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地域包括ケアシステムの構築(総論)

ドキュメント内 報告書(2014年12月~2016年3月) (ページ 105-116)

〈高齢化の進展と世界の状況〉

21世紀は世界的規模で超高齢社会化が進みますが、日本はそのトップランナーです。ほかにも、

イタリア・ドイツなど欧州、韓国・中国などアジア、そして米国と、多くの国が 2050 年までに は超高齢社会化します。この人類史上、未曽有の超高齢社会への対応は、21世紀の世界にとって 最重要課題の一つです。この課題の解決のためには社会保障のシステムを大きく変えていく必要 があるのですが、先進国でシステムの変更に成功している国は、まだありません。

特に日本では、年金制度をはじめ、多くの財政制度が危機的な状況に陥っています。この厳し い状況の中で、高齢者がたくさんいる社会にふさわしい仕組みをどうつくるか、ということをこ れから私たちは考えていく必要があります。

〈日本における高齢化の地域間格差〉

75歳以上の人口は、介護保険創設の2000年以降、急速に増加しており、2025年にピークを迎 えます。その後は減少していきますが、この下がり方をどう考えるか、ということが重要になり ます。

この状況を地域別に見ていくと、75歳以上人口でみたときの市町村間の差はかなり著しく、こ れからピークを迎え るところもあれば、す でに終わっていると ころもあります。例え ば富山県は、すでにピ ークを乗り越えてい る「逃げ切り型」です が、東京や神奈川、滋 賀などは、ピークはこ れからです。これだけ の著しい差がある中 で、果たして自分の自 治体がどのあたりに いるのかを保険者が

理解しているのか、ということが非常に問題といえます。

日本では人口3万人以上の自治体は全体の3割に過ぎず、実際には全自治体の7割が人口3万 人以下の小規模団体となっています。特に北海道は小規模団体が圧倒的に多く、北海道の施策と 東京の施策とは、必然的に全く違ったものになるからです。このように高齢者介護施策を地方政 府が担うという行政制度が採用されている場合で、地域差が大きい場合、中央政府がビジョンを 示しつつ、各地方政府に適切な助言や指導をしつつ、より良い方向に進めていけるかが試されて いるともいえるでしょう。

〈日本の高齢者介護におけるパラダイムシフト〉

高齢者介護において、日本は3つのパラダイムシフトを終えています。もともとは「家族によ るケア」、すなわち互助だったものを、「社会によるケア」にするということで始まったのが介護 保険制度でした。そして今、第3のフェーズとして「地域によるケア」、すなわち community based という考え方にシフトしています。日本にはこの community based care を実現できる可能性がわ ずかながらに残されていた、ということだと思います。

大都市で、この community based care についてどこまで考え、地域包括ケアシステムを創るの かが課題となっています。世界各国における自助・互助・共助・公助のバランスをスライドに示 しましたが、日本は「自助、互助を中心としながらも、共同システムをつくっていく」というド イツ型をモデルにしてきました。高福祉・中負担の方向を模索しつつあったわけですが、中福祉・

低負担に振れてきているところかと思います。

現在、ドイツでは、地域でケアを行う、すなわちコミュニティでできることはやっていっても らう方向で、フランスも割 と似たような傾向がありま すが、先進国はどこもイン フォーマルケアラーの割合 が減少しています。別のケ アセクターをつくることを 考えなければならなくなっ ており、欧州では知人・友 人によるケアも広まってい ます。都市の市民がどうケ アラーを持つか、という問 題は非常に大きいといえる でしょう。

〈日本の統合型のケア(Integrated care)の概念〉

日本の地域包括ケアには、community based care(地域を基盤としたケア)と integrated care

(統合型のケア)という 2 つの独立したコンセプトがあります。近年、この 2 つの方針をケアの 中で統合させて組み込もうという議論が世界的に活発化しています。

日本では急性期から回復期への垂直的統合ということで、マクロ的な視点からの病床数の削減

が、これまでの歴史にはない くらいの速度で強力に進め られています。一方で地域を 基盤とした community based care については、慢性期ケ アの水平的統合ということ が介護保険の中で進められ てきました。

この垂直統合を進めるた めには、各自治体でどういう 医療が必要なのかを把握す る必要があります。慢性疾患 を複数抱えており、一般的に、

回復が遅い高齢患者に対し て、急性期医療では対応できなくなっています。そこを市町村の community based care で本当に 支援ができるのか、という話なのです。community based care の中で、保険者はかなり主要なプ レイヤーなのですが、この垂直的統合を進めるときに、プレイヤーの責任をどこまで明確にでき るかが、都市の地域包括ケアシステムをつくる上でたいへん重要になります。

〈統合(integration)の種類〉

integrated care には、いくつかの類型があります。我々が行ってきたのは臨床的統合、すな わち「専門家およびケア提供者が自らの専門の枠を超え、共有ガイドラインやプロトコルの使用 を介して、患者ケアプロセスを単一化、または一貫したものにする」という方法です。この臨床 的統合というのは、言葉はきれいですがほとんどうまくいっていません。これは日本に限らずほ かの国でもそうです が、共通のガイドライ ンやプロトコルを整 備しても守れない。守 ることをコントロー ルするマネジメント ができないのです。

臨 床 的 統 合 に は テ クニックが必要です が、基本的に大事だと されているのは、規範 的 統 合 で す 。 community based care は、規範的統合ができ

ないとできません。「コミュニティでこういう規範(目的)でやりますよ」ということを明示して、

共有しない限り、統合できるはずがないからです。community based care というのは規範的統合 をするときに表向き連携をしないと絶対にできません。ですから、この臨床的統合を行うツール として、規範的統合を行うと考えるとよいと思います。

もう一つ、比較的、やりやすいのが機能的統合です。電子カルテや ICT のシステムを統合する のは、予算をつけやすく、反対されることも、あまり、ありません。ですから機能的統合を先に やってしまうという方法論もあります。

組織的統合というのは、共同運営と言ったり、協調的プロバイダネットワークという言い方も します。簡単に言うと、機能体としての目的をはっきりさせるということです。組織には、機能 体と共同体という大きな分類があります。共同体というのは、規範的統合によります。機能体と いうのは、この組織的統合を基にした利益の追求になります。

いわゆる市町村は、この規範的統合+組織的統合の組織体というふうに考えたほうがいいと思 います。組織的統合の事業体というのを突き詰めたかたちが、今やっている垂直的統合です。医 療機関から介護保険施設まで全て持っている医療モジュールができていますが、それは組織的統 合を進めているということです。

〈成功する integrated care の要素〉

成功する integrated care の戦略は、都市圏でも小規模自治体でも共通していて、重要なこと は「協調的な活動に対する財政的インセンティ ブ」をどこに使うかということです。今は保険 者である市町村がインセンティブを持てない 状況にありますが、これを持てるようにするに はどうしたらいいか。医療介護の確保基金を使 うという話もありますが、残念ながら窓口は都 道府県です。

それから、「プログラムの対象とする人口の 定義」を明確にしなければいけません。例えば、

介護保険で最も財源を使っているのは要介護 3 以上です。では要介護 2 までの人をどうするのか、全て自治体の特性で決めていかなければなり ません。

「パフォーマンスにおける共同責任」は住民にも持ってもらうことが必要ですが、ここが非常 に欠けています。住民もプレイヤーなのであり、パフォーマンスにおける責任があるということ です。住民憲章といったものに、住民の責任を明記し、ここに規範的統合の内容を含めるという 方法もあると思います。

〈ケア提供システム・プログラム整備の視点〉

ケアの提供システム・プログラムの整備ということを考えるときに、普通は「在宅ケアと施設 ケアの間に、費用対効果が高い代替性を確立する」ということを考えます。ところが日本の場合 には、この部分がほとんど考えられずに、成り行きに任せて行われてきたところがあります。

ドキュメント内 報告書(2014年12月~2016年3月) (ページ 105-116)

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