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第 4 章 発芽における塩水浸漬の影響

4.1 塩水浸漬がクロマツ種子の吸水と発芽へ及ぼす影響

4.1.3 結果

4.1.3.1 吸水率の経時変化

図4.1.1 に処理区ごとの置床後の吸水率の推移を示す。また,図4.4.2~4.4.4 に各処理区

における吸水率の経時変化について有意差を示す。図4.4.1および図4.4.2より,0%区では,

置床後0日目から1日目にかけて種子の吸水率は16.83%上昇した。置床後1日目から5日 目にかけて種子の吸水率は0日目より有意に高くなり,1日平均3.44~7.25%上昇した。置床 後6日から12日後にかけては1日平均10.9~32.8%上昇する傾向を示した。1.75%区では,

置床後0日目から1日目にかけて種子の吸水率は16.83%上昇した。置床後2日目から12日 目にかけて種子の吸水率は1日平均0.85~5.79%上昇し,置床後3日目から0日目との有意 差が見られた(図4.1.3)。また,3.5%区では置床後2日目から12日目まで種子の吸水率は 1日平均で-0.62~3.50%変化し,置床後10日目以降の吸水率において0日目との有意差が認 められた(図4.1.4)。実験終了時の吸水率は23.41%であり,0%区と1.75%区における吸水 率と比較して低い値であるが,種子が吸水していることが認められた。

0.0 50.0 100.0 150.0 200.0

0 2 4 6 8 10 12 14

吸水率(%

時間( 日)

0%1.75%3.5%

図4.1.1 処理濃度別の吸水率の推移

50 0.0

50.0 100.0 150.0 200.0

0 2 4 6 8 10 12 14

吸水率(%

時間( 日)

1.75%

a ab abcbcdbcdecde cde de def ef f f f

図4.1.3 1.75%区における吸水率の推移と実験日ごとの吸水率の有意差

※アルファベットの差異は有意差を示す

0.0 50.0 100.0 150.0 200.0

0 2 4 6 8 10 12 14

吸水率(%

時間( 日)

3.5%

a ab ab ab ab ab ab ab ab ab b b b

図4.1.4 3.5%区における吸水率の推移と実験日ごとの吸水率の有意差

※アルファベットの差異は有意差を示す

図4.1.2 0%区における吸水率の推移と実験日ごとの吸水率の有意差

※アルファベットの差異は有意差を示す

51 4.1.3.2 種子の発芽種子数と吸水率の推移

図4.1.5~4.1.7に処理区ごとの発芽種子数と吸水率の推移を示す。図4.1.5より0%区では

実験開始から4日後に発芽が始まった。0%区の発芽開始時における吸水率は31.14%であっ た。また,発芽種子数は0.33であった。そして,実験開始から9日後に0%区の発芽種子数 は飽和した。0%区の発芽種子数が飽和した時点の吸水率は 118.67%であった。発芽開始時 の吸水率に比べ発芽種子数が飽和した時点の吸水率は 87.53%高かった。また,飽和した時

0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0

0.0 40.0 80.0 120.0 160.0 200.0

0 2 4 6 8 10 12 14

発芽種子数

吸水率(%

時間( 日)

1.75%区 吸水率(%) 発芽種子数

a a a a a a a a ab

b

b b b

0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0

0.0 40.0 80.0 120.0 160.0 200.0

0 2 4 6 8 10 12 14

発芽種子数

吸水率(%

時間( 日)

0%区 吸水率(%) 発芽種子数

a a a

ab abc

abcd bcd

cd cd

d d d d

図4.1.5 0%区における発芽種子数と吸水率の推移

※重量増加率の灰色の点は発芽の開始,黒色は発芽種子数の飽和した時点を表す

※アルファベットの差異は有意差を示す。

図4.1.6 1.75%区における発芽種子数と吸水率の推移

※重量増加率の灰色の点は発芽の開始,黒色は発芽種子数の飽和した時点を表す

※アルファベットの差異は有意差を示す。

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点の発芽種子数は4.67だった。図4.1.6より1.75%区では実験開始から9日後に発芽が始ま

った。1.75%区の発芽開始時における吸水率は39.07%,発芽種子数は3.00であり,発芽種

子数の飽和は実験開始から11日後となった。発芽種子数が飽和した時点の吸水率は46.08%, 発芽種子数は4.00であった。図4.1.7より,3.5%区では種子の発芽は認められず,実験終了 時の吸水率は23.41%となった。

実験開始から発芽種子数の上昇が見られるまでの日数は0%区より1.75%区の方が5日遅 かった。また,実験開始から発芽種子数が飽和するまでの日数は 0%区と 1.75%区ともに 9 日間であった。発芽種子数が飽和した時点の発芽種子数は0%区の方が1.75%区より0.67多 かった。

4.1.4 考察

4.1.4.1 重量増加率の経時変化

図4.1.1より,0%区の吸水率の曲線について,3つの過程に分かれる傾向がみられた。ま

ず置床直後から1日間の急な重量増加を示す過程,そして置床後 2日から5日後にかけて の緩やかな上昇過程,置床後6 日から 12日後にかけての急激な上昇過程である。1.75%区 と3.5%区ともに置床後1日で吸水率は7.56~10.80%上昇したが,0%区において認められた 3つの吸水過程は認められなかった。一般的に植物の種子の水分吸収過程はA相,B相(B1

相,B2相),C相の3相に大別されている(中村,1985)。A相では種子内外の水ポテンシャ ルの差に従って吸水が起こる(吉岡・清和,2009;鈴木,2003)。B相では種子内外の水ポ テンシャルが平衡状態となり緩やかな吸水あるいは停滞が起こる(吉岡・清和,2009;鈴木 ら,2003)。そしてC相では発芽が開始し始めて幼根や幼芽の生長に伴い急激な吸水が起こ る(吉岡・清和,2009;鈴木,2003)。また,クロマツの種子の吸水時における重量変化に

0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0

0.0 40.0 80.0 120.0 160.0 200.0

0 2 4 6 8 10 12 14

発芽種子数

吸水率(%

時間( 日)

3.5%区 吸水率(% 発芽種子数

図4.1.7 3.5%区における発芽種子数と吸水率の推移

※重量増加率の灰色の点は発芽の開始,黒色は発芽種子数の飽和した時点を表す

※アルファベットの差異は有意差を示す。

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ついても3つの過程に分かれる傾向が既往研究において認められている(米田,1985)。従 って,0%区の種子においてはA相,B相,C相の水分吸収過程を経た吸水が行われたと考 えられる。一方,1.75%区および3.5%区において3つの吸水過程が表れなかった。また,実 験期間中,0%区に比べてNaCl濃度の高い処理区ほど吸水率は低くなる傾向を示した。1.75%

区および 3.5%区で水分吸収過程の変化が 0%区と異なり,実験期間中の吸水率が低かった

要因として培地の水ポテンシャルの影響が考えられる。種子の吸水は種子内外の水ポテン シャルの差によって行われる(吉岡・清和,2009;鈴木,2003)ため,塩分を多く含む土壌 では,種子への水の吸水が阻害される(Derek and Michael,1994)。郷(1956)の実験により,

クロマツの種子の水ポテンシャルは約-3.0Mpaであることが分かっている。1.75%区と3.5%

区の培地における塩水の水ポテンシャルは,1.75%区では約-1.5Mpa,3.5%区では約-3.0Mpa である。種子と培地の塩水との間における水ポテンシャルの差を処理区ごとに比較すると,

3.5%のNaCl 溶液では1.75%のNaCl溶液に比べて水ポテンシャルの差が小さく塩水と種子

の水ポテンシャルが近い値であることが分かる。従って,クロマツの種子は培地のNaCl濃 度が上昇すると水ポテンシャルの種子内外の差が小さくなり,1.75%のNaCl 溶液,3.5%の NaCl溶液と濃度が高くなるにつれて吸水阻害の影響が大きくなったと考えられる。

4.1.4.2 種子の発芽種子数と吸水率の推移

発芽開始時における吸水率は0%区で31.14%,であった。1.75%区では発芽が見られた日 の前日には29.80%まで上昇し,39.07%となった。すなわち,1.75%区の発芽前日の吸水率は

0%区における発芽時の吸水率である 31.14%に近い吸水率まで上昇していることが認めら

れた。一方,発芽の見られなかった3.5%区では,実験終了時の吸水率は23.41%であり,0%

区と1.75%区の発芽時の吸水率よりも低くかった。郷(1956)によると,クロマツ種子は吸

水率 26%で胚の核分裂がはじまり,発芽時には 41.8~55.5%になることが認められている。

植物の種子は種子内の水分量が不十分であると発芽は起こらない(吉岡・清和,2009)が,

発芽に必要な水分は必ずしも一定しておらず,発芽限界付近の水分であれば,それに長く置 かれると次第に発芽するようになると言われている(中村,1985)。また,種子の吸水は水 ポテンシャルの差によって行われており(鈴木,2003),水ポテンシャルはクロマツ種子が

-3.0MPa(郷,1956)であり,1.75%区の塩水では-1.5MPa,3.5%区の塩水では-3.0MPa であ

ることがわかった。よって,海水の約半分のNaCl濃度の塩水では種子が発芽に必要な吸水 量付近まで吸水しすることができるが,海水とほぼ同じNaCl濃度の塩水では種子が発芽に 必要な水分量まで吸水することができないことが示された。

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