P123 熱処理膜
4.6.8 総括
今回,作製したMPS薄膜について,異なるメソ細孔直径を持つMPS薄膜を作製する ために,メソ細孔のテンプレートとしてP123またはF127を使用し,テンプレート除去 方法として500 ℃での熱処理またはVUV処理を行い検討した.本研究において,P123 及びF127を鋳型とするMPS薄膜を作製することができた.XRD及びDFMの結果から,
VUV 処理及び熱処理の両方において,,均一細孔配列を有する MPS 薄膜が作製するこ とができた.また,熱処理と比較してVUV処理の方が,均一細孔配列を有しているこ とが観察された.このことから,焼結と比較して,より温和条件であるVUV処理の方 が均一メソ細孔配列を有するMPS薄膜作製に適していることが示唆された.また,XRD の結果から,テンプレート除去前後におけるXRDピーク及びdスペースの減少は,SiO2
骨格の縮小による一部の均一細孔の崩壊に起因すると考えられる.鋳型となるトリブロ
0 20 40 60 80 100 120
1 2 3 4 5 6
回数(回)
Re la ti ve a c ti vi ty (%)
SiO2 薄膜
P123 VUV処理膜
P123 熱処理膜
ックポリマーの分子量の違い,つまり作製したMPS薄膜の細孔サイズの違いは観察さ れなかった. F127を使用して作製した場合、XRDピークが大きく低下したことから,
メソ細孔の直径が大き過ぎるために,テンプレートを除去する際に,SiO2骨格を維持す ることができなかったために細孔が崩壊したためであると考えられる.以上のことから,
均一メソ細孔配列有するMPS薄膜の作製には,テンプレートとしてP123を使用し,テ ンプレート除去にはVUV処理が適していると考えられる.
バイオセンサーへの応用のために,タンパク質吸着能をProtein Aを用いて検討した.
更に,Protein Aが吸着したMPS薄膜上での抗原抗体反応が行えることを検討するため に,Protein A吸着後にIgGとProtein Aとの反応を検討した.
Protein Aの吸着能は,VUV処理を行った薄膜でわずかに低下していたが,他の薄膜
においては,ほぼ同程度の吸着能を示した.BET によるタンパク質吸着の結果から,
VUV 処理膜における吸着能の低下は,均一メソ細孔配列形成に起因していると考えら
れる.Protein Aのサイズは,約3 nmであるため,約5 nmの均一メソ細孔を有するVUV
処理をしたMPS 薄膜のメソ細孔内に捕捉されるような形式で吸着したために,SiO2薄 膜及び熱処理膜と比較して吸着能が低下していると考えられる.一方,SiO2薄膜及び熱 処理膜では,メソ細孔以外の SiO2膜に吸着するために,高い吸着能になったと考えら れる.
Protein A-IgG結合は,MPS薄膜上で行うことができた.Protein A-IgG結合は,1:
1のモル比で反応をするが,薄膜上における反応率は,10:1となった.反応率の低下 は,IgGの立体障害に起因すると考えられる.IgGのサイズが約10 nmであるため,薄 膜に吸着したProtein Aすべてと反応することができないと考えられるからである.通 常,Protein A-IgG結合及び抗原抗体反応を行う際,非特異的吸着を抑制するためにブ ロッキンズ処理を行うが,Protein Aがメソ細孔に捕捉されていること,更にIgGの立体 障害のために,MPS 薄膜上での反応において,ブロッキング処理を行うことなく非特 異的吸着を抑制することが可能となり,簡便で容易なProtein A-IgG結合及び抗原抗体 反応を行うことが可能となった.
実際のバイオセンサーへの応用を検証するために,MPS薄膜上でのELISA反応及び Cytochrome Cの触媒反応を行った.
MPS薄膜上でのELISA反応は,VUV処理薄膜が最も高い感度を示した.高感度の要 因としては,均一メソ細孔配列が考えられる.均一メソ細孔配列が存在することにより,
ELISA 反応で使用した一次抗体が,MPS 薄膜で均一に固定化されたために,効率的に 抗原抗体反応が起きた結果,高感度を示したと考えられるからである.一方,SiO2薄膜 及び熱処理薄膜においては,一次抗体が均一に固定化されなかったために,抗体の立体 障害が生じ,効率的な抗原抗体反応を行えなかったために,感度が低下したと考えられ る.また,薄膜上のCytochrome Cの触媒反応において,VUV処理薄膜が,最も優れた 繰り返し特性を示した.一方,SiO2薄膜及び熱処理薄膜においては,それぞれ約 75 %
及び約79 %の活性低下が観察された.P123VUV処理膜における繰り返し特性の向上は,
メソ細孔内に使用したCytochrome Cが捕捉され,固定化されたことにより,薄膜から 脱離しにくくなったことに起因すると考えられる.SiO2薄膜及び熱処理薄膜は,メソ細 孔ではなく,SiO2骨格が崩壊し生じた SiO2膜などに吸着しているために,繰り返し反 応の際に脱離しやすくなり,活性が低下したと考えられる.今後は,タンパク質または 酵素のサイズの違いによるMPS 薄膜上での酵素反応及び繰り返し反応特性について検 討を行い,最適な分子サイズを検討し,バイオセンサーへの応用を検討する必要がある と考えられる.