3.4 プロペラの流体力学的特性に及ぼすチップレーキの影響
3.4.2 CFD 計算結果
キャビテーションが船尾変動圧力と強い関係性があるため,キャビテーションが発生 するプロペラ翼回転角度が直上位置相当のプロペラ前進率 J = 0.1およびプロペラ設
計点の J = 0.4 のストレート,バックワードチップレーキとフォワードチップレーキプロペ
ラの定常計算を行い,半径方向推力分布,誘導速度と流速,圧力分布について確認 する.乱流モデルは LKE k-kL- モデルを用い,計算領域などの詳細は付録 B に示 す.
(1) 半径方向推力分布
Fig. 3.15(a), (b)にそれぞれ J = 0.1, 0.4 のストレート,バックワードチップレーキとフォ ワードチップレーキプロペラの半径方向の推力分布を示す.プロペラ全体の推力は同 一ピッチで計算しているため,ストレートに対してバックワードチップレーキは, J = 0.1 において-3.8%,J = 0.4 において-3.0%,フォワードチップレーキは, J = 0.1 において -4.5%,J = 0.4において+2.3%である.
0.9R の推力はストレートに対してバックワードチップレーキは, J = 0.1 において-24%, J = 0.4において-17%,フォワードチップレーキは, J = 0.1において+28%,J = 0.4に おいて+22%と,J = 0.1,0.4 ともに,ストレートに比べて翼先端付近ではバックワード チップレーキの推力は小さく,フォワードチップレーキの推力は大きくなることが分かる.
一方で J = 0.1,0.4ともに,翼根付近ではバックワードチップレーキの推力は大きく,
フォワードチップレーキの推力は小さくなることが確認できる.
Fig. 3.15(a) Thrust distributions (J = 0.1)
Fig. 3.15(b) Thrust distributions (J = 0.4) 0.0E+00
5.0E-04 1.0E-03 1.5E-03 2.0E-03 2.5E-03
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1
KT (r)
r/R TR0_0
BTR_0 FTR_0
0.0E+00 5.0E-04 1.0E-03 1.5E-03 2.0E-03 2.5E-03
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1
KT (r)
r/R TR0_0
BTR_0 FTR_0
(2) 翼面近傍の誘導速度
Fig. 3.12からCFDとSQCM計算結果が同様の圧力変化の傾向を示していることか
ら,境界層の外側の領域の主流の流れが変化しているものと思われる.全流速からプ ロペラ前進速度とプロペラ回転周速度を差し引いて誘導速度とし,境界層より十分外 側の翼面から3mm離れた翼面近傍の流れを確認する.
Fig. 3.16(a), (b)にそれぞれ J = 0.1のバック面とフェイス面の翼面から 3mm離れた 位置の誘導速度ベクトルを示す.ストレートプロペラに比べて,0.7R,0.9R 付近のバッ ク面の誘導速度は,バックワードチップレーキプロペラでは遅い,もしくは主流を減速さ せる傾向に,フォワードチップレーキプロペラでは速い,もしくは主流を増速させる傾向 にあることが確認できる.
また 0.9R 付近から翼先端部のフェイス面からバック面への誘導速度は,バックワー
ドチップレーキ < ストレート < フォワードチップレーキの順で大きくなっており,翼端 渦の強さと関係していることが考えられる.一方,0.7R 付近から翼根部のバック面前縁 側の誘導速度は,フォワードチップレーキ < ストレート < バックワードチップレーキの 順で大きくなっている.
Fig. 3.17(a), (b)にそれぞれ J = 0.1のバック面とフェイス面の翼面から 3mm離れた 位置の相対流速を示す.誘導速度の違いからストレートプロペラに対してバック面の バックワードチップレーキプロペラの流速は遅く,フォワードチップレーキプロペラの流 速は速くなっていることが確認できる.
Fig. 3.16(a) Induced velocities on the back side
Fig. 3.16(b) Induced velocities on the face side
TR0_0 BTR_0 L.E.
T.E.
0.7R
0.9R
FTR_0
Induced velocity (m/s)
L.E.
T.E.
0.7R 0.9R
FTR_0
Induced velocity (m/s) TR0_0 BTR_0
Fig. 3.17(a) Velocities on the back side
Fig. 3.17(b) Velocities on the face side
T.E.
L.E.
TR0_0 BTR_0 0.7R
0.9R
FTR_0
Velocity (m/s)
0.7R 0.9R
T.E.
L.E.
TR0_0 BTR_0
FTR_0
Velocity (m/s)
(3) 翼面上圧力分布
J = 0.1, 0.4のバック面とフェイス面の翼面上の圧力係数 CpをFig. 3.18(a)~(d)に,
J = 0.1, 0.4の 0.7R と0.9R 断面における圧力係数 Cpを Fig. 3.19(a)~(d)に示す.
ここで,プロペラ翼面上の圧力係数 Cp は,p を翼面上圧力,p0 を 基 準 静 圧 , を 流体密度,n をプロペラ回転数,D をプロペラ直径として以下のように表される.
Cp = p−p0 1
2 n2D2 (3.7)
レーキの異なる 3 種類のプロペラの翼面近傍で誘導速度に差が生じることにより,
Fig. 3.18(a)~(d)では J = 0.1, 0.4 ともにストレートプロペラに比べて,バックワードチッ プレーキプロペラのバック面とフェイス面の圧力は高く,フォワードチップレーキプロペ ラのバック面とフェイス面の圧力は低くなることが確認された.また翼根部付近のバック 面前縁側の圧力は,ストレートプロペラに比べて,バックワードチップレーキプロペラは 低く,フォワードチップレーキプロペラは高くなっている.
翼のコード長 C ,翼断面前縁からの距離を x とすると,Fig. 3.19(a), (c)から 0.7R 断 面においては,J = 0.1, 0.4ともにコード方向位置 x/C = 0.2付近より後縁側では,スト レートプロペラに対して,バックワードチップレーキプロペラの圧力は高くなる方向に平 行移動,フォワードチップレーキプロペラの圧力は低くなる方向に平行移動しているこ とが確認できる.x/C = 0.2 付近より前縁側では,ストレートプロペラに対して,バック ワードチップレーキプロペラの圧力が低く,フォワードチップレーキプロペラの圧力が高 くなる方向に変化していることから,バックワードチップレーキプロペラの有効迎角が大 きく,フォワードチップレーキプロペラの有効迎角が小さくなることが考えられる.
Fig. 3.19(b), (d)から0.9R 断面においては,J = 0.1, 0.4ともにバック面は,前縁から 後縁までストレートプロペラに対して,バックワードチップレーキプロペラの圧力が高く なり,フォワードチップレーキプロペラの圧力が低くなることが確認できるが,フェイス面 では各プロペラによる差は大きくないことが分かる.
このことから,0.9R 付近の推力がストレートプロペラに対して,フォワードチップレー キプロペラが大きく,バックワードチップレーキプロペラが小さくなるのは,バック面の圧 力分布の変化が大きく影響していることが確認できる.
Fig. 3.18(a) Pressure distributions on the back side ( J = 0.1)
Fig. 3.18(b) Pressure distributions on the face side ( J = 0.1)
Fig. 3.18(c) Pressure distributions on the back side ( J = 0.4)
Fig. 3.18(d) Pressure distributions on the face side ( J = 0.4)
FTR_0 TR0_0 BTR_0 L.E.
T.E.
FTR_0 TR0_0 BTR_0 L.E.
T.E.
FTR_0 TR0_0 BTR_0 T.E.
L.E.
FTR_0 TR0_0 BTR_0 T.E.
L.E.
Fig. 3.19(a) Pressure distributions at 0.7R ( J = 0.1)
Fig. 3.19(b) Pressure distributions at 0.9R ( J = 0.1) -10
-8 -6 -4 -2 0 2 4 6
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1
Cp
x/C
TR0_0 BTR_0 FTR_0
FACE BACK
-10 -8 -6 -4 -2 0 2 4 6
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1
Cp
x/C
TR0_0 BTR_0 FTR_0
FACE BACK
Fig. 3.19(c) Pressure distributions at 0.7R ( J = 0.4)
Fig. 3.19(d) Pressure distributions at 0.9R ( J = 0.4) -4
-3 -2 -1 0 1 2 3 4
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1
Cp
x/C
TR0_0 BTR_0 FTR_0
FACE BACK
-4 -3 -2 -1 0 1 2 3 4
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1
Cp
x/C
TR0_0 BTR_0 FTR_0
FACE BACK