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結論

ドキュメント内 報告書(2014年12月~2016年3月) (ページ 79-105)

最後に、何を変えなければならないかをまとめます。

新しい実践を許さない行政のあり方が大きな阻害要因となります。東京で小規模多機能が普及 しない背景には、この問題があります。行政が変わっていかなければなりませんが、克服する努 力や工夫も求められます。

最近私が注目したところで「恋する豚研究所」というところがありますが、養豚業のオーナー で農業においても優れた方で、しかも付加価値をつけることにすごいアイデアのある人なのです。

彼は障害者の人に養豚をしてもらって、美味しいハムを作り、市場に出すときは一切福祉の色は 出さずに、「恋する豚研究所のハム」として出してしっかりビジネスをし、障害者にもお給料を払 っています。

そうした一つ一つのパワーのある活動は今、いろいろなところで出てきているので、これらの 実践を見える化し、ネットワーク化していくようにしなければなりません。

さらに、現実問題として生活形態が多様化してきて、全体を包括的にといっても、格差の問題 は避けて通れません。経済成長でいい思いをしてきた日本人が、いきなり生活水準を低下させて、

格差の解消にその分を提供するといった行動様式が求められるようになると思います。富裕層に は大きな負担を求めざるを得ない時代がきます。ピケティの議論ではありませんが 格差を解消 するために、成長路線が通用しないとしたら、とるかとられるかというゼロサムゲーム状況にな ります。そうすると、正義と公正を実現するために、連帯と負担を求めるという問題をどう扱う かは難しい問題です。

それから、資源の過小と過剰についていうと例えば、前述の、施設は足りないのに空き家は増 えているという現象、これは明らかに資源がおかしな分配のされ方をしているということです。

資源の過剰と過小という現象の調整機能をどこに求めるのでしょうか。

その意味で、既得権益の利害の構造の相対化を考えなければなりません。

多くの医療介護関係者は財政問題にあまり関心をお持ちでないような気がしますが、医療費は 保険料と公費で負担されていますね。保険料についても徴収額に限界が見え始め、また、高齢者 と非正規職員が増えればますます負担に限界がきていますし。それを補足すべき公費についても その原資である税収がとりわけ地方・国をとわず減少傾向ですし(だから赤字公債で賄ってきて 累積残高が巨額になりました。)地方交付税などは、大都市部の医療介護需要をはじめ行政需要 の増大が見込まれるので、地方への配分に明らかに限界がきます。また、自治体はインフラのメ ンテナンスに多くの財源を割く必要がおこりますから、事態は深刻です。

また、税金のもとの所得税は生産年齢人口の縮小や非正規化の進行などでますます縮みます。

空き家が増えれば地方の税収の基盤である固定資産税にはねます。

その意味では、過剰な投資で破綻した夕張でおこったことが全国の到るところにこれから波及し ます。私は日本全国の夕張化と私は呼んでいるのですが。夕張を特別な事例で他人ごとと思って いる人が多いのですが、これは日本の社会がこれから経験することを教えてくれる貴重な事例な のだと思っています。

だからその後、医療介護がどうなったかそして、高齢者の方々の暮らしがどうなったかについて は夕張診療所の所長を務めた森田洋之氏が興味深い本を出版しました。8

今進行中の次期の診療報酬および介護報酬改定が極めて厳しい改定が予想されるのも、財政危 機に対してどうするか、安部内閣の政策を実現する財政措置のために、財源として社会保障削減 を財政当局が要求しているからです。いまの政治は旧来型の成長路線を目指して経済成長によっ て財政危機を乗り切れるという夢想で政治が行われていますが、現実はそうはならないだろうと 思います。また、利害団体は旧来型のやり方に固守しているかぎり、解決策はありません。従来 型の医療介護提供体制ではやっていけないことだけははっきりしています。

私の結論は、コモンズというものを我々がどう想像できるかにかかっていると思います。都市 も町もいつまでもピカピカであり続けることはありません。その中で新しい予兆を発見しつつ、

これらの動向をどのようにソリューションとして一般化できるか、イマジネーションを持ったイ ノベーターがいろいろなところであらわれ始めているのですからそれらをうまくつないで大きな 潮流にしていくことを考えていかなければなりません。

その意味で地域包括ケアシステムは理想ではなく、現実の動向へのただ一つのソリューション であると思うのです。

後記 本稿は第 9 回「大都市における地域包括ケアをつくる政策研究会」(2015 年 8 月 20 日)

での報告の速記録をもとに、補足の追加と修正を加えたものである。

1、この予測の問題点については、「大都市高齢化対応への提言を誤らせた医療介護提供体制の杜撰な 予測」『医療介護 Next』誌 No4メディカ出版刊 で詳細に述べた。

2、1912 年原著初版、岩波文庫に中山伊知郎、東畑精一、塩野谷裕一による翻訳がある。

3、 訳書239ページ。

4、 「日本は悪くない〜悪いのはアメリカだ」1987 年初版、後に文春文庫。

5、こぶし園については、「特養を分散して地域ケアを再発見〜小山剛氏の業績を偲ぶ」『医療介護 Next』

誌 No3メディカ出版を参照のこと。

6、「災害ユートピア〜なぜそのとき特別な共同体が立ち上がるのか」亜紀書房 2010 年刊。

7、冨山和彦「なぜローカル経済から日本は甦るのか」PHP 新書 2014 年刊

8、森田洋之「破綻からの奇跡〜いま夕張市民から学ぶこと〜」南日本ヘルスリサーチラボ刊、この書 物は Amazon から入手可能である。

第 10 回「大都市における地域包括ケアをつくる政策研究会」

和光市における超高齢社会に対応した地域包括ケアシステムの実践

マクロの計画策定とミクロのケアマネジメント支援

…日本が目指す 27 年度からの第 6 期介護保険事業計画の推進…

話 題 提 供 : 東内 京一 氏 和光市保健福祉部長

日 時 : 2015 年 9 月 17 日(木)19:00~21:00

場 所 : 東京都千代田区丸の内 1-7-12 サピアタワー6F ステーションコンファレンス東京 605B 会議室

◆第 10 回

和光市における超高齢社会に対応した地域包括ケアシステムの実践

【話題提供】

東内京一氏(和光市 保健福祉部長)

1.和光市の地域包括ケアシステム

〈和光市の概要〉

和光市は埼玉県南部に位置する人口8万人弱の近郊都市です。都心部への交通の利便性が優れ ているため、子育て世代を中心とした若年人口の流入が多く、高齢化率は16.9%と全国的にみて も低くなっています。とはいえ、団塊の世代が人口のピークを形成しており、今後は高齢者数が 急増することが見込まれます。

〈介護保険制度をめぐるこれまでの経緯〉

介護保険制度は平成 12 年に始まり、平成 18 年の改正では地域包括支援センター、予防給付、

地域密着型サービスなどが創設されました。この予防給付による効果が得られなかったことが、

要支援を整理する今の動きへとつながっています。批判的な声もありますが、本来であれば、予 防に取り組めば要介護認定が低減してくるはずであり、地域密着型サービスが展開されれば地域 での認知症ケアや在宅での看取りは増えくるはずです。そういったことがないまま今に至ってし まってしまい、地域包括ケアシステムという課題を前に、大変だといって四苦八苦している。そ れが今の保険者の状況ではないかと思っています。

要介護度別の認定者数をみると、要支援1~要介護1が全体の46.7%(平成25年度)を占めて いますが、このこと自 体が問題だと思うの です。このまま推移す れ ば 軽 度 認 定 者 は 50%を越えるでしょ う。大変なのは、その 層が重症化したとき です。総合事業はこう いった状況を受けて 始まったものであり、

これからは軽度認定 者をうまく総合事業 へと移行していく必 要があります。

〈医療・介護サービス保障の改革イメージ〉

これは国がつくった図を簡単にしたものですが、改革法の中で示されているのは、急性期医療 やリハビリテーションを強化して退院を促進することです。要介護4、5の人の退院を促進するた めには、住まいのほうに療養病床や特養並みのケアを用意する必要があります。一方で、軽度者 に対しては生活支援と効果的な介護予防を、中学校区レベルの日常生活圏域でいかに提供してい くか、ということを考えて いく必要があります。住民 の安心、安全のためにこの ような仕組みが必要である ことを市民にわかって頂か ないと、施設ニーズは止ま りません。

和光市では、すでに定期 巡回随時対応型訪問介護・

看護の待機者が出てきてい る状況であり、市民の理解 も徐々に広がってきたと感 じています。

〈和光市における保健福祉諸計画〉

和光市では今、提唱しているのが、地域包括ケアの包括化です。「長寿あんしんプラン」という 高齢者介護の計画と、障害者、子ども、生活困窮者に対する計画を全て「地域福祉計画」の中で セットで行っています。個別記名式のニーズ調査も、障害者、子ども、生活困窮者も含め、同じ ようにセットで取り組んでいます。

そして行政は 「共 助・公助」の仕組みを しっかりとつくる。一 方で、全国的にもほと んどの地域で機能し ていない「自助・互助」

の部分を、和光市では 社会福祉協議会の役 割として位置付けま した。地域支援事業に 生活支援コーディネ ーターができました が、これは福祉でいう 地域福祉コーディネ ーターに相当するも

ドキュメント内 報告書(2014年12月~2016年3月) (ページ 79-105)

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