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 先行研究より課題を検討し、本研究では研究課題として5つを設定した(p.33図1)。

 まず、研究目的である効果的な健康ダイエットプログラムを開発するにあたり、現状調 査として加えておくべき知見を研究課題1および2として設定した。次に、効果的な健康 ダイエットプログラムを提供する際、新たに必要になると思われる知見について検討し、

研究課題3,4として設定した。最後に、効果的な健康ダイエットプログラムの内容につい て検討し、その検証を研究課題5として設定した。

研究課題1:青年期女性の自己体型認識と体脂肪率の関係

 肥満に対する自己の認識に関しては、現状では男性よりも女性の方が肥満意識・減量行 動とも問題意識が高く(矢倉ら,1996)、自分の体型について実際より過大に太っているとい

う意識どやせ願望を持っている(外山ら,2000)。これらの認識や願望は、「やせなければオ シャレになれない」「若い女性むけのファッションはスリム体型にあわせてつくられてい ることが多く、それを着ることで自分が若い女性であると自覚できる」「やせた体型を維持 したり、きれいになる努力をすることが女性であり、その努力を行わなかったら、自分は 女性というカテゴリーから逸脱してしまう」といった社会的風潮・背景が強く関係してい

ると思われる。そのためこれらの女性らは、不必要もしくは危険な減量行動に取り組み、

健康を害する可能性が高いと考えられる。したがって、この志向を是正する何らかの教育

・支援が必要と考えられる。また、やせ指向は小学生から芽生え始めており、初経後にそ の傾向が強まる(松浦,2000b)ことから、心身の変化が著しい思春期において、自分が成人 女性であることの萌芽的な自覚が生まれることに伴い、成人女性と同様のやせ志向が芽生 え始める可能性が示唆される。したがって、小学生および初経を迎える前後の中学生・高 校生の女子に対して、正しい健康教育および指導が早急に必要であると考えられる。

 しかしながら、これらの見解は、身長と体重の関係により算出されるBMI値からアプロ ーチしたものが多い。肥満は、正常者に比べて過剰に体脂肪量(率)が蓄積された状態である ため、体重ではなく体脂肪率からの評価をするべきである。しかし、体脂肪率から評価し た研究は、大学生を対象にした研究は散見されるものの、それ以外の年齢層における状況 について調べたものはあまり見当たらない。昨今における、やせ指向の低年齢化を考慮し た場合、特に青年期の女性について調べる必要性は大きいことが示唆される。

そこで、本研究の研究課題1として、青年期女性の自己体型認識と体脂肪率の関係につ いて明らかにし、現状の問題点について検証を試みることとした。

研究課題2:青年期女性における運動環境と身体絶戒の関係

 高度肥満者を減らすためには、小児期からの継続的な運動習噴1が重要な意味を持つこと から、これらを調べて実態をつかむことは重要である(大野,1991)。

 そこで、本研究の研究課題2として、青年期女性における運動環境と身体組成の関連を 調査し、運動習噴1が体脂肪率に及ぼす影響について検証を試みることとした。

研究課題3:成人女性における健康についての自己評価から見た健康体脂肪率の検討  ダイエットプログラムを行う際には、健康を損なわないようにする必要があり、そのた めには、適正な目標体脂肪率を設定することが重要である(加藤,1997)。現在、全身の体脂 肪率については、東京慈恵会医科大学の判定基準(1993)を標準体脂肪率として用いられて いるのが一般的である。しかし、この基準は標準とされる幅が比較的広いために、目標を 絞り込みにくいという一面がある。そこで、標準範囲の中でも特にめざすべき体脂肪率を 目安として示すことができれば、ダイエットプログラム実施者にとって、さらに有用な知 見になると考えられる。

 そこで、本研究の研究課題3では、現状の標準体脂肪率を参考にしながら、主観的健康 感を測定できるSF−36の調査と体脂肪率の測定を行い、正しいダイエット支援を行う際の 新たな目標値である健康体脂肪率について検討することとした。

研究課題4:青年期および成人女性の身体組成における分節的評価の研究

 体脂肪の分布は個々によって異なるため、これらを身体組成の評価に活用することは、

健康教育を支援する上で有用と考えられる。例えば、全身体脂肪率が同じであっても、上 肢部の体脂肪率が高い人もいれば、体幹部の体脂肪率が高い人もいる。この値を正しく評 価できれば、特にどの身体部位について体組成を改善すべきかを個別指導する際の目安に なる。ただし、その指導にあたっては、脂肪を部分的に減らすのではなく、その部位の筋 肉を増やすことで、結果的に体脂肪率を下げることを十分に説明する必要がある。なぜな ら、脂肪を部分的に減らす、すなわち部分やせば科学的に不可能であることが複数の先行 研究(大野,1991;加藤,1997;漆原,1999)で示されており、これに対して筋肉はトレーニン

グした部分だけを肥大させることが可能だからである。また、セグメントごとの体脂肪率 が多いか少ないかの評価をするためには、基準となる標準値が必要となる。しかし、この セグメントごとの標準値なるものは、現在のところ一般的に示されていない。

そこで、本研究の研究課題4では、全身体脂肪率とセグメントごとの体脂肪率の関係か ら回帰式を算出し、上肢・下肢・体幹部の体脂肪率分布標準値を検討することとした。

研究課題5:健康ダイエットにおける自己評価法「自己採点式ダイエット」の開発と検証  効果的なダイエットをするためには、体重ではなく体脂肪の減量を意識すること(大野,

1991;鈴木,1995;漆原,1999)や、単品ダイエットに頼らず総合的にダイエットを考えるこ との重要性が指摘されており(大野,1991)、食事のバランスを保った上での摂取カロリーの 抑制や全身的に継続的に取り組むことが大切であると考えられる。また、食事の内容だけ でなく、運動の内容を工夫することおよび摂取制限より消費の拡大方法を念頭におくこと が大切であり(コパート,1990)、特別な運動をしなくても、日常生活の中で運動量を確保す るように心がけるだけでも効果は期待できることが示されている(大野,1991)。さらに、理 論と実践を100%完壁に行う減量計画をたてるのではなく、できるだけ心がけながら長く続 けるように努力することが大切である(大野,1991)。これらのことから、身体のエネルギー 代謝の仕組みを正しく理解し、脂肪燃焼を促進する食品の適切な摂取や行動、脂肪合成を 促進する食品の抑制、食事・運動・休養・鰯民のタイミングなどに配慮したダイエット方 法が求められていると考えられる。

 一方、ダイエットが続けられない原因としては、実施するその方法が煩雑なカロリー計 算などを必要とする上に、それに従うのが困難(レミシグトン,1987)な内容で、毎日続ける のが難しくなることがあげられる。よって、継続性の高いダイエットは、比較的簡便に実 施できる内容であることが必要と考えられる。また、実施者自身が自立的に実践できる方 法を教授することが大切である(竹中,2008)ことから、自分のダイエット行動を自己評価で きるようなプログラムの提供が必要と考えられる。

 そこで、本研究の研究課題5では、人々が健康を維持しながら効果的かつ自立的に実施 できるダイエットプログラムの開発について検討および検証することとした。

現状の把握 ← 先行研究および加えておくべき知見の研究

      研究課題1:青年期女性の自己体型認識と体脂肪率の関係

成人の前段階にあたる青年期女性の自己体型認識と体脂肪率の関係から現状の問題点を検証        研究課題2:青年期女性における運動環境と身体組成の関係

青年期における運動環境と身体組成の関連から、運動習慣が体脂肪率に及ぼす影響について検証

効果的な健康ダイエットプログラムを提供するために新たに必要になる知見の研究       ↓

 研究課題3:成人女性における健康についての自己評価から見た健康体脂肪率の検討 現状の標準体脂肪率を参考に、主観的健康感との関連から、健康体脂肪率を設定を試みる     研究課題4:青年期および成人女性の身体組成における分節的評価の研究

全身とセグメントごとの体脂肪率の関係から、上肢・下肢・体幹部の標準体脂肪率分布を設定

効果的な健康ダイエットプログラムの開発を検討および検証の研究       ↓

 研究課題5:健康ダイエッH二おける自己評価法r自己採点式ダイエット」の開発と検証 人々が健康を維持し、効果的自立的に実施できるダイエットプログラムの開発を検討と検証する

研究目的:女性が健康的に取り組めるダイエットプログラムの検討・支援法の開発・提供

研究の意義と期待できる成果

1.人間福祉的効果:肥満者の減少により、生活習慣病患者,要介護者,高度肥満者の減少と健康長         寿者の増加など、人間福祉において極めて重要な要素である、人々の健康生活

        を向上させる。

2.教育的効果  :健康に関する知識の定着、健康に対する意識と自己管理能力の向上、

        心身に危険なダイエットの防止、正しいダイエット行動支援、

        何が誤りでどうすべきかを判断できる能力を養成させる。

3.経済的効果  =疾病発症率の低下により、国・自治体・企業の医療費負担が節減される。

図1 研究課題一覧