3.5 プロペラのキャビテーション性能と船尾変動圧力に及ぼすチップレーキの影響
3.5.2 翼先端近傍の流れと翼面上圧力分布
第 2 章でMPNo.1, 3 の模型試験結果からキャビテーション発生量とチップボルテッ
クスキャビテーションの強さに違いが確認できたため,MPNo.1, 3の翼先端近傍の流れ と翼面上の圧力分布 を確認した.Kempf のレイノルズ数は模型試験相当の RNK = 6×105とし,設計点の推力係数 KT = 0.18における均一流中での定常計算を行った.
Kempfのレイノルズ数 RNKは,動粘性係数を ,プロペラ回転数を n ,プロペラ直径
を D ,70%半径位置の翼コード長を C0.7,プロペラ前進率を J として次式で表す.
RNK = nD2
C0.7
D √J 2+ (0.7)2 (3.8)
(1) 翼先端近傍の流れ
Fig. 3.20 にプロペラ軸中心とプロペラ翼先端を通り軸方向に平行な切断面の相対
流速ベクトルを示す.なお両プロペラのプロペラ前進率 J は,KT を合わせるために若 干異なる.翼先端近傍の矢印部分の切断面と平行な方向の流速は,基準プロペラで
約 4m/s,バックワードチップレーキプロペラで約 1m/s であり,基準プロペラの回り込み
流れの範囲は,バックワードチップレーキプロペラの範囲よりも広く 0.985R 付近まで及 ぶことが確認できる.以上のように,翼先端でのバックワードチップレーキプロペラの フェイス面側からバック面側に回り込む流れは基準プロペラよりも明らかに弱いことが 確認できる.
また相対速度ベクトルの回転運動を表す渦度ベクトルの大きさの等値面をFig. 3.21
に示す.Fig. 3.21 からも翼先端近傍で,バックワードチップレーキプロペラの回り込み
流れの範囲が基準プロペラよりも狭く,チップボルテックスとして放出される渦が弱いこ とが確認できる.
Fig. 3.20 Flow from face side to back side near the tip
Fig. 3.21 Vorticity distributions MPNo.1
MPNo.3
0.985R 0.985R 0.9R
Tip
Tip 0.9R
MPNo.1 MPNo.3
(2) 翼面上圧力分布
Fig. 3.22(a), (b)にそれぞれバック面とフェイス面の圧力係数 Cpを示す.コンターの 青い部分が低圧部,赤い部分が高圧部を示しており,基準プロペラと比べて,バック ワードチップレーキプロペラのバック面とフェイス面の圧力は高くなることが確認できる.
また基準プロペラの翼先端近傍の圧力の低い部分は,前述の回り込み流れの速い範 囲や渦度ベクトルの大きな範囲と概ね一致していることが分かる.
Fig. 3.22(a) Pressure distributions on the back side
Fig. 3.22(b) Pressure distributions on the face side
Fig. 3.23に各半径位置断面(0.985R, 0.9R, 0.7R)の翼面上圧力係数 Cpを示す.基 準プロペラに対して,バックワードチップレーキプロペラのバック面は,0.985R,0.9R で コード長全域で,0.7Rで x/C = 0.1付近より後縁側で圧力が高くなることが確認できる.
フェイス面は,3 断面ともわずかにバックワードチップレーキプロペラの圧力が高くなっ MPNo.1 MPNo.3
MPNo.1 MPNo.3
ていることが確認できる.
キャビテーションが発生する翼先端付近のバック面の圧力は,基準プロペラに対し てバックワードチップレーキプロペラが高くなることから,キャビテーション発生量が少な ることが考えられる.
Fig. 3.23 Pressure distributions (0.985R, 0.9R, 0.7R) -4
-3 -2 -1 0 1 2
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1
Cp
x/C
MPNo.1 MPNo.3 0.985R
BACK
FACE
-4 -3 -2 -1 0 1 2
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1
Cp
x/C
0.9R BACK
FACE
-4 -3 -2 -1 0 1 2
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1
Cp
x/C
0.7R BACK
FACE