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第 2 章 音響化学治療用化合物 腫瘍集積性 RBD の開発

2.4 考察

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Alkyl鎖の炭素数C=8のRBDの中でRBD2とRBD3の腫瘍集積性は出発物質であるRB

と ほぼ同じで あるのに対し て、RBD1 は劇的な腫瘍集積性の改善を 示し た。RBD1 の

1-Octanol への溶解度は RB よりも約 2 倍高かった(表 2.1)。この親油性の向上は担体への

RBD1 の結合を弱め、肝胆道輸送による排泄を防いだ。RBD1 の肝臓および腫瘍での濃度と その経時曲線は両親媒性Porphyrin系化合物として良く知られているATX-7012)と非常に似て いた。

しかしながら RBD1 の水溶性は、静脈投与の水溶液を安定に調製するには低すぎて

DMSO を全量の 40%の濃度で使用した。多量の有機溶媒を含む水溶液の生体への投与は

実用化には不適切と考えられる。出発物質であるRBはその構造中に 2つ親水基を持つが、

その一つであるカルボキシアニオン部分がAlkyl 鎖の導入でEsterとなったため、RBの水溶 性は失われた。この水溶性の欠如の問題を解決するために、RB に親油基と共に親水基も導 入した誘導体がRBD2とRBD3である(図2.2)。Alkyl鎖の炭素数C=8のRBD2とRBD3で はRBD1には遠く及ばないが、RBD3の方が僅かに高い腫瘍集積性を示した(図2.6)。そこで、

RBD3のC=8を基準に、親油性を向上させるためにAlkyl鎖を延長した。この試みは計画通り の効果を発揮し、図2.8に示した通り、Alkyl鎖の炭素数C=12、14、16のRBD3ではその腫 瘍集積性は大きく改善され、ATX-70同等かそれ以上の腫瘍内濃度を示した。

これにて当初の目的である腫瘍集積性を有するRBDを得ることに成功した。RBD3におい て、腫瘍集積性が元も高かったのは C=14 であり、次章以降では主として Alkyl 鎖の炭素数 C=14のRBD3を用いて音響化学治療用化合物としての性能を評価し、音響化学治療の効果 を検証する。

今回、Alkyl鎖の長さを延長したRBD3において、その腫瘍集積性は、Alkyl鎖長の長さに は単純には比例しなかった。腫瘍集積性RBDを得るための両親媒性付与の分子設計は実際 に合成した化合物にどのように反映されており、腫瘍集積性とどのように関係していたのか、合 成した各化合物の極性溶媒および非極性溶媒に対する親和性を評価し、腫瘍集積性との関 係を検証した。

2.4.3 RBD の親水性、親油性および両親媒性

合成したRBDの両親媒性と腫瘍集積性の関係について、図2.10および図2.11より、化合 物の親油性と親水性のバランスがその腫瘍集積性への重要な要素であることが示唆された。

更に化合物構造中の親油基と親水基の立体配置も寄与していることが推測された。

まず、図2.10ではRBDの親油性と腫瘍集積性の間に明確な関係が見られた。PDT用光増 感剤において、親油性化合物は Lipoprotein に結合して輸送されるため、腫瘍組織に局在す る傾向があるとの報告と一致する51)。出発物質であるRBの腫瘍集積性は他のRBDとは相関 が得られなかった。担体介在性肝胆道輸送による生体からの迅速な排泄のために腫瘍集積

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Porphyrin 系化合物においては、両親媒性の腫瘍集積性への寄与が示唆されている 45)-47),

57), 58)。また、Zhangらは、同程度の親油性を有する2-Nitroimidazole化合物群において、その

両親媒性によって、in vivoでの腫瘍集積が有意に変わることを報告した59)。1-Octanol/水の 分配係数 Pow の値が 1 の場合、正常組織に対する高い腫瘍集積が得られたとも報告してい る。

図 2.11 に示した我々の結果では●の群で、Pow よりも Pwo が腫瘍集積性と良好な相関を 示したことが興味深い。Pwoが1よりも 2桁と非常に小さかったからと思われる。Zhangらが報 告している化合物と RBD はその化学構造が全く異なる化合物でありながら、本結果は Zhang らの報告と一致していた。両親媒性と腫瘍集積性との関係は Porphyrin 系化合物に限らず 様々な化合物にも適用されるのではないかと推察される。

RBD3のPwoは、Alkyl鎖の炭素数がC=8から14への延長に伴い向上し、C=16で下がっ た。この傾向は腫瘍集積性と一致しており非常に興味深い結果であった。ちなみに、親油性 に関してはC=8からC=12で顕著に向上したが、C=12から16においてはほとんど変化が得ら れなかった。RBD3では親水性のCarboxyl基が親油性のAlkyl鎖に分岐の形で位置している。

恐らく、Alkyl鎖は周りの環境の親水性/親油性によって、Carboxyl基との三次元的な立体構 造を変化させていると思われる。そして、自由度が高い、長鎖のAlkyl鎖の方が親油性と親水 性のバランスを発揮できたと推測する。Kim らは化合物中の親油基と親水基の立体配置が両 親媒性に重要であると述べており57)上記仮説を支持する報告である。

Pwoと腫瘍集積性がC=16で下がった減少について、Nakajimaらが側鎖の炭素数が異なる

Ga-porphyrin について血中アルブミンとの親和性との関連性を報告している 51)。側鎖の炭素

数Cが4、6、8、10、12の誘導体でCが4から10ではCの大きさが大きくなるほど腫瘍集積

性が高くなるが C=12で顕著に下がること、この傾向が血中アルブミンとGa-porphyrin の親和 性の傾向と一致した。この現象について彼らは側鎖の炭素数の増加に従いGa-porphyrinは2 量体を作り易い傾向となり、C=12では2量体を形成して親水性が向上したからと考察している。

RBDが2量体を形成するか否かは不明であるが、側鎖が長くなると環構造の立体障害が軽減 され2量体を作り易くなることは推測できる。Ga-porphyrin同様、腫瘍集積性が下がったC=16

ではpH7.4のリン酸緩衝液への溶解度がC=14、12より若干高くなっていた(表2.1)。

分配係数の測定の際、血漿のpHと近いpH 7.4のリン酸緩衝液ではなく、pH 9.18のホウ酸 pH 標準液を用いた。これはホウ酸溶液を用いた方が高い再現性が得られたからである。pH 7.4はRBD2とRBD3のpKaに非常に近く、安定な測定結果が得られなかった。

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