分かれることがわかった。さらに、探究の技法の割合から、生徒実験は帰 納的な探究過程が8割以上を占め、演繹的な探究過程は少ないことが明ら
かになった。
4−2 提言
4.2.1 理科学習における観察・実験
生徒実験の取り扱いは、発見探究的な扱いが増加する傾向にある。平成 元年版の教科書では、どの教科書も生徒実験のほとんどが発見探究的な取
り扱いであることが明らかになった。また、探究の技法からの分析結果に おいても、生徒実験の8割以上が帰納的な探究過程で占められ、演繹的な 探究の過程はわずかでしかないことがわかった。
このことは、教科書における生徒実験の多くは、帰納的な探究の過程で 得た結果をすぐに原理・法則と結び付けており、教科書の生徒実験だけで は一般化の過程が不十分であることを意味している。
帰納的な探究過理が重要なことは、いうまでもない。しかし、科学的な 見方や考え方を養うためには、帰納的な探究過程と一般化を図る演繹的な 探究過程のバランスのとれた思考過程が必要である。教科書にある生徒実 験だけでは、偏りがあるのである。
そこで、この問題を解決するためには、自由研究、課題研究等、生徒実 験の充実が考えられるが、限られた指導時間の中では、教師実験の役割を 見直すことも必要であると考える。教師実験は、教師中心主義の最たるも のとして否定される傾向が強い。しかし、生徒実験や教師実験にはそれぞ れ長所や短所があり、長所を有効に生かし合うことが大切であると考える。
この生徒実験や教師実験の意義を嶋田59)は、次のようにまとめている。
<生徒実験の意義>
1.具体的思考が進められる。
2.科学の方法が体得できる。
3.問題発見や創意工夫ができる。
<教師実験の意義>
1.効率が良い。
2.目的に集中し、思考が統一できる。
3.学習の整理を行なうとき。
(生徒実験の失敗や結果の混乱を確かな事実を示範実験で示す。)
4.生徒実験が無理なとき。
このように、生徒実験と教師実験は対立するものではなく、理科の学習 を成立させるために共に必要な存在である。
この教師実験の必要性について、金山60)は次の2つの面から強調してい る。一つは、教師実験なしではすまされないという本質的、独自的必要性 の面からである。問題提示のたあの実験、学習の方向を指示する実験、操 作技術の模範や事故防止のための模範演示などがそうである。他の一つは、
生徒実験の不完全さを補うとか、その他の指導法の代わりをするといった 関連的、補助的必要性の面からである。そして、生徒実験と教師実験の条 件を次のようにまとあている。
〈生徒実験の条件〉
① 一般的知識の基礎になる重要な事項に関する実験 ② 応用範囲の広い基本的事項に関する実験
③ 児童生徒の能力に適合し、操作の簡単なもの ④ 現象が明瞭に認められるもの
⑤危険でないもの
⑥ 各人が実験しなければ目的が達せられないもの
第4章 結 論
〈教師実験の条件〉
① 装置や方法が複雑で児童生徒の能力に適さないもの ② 器具・材料を多用することが困難なもの
③ 教師が行うことにより所要時間を特に短くできるもの ④ 生徒実験としては危険のおそれのあるもの
⑤実験の能力により結果が著しく違ってくるもの ⑥見るだけで十分効果があるもの
特に帰納的な生徒実験を重視すればするほど、生徒実験の不完全さを補 うための演繹的な検証実験の必要性が出てくるのではないかと考える。自 然事象に対する直接体験を大切にし、生徒実験を益々充実させることが必 要である。そして、授業の中でこの生徒実験を生かす補助的な教師実験の 役割が、今後一層見直されてくるのではないかと思う。
4.2.2 理科教科書の今後の課題
第1章で述べたように、教科書にはもともと生徒向けと教師向けの二面 性がある。今までの日本の教科書は、どちらかというと教師向けで、教師 が介在することによって生徒に十分な理解を与える読本であった。このよ
うな日本の教科書に対して、これからの個別化・個性化の時代をふまえ、
伊藤61)は「教科書は、一面では教授の用に供せられる児童・生徒用図書で あるのみならず、他面では自学自習の可能な学習の用に供せられる児童・
生徒用図書として完全な読みものとする性格を与えることである。」と生 徒向けの教科書への質的転換の必要性を指摘している。
本研究においても、平成元年版の教科書では教科書に占める生徒実験の 割合が増え、実験の手引き書といった傾向を帯びてきていることが明らか になった。「観察・実験の一層の重視」の影響が、教科書の教え込みを避
けるかのように、教科書の理科実験書としての性格を強める結果となって 現れたものと考えることができる。
これからは生涯学習の時代であるといわれる。学び方の学習や個別化・
個性化教育が重視される現在、生徒の学習意欲を伸ばし、生徒が自学自習 できるための理科教科書への転換ないしは、副読本が今後必要になってく るのではないかと思う。