1.75 %区
6.2 塩水浸漬がクロマツと広葉樹の幼木の各器官におけるイオン含有率に及ぼす影響
6.2.1 目的
本項では,実生の次の生育段階として1~2年生の幼木を対象とした実験を行った。海岸 林の主林木であるクロマツと沿岸域に生育している耐塩生の高い広葉樹の塩水冠水耐性を 検証することを目的とし,塩水による水耕栽培実験を行った。
6.2.2 実験概要
6.2.2.1 実験方法
苗木を用いた水耕栽培実験を行った。基準溶液で栽培後,NaCl 溶液で栽培を行い,原子 吸光光度計を用いて各器官の陽イオン(Na+,K+,Ca2+,Mg2+)濃度を測定した。
6.2.2.2 実験期間
実験は2度行った。1度目は2012年8月11日から9月9日まで行った。8月11日に開 始し,9月6日まで基準培養液で栽培した。NaCl濃度処理は9月6日に開始し,3日後の9 月9日に終了した。2度目の水耕栽培は,2012年11月2日に開始し,11月16日まで基準 溶液にて実施した。NaCl濃度処理は11月17日に開始し,1週間後の11月23日に終了し た。
6.2.2.3 実験場所
東京都市大学横浜キャンパス内のビニルハウス内で行った。実験期間中はハイグロクロ ン(KNラボラトリーズ,DS1923)により温湿度を記録した。ビニルハウス内の気温は1度 目の水耕栽培では平均26.8℃,最高45.2℃,最低22.0℃,2度目では平均9.4℃,最高16.0℃,
最低4.0℃,湿度は1度目の水耕栽培では平均77.8%,最高96.5%,最低39.8%,2度目では
平均75.2%,最高94.4%,最低42.1%であった。
ビニルハウス内で実験を行うことにより,根の塩水冠水以外の被害要因を極力取り除い た実験を行った。
6.2.2.4 供試種
シャリンバイ(Rhaphiolepis indica (L.) Lindl.),トベラ(Pittosporum tobira (Thunb.) W.T.Aiton), マサキ(Euonymus japonicus Thunb.),クロマツ(Pinus thunbergii Parl.)の1年生の幼木を用 いた。シャリンバイ,トベラ,マサキは常緑性広葉樹の低木である。3種とも沿岸域にも分 布しており,原ら(2011)が2011年に行った調査では海水をかぶったと推定される場所で も生育が良好だったという報告がされている。クロマツは海岸砂地における海岸林造成に 用いられる常緑性針葉樹の高木である。各供試種の樹高はシャリンバイが約20cm,マサキ
が約15cm,トベラが約15cm,クロマツが約15cmであった(写真6.2.3)。
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写真 6.2.3 各供試種の実験に供試した幼木の写真
シャリンバイ マサキ
トベラ クロマツ
120 6.2.2.5 処理内容
処理区はコントロール区を 1 区,海水とほぼ同濃度の NaCl 3.4%を溶かした 3.4%区を3 区設けた。実験に供した苗木は,基準溶液で水耕栽培後 14 日以上経過したものを用いた。
コントロール区では基準溶液による水耕栽培を行った。基準溶液は2.2.6と同様の調整を 行った培養液を用いた。なお,使用した水道水には,Na+:6.9mg/L,K+:2.4mg/L,Ca2+:20mg/L,
Mg2+4mg/Lが含まれていた。従って,実際の培養液のNa+,K+,Ca2+,Mg2+ の濃度はこれ
らの水道水に含まれるカチオンを加えた値になる。
3.4%区では基準溶液へ 3.4%濃度の NaCl を添加し調整した培養液により水耕栽培を行っ
た。
6.2.2.6 供試種の割り当て
供した苗木は各処理区4本ずつ割り当てた(表6.2.1)。
6.2.2.7 水耕栽培装置
水耕栽培装置の模式図を図6.2.1に示す。タライの中を培養液で浸し,遮光のため発泡ス チロール板にてフタをした。発泡スチロール板に苗木を固定する切れ込みを4つ入れ,フタ に幼木を固定した。このとき,幼木を固定するため幹にスポンジを巻き苗木と発泡スチロー
シャリンバイ トベラ マサキ クロマツ コントロール区 1個体 1個体 1個体 1個体 3.4%区① 1個体 1個体 1個体 1個体 3.4%区② 1個体 1個体 1個体 1個体 3.4%区③ 1個体 1個体 1個体 1個体
表 6.2.1 各種の処理区割り当て
培養液 タライ ポンプ
エアーストーン
発泡スチロール板 スポンジ
幼木
ポンプ用ホース
図6.2.1 水耕栽培装置の模式図
121
ル板の隙間を埋めた。エアーポンプにエアーポンプ用ホース,エアーストーンを接続し,エ アーポンプ用ホースとエアーストーンを培養液内に沈め,ホース用の吸盤でタライの底に 固定した。水耕栽培中はポンプによるバブリングを行い培養液へ空気の供給を行った。空気 を供給することにより,酸素不足による根腐れを防止した。
6.2.2.8 植物体内の陽イオンの測定
苗木の耐塩性を把握し評価するために根,茎,葉ごとに陽イオン(Na+,K+,Ca2+,Mg2+) の濃度の測定を行った。実験に供した苗木は,栽培終了後速やかに回収し,水道水および蒸 留水にて洗浄後表面の水分を拭き取り,植物体を根,茎,葉に分け新鮮重を測定した。80℃
にて48時間乾燥後の重量を測定した。
写真 6.2.2 エアポンプによる空気の供給 写真 6.2.1 水耕栽培実験の様子
122 6.2.2.9 植物体中の無機成分の分析
前項において乾燥させた試料を,湿式灰化法により塩酸溶液とした。湿式灰化法について は参考資料の資料 2に詳細を記載する。作成した塩酸溶液を 100倍に希釈し,原子吸光光 度計(HITACHI,A-2000)により,植物体中の各器官における陽イオン(Na+,K+,Ca2+, Mg2+)濃度を測定した。各イオンの測定に用いたホロカソードランプと波長は,Na+ではPrant No. 208-2021(HITACHI)のランプで波長は330.2 nm,K+ではPrant No. 208-2016(HITACHI)
のランプで波長は404.4 nm,Ca2+,Mg2+ではPrant No. 208-2021(HITACHI)のランプで波長 はCa2+の測定時には422.7nm,Mg2+の測定時には285.2nmとなっている。分析はアセチレン
ガスを75kpaで供給し,測定時間は3秒間とし,繰り返しは3回に設定した条件で行った。
6.2.2.10 統計解析
各供試種の樹種間における葉内のK/Na比の平均値の有意差について検定するため,多重 比較検定を行った。Levene 検定により等分散性の検定を行い,等分散性が認められた群間
に対してTukey検定(p < 0.05)を,等分散性が認められなかった群間に対しては
Kruskal-Walls検定(p < 0.05)を用いた。同一の供試種の処理区間における有意差についてはt検定
(p < 0.05)を用いて検定した(IBM SPSS Statistics ver. 19)。