第 6 章 バックワードチップレーキプロペラの実 船 適 用
6.2 低速肥大船用プロペラへの適用
6.2.3 キャビテーション試験
MPNo.A~C の 3 種類の模型プロペラを用いて,一般財団法人日本造船技術セン
ターのキャビテーションタンネルで伴流中のキャビテーション観察および船尾変動圧力 計測を実施した.
Fig. 6.1 の伴流分布をワイヤメッシュスクリーンで再現し,キャビテーション試験状態
は,計画満載喫水,連続最大出力状態の推力係数 KT = 0.203,キャビテーション
数 n = 2.44 とした.なお nはプロペラ直上の 0.7R 位置で設定し,チップクリアランス
はプロペラ直径の31.2%である.
(1) キャビテーション観察
キ ャ ビ テー ショ ンの 様 子 は ,ストロ ボ を プ ロ ペラ の 回 転 に 同 期 さ せて 撮 影 し た .
MPNo.A~C のキャビテーション最大発生時と消滅時の写真を Fig. 6.5 に示す.いず
れのプロペラも,プロペラ回転角 30deg.付近でキャビテーション発生量が最大となり,
プロペラ回転角50~60deg.付近で翼面上のキャビティが消滅している.またキャビテー ションの発生から消滅までの変化の様子は,いずれのプロペラともに良く似ている.発 生量を比較すると,基準プロペラ > チップアンロードプロペラ > バックワードチップ レーキプロペラの順で減少しており,バックワードチップレーキプロペラが最も少ない結 果となった.
なお,滑らかなチップレーキ分布形状を採用することで,過去の研究 [9]で見られた 0.9R 翼後縁近傍のアルマイト加工がはがれるようなキャビテーションエロージョンの兆 候は見られなかった.
Fig. 6.5 Cavitation observation
(2) 船尾変動圧力計測
船尾変動圧力計測は,プロペラ直上に配置した平板上の圧力センサで計測した.
計測点は第 2 章の Fig. 2.7 と同様にプロペラ直上の点を中心に前後,左右方向の合 計12点であり,圧力センサで計測された船尾変動圧力波形はFFT解析され,変動圧 力の i 次翼振動数成分の片振幅 ∆PiZは,(2.5)式によって変動圧力振幅係数 KPiZ に 無次元化される.なお KP-Pは船尾変動圧力振幅の全振幅(peak to peak)を無次元化 したものである.
Fig. 6.6にプロペラ直上付近の圧力センサによるプロペラ1回転中の変動圧力波形
を示す.3種類のプロペラ変動圧力波形を比較すると,基準プロペラ > チップアンロー ドプロペラ > バックワードチップレーキプロペラの順で波形の崩れと全振幅が小さくな り,翼数と同じ五つのピークが目立つ波形となっている.そのため基準プロペラで大き かった 2 次翼振動数成分は,チップアンロードプロペラとバックワードチップレーキプロ ペラでは減少傾向にあると考えられる.
30deg. 30deg. 30deg.
60deg. 60deg. 50deg.
BASE TUL BTR
Fig. 6.6 Reinforced signals of fluctuating pressure during one revolution
Table 6.4 に船尾変動圧力振幅係数の各翼振動数成分 KPiZと全振幅(peak to peak) の係数 KP-Pの最大値を示す.数値の大きい 2 次翼振動数成分の最大振幅は,基準 プロペラと比べて,チップアンロードプロペラは約 23%減,バックワードチップレーキプ ロペラは約51%減となり,特にバックワードチップレーキプロペラの低減効果が大きいこ とが分かる.
Table 6.4 Amplitude of fluctuating pressure
Type BASE TUL BTR
100 Kp1Z 0.82 0.97 0.90
100 Kp2Z 1.80 1.39 0.89
100 Kp3Z 0.64 0.57 0.62
100 Kp-p 5.84 5.67 5.03
Fig. 6.7 に最も振幅の大きな2次翼振動数成分(100 KP2Z)の前後方向と左右方向 の振幅の分布を示す.プロペラ直上点以外の位置でも2次翼振動数成分の最大振幅 は,基準プロペラ > チップアンロードプロペラ > バックワードチップレーキプロペラの順 で小さく,Table 6.4と同様の結果となり,分布形状も概ね同じ傾向を示している.なお,
BASE
BTR TUL
絶対値が小さい 1次と3 次翼振動数成分については大きな差は見られなかった.
以上の結果から,チップアンロードプロペラよりもキャビテーション発生量を少なく抑 えることのできるバックワードチップレーキプロペラが,船尾変動圧力の低減効果も高 いことが確認できる.
Fig. 6.7(a) Longitudinal distributions of fluctuating pressure amplitude (2nd blade frequency)
Fig. 6.7(b) Transverse distributions of fluctuating pressure amplitude (2nd blade frequency)
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4 1.6 1.8 2.0
-100 -75 -50 -25 0 25 50
100 KP2Z
distance from propeller tip position (mm)
BASE TUL BTR
fore aft
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4 1.6 1.8 2.0
-100 -75 -50 -25 0 25 50 75 100 125
100 KP2Z
distance from shaft center (mm)
BASE TUL BTR
port starboard
(3) 船尾変動圧力減少量の簡易推定式の検証
第 2 章の(2.11)式で提案した船尾変動圧力減少量の簡易推定式の有効性を確認
する.(2.7)式からチップレーキ率 X は,基準プロペラが X =0.003,バックワードチップ レーキプロペラが X =0.110となり,(2.11)式から船尾変動圧力振幅 2 次翼振動数成分
の減少量C2Z (%)は基準プロペラが-1.3%,バックワードチップレーキが-48.5%と計算さ
れる.基準プロペラからのバックワードチップレーキプロペラの減少量は約 47%となり,
模型試験結果の約 51%と良く対応した結果が得られた.系統試験で用いた伴流分布 や翼数とは異なる大型の低速肥大船 B の場合でも,模型試験結果と簡易推定式から 求まる減少量は良く対応することが確認された.なお 3 次翼振動数成分は,絶対値が 小さく模型試験結果の減少量は約 3%と小さかった.