3.1 風力発電に関する教材 3.1.1 風力発電の概要
2004年12月末現在のデータによると,世界的に風力発電が最も盛ん な国はドイツで全体のシェアの34.9%を占めており,その総導入量は世 界8位である日本の約20倍である(1).ドイツを始めヨーロッパ諸国では 風力発電による発電が盛んで,特徴あるものとしては,デンマークの遠 浅の地形を利用した大型の洋上風車の建設があり,その代表として,
Middelgrunaen(2000kW;20基)やHoms Rev(2000kW;80基)が有名で
ある。
一方,日本での風力発電の導入は1990年から本格的に始まり,現在 も拡大を続けている。現在の日本における風力発電導入量は,図3.1
にその推移を示すが,2005年3月末現在で924基約92。6万kWであり,
2000年からこの4年間で総出力は6倍以上に増加した(2)。2002年以降,
1750−2000kWの大型風車が導入されるようになり,今後その規模がさ らに拡大すると予想される。また,導入量を都道府県別にみると,総出 力では青森県が1番多く,次いで北海道,秋田県と東北・北海道地域に 集中している(3)。関西は地形的に風力に恵まれず風車の設置数は少ない
が,三重県の青山高原に750kWの風車が24基(市営久居榊原風力発電
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図3.1 日本における風力発電導入量の推移(1)
・37一
施設4基及び(株)青山高原ウインドファーム20基)と,京都府の伊根 町に750kWの風車6基(町営太鼓山風力発電施設〉の風車群が設置され ている(平成15年11月現在〉。また,それぞれの設置場所は離れている が,兵庫県淡路島には,600kWの風車が1基と1500kWの風車が2基,
2000kWの風車が1基建設されている。これら関西にある風車の様子を
図3.2から図3.4に示す。日本各地で風力発電の導入が進む中,今後,関西でもさらに大型の風車群が数カ所で建設される計画がなされてい
る(4L(5)。
図3.2 青山高原風車群(750kW24基)
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図3.3 太鼓山風車群(750kW6基) 図3.4 淡路島北淡町風車(600kW)
風力発電は風のカを利用するので,無尽蔵のエネルギー源だといえる。
また,そのエネルギー変換の過程で二酸化炭素など環境負荷の大きな物 質を排出することもなく,環境に優しいクリーンなエネルギーだともい える。しかし,エネルギー密度が小さいために,一度に大量の電気エネ
ルギーを作り出そうとすれば施設を大型化せざるを得ないことから,周 囲の景観や生態系などへの影響が懸念される。また,その作動は天候に 大きく左右されるためエネルギー供給が不安定になるといった欠点も ある。しかし,近い将来に予想される枯渇や二酸化炭素排出に伴う環境 への影響などの化石燃料に関するエネルギー問題を考えると,今後風力 発電の利用は確実に拡大すると予想される。
3.1.2 風力発電の理論
風力発電は,風車が自然エネルギーである風力(風の運動エネルギー)
を受けて回転し,その回転運動が発電機に伝えられて発電する発電方法 である。風は質量のある空気の動きによって生まれる現象であるから,
風の運動エネルギーEwは次の式で表すことができる。
1
EwニーmV2 (3・1・1)
2
ただし,mは単位時間に移動する風の質量,Vは風速である.
風の質量mは風車の羽根が風を受ける面積(羽根の回転面積)と風速の 積と空気の密度から,
m=ρAV (3・1・2)
ただし,ρは空気密度,Aは羽根の回転面積である。
羽根の回転面積Aは,
A=πr2 (3・1・3〉
ただし rは羽根の回転半径である。これらを(3・1・1)式に代入すると,
Ew=ρV2Vπr2 (3.1.4)
2
となる。従って,風の運動エネルギーは,風車の直径の2乗に比例し,
風速の3乗に比例する。
次に風車が回転するしくみにっいて述べる。プロペラ型風車を代表と する揚力型風車の作動原理にっいて示した図3.5では,回転軸からの 距離rにおける羽根の断面で説明している。通常,風車の運転には回転 面に対して直角に風が入るように方位制御する。このときの風速をVと すると,羽根自身が回転して前方に進んでいることから,羽根には相対
風速Vrで流入する。この相対風速Vrに対して垂直な方向に揚力Lがは
一39・
たらき,その揚力Lの回転方向の分力が回転力となって風車が回るしく
みとなっている。この回転力Lsinθと抗力Dの回転方向の分力Dcosθ
の差が電力に変換される。風車の仕事量はこの回転力Lsinθと抗力Dの 回転方向の分力Dcosθの差と風車の回転数の積で求められるため,同じ 仕事量を得ようとするときには,回転力の小さな風車は速く回転することが,回転数の低い風車は大きな回転力が必要となる。
揚力L
ロータ.平面 抗力D.、.∠!
回転方向分力 Lsinθ 回転面
風速V
θ
相対風速Vr
Dcosθ
風
図3.5 揚力型風車の作動原理
さてここで,様々な風車の種類にっいて述べる。図3.6に示したよ うに,風車には様々な形があるが,その種類はまず回転軸の方向で大き く2っに分けることができる。風車の回転軸が風に対して水平なものを 水平軸風車,風に対して垂直なものを垂直軸風車という。その中でも,
羽根にはたらく揚力で回転するものを揚力型風車といい,ロビンソン風 速計のように風が直接当たるカで回転するものを抗力型風車という。こ の分類に従って風車を分けたものを表3.1に示す.また,回転してい る羽根の先端の周速と受ける風速の比である速度比から分類する方法 もあり,その分類を表3.2に示す。
①オランダ形風車 ②多翼形風車
④セイルウインク形風車
③プロペラ形風車 ⑤ノfドノレ汗多風車
⑧サボニウス形風車
⑥S形ロ タ
⑨ダリウス形風車
図3.6 風車の種類(6)
瞬
⑦クロスフロー形風車
⑩ジヤイロミル形風車
表3.1 風車の分類1(7》
軸 風車の種類 回転力 風車の効率(%)
水平軸 オランダ型風車 揚 力 10
多翼型風車 揚 力 10
プロペラ型風車 揚 力
76
セイルウィング形風車 揚 力
20
垂直軸
パドル型風車 抗 力
5
S字型ロータ 抗 力 一
クロスフロー型風車 抗 力 一
サボニウス型風車 抗 力
25
ダリウス型風車 揚 力
50
ジャイロミル型風車 揚 力
25
表3.2 風車の分類H(8)
◎ 高速風車(速度比>3.5,翼数2〜4)
プロペラ型風車・ダリウス型風車・ジャイロミル形風車
◎ 中速風車(速度比1.5〜3.5,翼数4〜5〉
セイルウィング型風車
◎ 低速風車(速度比<1.5,翼数2〜多数)
多翼形風車・サボニウス型風車・オランダ型風車・パドル 型風車・S字型ロータ・クロスフロー型風車
3.1.3 風力発電演示用模型の設計
本研究で開発した風力発電演示用模型の設計にっいて述べる。この教 材は,現在実用化されている風力発電機に近い形状の模型による発電実 験の観察を通じて,風力発電のしくみや,運動エネルギーから電気エネ ルギーへの変換の過程を学ぶと同時に,本物に近い模型での演示実験に よってその迫力や感動を味わうことを目的としている。そのため,実際 に使用されている風力発電機と同じプロペラ型風車で,その羽根にはね
じりが入ったものを製作した。
羽根の設計は次の様に行った。まず,模型教材として適当な大きさに
・41・
なるように羽根の回転直径を490mmとした。また,風車に用いる代表的 な翼型の中から製作のしやすさを考慮して,対称翼であるNACAOO15翼 型(9)を採用した。羽根のねじりは図3.7に示す風車の出力係数と速度比
の関係から3枚翼プロペラ風車の模型として適切な速度比を5と定め
て角速度ωを算出し,速度三角形によって各点でのねじれの角度を決定した。風車の出力係数CLは次の式から求められる。
Lp Lp
CL=一二
Ew pV2Vπr2
2(3・1・5)
ただし,Lpは風車出力である.
また,羽根の先端の周速と受ける風速の比である速度比φは,
u rω 2πnr
Φニー=一二 (3・1・6)
V V 60V
と表せる.ただし,uは羽根の先端の周速,ωは角速度,nは羽根の回 転数である。得られる風速を秒速5mと仮定して(3・1・6)式に代入し,角 速度ωを求めると,
ΦV 5x5
ωニーニ =142.9 (3・1・7〉
r O.175
となる.この値を用いて各点でのねじれ角θを求めた.これを図3,8
に示す。
α6 0.三1
ll:臨☆
i
﹂\
碁 9 1」 1五 ユ2
図3.7 風車の出力係数(10)
r (nm)
o
l3. 8
250. o
ro) = 35 7
(m/ s )212. 5
O =8. Oo
e
ra) = 30 4
5m/s
19, 8
(m/s)
175. O
e =g, 3'
e
ra) = 25.0
(m/ s)23. 6
137. 5
e =u. 3'
rco = 19.6
O =14. 3o
(m/s)
27. o
100, O
50. O
O
ra) = 14.3
O =19. 30
30. 5
(m/ s )
ro) = 7.1
O =35, Io
(m/ s )
33, o
i i F I L+ 4aC L i a)
. 3 .
32, 7
3.1.4 風力発電演示用模型の製作
はじめに,風車の羽根の製作方法と材料にっいて述べる。羽根の製作 にはヒノキ材を用い,糸鋸で大まかな形を切り出した後に,図3。8に 示した翼断面のテンプレートを6枚製作して,それに沿うようにカッタ ーナイフで削り出した。同じものを3っ製作し,それぞれ回転軸に固定 する際の軸としてM6のボルトを取りっけている。この羽根の形状を図
3.9に示す。
2
六角ボルト(陶
一≡
25
写 民
=コ
2 215
235
六角ボルト(M6)
図3.9 羽根の形状(風力発電演示用模型)
次に,回転軸と羽根押さえ,増速機,軸受け押さえの製作にっいて述 べる。これらの材料にはすべて黄銅を使用し,それぞれ直径の異なる黄 銅棒から旋盤で削りだした。増速機は後に述べる発電機の回転数に合う
ように,増速倍率が10倍となるよう設計した.それぞれの図面を図3.10 から図3.13に示す。
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図3.10 回転軸の形状(風力発電演示用模型)