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L2 能力の高い学生 B

ドキュメント内 Indiana: Parlor Press. (ページ 75-79)

第 4 章 分析結果

4.2 L2 能力の高い学生グループ…

4.2.3 L2 能力の高い学生 B

L2能力の高い学生グループの中で、最もL2能力が高かった Bの事例を見ていく。Bの CELT得点は、文法部門80点、語彙部門63点の合計143点であった。3歳から英会話を習 っているため、英語は人よりできるという自信がある。逆に、日本語で書くことは苦手だ と感じている。2回の短期留学(高校1年生でイギリスに2週間、大学1年生でカナダに1 ヶ月)と英語圏への旅行の経験が何度かある。

高校の授業では文単位の英訳を行い、受験指導として、入試の過去問題で 100 字程度の 意見文を書いた。大学ではまだL2ライティング指導を受けていない。L1 では、高校で小 論文の個人指導を受けた他に、大学で文章作成についての授業を受けた。

L1プロダクトの評価は143点で、2つの学生グループの平均点を20点近く上回った(表 5参照)。L2プロダクトは164点で、内容(60)51点、構成(40)34点、語彙(40)32点、

言語使用(50)39点、句読点や綴りなどの機械的技能(10)8点と、全ての項目において、

「良いから普通」に相当する評価を受け、教職経験者グループの平均点159.0点を上回った。

ライティングの流暢さは、L1で934字、30.81字/分、L2では194語、10.48語/分と、長 さにおいても、1分間当たりの産出字数・語数においても、かなり流暢に書いたと言える(表 6、表 10 参照)。観察メモにも、「流暢に速く書く」とある。ライティングにかけた時間 は、L1では32分00秒と、学生の中では比較的長く、L2では20分16秒と、どのグループ の平均時間よりも短かった(表7、表11参照)。

次に、実際のライティング方略の使用について見ていく。

書き出し前のライティング・プロセスを見ると、L2では課題を4回確認し、1分45秒で 書き出し、L1 では、「課題の確認」を 2 回行い、頭の中で賛成か反対かを考えた後、1 分 41秒で書き出した。L2よりL1の課題の方が難しいと感じており、「ポーズ」もL1で4回、

L2で1回と、L1でやや多かった。L1の「メタコメント」(3回)には賛成か反対の立場を 決めようとするものと、課題について難しいと述べているものとがあるが、L2の「メタコ メント」(2回)には課題についてのコメントはない。L1、L2共に、「課題の確認」、「メタ コメント」、「ポーズ」の使用は共通しているが、L2ではL1で見られなかった「自問」が2 回生じている。これは、和訳を読むまで、L2プロンプトの意味がよく理解できなかったた めである。一方、L1 では、L2 では見られなかった簡潔な「アイディア創出」が1 回だけ 見られた。L1では簡潔な「アイディア創出」を行った後に、賛成、反対の立場を考えたこ

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とを除いて、「計画」にあまり時間をかけず、メモも使用しなかったこと、書き出し後に書 きながら「計画」し、途中で「アイディア創出」や「評価」、「修正」を行うという再帰的 プロセスを経たことは、L1、L2ライティングに共通していた。

ライティング直後のインタビューでは、書き出し前の「計画」について、L2ライティン グでは普段から行わず、一方、L1ライティングにおいては、頭の中で、賛成、反対の立場 と、その理由を考えたと述べている。ただし、理由は具体的な発話とはならなかった。論 拠を多く示せる立場を選ぶという「計画」の方法は、高校のL1小論文指導から学んだ。

表15は、Bのライティング・プロセス全体におけるライティング方略の使用回数と割合 を示している。L1ライティングの発話プロトコルのセグメント数は155、L2ライティング では143と、同程度であった。

表15 Bのライティング方略の使用回数と割合

方略 L1ライティング n(%) L2ライティング n(%)

課題の確認 6(3.9) 6(4.2)

計画全体 11(7.0) 8(5.6)

包括的計画 0(0) 0(0)

テーマの計画 3(1.9) 0(0)

局所的計画 5(3.2) 4(2.8)

構成計画 2(1.3) 0(0)

結論計画 1(0.6) 4(2.8)

アイディア創出 9(5.8) 5(3.5)

メタコメント 5(3.2) 3(2.1)

ポーズ 19(12.3) 13(9.1)

文章化 44(28.4) 44(30.8)

読み返し 9(5.8) 19(13.3)

評価全体 16(10.3) 10(6.9)

L1/L2能力評価 0(0) 0(0)

局所的評価 15(9.7) 9(6.3)

包括的評価 1(0.6) 1(0.7)

修正 13(8.4) 16(11.2)

自問 7(4.5) 8(5.6)

質問 0(0) 0(0)

リハーサル 16(10.3) 7(4.9)

身体活動 0(0) 3(2.1)

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その他 0(0) 1(0.7)

以下は、L1及びL2ライティングでよく使用された方略である。

L1ライティング L2ライティング 1. 文章化 28.4% 1. 文章化 30.8%

2. ポーズ 12.3% 2. 読み返し 13.3%

3. リハーサル 10.3% 3. 修正 11.2%

4. 局所的評価 9.7% 4. ポーズ 9.1%

5. 修正 8.4% 5. 局所的評価 6.3%

L1、L2ライティング共に、使用されたライティング方略は「文章化」が最も多い。よく 用いられた5つの方略の中で、L1とL2ライティングに見られる違いは、L1ライティングでは

「リハーサル」が10.3%見られるが(L2では4.9%)、L2では書かれたテクストの「読み返し」

が13.3%ある(L1では5.8%)ことである。

「リハーサル」の内容を L1、L2 ライティングで比較してみると、L2 ライティングでは リハーサルしたものをほとんどそのまま書いており、「リハーサル」どおりに書かなかった のは、動詞の原形 (fail) でリハーサルして過去形 (failed) で書いたものと、名詞形 (failure) でリハーサルして実際には動詞 (fail) を書いたものの2回のみであるが、L1ライティング においては、16回の「リハーサル」のうち 81.3%に当たる13 回は、「リハーサル」とは異 なる表現で書いており、「リハーサル」直後の評価も 7 回見られる。例えば、「失う」とリ ハーサルしたものの、「失うって言ったら極端ですねえ。」と評価して「失いがち」と書い たり、「でしょう」とリハーサルしたが既に使用した表現であったため「はずです」と書い たり(同じ表現の使用を避けたもの2回)、適切な接続詞を探したり(3回)、主語とのつな がりで述語の表現を変えたりしている。特に後半から「リハーサル」が増え、文や段落の つながりに注意して表現を選択していた。L1ではより効果的な表現を求めて「リハーサル」

が行われたが、L2では、文法的な適切さを確認するにとどまっているのが、L1、L2ライテ ィングでの「リハーサル」の性質の違いであった。

書いたテクストの「読み返し」は、次に書くことを考えるためのものが、L1ライティン グの3回(33.3%)に対してL2ライティングでは11回(57.9%)と多かった。評価を目的とす る「読み返し」は、L1ライティングの66.7%に対してL2ライティングでは42.1%であったが、

L1、L2ライティング共に、包括的視点を持って読み返しているものも、「局所的評価」のた

めに読み返しているものも、どちらも含まれていた。

ライティング・プロセスの途中で行われた「計画」について見てみると、L1ライティン グで行われた「テーマの計画」や「構成計画」がL2ライティングでは為されていない。ラ

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イティング直後のインタビューで、L1では、序論・本論・結論の構成のみを計画し、内容 は書きながら考えたと述べている。序論・本論・結論の構成法は、大学の文章作成の授業 で学んだ。アンケート調査では、「学校で受けた日本語の作文指導は、英語ライティング法 にも影響している。」という項目において、「2:反対する」という選択肢を選んでいるので あるが、インタビューでは、この構成法がL2ライティングにおいても通用するのか疑問を 感じながらも、L2ライティングにおいても使用したと述べている。「局所的計画」について は、L1で5回(3.2%)、L2で4回(2.8%)と、使用頻度は同程度である。その中身は、L1で は内容の計画が4回、表現についての計画が1回、L2では、内容についての計画は1回で、表 現2回、文法1回の計画があり、L2ライティングの方が言語使用に計画を要している。

「評価」は、一貫性についての「包括的評価」が、L1、L2ライティング共に1回ずつあ り、「局所的評価」はL1ライティングの方が15回(9.7 %)で、L2ライティングの9回(6.3%)

より若干多い。L1の「局所的評価」は表現と内容に関するものが多く、L2では文法的正確 さに関するものが多いことは、「局所的計画」の内容とも呼応している。

「自問」は、L1ライティングで7回(4.5%)、L2ライティングでは8回(5.6%)見られ た。L1ライティングでは構成に関する「自問」が1回見られ、他は全てテクスト産出に関 するものであり、評価に関するものは全く無かった。一方、L2 ライティングでは、評価と テクスト産出に関する「自問」がそれぞれ3回ずつあり、Wong (2005) の範疇に収まらない 課題の確認に関するものが2回存在した。課題の意味がよく分からなかったためである。

インタビューとアンケートの結果より、L1ライティングは漢字が難しく、語彙も乏しく 表現したいことをうまく言葉にできないため、自信が無く、楽しいとも感じていないこと が分かる。一方、L2ライティングは、L1で考えてからL2に直すのではなく、L2で直接、

人より流暢に書くことができるため、リラックスして書くことができて、楽しいと感じて いる。L1ライティングよりもL2ライティングに自信を持っているのであるが、序論・本論・

結論の構成法の使用は、L1ライティングからL2ライティングへと転移させていた。しかし ながら、この構成法がL2ライティングにおいても受け入れられるかについての認識はなく、

賛成、反対の立場を決めて論拠を示すことも、構成法も、高校や大学のL1ライティング指 導により身に付けた技能である。L2 ライティングについては、先に述べたように、高校で は指導を受けたが、大学では指導を受けたことがない。

受けた指導と呼応して、方略使用のバリエーションも、L1 ライティングの「計画」の方 が豊かであり、「局所的計画」に加えて、L2ライティングでは見られなかった「テーマの計 画」や「構成計画」が行われ、より包括的な視点を持って計画方略を使用している。また、

「評価」に関しても、L1ライティングの方が内容に関する「局所的評価」が多く、L2ライ ティングでは文法的正確さに関する評価が多いため、内容の評価も見られるL1ライティン グの方が、若干、より包括的視点を持ちえている。「自問」は、評価に関するものが L2 ラ イティングにおいてのみ見られ、そのほとんどが文法評価の「自問」であった。

ドキュメント内 Indiana: Parlor Press. (ページ 75-79)