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第 5 章 短期的塩水浸漬による出芽と初期生長への影響

5.1 短期的塩水浸漬がクロマツ種子の発芽および出芽へ及ぼす影響

5.1.3 結果

5.1.3.2 発芽率と出芽率

各処理区における発芽率を図5.1.3に,出芽率を図5.1.4に示す。また,塩水浸漬期間と発 芽率および出芽率の関係を示したグラフを図5.1.5に示す。

図5.1.3より,発芽率は0日区で85.0%,1日区で95.0%,6日区で87.0%,10日区で90.0%

となり,各処理区の間に有意差は見られなかった。

図5.1.4より,実験終了時の出芽率は0日区が85.0%,1日区が95.0%,6日区が22.5%,

10日区が12.5%となった。1日区が最も出芽率が高くなり, 0日区が次いで高くなった。6

日区と10日区は0日区および1日区に比べて82.5~62.5%低下し,有意差が認められた。6 日以上の塩水浸漬を行った処理区では塩水浸漬期間が長いほど出芽率が低下した。

各処理区の出芽率と発芽率の比較を図-5に示す。0日区と1日区の出芽率と発芽率は同じ値 となったが,6日区および10日区は出芽率に比べて発芽率が64.5~77.5%高くなった。すな

77

わち,0日区と 1日区は発芽した種子のすべてが出芽したが,6日区と10日区では発芽後 に出芽しなかった種子があったことが確認された。

0 25 50 75 100

0 4 8 12 16 20 24 28 32 36

積算出芽率(%

実験開始からの日数(日)

0日区 1日区 6日区 10日区

図5.1.1 実験開始から終了までの出芽率の変化

78

0 25 50 75 100

0 4 8 12 16 20 24 28 32 36

積算出芽率(%

実験開始からの日数(日)

a a a a a

ab b

b b b b b b b b b b

0 25 50 75 100

0 4 8 12 16 20 24 28 32 36

積算出芽率(%

実験開始からの日数(日)

a a a a a

a b

b

b b b b b b b b b

0 25 50 75 100

0 4 8 12 16 20 24 28 32 36

積算出芽率(%

実験開始からの日数(日)

a a a ab ab ab ab abc bcd

cde cde cde de de de de de

0 25 50 75 100

0 4 8 12 16 20 24 28 32 36

積算出芽率(%

実験開始からの日数(日)

a a a a ab ab ab abc abcdabcdebcdef bcdef

cdefdef ef ef f

図5.1.2 各試験区ごとの積算出芽率の推移

※アルファベットの差異は有意差を示す 0日区

1日区

6日区

10日区

79 0

5 10 15 20 25 30

0日区 1日区 6日区 10日区

平均出芽時間(日)

処理区

図5.1.3 各処理区における平均出芽時間

※アルファベットの差異は有意差をあらわす(p < 0.05)

a a

b b

0 25 50 75 100

0日区 1日区 6日区 10日区

出芽率(%

処理区

図5.1.4 各処理区における実験終了時の出芽率

※アルファベットの差異は有意差をあらわす(p < 0.05)

a a

b

b

80 5.1.4. 考察

5.1.4.1 実験終了時の発芽率

実験終了時の発芽率については塩水浸漬期間の差異による有意差は認められなかった

(図5.1.3)。塩分ストレスは種子の発芽を抑制すると言われているが(Ahmad et al.,2013),

既往研究において,塩水を含んだ培地で発芽を抑制されていた種子が,塩水を洗い流し真水 を含んだ培地へ播種されると発芽することが報告されている(Li et al., 2010;Tobe et al., 2001)。また,種によっては本研究と同様に真水に播種されたときの発芽率と塩水処理から 真水へ播種したときの発芽率が同等になることが確認されている(Tobe et al.,2001)。本実 験においては発芽の開始が塩水浸漬中か塩水浸漬後なのか明確ではないが,既往研究と同 様にクロマツの種子の発芽は発芽前の塩水浸漬による抑制的な影響をほとんど受けなかっ たと推察される。

5.1.4.2 実験終了時の出芽率

実験の結果,塩水浸漬期間が長いほど出芽が遅延し(図5.1.2),出芽率の変化は緩やかに なった(図5.1.1)。また,実験終了時の出芽率は6日区と10日区で0日と1日区に比べて 著しく低下した(図5.1.4)。培地の塩分によって,発芽の遅延や種子の胚軸の伸長など初期 生長が抑制されると言われている(Ahmad et al.,2013)。既往研究においても塩分濃度が高 く,塩分ストレスが高い培地ほど発芽の遅延や幼根や実生の生長が抑制されることが認め られている(Kandil et al.,2012;Karim et al.,1992;Mahdavi et al.,2007;Meloni et al.,2008)。 よって,本実験では発芽前の種子は塩水に浸漬する期間が長いほど塩分の影響を強く受け,

0 25 50 75 100

0日区 1日区 6日区 10日区

発芽率(%

処理区

図5.1.5 各処理区における実験終了時の発芽率

※アルファベットの差異は有意差をあらわす(p < 0.05)

81

塩水を洗い流し真水による灌水を行った後においても出芽の遅延や,出芽率の低下が発生 したと考えられる。また,塩水浸漬期間が6日以上の処理区において出芽率の著しい減少が 見られたことから(図5.1.4),ある一定期間以上の塩水浸漬によって種子の出芽が著しく抑 制される閾値のようなものが存在すると考えられる。

5.1.5 まとめ

以上の結果より,短期的塩水浸漬はクロマツ種子の発芽より,発芽後の胚軸の生長に対す る影響が大きい可能性が示唆された。また,塩水浸漬期間が長いほど発芽後の胚軸の伸長に 対する塩分の阻害的な影響は強くなり,その結果として塩水浸漬期間の長い処理区ほど出 芽が遅延し,出芽数が減少したと考えられる。

本実験により,海岸林において津波や高潮によって塩水冠水が発生したとき,土壌中の塩 分が残留する期間が長いほど出芽が抑制され,発生する実生数が減少する可能性が示され た。海岸林の減風機能や津波減衰機能は立木密度や密閉度が関係している(中島・岡田,

2011;佐々木ら,2013)。実生数が減少することにより,再生後の海岸林の立木密度や密閉 度が低下すると,海岸林は防災機能を十分に発揮できない恐れがある。よって,天然更新に よる海岸林の再生では,津波や高潮による塩水冠水後に速やかに除塩し,発生する実生数の 減少を抑えることが重要である。

海岸林は沿岸域に置いて日常的に発生する潮風や飛砂などに対する防災機能を担ってい ることから,迅速に再生させることが求められる。よって今後は,発生した実生の生長につ いて経時的な推移を計測することで,天然更新による再生速度に対する塩水冠水期間の影 響を把握することが重要である。また,クロマツの出芽が抑制されたことについて,そのメ カニズムに関する研究も必要である。

図5.1.5 各処理区の出芽率と発芽率の比較

0 50 100

0 50 100

0 2 4 6 8 10

発芽率(%

実験終了時の出芽率(%

塩水浸漬日数

出芽率 発芽率

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