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第 4 章 行長の設計 34

4.4 考察

第4章 行長の設計 45

第4章 行長の設計 46

500

400

300

200

100

0

Number of fixations per 1000 characters

50 40

30 20

10 0

Line length (char.) (C)

(B)

(A) fixations

fixations extra regular N = 31 regular fixation (A)

extra fixation by regression (B) extra fixation in return sweep (C)

4.9 固定長改行レイアウトにおける,停留発生要因と行長の関係.(A) 所要停留数(過剰停 留以外の停留数),(B) 逆行によって発生した過剰停留数,(C)改行運動中に発生した過 剰停留数.

行長の伸長とともに逆行による過剰停留(領域B)が増えて,40文字/行では改行運動中 の過剰停留数と逆行による過剰停留数がほぼ同数となる傾向が認められた.また,逆行 による過剰停留(領域B)は全行長範囲で行長の伸長とともに増大する一方で,改行運 動中の過剰停留(領域C)は5∼ 20文字/行の範囲で増大するが,20∼ 40文字/行の範 囲ではほぼ一定となる傾向が認められた.

以上より,所要停留数および過剰停留数の変化を合わせて考察すると,短い行長では

「過剰停留数は少ないが,順行サッカード長が短いために,全体の停留数が多い」,長い 行長では「過剰停留数が増えるものの,順行サッカード長が伸びるために,全体の停留 数は少ない」と言える.さらに,全停留数の低減が20 ∼ 40 文字/行で停滞する現象は,

順行サッカード長が伸びる影響による停留数の減少と,逆行による過剰停留数の増加が 拮抗しているためであることが推察された.

第4章 行長の設計 47

0.5

0.4

0.3

0.2

0.1

0.0

Rate of preference

50 40

30 20

10 0

Line length (char.)

N = 31

4.10 固定長改行レイアウトにおける,実験協力者が最も読みやすいと選択した行長の割合.

4.4.2 日本語電子リーダーの行長設計

既存の日本語組版で表示する場合,読み速度の点からは,最も速く読める20 ∼ 40 文 字/行が最適な行長の候補となる.平均停留時間の点からは,充分短くなる20∼40文字/

行ではどの行長でも問題ない.停留数の点からは,20 ∼40 文字/行で順行サッカード長 の伸長による停留数の減少と逆行による過剰停留数の増加が拮抗しており,順行サッカー ド長の伸長を優先させるか,逆行による過剰停留を抑制するかの二者択一となる.すなわ ち,行長が長いほど「停留時間は短く,順行サッカード長は長くなって,読み速度の向上 をもたらす」一方で,行長が長いほど「逆行による過剰停留は増え,改行運動中の過剰停 留も増えて,読み速度の低下をもたらす」というトレードオフの関係にあり,20∼ 29文 字/行の行長はその妥協点と言える.

ここで,実験協力者が最も読みやすいと選択した行長の割合を図4.10に示す.20文字/

行および29 文字/行を最も読みやすいとした実験協力者が多く,それより短い行長や長 い行長を選択する実験協力者は少なかった.特に,20,29,40文字/行において,読み速 度はほぼ同じであるが40 文字/行を読みやすいと感じる実験協力者は少なかった.この

第4章 行長の設計 48

結果は,たとえ同じ速度で読むことができても,読者が感じる読みやすさに違いが生ま れることを意味する.20∼ 40文字/行においては,順行サッカード長の伸長を優先させ るか逆行による過剰停留を抑制するかの二者択一となっていたが,実験協力者の行長選 択の傾向から,過剰停留の抑制を優先させる方が,読みやすさの点で優位となる可能性 が示唆された.

以上より,既存の日本語組版で表示する場合の最適な行長は,20 ∼29 文字/行と結論 付けられることとなった.一方で,これらの知見は読み効率を高める電子リーダーの重 要な設計指針であり,短い行長における読み効率の向上には,停留時間の短縮と順行サッ カード長の伸長を必要とし,長い行長における読み効率の向上には,逆行による過剰停 留の削減と改行運動中の過剰停留の削減を必要とすることがわかった.