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X 線写真画質

ドキュメント内 資料 富山消化管撮影研究会 2011text web0810 (ページ 66-70)

第 6 章 読影 65

6.2 X 線写真画質

読影の前には,まず写真画質を確認する.早期癌を標的とする読影では,二重造影像す なわち胃内面の模様や凹凸の表れ方が診断の成否を左右するからである.造影剤の付着状

第6 読影 66

表6.1 X線写真画質を規定する因子(撮影手技を除く)

確定因子 撮影装置系 装置形式 アンダーチューブ方式,オーバーチューブ方式 高圧発生器形式 単相,三相

X線管球焦点 サイズ,単・複焦点

付加フィルター

散乱線除去グリッド 格子比・格子密度 透視モニター

受像器系 DR Image Intensifier,直接・間接方式FPD

増感紙 フィルム 観察器系 読影ビューワー

プリンター

現像機 現像温度・現像時間 検査薬剤系 造影剤 粉末・ゾル,濃度,粘()

発泡剤ほか 炭酸ガス,(空気) 鎮痙剤

不確定因子 被写体 体格 被写体厚,(ヤセ・標準・肥満)(筋肉質・脂肪質) 胃形 鈎状胃,牛角胃,下垂胃,瀑状胃

胃内容 粘液,pH,残渣

環境 検査時間

気温・湿度

態はもちろん,写真のブレ,ボケやカブリをはじめ鮮鋭度やコントラスト(写真濃度) 主な評価指標である.これらは,装置,器材,検査薬剤ならびに撮影手技,さらにはシャ ウカステンやビューワーの精度と関与している.表6.1には,写真画質を規定する要素を 確定,不確定因子別に示した.問題がある場合には,撮影手技に起因するものなのか,装 置や器材に起因するものなのかを検討する.

容易に取り組めてかつ効果の高い評価指標は,1)撮影順序と撮影体位,2)鮮鋭度と写 真濃度であろう.評価の際には,まず撮影体位()ごとの標的部位を明確に設定するこ とで,画質改善対策が立てやすくなる.例えば背臥位二重造影正面位で標的とする胃後壁 の造影効果は,撮影前の体位変換法とよく相関する.頭低位腹臥位前壁二重造影像で標的 とする胃前壁では,圧迫用フトンの挿入や逆傾斜手技と関連が深い.右側臥位(上部) 重造影像や腹臥位第1斜位(上部)二重造影像で得られる胃上部では,体位変換法と曝射 のタイミングおよび息どめの確実さが関与する.また,X線検査の弱点とされている噴門 部や幽門部の表れ方も評価ポイントのひとつとなる.

6.3 4 大撮影法と読影の着眼点

6.3.1 充盈法

歴史的に最も古い撮影法である.一般的に立位充盈像と腹臥位充盈像が撮影される.比 較的簡単に胃の位置,形状,輪郭の所見を得ることのできる撮影法として位置づけられて いる.逆に,蠕動や腹壁の緊張度により像が変化し,ニッシェと紛らわしい像が描出され ることもあり,呼吸の調整や透視台の傾斜角度の調整が難しいともされる.読影では大小 彎のバランスや胃辺縁の凹凸を読み取る.幽門狭窄や胃壁の伸展不良が顕著な例では陰影 欠損像,進展不良像や狭小化などの異常像が明瞭に表れる.病変が大彎や小彎近傍に存在 する場合の精密X線検査では,辺縁の凹凸を指標に体位角度を調節しながら撮影する.

造影剤の量が少ないと胃壁が十分に伸展されないことから,充盈像の撮影には250から

300ml程度の造影剤が適量とされている.粘膜面のより良い描出を目的に開発されている

高濃度低粘稠性粉末造影剤は150ml前後の量で撮影を組み立てることが多いので,近年 の胃がん検診において充盈法は省略されることが多い.

6.3.2 粘膜レリーフ法

充盈法に続いて登場した撮影法で主に背臥位,腹臥位で撮影される.立位で撮影される こともある.研究者によって異なるが,概ね10から40ml程度の少量造影剤を用いて粘 膜ひだを描出することで,充盈法では描出されない小さな所見を写し出すことが可能に なったとされる.狭い範囲に多くの粘膜ひだが集まって表れることから,いちどきに観察 しうる胃粘膜の面()積は広いという利点があり,病変のスクリーニング検査として適 しているという考え方もある.読影では粘膜ひだの太さ,形状ならびに走行に着眼すると ともに,ニッシェやはじき像の有無を確認する.

空気量が多めの二重造影法では表れにくい小彎側病変や幽門病変を描出する為に,時に 腹臥位レリーフ法が用いられる.しかし胃液の量や質に画質が影響されやすく,粘膜ひだ に囲まれてしまうような小さく微細な所見を表わすには,ゾンデを用いて胃粘液を排出し たり,空気量を調節したりする追加手技が必要となる.深達度診断を検査目的のひとつと する精密検査では,圧迫手技を組み合わせながら胃壁の厚みや硬さを表現する.ただし,

手際の問題と手技難度の観点から,近年の胃がん検診では省略されることが多い.

6.3.3 圧迫法

粘膜レリーフ法と相前後して登場した撮影法である.より良い粘膜レリーフ法を撮影す るために様々な圧迫の方法が考案されている.いくつかの成書には,用手的に腹部を圧迫

第6 読影 68 し,圧力を調節しながら透視下に観察する方法も記述されている.しかし,術者被曝の点

で推奨出来ない.近年では,撮影装置に常設された圧迫筒による立位圧迫法と,圧迫用フ トンによる腹臥位圧迫法が一般的に行われている.いずれの方法でも,前後壁の所見が同 時に表れる.勿論,肋骨弓より頭側に位置する部位の圧迫はできない.

立位圧迫法は,立位ないしは透視台を少し倒した半立位で行う.適当な造影剤の量は,

被写体の体格と胃の形によってそれぞれ異なるが,一般的にヤセ型では多め,肥満型では 少なめの造影剤を用いた方が押圧の調節がしやすい.圧迫する領域の造影剤が多いとはじ かれる範囲が狭くなり,少ないと範囲が広くなるので,透視台の傾斜角度を調節すること で圧迫部位の造影剤の量を加減する.腹臥位圧迫法では,圧迫用フトンの大きさと厚みの 違いで圧迫領域と押圧の調節が出来る.薄く広いものから厚く小さいものになるにつれて 押圧が高くなる.腹臥位で挿入後,ゆっくりと体位変換しながら位置を調節する.

読影では,圧迫位置や押圧の違いによってあらわれる所見の変化を総合的に読み取りな がら病変形態を特定する.一枚の圧迫像では表すことが難しい比較的大きい病変では,圧 迫位置の異なる数枚の写真を組み合わせて拡がりを特定する.また,弱い圧迫では胃粘膜 表面の凹凸が表れ,強い圧迫では深部を含めた胃壁の厚みがはじき像として表れる.

6.3.4 二重造影法

陽性造影剤である硫酸バリウムと陰性造影剤である空気ないしは炭酸ガスを組み合わせ ることで,流体である硫酸バリウムの層と気体によって生じるX線吸収率の差を利用し た撮影法である.白壁,市川,熊倉らにより開発され,現在ではX線検査の主流となって いる方法である.まず体位変換により造影剤で粘膜面を洗い,造影剤がよく付着したこと を確認する.次に,標的部位から余分な造影剤を移動させた後に曝射する.なお,本法に は広い範囲の粘膜面を模様像として表す第I法と,造影剤を流したり溜めたりしながら粘 膜の凹凸を表す第II法がある.読影の際には,空気量や造影効果に加えて,いずれの方法 を用いて撮影されたものかを確認しておいた方が良い.すなわち,I法とII法ではそれぞ れ写真の表れ方に違いがあり,それらを組み合わせた読影がより正確な判定につながるか らである.

第I法は,粘膜表面の胃小区などの模様像が表れていることが特徴であり,微細所見の 判定に有用である.反面,浅い陥凹性病変や低い隆起性病変を認識しづらい.時として,

明らかな高まりのある病変であっても,なだらかに隆起している場合にはその特定ができ ないこともある.ただし,よく見直してみるとこのような所見も描出されていることが多 い.視野領域を狭くすると,わずかな高低差や緩やかに変化している高低差をも写真濃度 の差として識別することができるが,視野領域が広いとわずかな濃度差は判別しづらい.

逆に,視野領域を狭くすると写真濃度の差を識別できないこともある.比較的広い範囲に 拡がる浅い陥凹性病変などで経験する現象である.

胃がんX線検診では,透視下に所見に気付いた場合に第II法での撮影が追加されるこ とが多い.また第II法では,粘膜面の凹凸差が造影剤の厚みの差に置き換えられるので,

第I法と比べて凹凸変化を立体的に認識しやすい.ただし,当然のことながら,陥凹部の 微細な所見は造影剤で被覆されるし,隆起部であっても周囲を流れる造影剤の厚みと面積 との関係で,コントラストが高くなり,表面の模様が表れないこともある.

ドキュメント内 資料 富山消化管撮影研究会 2011text web0810 (ページ 66-70)