第1節結語
本研究の目的は、女性が健康を維持しながら効果的に実施できるダイエットプログラム について検討し、具体的な支援法を開発・提供することによって、健康教育・支援に寄与
し、人々のQOLの向上に資することであった。
肥満の改善・予防に関する先行研究より、問題の所在を検討し、5つの研究課題を設定 した。まず、効果的な健康ダイエットプログラムを開発するにあたり、現状調査として加 えておくべき知見を「研究課題1:青年期女性の自己体型認識と体脂肪率の関係」および
「研究課題2:青年期女性における運動環境と身体組成の関係」とした。次に、効果的な 健康ダイエットプログラムを提供する際、新たに必要になると思われる知見について検討
し、「研究課題3:成人女性における健康についての自己評価から見た健康体脂肪率の検 討」および「研究課題4:青年期および成人女性の身体組成における分節的評価の研究」
とした。さらに、効果的な健康ダイエットプログラムの内容について検討し、その開発と 検証を「研究課題5:健康ダイエットにおける自己評価法「自己採点式ダイエット」の開 発と検証」とした。
研究課題1では、女子高校生を対象として、自己の体型に対する認識を体重と体脂肪率 の関連から検討した。その結果、自己体型は、全体の42%が「やや太っている」と認識し、
体脂肪率が高くなるにつれて「太っている」と認識している者の割合が増える傾向を示し た。また、自己体型を判断する際、体脂肪率に比べて体重や見かけのサイズを優先してい る傾向を示した。体重および体脂肪率に対する調整意識については、「正常」や「るい痩」
であるにもかかわらず、全体の81L1%が体重を減らしたい、72−7%が体脂肪率を減らしたい と意識しており、社会的問題となっている若い女性の極端なやせ志向が、女子高校生にも 根付いてしまっているととらえられた。これらのことから、女子高校生における減量の危 険性を考察し、正しいダイエット教育の必要性を示唆した。加えて、このような「やせ志 向」をもたらす要因として、やせ体型を極端に賞賛するメディアの影響や「やせなければ 美しくない」といった風潮が圧力になっていると考えられるため、社会全体に向けて極端 な「やせ体型への賞賛」を是正すべく、働きかけていく必要性が示唆された。
研究課題2では、男女高校生を対象に、健康と運動に関する調査と身体の周囲径測定お
よび身体組成測定を行い、青年期における運動環境と身体組成の関連性について検討した。
その結果、体育・スポーツ関連学科の生徒は普通科の生徒より、男女とも身体および自己の 健康への関心が高いことが認められた。運動経歴については、男子は中学生時代から、女 子は小学生時代から運動環境が異なっており、その原因として幼少期におけるジェンダー バイアスが関係している可能性が示唆された。よって、幼少期から女子の運動を促進する ことが必要であり、そのためには性別にかかわらず活発な行動を積極的に認めていく考え 方を啓発して行くことが重要と考えられた。運動環境の差で比較したところ、運動環境が 充実している方が、男子では全身で評価した場合、体脂肪率が低く、除脂肪量が高くなる 傾向が見られたが、有意差は認められなかった。しかし、分節で評価した場合には、四肢 の筋肉量が有意に高いことが認められた。一方、女子では全身および分節での評価のいず れも体脂肪率が有意に低く、除脂肪量、筋肉量が有意に高いことが認められた。これらの ことから、運動環境は身体組成に影響を及ぼすと考えられ、身体組成の変化をみる場合に は、全身とともに分節の面からも評価する必要性が示唆された。
研究課題3では、成人女性を対象に、健康関連QOL尺度調査と体脂肪率の測定を行い、
成人女性における健康と体脂肪率の関係について検討した。また、目標とすべき「健康体 脂肪率」の提案も試みた。その結果、体脂肪率から身体の肥痩を判定する場合、分節的に は体幹部の体脂肪率が大きな要因であることが示唆された。また、体脂肪率が正常範囲に ある群は他の郡より健康度が高く、とりわけ身体的な要因での健康度が高いことが認めら れ、そ剛頃1向は年齢の高い方がより顕著であった。さらに、体脂肪率が低すぎると精神的 な健康度が低下し、体脂肪率が高すぎると身体的健康度が低下する可能性が示唆された。
そして、従来基準とされてきた標準体脂肪率に加え、新たな基準として設定を試みた成人 女性がめざすべき「健康体脂肪率」は、21%前後であることが示唆された。
研究課題4では、様々な年齢層の人々の身体組成測定を行い、その測定値を全身と分節 の双方から評価するための回帰式を求めることにより、身体組成の分節的標準値および分 節的評価について検討した。その結果、全身と分節の体脂肪率は有意で強い相関があり、
これらの回帰式の傾きの値は、男性では 上肢く下肢く体幹部 を示し、女性では 下肢く 上肢く体幹部 を示した。また、これまで設定されていなかった、身体を分節的に評価する 際の標準値を設定し、この値を活用することで、個々人の現状における身体組成の分節的 評価と事後の運動指導に寄与しうると考えられ、効果的なダイエット教育をするための有 益な方法の一つであることが示唆された。
研究課題5では、健康的でかつ効果的なダイエット方法として、科学的根拠に基づいた 内容で、食事・運動・生活習噴1をすべて含んだ項目を検討し、それらを総合的に自己評価 できる「自己採点式ダイエット」の開発・検証を行った。検証は、ダイエット行動に比較 的高い関心を持った成人を対象に、「自己採点式ダイエット」と身体組成測定を実施して、
その経過と効果を分析した。その結果、本方法のチェック項目として、食事・運動・生活 習贋を総合的に網羅した10項目(小項目は15)が適当であり、これを組み合わせて実施する
ことが有効と考えられた。また、本方法は、特許出願時に行われる先願調査で前例がなく、
オリジナリティに優れたものであると考えられた。そして、ダイエット行動を評価する際 に100点満点という具体的な数値で、簡便に自己評価できることから、実施者のモチベー ションを高めるという有用性があり、継続性に優れる方法であると考えられた。さらに本 方法は、基本的に食事量は減らさず、消費を促進することに重点をおいている点で、拒食 症など深刻な摂食障害発生の危険が少なく、リバウンドを回避できる可能性が高い方法と 考えられた。
「自己採点式ダイエット」実施前後の比較では、実施前と比べ、全身的な評価では体脂 肪率・脂肪量が減少傾向であり、除脂肪量は増加傾向を示したが、いずれも有意差は認め
られなかった。しかし、分節的な評価では、体脂肪率は上肢および体幹部で減少剛頃1同を 示し、上肢については有意差が認められた。また、脂肪量については四肢・体幹部のすべ ての部位で減少傾向を示し、除脂肪量と推定筋肉量については体幹部で有意に増加傾向を 示した。以上の成績から、今回開発された「自己採点式ダイエット」法が、これまでにな い独創性に優れたものであり、比較的簡便で自主的に実施できる効果的なダイエット行動
とその自己評価方法として有効であることが示唆された。
以上より、本研究では研究課題1および2から得られた知見を踏まえ、研究課題3から 得られた健康体脂肪率を健康的ダイエットの目標値とし、研究課題4から算出された分節 基準直と教育現場での活用法を有効に活用し、研究課題5で効果が検証された具体的方法 を実施していくことにより、健康的ダイエットが実現される可育自性が高いと結論づけた。
具体的には、まず青年期の女性が自己体型を実際よりも太っていると誤認識している場合 が多く、危険な減量を防止する教育の必要性があることと、身体細戒が日常の運動習1貫に よって影響され、その評価には全身とともに分節の面からも評価する必要があることなど を踏まえておくこと。その上で、女性が「健康体脂肪率」と考えられる21%前後を目標と
し、自分の身体組成を正しく評価するために、分節標準値を参照しながら身体のどの部位