第6章 研究課題5−2
第4節 考察
i)身体組成測定実験について
本研究では、ダイエット行動に関連する講座を2回受講した女性の中から、BI法による 身体組成測定と約1ヶ月間の「自己採点式ダイエット」を記録して平均60点以上の5名を 対象とした。そして、これらの対象者をダイエット行動に比較的高い関心をもった成人と 見なし、その前後の分析から、開発した「自己採点式ダイエット」の有効性の検討を試み た。なお、実験前における本研究対象者の体脂肪率は、東京慈恵会医科大学の判定基準
(1993)によると、適正範囲の上限〜肥満と判定される値を示しており、いずれも体脂肪率の 減少が望まれる状況であったととらえられる。
表11、表12および図22より、全身的に評価したところ、全般に1ヶ月前より体脂 肪率が減少し、脂肪量が減少傾向であり、除脂肪量は増加頃1同を示した。これらはいずれ
も今回の対象者にとって、ダイエット効果として望ましレ瀬1句ととらえられるが、有意差 は認められなかった。一方、身体組成を下肢・上肢・体幹部に分けて分節的に見てみると、
下肢体脂肪率はやや増加したものの、上肢および体幹部体脂肪率は5名全員が減少の傾向 を示し、上肢については有意差も認められた。また、脂肪量については四肢・体幹部のす べての部位で有意差は認められなかったものの減少傾向を示し、除脂肪量と推定筋肉量に
ついては体幹部で有意に増加傾向を示した。つまり、全身的な評価ではその効果の検証は 不十分であったが、分節的な評価では上肢を中心にその効果が認められたといえる。この
ことは、今回の方法がダイエットに有効であることを示唆している。
加藤(1995)は、我が国のダイエットの変遷について、1960年代には食事と体操を組み合 わせたべ一シックな方法でやせようとするものが始まり、1970年代になってから、ある特 定の食物や体操でやせようとするものが出現、1980年代には芸能人が紹介するダイエット が大流行した様子を紹介している。しかし、これらのダイエットは、栄養のバランスが悪 く、長期間行えば体を壊しかねないものとして認識されていたと述べ、その一例としてプ ロテインダイエットがアメリカで数十名の死者を出した例を挙げている。したがって、栄 養バランスの良い、長期間続けても健康を害さないような方法の開発が必要であったと考
えられる。
また、大野(1991)は、従来のダイエット指導において、とかく知識の理解に主眼がおか れ、その具体的な実践面に関する指導は軽視されてきた傾向は否めないと述べている。そ の結果、ダイエットに関する正しい知識は十分に兼ね備えているにもかかわらず、それを 実行に移すことができない人を生じさせる結果をもたらしたと考察している。そして、こ の状況を改善し、効果的なダイエットを実践するための重要なポイントとして、実際に実 現可能な方法であること、自分の個性が尊重されていること、自分自身が主役であること の3点を挙げ、自己評価の重要性を指摘している。さらに、正しいダイエット計画に必要 な方法として食事および運動療法に加え、長い間のライフスタイルとして心身にしみつい た誤った習贋や行動様式を正しし桁動様式に改善する行動修正療法を推奨している。本研 究で実施した「自己採点式ダイエット」は、内容的にこれらの点に配慮して作成された方 法である。実施者の感想を見てみると、「以前より健康になった」「わかりやすい」「他人と の比較ではないので続けやすい」「毎日楽しく、苦にならなかった」などの肯定的で好意的 な文言が含まれている。このことから、この方法が簡便で自分のぺ一スで実施でき、かっ ストレスが少なくて継続しやすい方法として認識され、先行文献の提言を支持する内容が 含まれていると考えられる。
今回の測定実験では、様々な条件的制約から、1ヶ月間という比較的短い調査期間で、5 名という人数的に限られた対象者について、体脂肪率が増加しやすい秋から冬にかけて実 施しなければならなかったため、その効果については顕著な差を得るには至らなかった。
しかし、このような条件下でも一部に有意な差を見いだすことができたことで、この「白
己採点式ダイエット」が比較的簡便で自主的に実施できる効果的なダイエット方法として 有効であるととらえることができる。ただし、この方法は自己採点という主観的な判断に よる評価であるという特性上、個人差が大きく、客観的な検証が困難であるという一面を 持っているため、その詳細については今後さらに継続的に研究する必要性があると考える。
さらに、減量した生理学的検討についても今後詳細に検討する必要がある。
ii)個別事例報告について
本方法の内容について講義を受け、ダイエット体験レポートを提出した大学生の事例を 考察したところ、自己採点式ダイエットの項目に関連する行動を実施することで、健康的 にダイエットに成功したと考えられる多くの結果が認められた。
事例1の実施者は、単品ダイエットの一つである「りんごダイエット」を実施した結果、
体調を壊すなど健康被害を経験し、体脂肪を減らす効果も得られなかったととらえられる。
また、汗をかくだけの「ラップダイエット」についても、水分の増減だけで、体脂肪の増 減は認められなかったと考えられる。よって、これらの方法は、健康的ダイエットとは認 め難いととらえられる。これに対して、最後に挙げられている方法は、6項目とも自己採 点式ダイエットに含まれる項目である。これを実施した結果、体重が3.5kg減量され、反 動の過食や健康被害も認められないことから、この方法が健康的なダイエットであること が示唆される。事例2の実施者は、自己の生活習慣や内容について検討し、筋肉をつけて 健康的にやせることをめざしてダイエットに取り組んだととらえられる。また、食事の量
を減らすのではなく、摂取するタイミングや運動の種類・実施方法、食事の内容などを工 夫している。そして、個人的な嗜好としてあげている甘いお菓子やアルコールの摂取につ いては、完全に絶ってしまうのではなく、量をへらしたり、タイミングを考えたりして取
り組んでいるが、これらの内容は、自己採点式ダイエットの内容や主旨と共通している。
この方法を実施した結果、体重や身体のサイズダウンなどから痩身が認められた上に、以 前よりも筋肉や体力がっき、より健康になったという実感を得ていることから、この方法 が健康的なダイエットであることが示唆される。さらに、今回のダイエットの成功により 自信をづけたというコメントをしており、精神的健康という面でも望ましい効果が得られ たと考えられる。事例3の実施者は、講義を受講することで、自己の生活習慣や内容が体 脂肪を蓄積しやすいものであることを認識し、現状の問題点と改善策を具体的に検討した
ものと考えられる。そして、自己採点式ダイエットの項目をできるだけ実施するような生
活習慣を心がけた結果、それほど大きなストレスを感じることなく、健康に良いとされる 生活習噴1を身にっけることができるようになり、体重の減少効果が得られた。そして、生 活習噴1そのものを改善することが、一番効果的なダイエットにつながるという結論を出し ている。事例4の実施者は、実際に体重の減少などの効果を記述していないが、もしこの
自己採点式ダイエットの内容についての講義を受講しなかったとしたら、健康に深刻な影 響を及ぼす可能性の高いダイエット法に取り組むつもりであった状況と推察される。それ
を未然に防ぎ、さらには健康的なダイエットについての取り組みを具体的に検討して実施 することで、大きな行動変容が実現されたととらえられる。その意味で、正しいダイエッ
トに関する教育的な効果が現れた一例と考えられる。
以上、4つの事例の考察より、健康的なダイエットとして自己採点式ダイエットが有効 であることが示唆された。
第5節結論
研究課題5−2の目的は、ダイエット行動に比較的高い関心を持った成人および大学生 を対象に、「自己採点式ダイエット」とBI法による身体組成測定を実施して、その経過と 効果を分析することにより、比較的簡便で自主的に実施できる効果的なダイエット行動と その自己評価法として、この方法の有用性について検討することであった。
結果を要約すると以下のようになる。
・全身的な評価では、「自己採点式ダイエット」実施前と比べ、体脂肪率・脂肪量が減少傾 向であり、除脂肪量は増加頃1同を示したが、いずれも有意差は認められなかった。
・分節的な評価では、「自己採点式ダイエット」実施前と比べ、体脂肪率は上肢および体幹 部で減少の傾向を示し、上肢については有意差が認められた。また、脂肪量については四 肢・体幹部のすべての部位で減少傾向を示し、除脂肪量と推定筋肉量については体幹部で 有意に増加傾向を示した。
・実施者から、この「自己採点式ダイエット」について概ね好意的な感想および有効な成 果を認める意見が得られた。
・比較的簡便で自主的に実施できる効果的なダイエット行動とその自己評価方法について、
今回の「自己採点式ダイエット」がその有効な方法の一つであることが示唆され、健康教