XIS-S0-A
6.5 絶縁層 ( Insulator )
XISの55Feなどのスペクトル(図2.18など)には、全PH 領域にわたってスペクトルピークを 作らないイベントが存在する。これらを一般に Tail の定数成分と呼ぶ。また、低エネルギー側に は、[19]で明らかになった SiO2 起源のイベントが存在すると考えられる。
これらのイベントは、いずれも Insulator に関係すると考えられるので、この成分を再現する ために部分吸収という概念を導入する。部分吸収という概念は、[11]でTail の定数成分を再現す るために導入された。[11]中での部分吸収とは、
1
Insulator で光電吸収され、光電子が空乏層に入り
込んだイベント
2 空乏層で光電吸収され、光電子が Insulator に入り 込んだイベント
の2種類である。1、2とも W 値は空乏層と同じ値を 仮定し、光電子の総飛程のうち空乏層が占める割合だけ 電荷が集められるとモデル化されていた。
しかし、Insulator 中で起きたイベントでもある程度
電荷が集められることが明らかになったため、Insulator 中のイベントのパターンに従来の 2 つに加えて、
3
Insulator 中で光電吸収され、光電子が他の層に到
達しない場合
4
Insulator 中で光電吸収され、光電子が Gate に到 達する場合
5 空乏層中で光電吸収され、光電子が Gate まで到達 する場合
の 3 つを新たに導入した。1、2 の場合も、Insulator からの電荷があるとして集められる電荷の量に以下で示 すような変更を加えた。
光電子の飛距離に対し、Insulator と空乏層での光電 子のパスの長さの 割合をそれぞれa; b、空乏層、
Insula-tor 中での平均解離エネルギーを WSi、WSiO2 とおく。
このとき集められる電荷量qfinal を次 のようにモデル化 した。
2 1
x
Cover
入射X線
空乏層
Insulator
y
Gate
図6.9: [11]での部分吸収イベント の定義
空乏層
入射X線
Cover
5
Burried Channel
1 2 3
Gate
Insulator
4
図 6.10: 部分吸収イベントの定義
拡張と場合分け
q
final
= 8
>
>
>
<
>
>
>
: a2
E
X
W
S iO
2
+b2 E
X
W
S i
1
;
2
;
5
E
X
W
SiO
2
3
a2 E
X
W
S iO
2
4
(6.30)
Insulator 中で吸収された電荷には、空乏層と同様に生成電荷の個数揺らぎを生じるとした。
ただし、Fano 因子の値が不明なので、空乏層と同じ値を仮定した。
6.6. Pixel モデル 82
6.6 Pixel
モデル
XIS-CCDの各Pixelを[19]を参考にして 図6.11のようにモデル化した(パラメータは表
6.2 参照)。各 Pixel は全く同等とした。
1. CCD のどのPixel に入射するか
2. Pixel 内の相対位置
3. 吸収位置の CCD 表面からの深さ(ある いは透過)4
4. 光電子の走る方向
5. 生成電荷の個数揺らぎ(Gaussianを仮定) について乱数を振り、イベント追跡型のモン テカルロシミュレーションを行った。指定した 個数の光子をシミュレートした後、各Pixelの 電荷量に読みだしノイズの揺らぎを加え、実 験と同じフレームformatでセーブする。セー ブされたframe データは、XISのデータ解析 と全く同じ解析ソフト(イベントセレクション 等)で処理した。
0000000000000000000000000 0000000000000000000000000 0000000000000000000000000 0000000000000000000000000 0000000000000000000000000 0000000000000000000000000 0000000000000000000000000 0000000000000000000000000 0000000000000000000000000 0000000000000000000000000 0000000000000000000000000 0000000000000000000000000 0000000000000000000000000 0000000000000000000000000
1111111111111111111111111 1111111111111111111111111 1111111111111111111111111 1111111111111111111111111 1111111111111111111111111 1111111111111111111111111 1111111111111111111111111 1111111111111111111111111 1111111111111111111111111 1111111111111111111111111 1111111111111111111111111 1111111111111111111111111 1111111111111111111111111 1111111111111111111111111
保護膜
1 Pixel (24 m)
光電吸収点
1次電子雲
ドリフト
拡散
0.30 0.30 0.175 0.175
Pixel 境界
不感層
0000000 0000000 0000000 0000000 0000000 0000000 0000000 0000000 0000000 0000000 0000000 0000000 0000000 0000000
1111111 1111111 1111111 1111111 1111111 1111111 1111111 1111111 1111111 1111111 1111111 1111111 1111111 1111111
µ
Transfer Channel
Xray
Split Event Single Pixel Event
000 000 111 111
Insulator (SiO Gate (Poly Si) )
2
m m 50 - 70 µ 370
Epitaxitial
層µ
中性領域 (Si) 空乏層 (Si)
図 6.11: Pixel モデル(Vertical 転送方向の
CCD 断面図)
厚さ [ m]
Layer 構成元素 密度[g/cm3]
XIS-S0 XIS-S1
Cover SiO
2
2.20 0.175
Gate PolySi 2.42 0.30
5
Insulator SiO
2
2.20 0.175
空乏層 Si 2.34 77.76 61.87
中性領域 Si 2.34 370.0
表6.2: CCD の各層のパラメータ
6.6.1 XIS
の各センサーのパラメータ
シミュレーションを行う際、使用したパラメータを表6.3 に示す。CCD Gain は Mn K の スペクトルをダブルガウシアンモデルで tting して求めた値である。Dark Level と読みだしノ イズは、それぞれ Active 領域、HOC 領域の Pixel の波高分布を シングルガウシアンモデルで
tting して求めた値である。
4式(2.2)に従う乱数で決定
5
GateがOverlapしているところでは0.60m
Insulator
→Insulator Insulator
→Gate
熱拡散 再結合 熱拡散
Insulator
→空乏層 空乏層→Gate
X線光子をGenerate
入射Pixel 決定
空乏層→
Insulator
光電吸収点を決定
次のイベントへ
Gate, Backside Diode
空乏層Insulator
中性領域中性領域
各Pixel への電荷配分 光電子が止まった深さを計算
光電子の飛程を計算
部分吸収 空乏層
図6.12: シミュレーションのフローチャート
図 6.13: シミュレータからの出力(MnK の エネルギーでシミュレート)
図6.14: XIS-S1に 55Fe を当てたイメージ)
Sensor-Segment XIS-S0-A XIS-S0-B XIS-S0-C XIS-S1-A
Mn K中心 PH[ch] 1723.0 1606.2 1782.9 1704.8
Gain [eV/ch] 3.42 3.67 3.31 3.46
Dark Level[ch] 199.5 204.8 197.3 454.2
読みだしノイズ[e0] 3.13 2.84 2.83 3.42
Si Escap e 確率 [%] 1.13
Si確率 [%] 0.21
Vertical CTI 1 2 10
06
Horizontal CTI 1 2 10
06
表 6.3: 各Sensor のシミュレーションパラメータ
6.6. Pixel モデル 84
6.6.2
キャリア数から
PHへの変換
シミュレータ内部では、CCD の素過程と同様に、入射 X 線のエネルギー情報を電子の個数 で扱っている。しかし、実際の実験で得られるデータは AD 変換されたあとのPH [ch] であるた め、シミュレータからの出力を PH にする必要がある。
この変換において基準となるのは、Mn K のスペクトルをGaussian で tting したときの
Gaussian の中心波高値をPHMnK として、
Gain E
MnK
PH
MnK
(6.31)
と定義した Gain である。この Gain が一致するように、つまりPHMnK がデータとシミュ レーションで一致するように以下で定義する a というパラメータを調節する。
PH
MnKは、MnKに相当するエネルギーEMnKでの平均解離エネルギーをWSi(EMnK)、 光電吸収で生成された電荷のうち集めることのできる電荷の割合f を用いて、
PH
MnK
(ch)=f E
MnK
W
Si (E
MnK )
2a (6.32)
と書くことができる。この中で f は、シミュレータの内部で自動的に決定される6。したがっ て、データとシミュレーションのPeakPHが一致するように我々が調節できるのは、 a
W
Si (E
MnK )
の値である。ここでWSi(EMnK)を独立に決定する方法は存在しないので、本論文ではWSi(EMnK)
3:654138eV と仮定した。よって、我々がMnKのデータとシミュレーションの比較で決定する
のは、aというパラメータである。a はいわばアナログ回路の増幅率に相当する量で、入射X線 のエネルギーに依らない量である7。
このように、MnK での Gain を用いて a を決定すると、a はエネルギーによらないので、
他のエネルギーでのシミュレーションにも同じ値を用いることができる。このときのPHのPeak は、
PH(ch) =f(E
X )
E
X
W
Si (E
X )
2a (6.33)
となる。
電荷のSplit の仕方について、シミュレーションが正しく行われていると仮定すると、f(EX)
は自動的に正しい値に調整されるはずである。したがって、もしあるエネルギー EX でデータと シミュレーションのPeakPH(ch) が異なるとすれば、シミュレーションで仮定したWSi(EX)が 実際と異なることを意味する。シミュレーションでは WSi(EX) の初期値として、[21] の計算値 を用いたが、実際に OK、Mg K などのデータと比較した時点でデータを再現する WSi(EX) の 値を決定し、その値を以降用いた。
表6.4 の変換係数を用いて、電子数 ! PH の変換を行なった。
6
f は、シミュレータ内部でスプリットが0の空乏層イベントだけを取り出したPHスペクトルのPeakと、Split も考慮したPH スペクトルのPeakを比較することで得られる
7回路の線形性は完全であると仮定している
Sensor a [ch/electron]
S0-C 1.108
S1-A 1.059
表6.4: 電子数から PH への変換係数