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第 4 章 頭部固定マスクにおける頭部圧迫による固定精度への影響 – ファントム検証

4.3 結果

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64

4.3.2 ファントムによる固定精度検証

Uフレームマスクでは,3 mm厚スペーサの14 kPa付近の接触圧力まで加えることは できなかったため,1 mm厚スペーサの接触圧力2.0 - 2.5 kPaのみの検証を行った.2点 固定式マスクでは,1 mmと3 mm厚のスペーサでそれぞれ接触圧力1.6 – 3.1 kPaと12.8 - 14.3 kPaで評価を行った.

InferiorからSuperior,LeftからRight方向に荷重を加えた場合,接触圧力の高い方が Uフレームマスク及び2点固定式マスクともにファントム変位は少なかった(図4-4). Uフレームマスクでは,InferiorからSuperior,LeftからRight方向において,スペーサ 未使用時と1 mm厚スペーサ挿入時の接触圧力では,荷重とファントム変位の関係にそ

れぞれp=0.008で有意水準5%の統計的な有意差がみられた.同様に,2点固定式マス

クにおいても,スペーサ未使用時と3 mm厚スペーサ挿入時の接触圧力では,荷重とフ ァントム変位の関係にLeftからRight方向においてp=0.008で有意水準5%の統計的な 有意差がみられた.一方,Inferior から Superior方向については,p=0.263 で有意差は 見られなかった.スペーサ未使用時と1 mm厚スペーサ挿入時の接触圧力では,荷重と ファントム変位の関係にInferiorからSuperior方向についてp=0.008で有意水準5%の 統計的な有意差がみられた.一方,LeftからRight方向については,p=0.760で有意差 は見られなかった.PosteriorからAnterior方向においては,Uフレームマスク及び2点 固定式マスクともにどのスペーサ厚に対してもp=0.98以上で有意差は見られなかった.

65 4.4 考察

4.4.1臨床及びファントムでの接触圧力の評価

スペーサ厚と圧力の関係に正の相関があったことは,吸引式枕にゴム弾性があること を示している.また,2 mmと3 mmスペーサ厚における接触圧力の標準偏差は,1 mm の時よりも大きかった(2.3 kPaと0.5 kPa).これは,2 mmと3 mm厚のスペーサを挿 入した時の方が,1 mmを挿入した時よりも枕の変形が小刻みに生じていることを示し ている.3章で求めたバネ定数1.6 N/mmを適用すると,2 mmと3 mm厚のスペーサを 挿入した時は0.2 mmほどの微小な枕の変形が起こっていると考えられる.

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図4-4 スペーサ未使用時,1 mm厚のスペーサ挿入時, 3 mm厚のスペーサ挿入時の接

触圧力におけるファントム変位と荷重の関係.荷重は,Posterior-Anterior 方向,後前方 向及びRight-Left方向に0 N - 39.2 Nまでかけた.Uフレームマスクを使用した時の両 者の関係を(a),(b)及び(c)に,2 点固定式マスクを使用した時の両者の関係を(d),(e)及 び(f)に示す.

0.0 1.0 2.0 3.0

0 10 20 30 40

I-S (a)

p=0.008

初期圧力 1 mmスペーサ

荷重 (N)

ファントム変位(mm)

0.0 1.0 2.0 3.0

0 10 20 30 40

P-A (e)

p=0.982 p=0.999

荷重 (N)

ファントム変位(mm)

0.0 1.0 2.0 3.0

0 10 20 30 40

R-L (f)

p=0.760 p=0.008

荷重 (N)

ファントム変位(mm)

0.0 1.0 2.0 3.0

0 10 20 30 40

I-S (d)

p=0.008 p=0.263

初期圧力 1 mmスペーサ 3 mmスペーサ

荷重 (N)

ファントム変位(mm)

0.0 1.0 2.0 3.0

0 10 20 30 40

P-A (b)

p=0.998

荷重 (N)

ファントム変位(mm)

0.0 1.0 2.0 3.0

0 10 20 30 40

g

R-L (c)

p=0.008

荷重 (N)

ファントム変位(mm)

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4.4.2 ファントムによる固定精度検証

Uフレームマスクにおいて3 mm厚のスペーサの接触圧力を加えることができなかっ たのは,4点でのみフレームを抑える構造であるためフレーム及びベースプレートの固 定ピンの変形によって加えた荷重が吸収されることに起因していると考えられる.

1 mm厚スペーサ挿入時の圧力値3.2 ± 0.5 kPaに対して,実際の検証時の圧力はUフ レームマスクでは2.0 - 2.5 kPa,2点固定式マスクでは1.6 – 3.1 kPaであり,設定に対し て少し低い圧力であった.そのため,今回の結果は1 mmよりも少し薄いスペーサに相 当する接触圧力であったと考えられる.

図 4-4では,2 点固定式マスク,UフレームマスクともにRight-Left方向のファント ム変位が大きくなっている.これは,Right-Left 方向は多方向に比べ固定精度が悪いこ とを示しており,当院での臨床における Intra-Fractional Motion の変位幅がそれぞれ Inferior-Superior方向で1.1 mm,Posterior-Anterior方向で0.8 mm及びRight-Left方向で

2.4 mmであることとも一致している.

ファントム変位と荷重の関係が直線関係になったことは,両者の間にHookの法則が 成り立つことを示している.バネ定数は,Inferior-Superior方向とRight-Left方向につい ては,マスクと吸引式枕のゴム弾性と関係しておりPosterior-Anterior方向は主にマスク のゴム弾性と関係していると考えられる.また,図4-4(b)(e)のPosterior-Anterior方向の グラフを見ると,t検定による統計的な有意差はないものの,スペーサを挿入した方が ファントム変位は若干大きく固定精度が悪い可能性がある.一方,他の方向については スペーサを挿入した方がファントム変位は少なく固定精度が高くなっている.これは,

Posterior-Anterior方向ではマスクのみでファントムを保持しているのに対し,他の方向

はマスクと枕の両方でファントムを保持しているためと考えられる.したがって,接触 圧力が高いときのInferior-Superior方向とRight-Left方向における固定精度は,マスクよ りも枕の固定精度に影響を受けやすいと考えられる.

4.5 まとめ

患者の形状に添った熱可塑性マスクと枕の固定精度は,InferiorからSuperior,Leftか

らRight方向に対して接触圧力を高くした方が良くなる.臨床においては,患者苦痛を

考慮した上で密着性が高くなるよう患者の固定を行う必要がある.

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第 5 章 結 論

本研究では照射中の固定精度を担保するために,固定精度を客観的,且つ定量的に評 価できるファントムの開発,Intra-Fractional MotionをReal-Timeに検出可能なシステム の開発,及び頭部固定マスクにおいて頭部圧迫が固定精度に及ぼす影響について評価し た.

以下に,本研究の成果と結論,さらに今後の研究課題について言及する.

5.1 研究成果の概要と結論

5.1.1 固定具の固定精度検証用ファントムの開発

固定具の固定精度を定量的に推定可能なファントムを開発し,固定精度検証に有効で あることを示した.ファントムは,ポリエステル,紙粘土,及び紙を使用して作製した.

ファントム内部に合成樹脂性パイプをPosterior-Anterior 方向,Right-Left 方向に挿入し ており,外部から引っ張ることで治療中の患者変位を再現することができる.15 名の 臨床データに基づき患者変位を再現するための変位量を推定し,3種類のマスクを用い て荷重ごとにファントム変位を測定した.ファントム変位の測定には,Cyberknife装置 の TLS を用いた.荷重と変位量の関係を表す直線の傾きは固定具の固定精度を表し,

主に固定具に起因するSystematic Error を表す.固定精度検証におけるファントム変位 量は,Inferior-Superior方向で0.58 mm,Posterior-Anterior方向で0.94 mm,Right-Left方

向で0.93 mmであった.本方法は,Cyberknife治療装置に標準装備されているTLSによ

る非接触測定を用いたものであり,特別な測定器具を用いることなく,簡便に固定精度 検証が行える利点がある.また,ファントムによる検証であるため被験者に依存しない 客観的なデータを取得でき,時間と労力を最小限に抑えることができる.本ファントム で検証した固定精度の高い固定具を臨床使用することで,Intra-Fractional Errorを最小に することが可能になると考えられる.

5.1.2 圧力センサを用いたIntra-Fractional Motion検知装置の開発

Real-Time Intra-Fractional Motion検知装置は,4つの圧力センサ,吸引式枕,マスク,

ベースプレートで構成され,患者にかかる荷重と吸引式枕の変位にHookの法則が成り 立つことを利用して患者変位を測定する.まず,Hook の法則における吸引式枕のバネ 定数を患者19名の2999回の TLS照合データと圧力を比較して求めた.次に,データ の真偽分類を示した混同行列を利用して,本システムの Sensitivity,Specificity,及び

Accuracy を求めた.さらに,本システムとTLS を同時に使用した場合の被ばく線量の

低減率を理論計算により推定した.得られた吸引式枕のバネ定数は1.6 N/mmであった.

1 mm,1.5 mm,及び 2 mmの患者変位を検出するときのAccuracyはそれぞれ67%,84%, 及び89%であった.本システムとTLSを同時に使用した場合,1 mm,1.5 mm,及び 2

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mm の患者変位を検出するときの被ばく線量の低減率は,TLS 単独の場合と比較して 58%,44%,及び62%であった.Real-Time Intra-Fractional Motion検知装置は,X線照射 による被ばくなしで1-2 mmの精度で患者の動きを検知することが可能であり,TLSと 併用することで画像照合による被ばく線量を従来の約半分に低減できる可能性が示唆 された.

5.1.3 頭部固定マスクにおける頭部圧迫による固定精度への影響 – ファントム検証

ファントムによる後頭部と固定具間の接触圧力と固定精度の関係を明らかにするこ とを目的とした.固定精度検証用ファントムと新たに開発した接触圧力を制御可能なベ ースプレートを用いて,スペーサ未使用時,及び1 mmと3 mm厚スペーサ挿入時にお けるファントム変位と荷重の関係を求めた.ファントムの変位量は U フレームタイプ 及び2点固定式マスクともにInferior-Superior方向,Right-Left方向に対して接触圧力を 高くした方が少なく,統計的な有意差がみられた.患者の形状に添った熱可塑性マスク と枕の固定精度はInferiorからSuperior,Right-Left方向に対して接触圧力を高くした方 が良いことが示された.臨床においては患者苦痛を考慮した上で固定具との密着性が高 くなるよう患者固定を行う必要がある.

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