミニンなどの未分化マーカー陽性を示し、 EGFの存在下で多 分化能、自己増殖能を維持することが示されている(Okumura, Nakamura et al.

2003; Hisatom i, Okumura et a l. 2004; Matsumoto, Okumura et a l. 2007; Sato,

Okumura et a l. 2007) (Tab l e. 6).

 mSGP細胞の分化には3次元構造の構築が必須である(Hisatomi, Okumura et aI.

2004)。mSGP細胞を分化させる3次元培養の方法として、これまでに次の3つの方法 が検討されている。平板培養上での自律的な細胞集塊の構築(ce11-Gluster

format i on)、マトリゲル培養を用いた3次元培養、そしてスフェロイド培養である

(Tab l e.7)。それぞれの培養法における特色は、分化したmSGP細胞の遺伝子発現の 違いと細胞機能の違いである。CeII-clusterの形成は平板培養上で自律的に構築さ

れる。このcluster頂上部分に存在するmSGP細胞では導管上皮のマーカーである

CK19が陽性である。しかし一方、 c I uster内で分化したmSGP細胞はインスリンやア ルブミンなどの分化マーカーを発現しない。すなわち平板培養上でのce11-cluster format i onはmSGP細胞の導管上皮細胞への分化の開始を示していると考えられる。

SGP細胞が組織障害を受けた顎下腺に増生する小型導管上皮に由来する組織前駆細

胞であることから、このce11-cluster formationによる分化は、 in vivoにおける

自然発生的な分化を示唆しているといえる。これに対して、マトリゲルを用いた3 次元培養およびスフェロイド培養では強制的に3次元構造が構築され、分化が開始

される。マトリゲルを用いた培養により分化したmSGP細胞は、 hepatic l ineageで

あり、アルブミンを発現する。これらの細胞は肝臓内への移植により肝臓細胞に分

化することができる(Hisatomi, Okumura et al.2004)。スフェ1コイド培養は、人 工的な3次元構造の構築によって、膵臓内分泌細胞の分化を誘導する。分化したmSGP

細胞はインスリンやグルカゴンを発現し、外部からの糖やカリウムの刺激によって

インスリンを分泌することができる(Okumura, Nakamura et a l.2003;Hisatomi,

Okumura et a l. 2004; Matsumoto, Okumura et a 1. 2007; Sato, Okumura et a l. 2007).

すなわち、マトリゲルやスフェロイド形成を用いた培養は、3次元構造の形成によ るmSGP細胞の人工的な分化の誘導であり、その変化は分化の進行の検討に有効であ

るといえる。

 このような分化誘導法の特徴から、私は今回の研究において、mSGP細胞の自律的

な分化の開始を確認できるce l 1一一cluster format i onの変化を分化の指標として用い

ることにした。グリシンの存在下におけるmSGP細胞の培養の結果、グリシンの添加

はmSGP細胞の増殖を抑制し(F i g.7)、同時にmSGP細胞のce l 1-c l usterの形成を増加

させた。更にグリシンの添加はmSGP細胞による導管様構造の構築を促進した

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(Fig.16)。これらの自律的な3次元構造の増加は、グリシンがmSGP細胞の導管上皮

細胞への分化を促進していることを示唆している。一方スフェロイド培養を用いた mSGP細胞の分化誘導では、グリシンの添加によるインスリン分泌の増加は認められ

ず、むしろ減少した(Fig.18)。すなわち、グリシンはmSGP細胞の分化の進行に対し ては促進的に作用せず、膵内分泌細胞への分化を抑制する物質であると考えられた。

これらの結果から、グリシンがmSGP細胞の分化の進行ではなく、自律的な分化開始

の段階に影響を及ぼす物質であることが考えられた。

9一(3)唾液腺形成とグリシン

 マウスでは、胎生12日目に唾液腺原基が形成され、口腔粘膜直下の間葉組織内 に侵入する。早期唾液腺原基は自己または周囲の間葉組織から分泌される増殖因子 や細胞外マトリックスの作用を受け.分葉・分枝形成、末梢部での細胞分化により

唾液腺を形成する(Mor i ta and Nogawa 1999;しarsen, Hoffman et a l.2003;Saka i,

Larsen et a l. 2003; Kadoya and Yamash i na 2005; Larsen, We i et a l. 2006) (F i g.

3) o

 唾液腺の分葉・分枝形成には増殖因子やその下流シグナルが関与している。とく に分葉形成はEGFの影響を強く受け、分葉の末梢部では細胞増殖が盛んであること

が分かっている(Morita and Nogawa 1999;Kashimata, Sayeed et al.2000)。こ

れらの報告では、EGFシグナル経路に存在するMAPKやPI3Kのインヒビターの添加 により、唾液腺原基の分葉形成が著しく抑制されることが示されている(Kash imata,

Sayeed et a l. 2000).

 今回、唾液腺原基の組織培養を用いた分葉・分枝形成の観察から、グリシンが唾 液腺発生の形態形成に影響している可能性が示された。グリシンの添加はEGFによ る唾液腺原基の分葉形成を濃度依存性に抑制した。また、グリシンの添加により分 葉形成が抑制された唾液腺原基では、分葉末梢部の拡張を示さず、導管の伸長が顕

著であった(Fig.19)。 EGFシグナルインヒビターを用いた場合にも、分葉形成の著 しい抑制が認められた(Fig.20)。組織培養で認められた唾液腺原基の形態変化は、

細胞レベルで得られた結果に合致すると考えられた。これらの結果はすなわち、グ リシンが組織レベルにおいてEGFの作用を阻害している可能性を示唆し、グリシン による唾液腺原基の形態変化は、グリシンのEGF阻害に伴う末梢先端部での細胞増 殖抑制と細胞分化促進の結果であると考えられた。しかし前述したとおり、唾液腺 の形態形成には細胞外マトリックスの局在変化などのように増殖因子以外の多く の因子が関与する。mSGP細胞自体も細胞外マトリックスであるラミニン1,5を発 現している。したがって、グリシンによる唾液腺原基の形態変化がグリシンそのも のによるEGFの阻害作用であるのか、あるいは細胞外マトリックスの発現変化など の他の経路を介した間接的な作用であるのかについては明らかにされておらず、今

後更なる見当を必要とすると考えられる。

9一(4)EGF、細胞増殖シグナルとグリシン

 形態発生過程の唾液腺上皮にはEGFレセプター(EGFR)、 FGFレセプター(FGFR)

が多く発現しており(JaskolIand Melnick 1999)、分葉・分枝形成の調節には唾液 腺自身から産生されるEGFおよび周囲の間葉組織から分泌されるFGFが作用する

(Morita and Nogawa 1999;Steinberg, Myers et a1.2005)。そして、これらの増

殖因子の作用を阻害した場合、分葉形成の抑制および導管の伸長が認められること

が知られている(Kash imata, Sayeed et a l、2000;Larsen, Hoffman et a l.2003)。

さらに過去の報告では、唾液腺や肺、乳腺の分葉形成時にはEGFR下流のエフェク

ターであるp42/p44 MAPK、 p38MAPKのようなMAPKファミリーのリン酸化が元進ず ること(Cardoso and Lu 2006;Liu, Martinez et al.2008)、またFGFRの下流シ

グナルであるP13Kの阻害やP13Kの基質であるPIP3の除去によって分葉形成が抑

制されることが証明されている(Larsen, Hoffman et a l.2003)。今回の検討に用

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