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第5章 人の被曝レベル

5.2. 外部被曝

5.2.3. 結果

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5.2.2.4. 単位ガンマ線による空間線量あたりの実効線量

ガンマ線空間線量率を、人口(年齢)集団 k の構成員への実効線量率に変換する転換係数 CFk

について、その平均値が人体模型実験[5.15]及びモンテカルロ法[5.23]を用いて 3 つの年齢集団に 対して計算されており、成人で0.75 Sv/Gy【シーベルト/グレイ】、就学児童(7-17歳)で0.80 Sv/Gy、 就学前児童(0-7歳)で0.90 Sv/Gyであった。実効被曝線量の計算にあたっては、場所や事故後の 経過時間に左右されない転換係数CFkが用いられた。

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事故後初期数年の測定と評価では、外部被曝線量率は、主に短寿命放射性核種の放射性壊変に よって、およそ30分の1に減少した(図5.8参照)。続く10年間では、外部被曝線量率は、134Cs 及び137Csの放射性壊変と放射性セシウムの土壌中への移動によって減少した。それ以降の外部被 曝線量率は主に137Csによるものである。長期的には放射性セシウムは土壌中の鉱物に固着し、そ の結果、土壌深層への移動は遅くなるので、外部被曝線量率の減少は緩やかになる。このような 測定を基にして、事故後 70年間の外部被曝累積線量のうち、約 30%が事故後 1 年間、70%が事 故後15年間に累積すると推定される(図5.8参照)[5.7]。

5.2.3.2. 熱蛍光線量計による個人の外部被曝線量の測定

チェルノブイリ事故以前は、個人の外部被曝線量の測定は通常職業上の被曝に対してのみ実施 されていた。チェルノブイリ事故後は、一般住民個人の外部被曝線量の測定も行われた。その際 には、ベラルーシ、ロシア、ウクライナの、高濃度汚染地域の住民に対して熱蛍光線量計が配布

された[5.24-5.28]。住民は春から夏のおよそ1か月にわたって熱蛍光線量計を身につけた。そうし

た測定結果の例が、農村地域と都会について図 5.9と5.10にそれぞれ示されている。これによる と、都市居住者は、同程度の放射能汚染レベルの農村地域居住者と比べて被曝線量が2分の1か ら3 分の2程度と低かった。この差は、都会の建物の遮蔽性が高い事と、職業習慣が異なること によって生じる。

図5.9.: 放射性物質の沈着後、ベプリン村(Veprin)とスミヤルチ村(Sumyalch)(ロシア、ブリャ

ンスク州)の木造家屋に住む住民の月間平均実効線量の変化。測定は熱蛍光線量計による。[文献 5.28より引用]【縦軸は月間被曝線量で、単位は10-6 Sv、横軸は事故後の年数。】

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図5.10.: ロシア、ブリャンスク州ノボジブコフ市(Novozybkov)の屋内労働者の月間実効線量の

変化。誤差は測定結果の95%信頼区間【標準偏差の2倍】を表す。測定は熱蛍光線量計による。 [文 献 5.28より引用] 【木造(wooden)レンガ造り(brick)の2種の家屋。単位は10-6 Sv。】

図5.11.: ロシア、ブリャンスク州の4つの村(Vnukovichi・Veprin・Kozhany・Smyalch)で1993年 に熱蛍光線量計を用いて測定した個人の月間実効線量の相対頻度分布。縦軸は相対的な頻度(%) を示し、横軸は個人の値を各村ごとに村平均値(単純平均)で割った比率【だから単位は無次元】。 実線はこれら測定値に基づいたモデル曲線。[文献 5.7より引用]【モデル曲線とは今の場合、ある 種のランダム分布を仮定して出て来る曲線。上記各村をそれぞれ三角・四角・ダイヤ・丸で示して ある。】