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に,その割合が他の領域と比べて多く存在していた(図 2.6).それらの細胞集 団としての情報表現は,線条体全領域の情報表現と同様に,Choice cue提示後に Offered stimulus,Chosen stimulusの情報がともに有意に表現されていた(図2.7, 表2).対象の選択期間中におけるOffered stimulusとChosen stimulusの情報は,
それぞれ別々の細胞によって表現されていた(図2.8).
本研究で用いた行動課題は,実際に行う運動の選択とは時間的に独立した時
点で図形の選択を行うことができる独創的な課題である.さらに,Choice cueと して提示される 2 つの図形は,運動の方向(e.g. 眼球運動方向やリーチング方 向)を示さない上に,2×2 の形式(左右上下にそれぞれが提示)で提示される
ため,空間情報も 2つの Choice cueで等しくなっている.これまでは,運動選 択の要素が含まれた課題や運動の方向を示す課題を用いることで,線条体が行
動選択に関わっていることが主張されてきた19, 21, 22, 33.いくつかの研究では,線
条体が実際に行う運動とは関係のない報酬情報をコードしていることを報告し
ているが27, 28,これらの研究では,2つ以上の選択肢の価値を比較して望ましい
1つを選ぶという任意選択の要素が含まれていなかったため,実際に線条体が
運動要素を含まない選択行動に関わっているのかは明らかにできていない.そ
のため本行動課題は,運動要素を含まない行動選択の時間帯を巧みに抽出した
課題デザインである.そして,対象の選択期間中に Offered stimulus や Chosen
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stimulusの情報が線条体で有意に表現されていた結果は,線条体が運動要素とは
関係のない行動の選択に関わっていることを十分に示唆している.
線条体は,解剖学的に比較的独立しているいくつかの皮質—基底核ループによ
って広範な皮質領域と神経連絡を持ち,それぞれのループは,運動ループ,前
頭前野ループ,辺縁系ループ,眼球運動ループといわれている5.それぞれのル
ープは異なる機能を持ち,運動ループでは行動価値に基づく運動選択が行われ,
前頭前野ループでは運動要素とは関係のない価値に基づいた対象の選択が行わ
れることを示したモデルが提唱されている34.また,皮質から線条体への投射は,
基本的にはトポロジーであるとされているが,線条体上で異なる皮質領域から
投射を受ける領域もあることが知られており 9,10,11,この投射の重複が皮質から
の情報を統合するのに重要であるという考え方もある 12.本研究における
Offered stimulus,Chosen stimulusの情報が強く表現されていた吻側尾状核は,背
外側前頭前野(DLPFC)や,眼窩前頭皮質(OFC),前帯状運動皮質(ACC)か
らの投射を受けており5, 10, 10, 12,前頭前野ループに位置付けることができる.多
くのサルの電気生理実験やヒトのイメージング研究では,前頭前野,とくに眼
窩前頭皮質は運動要素とは関係のない価値に基づく行動選択に関わっていると
示唆されている24, 25, 26.また,前頭前野における色・形に反応する非空間的な視
覚情報は,吻側の尾状核へ入力されていることを示唆する研究もある35, 36, 37, 38.
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一方で,運動要素を含む選択においては,皮質領域では,高次運動野27, 39, 40, 41 が
重要であることを示唆する研究があり,こうした知見は運動要素を含む選択に
は,高次運動野を含むループの関与が考えられる.吻側線条体と前頭前野との
解剖学的な結合と前頭前野における情報表現を考慮すると,吻側尾状核は,前
頭前野ループ内における眼窩前頭皮質や背外側前頭前野,前帯状皮質 27などの
領域と運動要素とは関係のない価値や刺激の属性の情報をやり取りすることで
対象の選択に関わっている可能性がある.
吻側尾状核において,これまでに運動の要素とは関係のない報酬期待や,価
値(Flexible value)に相当する細胞活動があることが知られている27, 28, 42.また,
運動要素は含んでいるが,線条体の細胞が価値を表現している報告もある21, 22.
しかしながら本研究では,二種類の属性に報酬を割り当てており,それぞれ色
と形で少なくとも一種類の報酬量パターンの連合における神経活動のみしか観
測できなかった.すなわち,細胞活動が提示された図形の色と形と連合した価
値情報を表現しているのか,色や形そのものであるのかを区別することはでき
なかった.本研究における運動要素がない条件での対象の価値情報が線条体に
おいて,選択の前後でどのように表現され,選択に直接的に関わるのかは今後
の問題のひとつである.
本研究における吻側尾状核でのOffered stimulus の情報表現は,同一細胞上で
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その情報を遷移させる(Chosen stimulus typeに変わる)ことがなかった(図2.8). これは,Offered stimulus の情報が同一細胞上で遷移するのではなく,吻側尾状
核内の異なる細胞に変換された情報が送られていることを示唆している.この
結果の可能性の一つとしては,単純に皮質において 2 つの情報表現が存在し,
その領域からの異なる情報が異なる細胞に投射されているだけかもしれない.
もう一つの可能性は,Offered stimulus の情報がループを介して異なる細胞に少
しずつ変換されながら受け渡されているという可能性である.前頭前野ループ
内にとどまらず,皮質—基底核ループ間で情報の遷移がどのように起きているか
を調べることは大きな課題の一つである.
本研究結果は、前頭前野—皮質基底核ループにおいて運動の要素を含まない対
象の選択が起きているという仮説47を支持しており,今後,皮質—基底核ループ
において意思決定過程を調べる神経科学研究(Decision-neuroscience)において
吻側尾状核の位置づけを示す重要な研究であると言える.
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