とができた。エネルギー問題にっいて様々な角度から科学的に考え判断 することは小学生にとっては難しいことだが,毎日の生活習慣として省 エネルギー行動を身にっけようとするには,少しでも早い段階からその 必要性を知り,意識づけることが大切である。そういったことを目標と
した学習のためにも,本研究で開発した教材が有効であることが明らか
となった。
5.2 中学校と小学校における授業実践の結果にっいての考察 次に,第4章に述べた中学校における授業実践1と小学校における授
業実践の結果を比較して考察を行う。これらの実践授業では,共通して 本研究で開発した教材のうち風力発電演示用模型と風力発電生徒用実 験装置(小学校ではこれを改良したもの)を用い,授業後に同様の項目で 択一式のアンケートを行った。
これら比較したアンケートは中学生を対象とした教材アンケートIV と教材アンケートV,そして小学生を対象としたアンケートである。こ のとき,中学生を対象としたアンケートのうち質問が重複している項目 では,2っのアンケート結果をそれぞれ平均した値を示した。
中学生と小学生のアンケート結果を比較して筆者が最も注目した点 は,図5。1に示した発展的な学習への意欲を聞いた設問(中学生:教材 アンケートIV設問③と教材アンケートV設問⑥の平均,小学生:アンケ ート設問⑥を比較,以下省略して記載する)で,中学生と小学生の回答 に大きな差が生じた点である。これらのデンケートは,ほとんど同じ教
風力発電についてもっと調べたり実験したりしたいですか 小学生
中学生
0% 20% 40% 60% 80% 100%
ウ,1.9%
工。0.0%
11.6%
割合
困ア.とてもしたい 函イ,したい ロウ.したくない ロエ.少しもしたくない
図5.1 発展的な学習への意欲
材を使用して同じような展開で学習を行った後にそれぞれ聞いたもの である。それにもかかわらず,学習者の意欲の面でこれだけの差が生じ るのは何が影響しているのであろうか。他のアンケート項目に対する結 果を比較して検討したい。
はじめに筆者が注目した項目以タトで中学生と小学生の回答に大きな 差が生じた項目は,図5,2に示した実験の難易度(中=V⑤,小:③)
にっいて尋ねたもので,ウの「難しかった」,エの「とても難しかった」
実験は簡単にできましたか?
中学生
0 20 40 60 80
工.1.9%
工.5.6%
100(%)
割合
園ア.とても簡単だった 国イ.簡単だった ロウ.難しかった ロエ.とても難しかった
図5.2 実験の難易度
と答えたのが,小学生が全体の20%程度であったのに対し,中学生は半 分の50%に達し,今回の比較の中で差が最も開いた項目であった。
次に,差が大きかったのは,図5,3に示した風力発電に対する興味・
風力発電に興味が持てましたか?
中学生
0% 20% 40% 60% 80%
ウ,0.0%
工.0.0%
工,7,4%
100%
割合
国ア,とても興味が持てた圏イ。興味が持てたロウ.興味が持てなかったロエ.少しも興味が持てなかった
図5.3 風力発電に対する興味・関心
関心にっいて聞いた項目(中:IV②とV②の平均,小:⑤)と図5.4の エネルギー全般に対する興味・関心にっいて聞いた項目(中:IV⑤とV
⑦の平均,小:⑦)では,それぞれ35ポイント程度の差を生じている。
・155・
新しい発電方法やこれからのエネルギーについて興味や関心が深まりましたか
0 20 40 60 80
無回答,
1.9%
ウ。0.0%
工.0.0%
工.10.2%
100(%)
割合
圏ア.とても深まった 圏イ.深まった ロウ.深まらなかった ロエ.少しも深まらなかった ■無回答
図5,4 エネルギー全般に対する興味・関心
さらに,図5,5に示した実験のおもしろさにっいて尋ねた項目(中l V③,小=①)では,中学生の約20%が否定的な回答を示した。また,
図5。6の風力発電に関する知識・理解にっいて聞いた項目(中:IV①と V①の平均,小1④)もこれと同じような傾向にある。
実験はおもしろかったですか?
0 20 40 60 80
ウ.0.0%
工.0.0%
工.8.3%
100(%)
割合
圏ア・とてもおもしろかった 圏イ・おもしろかった ロウ.おもしろくなかった □エ.少しもおもしろくなかった
図5.5 実験のおもしろさ
一方, 小学生と中学生の間でほとんど違いが見られなかった項目に は,図5,7に示した実験に対する積極性にっいて聞いた項目(中lV④,
小:②)があり,これにっいては両者とも90%近い児童・生徒が実験に 対して積極的に取り組めたと回答しており,学習に対する熱心な姿勢が
伺える。
先の章でも述べたが,ある学習を終え,次の発展的な学習への意欲を もっための重要な要素のひとっに,その学習対象である題材や課題に対 して興味・関心が高まることが挙げられる。そして,この興味・関心が 高められるためには,学習対象となる題材を扱った実験や活動を通じ,
風力発電のしくみがわかりましたか?
0 20 40 60 80
ウ.0.0%
工.3.8%
工.2.8%
100(%)
割合
圏ア.よくわかった圓イ.わかったロウ.わからなかったロエ.少しもわからなかった
図5.6 風力発電に関する知識・理解
実験に積極的にとりくめましたか?
0% 20% 40% 60% 80%
ウ.7.7%
工,1.9%
ウ.5。6%
工.5.6%
100%
割合
国ア.とても積極的に取り組めた ロウ.積極的に取り組めなかった
團イ。積極的に取り組めた
ロエ.少しも積極的に取り組めなかった
図5.7 実験に対する積極性
学習者自身が題材に対して何らかのおもしろさを感じることが必要で ある。このためには,児童・生徒の心情を想像すると,予想したとおり の結果が出るなど実験が成功することや,実験の方法や手順を理解して 自分のカで滞りなく操作が行えること,また,自分の予想以上にすばら しい実験結果を目の当たりにできることなどが挙げられる。
以上のことを,今回比較した結果と照らし合わせて考えてみると,図 5.1に示したように,中学生の発展的な学習への意欲が50%程度に留 まったことの原因として,今回の授業実践で行った実験の難易度が主に 影響しているのではないかと考えた。小学生は大半の児童が簡単にでき たと感じた実験が,中学生では図5,2に示したように半数近くの生徒 が難しいと感じたことが示されている。そして,このことが原因となっ て,図5.3や図5.4に示した学習に対する興味・関心や,図5.5に 示した実験のおもしろさにっいて・,中学生は小学生よりも肯定的な意見
・157・
の割合が少なくなったのではないだろうか。当然,学習に対しての興 味・関心が高まらなければ学習事項に関する知識・理解も進みにくいで
あろうから,このことから図5,6の結果も説明できる。
学習への意欲の高まり具合は,必ずしもこの考察のように単純な要因 にのみよるとは考えていないが,図5.7に示したように,中学生も小 学生もそれぞれ実験に対しての積極性は同じように高いことから,ここ では,中学生が示した実験の難しさが要因となり,学習への興味・関心 に影響し,さらに発展的な学習への意欲にも及んだことが推測される。
そこで,中学生と小学生でどれほど実験の難易度に違いがあったかを 次に述べる.まず,実験の手順の違いには,中学生は15分という短い 時間で,材料と回転半径だけを制限されて,風車の羽根を自由に設計す ることを求められたのに対し,小学生は,あらかじめ風車の羽根の設計 図が印刷された材料を配られている・また,羽根の製作にっいては,中 学生はカッターを用いて,おそらく初めて扱うであろうスチレンペーパ ーでの製作を求められたのに対し,小学生は扱いなれたはさみで厚紙を 印どおりに直線で切りとるだけの作業であった。そして,発電実験の結 果,小学生は全員がメロディーICとLEDで発電を確認できたのに対して,
中学生は,メロディーICとLEDで発電を確認できたのが61.7%,メロ
ディーICでは確認できたがLEDは点灯させることができなかったのが
28.3%,そして残りの10.0%が実験中に羽根が壊れるなど実験が不可能となる結果であった。
実験の手順の差は,中学生と小学生の発達段階の違いから考えてっけ たものであったが,結果的に,理想的な羽根の形を与えられた小学生は 工作の技能に関わらず全員が発電の様子を確認できたのに対し,中学生 の一部は,回転には無理のある羽根の形のままで製作を進めたため,実 験が困難な状態に陥ったものと考えられる。
授業実践1の反省を受けて,この中学生を対象とした授業実践Hでは 羽根の設計の際に,難しいと思われるグループには見本を提示したり,
設計図ができた段階で製作に無理があると思われるグループには助言 を与え,設計の変更を促すなど,学習への支援を工夫したのだが,限ら れた授業時間の中ではそれにも限界があった。おそらく,この一度目の
活動をふまえて,もう一度「もっとよく回る羽根をっくろう!」と製作 を重ねる機会があれば,もっとたくさんの生徒達に,実験に対しての満 足感を与えることができたのではないかと考えられる。
一般に,学習として実験を行う際には,大半の生徒が成功させること のできる実験を準備し行うものとされているが,総合的な学習の時間に おける学習では,生徒達自身が,失敗も含めた試行錯誤を経験すること や,それを通じて生徒自身が何かを見いだすことも重要だと考える。本 研究で開発した教材もそのひとっであると言えるが,こういった,生徒 自らが試行錯誤してやり遂げる活動を,目標の難易度を上げながら繰り 返すことで,生徒に自主・自律的な行動をするカや,問題解決能力が養 われるのではないだろうか.学校をはじめとする集団での学習の場で,
自分でやり遂げたという成果を手にすることが生徒に自信を持たせ,
様々な課題に対して前向きに努力しようとする姿勢を生むと考えてい る。昨今,国立教育政策研究所による平成15年度小・中学校教育課程 実施状況調査の結果(1)や,PISAによる2003年のOECD生徒の学習到達度 調査結果(2)から,日本の中学生の学習意欲低下や学習到達度の低下が示 唆され,学校現場では盛んに学力低下問題に対応するための策が講じら れている。しかし,生徒達の学習に対する意欲向上のためには,こうい った基礎・基本的な学習の徹底に加えて,総合的な学習の時間に,試行 錯誤を繰り返して自分なりの成果をだせる学習活動に取り組む機会を 保障することも重要だと考えている。
第5章文献
(1)文部科学省報道発表一覧,http://www.mext.go.jp/b_menulhoudou/17/04/05042302。htm
(2) 文部科学省各種統計一覧,http://www.mext。go.jp/b_menu!toukei1001/04120101,htm.
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