3.7 結果及び考察
3.7.5 タンパク質の高次構造解析
3.7.5.1 二次構造の測定
BSA及びlysozymeの二次構造の測定結果をFig.3.8に示す.また,得られた二次構造
の結果の解析結果をTable3.3にまとめる.使用したHApは,3.7.2の結果より,BSA及 びlysozymeの吸着能が優れていたpHCP-3及びpHCP-4を使用した.
1) BSA
BSAの二次構造は,HApに吸着そして脱離させることにより,-ヘリックスがpHCP-3 の場合,20.6 %から15.7 %へ,pHCP-4の場合,20.6 %から15.4 %へと減少し,ランダ ム鎖がpHCP-3の場合,28.7 %から26.4 %へ,pHCP-4の場合,28.7 %から25.0 %へとわ ずかに減少した.また,-シート及び-ターンの変化も,5 %以内のわずかな変化が観 察された.
2) Lysozyme
Lysozymeの二次構造は,pHCP-3に吸着そして脱離させることにより,-ヘリックス
は,7.9 %から20.2 %へと増加した.pHCP-4の場合,-ヘリックスは,7.9 %から18.0 % へと増加した.また,-シート,-ターン及びランダム鎖の変化は,6 %以内のわずか な変化が観察された.
3.7.5.2 三次構造の測定
BSA及びlysozymeの三次構造の測定結果をFig.3.9に示す.使用したHApは,3.7.2 の結果より,BSA及びlysozymeの吸着能が優れていたpHCP-3及びpHCP-4を使用した.
1) BSA
FreeのBSAに含まれるTrpの最大の蛍光ピークは,約330 nmに観察された.pHCP-3
及びpHCP-4それぞれに吸着させたBSAに含まれるTrpの最大の蛍光ピークは,それぞ
れ325 nmと335 nmであった.
2) Lysozyme
Free のlysozyme に含まれるTrp の最大の蛍光ピークは,約 330 nmに観察された.
pHCP-3及びpHCP-4それぞれに吸着させたlysozymeに含まれるTrpの最大の蛍光ピー
クは,それぞれ336 nmと334 nmであった.
CD スペクトルの結果から,BSA の二次構造は,約 5 %以内の変化を観察した.
Lysozymeにおいては,約13 %以内の変化を観察した.また,Trpによる三次構造の検
討は,数nmのシフトを示した.しかし,3.7.4の結果から,加水分解酵素スブチリシン の活性及び立体選択性が低下していないため,BSA及びlysozymeの高次構造の変化は,
タンパク質及び酵素の活性に対して悪影響を及ぼさない範囲であると考えられる.なぜ なら,二次構造及び三次構造が変化しタンパク質及び酵素の活性に対して悪影響を及ぼ すのであれば,3.7.4 の結果において,スブチリシンの活性及び立体選択性が低下する と考えられるからである.そして,タンパク質の高次構造の検討において,二次構造の
最大で約13 %の変化は,CDスペクトル測定時に使用した緩衝溶液の塩濃度に起因して
いるものと考えられ,タンパク質の三次構造が変化する場合,Trpの最大蛍光ピークの ピークシフトは,数nmではなく数十nmのシフトを示すからである(13).以上のことか ら,二次構造の変化は,緩衝液の塩濃度に起因し,三次構造は,ほとんど変化せず,加 水分解酵素スブチリシンの活性及び立体選択性の低下が観察されなかったため,HAp に吸脱着することによるタンパク質は,変性していないと考えられる.
39.8 37.8 34.6
15.4 pHCP-4から脱離後
15.7 pHCP-3から脱離後
20.6 Free
-sheet (%)
-helix (%)
(a) BSA -turn (%)
19.7 20.1 16.1
Random (%)
25.0 26.4 28.7
34.4 30.4 33.9
18.0 から脱離後
20.2 pHCP-3から脱離後
7.9 Free
-sheet (%)
-helix (%)
(b) lysozyme -turn (%)
20.4 21.9 27.3
Random (%)
27.3 27.4 31.0
Table 3.3 CD スペクトルから得られた二次構造の割合
(a)BSA , (b)Lysozyme
Fig.3.8 CDスペクトルによる二次構造の解析(a)BSA,(b)Lysozyme
-200000 -150000 -100000 -50000 0 50000 100000 150000 200000
190 200 210 220 230 240 250 260
Wavelength(nm) [θ] (deg・cm2 /dmol)
Free pHCP-3 pHCP-4
-200000 -150000 -100000 -50000 0 50000 100000
190 200 210 220 230 240 250 260
Wavelength(nm) [θ] (deg・cm2 /dmol)
Free pHCP-3 pHCP-4
(b)
(a)
(a)
(b)
Fig.3.8 タンパク質に含まれるTrpの蛍光測定 (a)BSA,(b)Lysozyme
0 20 40 60 80 100 120 140 160
300 310 320 330 340 350 360 370 380
Wavelength(nm)
Fluorescence Intensity
Free pHCP-3吸着状態 pHCP-4吸着状態
30 32 34 36 38 40 42 44
310 315 320 325 330 335 340 345 350 355 360
Wavelength(nm)
Fluorescence Intensity
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100
300 310 320 330 340 350 360 370 380
Wavelength(nm)
Fluorescence Intensity
Free pHCP-3吸着状態 pHCP-4吸着状態
20 25 30 35 40 45
310 315 320 325 330 335 340 345 350 355 360
Wavelength(nm)
Fluorescence Intensity
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