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考察のまとめ

ドキュメント内 Indiana: Parlor Press. (ページ 151-198)

第 5 章 考察

5.6 考察のまとめ

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若干長いプロダクトを書いたことになるが、L2ライティングでは、L2能力の高い学生グル ープの方がより時間をかけて多い語数を書いた。L1プロダクトの評価はL2能力の高い学生 グループと同程度であるが、L2プロダクトの評価はかなり低かった。L2能力の低い学生グ ループの動機づけの特徴は、内発的動機づけが他グループよりも弱く、外的調整や取入調 整などの外発的動機づけが強いことである。L2 ライティングには、英語学習に対する内発 的動機づけの強さが肯定的に影響していると考えられる。

5.5.3 まとめ

L2能力の異なる2つの学生グループのライティング・プロセスにおける違いは、L2能力 で説明が可能であったが、L2能力の高い教職経験者グループのライティングと比較した場 合には、L2 能力だけで説明することはできなかった。L2 能力以外の要因としては、主に、

まとまった文章を書く指導を受けた経験や英語学習に対する動機づけが、ライティング・

プロセスに影響すると考えられた。

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を受けたことのない学生よりも、「局所的計画」が少なくて済んだ。これは、Sasaki (2002) の EFLライティング・モデルと一致する。L2 能力は、語彙の不足を補う方略を使用したり、

複数の表現からより効果的なものを選択したり、表現に磨きをかけたりすることを可能と し、一貫性に注意したり、読み手を考慮したりと、包括的視点によるライティングを支え る傾向が確認された。L2 能力が一定以上のレベルにあれば、局所的視点のみならず、包括 的な視点を持ってライティングを行う認知的な余裕を生むと思われる。

L2 能力の違いは、以上のように、ライティングにおいて包括的な視点を持ちうるかどう かに影響すると考えられる。また、「構成計画」の L2 から L1 ライティングへの転移、L2 ライティングにおける「テーマの計画」の効果的な使用、計画及び評価方略を使用する際 の認知負荷の軽減にも影響を与える傾向が認められる。しかしながら、L2能力のみでライ ティング・プロセスの違いを説明することはできず、他にも、まとまった文章を書く指導 を受けた経験や英語学習に対する動機づけが、ライティング・プロセスに影響する要因で あると考えられる。

例えば、まとまった文章を書く指導を受けた参加者は、その指導を受けた方の言語にお いて、書き出し前の計画をより詳細に行った。また、先に述べたように、L2 能力が低い参 加者グループでは、指導を受けた参加者は、受けなかった参加者よりも「局所的計画」が 少なくて済んだ。

動機づけの強さは、L2能力の高い学生グループのライティング時間やL2語数の長さにも 反映されており、動機づけがそれほど強くない L2 能力の高い教職経験者グループよりも、

時間をかけて長いプロダクトを産出した。このことが、L2 プロダクトの高い質に結びつい たと考えられる。

L2能力を高める指導と共に、まとまった文章をライティング方略を用いて効果的に書く 指導や、動機づけが、L2ライティング指導において、重視されるべきである。

最後に、L1、L2ライティング共に、参加者のライティング・プロセス中の「評価」には、

「課題の確認」や前に立てた「計画」が利用されており、Hayes & Flower (1980) モデル の書かれたテクストを読み返して修正する「推敲」プロセスよりも複雑であった。また、「評 価」は書かれたテクストに対してだけではなく、書こうとする考えや言葉についても行わ れた。このような点において、Hayes & Flower (1980) のモデルは修正する必要があると 考えられる。

145 終章

主な発見

本研究は、EFL環境の書き手のL1(日本語)とL2(英語)のライティング・プロセスは 異なるのか、また、L2能力がどのようにライティング方略の使用に影響するのかを、特に

「計画」と「評価」から成るメタ認知方略に焦点を当てて調査した。大学・大学院レベル の参加者10名を、L2能力の高い学生、L2能力の低い学生、L2能力の高い教職経験者の3グル ープに分けて、グループと個人のL1及びL2ライティング・プロセスを探索した事例研究で ある。

本研究にはいくつかの限界がある。詳細な質的研究であるので、今後、より規模の大き い実験を行い、量的分析によっても同様の結果を得られるかを確認することも必要であろ う。また、L1、L2ライティング実験における課題は各1題で、ジャンルは論証文しか扱っ ていない。しかしながら、他のジャンルでは、同じ書き手が異なるライティング・プロセ スを示す可能性もあり、物語文や説明文など、複数の課題でのライティング実験を、今後 行う必要がある。本研究にはこのような限界があるものの、個人のライティングを質的に 詳細に探索することで、L2能力や、ライティング指導を受けた経験の違いによる、L1、L2 ライティングのいくつかの重要な傾向を確認することができた。

まず、L2能力の異なる学生間の比較では、L2能力が高い方が、言語間のライティング・

プロセスはより類似していた。L2能力が低いと、L1ライティングではそれほど使用されな かった「局所的計画」が、L2ライティングにおいて顕著に多くなった。L2に直すための「局 所的計画」が必要とされたためである。また、L2に直すことに認知資源を多く費やし、L1 で使用した「包括的評価」方略を使用することができないなど、L2ライティングでは方略 のバリエーションが貧しくなる傾向にあった。L2能力の不足により、L2ライティングでは、

「計画」、「評価」などから成るメタ認知方略の使用を中心とするライティング方略の使用 において、視点が局所的なレベルに向き、包括的な視点を持って書くことが難しくなった。

構成を含めた概要の計画や、課題要求への適応、論理展開の一貫性、文章全体のスムーズ な流れ等に対する評価は、包括的な視点によりライティング・プロセスをコントロールす ることであり、プロダクトの質に肯定的な影響を与える傾向が認められたが、その実行の ためには、一定レベル以上のL2能力が必要であった。発話されなかったライティング方略 を分析した結果、L2能力は、計画及び評価方略使用において、認知負荷の軽減に寄与する 傾向が確認された。以上のことから、高いL2能力は、包括的な方略使用のための認知的な 余裕を生むと考えられた。

一方、L2能力が高い学生グループと、L2能力が高い教職経験者グループのライティング・

プロセスの違いは、L2能力では説明ができなかった。L2能力が最も高い教職経験者のライ ティング・プロセスも概して言語間で類似しているが、書き出し前の「計画」において言

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語間で違いが見られるなど、L2 能力が高い学生の場合ほどの高い類似性ではなかった。発 話されなかったライティング方略の分析からも、計画及び評価方略の使用時の認知負荷が、

L2ライティングでは、L2 能力の高い学生に比べて高い傾向があった。更に、L2 ライティ ングにおいて、より包括的なメタ認知方略である「テーマの計画」がエピソードのはじめ に表れてライティング・プロセスを導く割合も、L2 能力の高い学生グループに比べて低か った。そして、L2プロダクトの質がL2能力の高い学生グループに及ばなかった。

L2 能力以外にライティング・プロセスに影響する要因として、受けた指導や動機づけが 考えられた。L2能力の高い学生グループは、L1あるいはL2ライティングで、まとまった 文章を書く指導を受けているが、L2能力の高い教職経験者グループは、いずれの言語でも、

そのような指導を受けた経験がない。そして、L1、L2共に、L2能力の高い学生グループほ ど流暢に書いていない。また、英語学習に対する動機づけが、L2能力の高い学生グループ の方が強く、時間をかけて語数の多いL2プロダクトを産出した。このように、受けたライ ティング指導と英語学習に対する動機づけが、L2ライティング・プロセスの違いとL2プロ ダクトの質の差を生んだと思われる。

複数の参加者が、L2で習得した構成法をL1ライティングに使用していたことや、ライテ ィング指導を受けた経験のある言語でより詳細に計画を立てたことから、指導を受けて自 信をつけると、L1からL2のみならず、L2からL1へのライティング方略の転移も可能とな ると考えられた。

本研究は、ライティング・プロセスを質的に詳細に調査することで、L2ライティングに おいて、高いL2能力が「計画」や「評価」をはじめとするライティング方略の包括的使用 を可能にしたり、L2能力の不足がライティングの視点を局所的レベルに集中させ、L1で用 いることのできた包括的ライティング使用のための認知的余裕を失わせたりする傾向を、

参加者の実際のライティング・プロセスに詳細に確認することができた。参加者の人数は 多くはないが、同じ書き手のL1、L2でのライティング・プロセスを時間的経過に沿って詳 細に分析した事例研究であることが、本研究の特徴、意義であり、量的研究を補う役割は 果たしたのではないかと思われる。

理論への示唆

本研究の参加者達のL1及びL2ライティングでは、「計画」、「文章化」、「推敲」のプロセ スが、ライティングのどの段階でも行われ、Hayes & Flower (1980) のライティング・モデ ルと概して一致していた。しかしながら、Hayes & Flower (1980) のモデルでは、説明でき ない場合もあった。

1つは、L1、L2ライティング共に、このモデルで「計画」の下位範疇として設定されて いる「構成」の計画を全く行わなかった参加者や、「長期記憶」の中の、「読み手の知識」

を全く使用しなかったと思われる参加者がいたことである。Hayes & Flower (1980) のライ

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