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経済のグローバル化と連結会計制度

ドキュメント内 市場経済の展開と発生主義会計の変容 (ページ 138-188)

l はじめに

日本に連結会計制度が導入されたのは、1977年であった。その直接的契機となっ たのは、関係会社を媒介とする粉飾決算であり、また、当時、顕著になりつつあ る企業の集団化現象もその成立の理由であったといわれるoそうした状況下で「投 資家保護」という名目の下、制度化されることとなった連結財務諸表は、国内要 因によって成立したことが知られる。また、最近、戦略機能強化等の理由から日 本企業の体質改善策として純粋持株会社解禁が話題となり、これとの関連で連結 会計制度が注目を集めているO

しかし、今日、日本において連結財務諸表が注目されている最大の要因は、海 外直接投資の急増という海外要因であろう。海外生産等の多国籍化を推進してき

た製造企業が、海外事業の採算を向上させることにより、圏内の不調を補う傾向 が増大しつつある。その結果、現行の連結財務諸表は、在外関係会社が独立した 事業単位に成長した例が多いと思える現状に適合するかという疑問も提起されて いる。こうした日本独自の事情も、経済のグローパル化進展の中で海外子会社の 連結の比重が一層高まるという傾向、および経済のソフト化、金融化によって、

連結の範囲について大きな見直しが必要となったという経済自体の世界的な変化 と無縁ではないということができるo すなわち、多国籍化した大規模製造企業に、

国境を越えて展開された製造子会社を連結することにより、その実態が明らかと なるべき企業像と現実の企業の姿との聞にズレが生じているのである。本章では、

連結会計制度の見直しの背後にある経済自体の変化ないしは企業像の変化に注目 しながら、連結会計制度に係る問題点を取り上げ、これに関連する問題として関 連当事者に係る情報開示について考察することを課題とする。

アメリカにおいては、法制化される前に連結財務諸表の公表が、一部の企業に よって行われていた。連結財務諸表の生成の理由として持株会社の発達が挙げら れる。資本市場と関わる会社について連結財務諸表が法制化されたのは、 1933年

136  II 2次ノマライダム・チェンジ」としての資産・負債アフ。ローチへの移行 証券法と

1 9 3 4

年 証 券 取 引 所 法 に よ っ て で あ り 、 こ れ に よ っ て 証 券 取 引 委 員 会

( S E C )

は、連結財務諸表の形式および内容を規定する権限を付与された。イギ リスにおいても、法制化以前に一部の持株会社によって連結財務諸表が公表され ていたが、会社法によってグループ計算書類の作成・開示が要求されたのは、

1 9 4 8

年であった。

連結財務諸表は、アメリカにおいても圏内要因によって成立し、その後、企業 活動の国際化に伴って在外子会社も連結に含めるという形で、いわば「準用」さ れてきたという点を看過してはならない。すなわち、アメリカにおいて、一般に 認められた会計原則としての外貨換算に関する公表意見書は、アメリカ会計士協 会

( A I A )

による

1 9 5 3

年の会計研究公報

(ARB)

4 3

号であり、そこでは流動・

非流動法が奨励きれていた。

1 9 7 1

年には、会計原則審議会

( A P B )

意見書第

1 8

号 によって

ARB

4 3

号第

1 2

章が一部変更され、それによって実質的に貨幣・非貨 幣法の使用が認められた

( F ASB [ 1 9 7 5 ]   p a r . 6 3 )

。この

APB

意見書第

1 8

号の公 表以降、国際連結が正常化されたといわれるが、在外子会社の連結が例外なく求 められたのは、

1 9 8 7

年の財務会計基準書

( S F A S )

9 4

号によってである。

すなわち、連結財務諸表は、そもそも企業の多国籍化とは関係なく成立し、し かも、連結財務諸表が成立した時代には想像もつかなかった「変動相場制への移 行」という新しい現実が

1 9 7 1

年以降には存在する。したがって、今日のグローパ ル化した経済における、特に多国籍企業の活動を写し取るのに連結財務諸表がふ さわしいかどうかが、直接、議論されてきたとは言い難い。

外貨表示財務諸表の連結を含む外貨換算問題は、

FASB

の初期の活動に大波乱 をもたらした。

1 9 7 5

1 0

月に

SFAS

8

号が公表きれ、翌

1 9 7 6

1

1

日に始ま る会計年度に発効した。

SFAS

8

号では、連結きれる外貨表示財務諸表の測定 単位の決定にあたって、一般に認められた会計原則における連結財務諸表の目的 を考慮するとして、

ARB

5 1

号「連結財務諸表」の第

1

項の以下の部分が引用さ れている

( F ASB [ 1 9 7 5 ]   p a

r.

8 7 )

[連結財務諸表の目的は、主として親会社の株主および債権者のために、実質 上あたかも連結グループが、一以上の支屈または部門を有する単一企業であるか のように、親会社と子会社の経営成績および財政状態を表示することにある。」

SFAS第8号は、当該目的と合致させるため、在外事業を含むグループ全体の 取引が単一企業のものであるかのごとく、換算すべきであるとする(FASB [1975J  par.88)。そして、連結財務諸表の基礎となる単一企業の考えにより、測定単位は 単一であることが要求されるとした上で (FASB [1975J  par.92)、換算手続は、

単に外貨で表示され、または当初外貨で測定きれた金額をドルで再測定する手段 にすぎないと言明する (FASB [1975J  par.94)。

しかし、 1978年5月に、 FASB は、当時の時点で最少2年間実施されていた SFAS第1号から第12号までについて一般の意見を求める招請状を出したが、寄 せられた意見のほとんどが外貨換算を問題としていた (FASB [1981J  par. 1 。) すなわち、 SFAS第8号による換算結果に対して、在外事業の基盤にある現実を 反映しないという広範な批判が生じたのであるo

SFAS第8号で展開されたテンポラル法の前提は、在外事業を含むグループ全 体の取引を、あたかもすべての事業が親会社の国内活動の延長であり、あらゆる 取ヲ│が親会社の報告通貨で行われ、かっ測定されたかのように連結財務諸表上に 反映するというものである。これに対する批判として、 SFAS第8号に代わって 外貨換算基準を定めた1981年のSFAS第52号では、テンポラル法は、すべての取 ヲ│があたかもドルで行われたかのように当該取引を測定することを要求し、それ により棲数の単位があるという事実を覆い隠してしまうとし、その結果、それが 事業単位の事業活動に影響を与えている経済的事象と整合しないような利益の変 動を生じさせるとしている (FASB [1981J  par.86)。

つまり、実際には利益を上げながら活動し、現地通貨のキャッシュ・フローの 純剰余を生み出している在外事業単位の成果が、単なる機械的な換算手続の結果 として損失に転化してしまうという、いわゆる「換算のパラドクス」発生の可能 性を指摘する。そして、最終的に、大部分の在外事業単位にとって「単一の測定 単位」に固執することは事実を無視した錯覚的なものであるという結論に達する

(F ASB [1981] par.88)。

結局、 SFAS第8号が無視してしまったのは、端的にいえば、「変動相場制への 移行j という新しい現実によって現れた為替変動リスクおよびそれに対するへッ ジという手法であった。 FASBに寄せられた意見の中において、外貨建負債の為

138  11 2次パライダム・チェンジ j としての資産・負債アプローチへの移行

替リスク・エクスポージャーは、事業用資産の外貨収入ポテンシャルによって十 分へッジされていることが多いにもかかわらず、このへッジが

SFAS

8

号の換 算手続では認識されていないと多くの回答者が答えていたという

( F ASB [ 1 9 8 1 J   p a r

.l54)。

オ フ バ ラ ン ス 金 融 と 連 結 会 計 制 度

1 9 7 1

年の変動相場制への移行という金融の世界の変化が、テンポラル法を無力 化してしまった。そして、皮肉なことに、経済の金融化も実は、変動相場制への 移行に端を発し、それが

1 9 8 0

年代に金融子会社の非連結という形で、再び、連結 会計制度に歪みをもたらしたのであるo

ARB

5 1

号では、製造業企業を親会社とする金融子会社の財務諸表は、親会社 の財務諸表とは分離して開示することが「望ましい」旨規定していた。ミラー=

レディング

( P .

B.

W . M i l l e ra n d  

R.

R e d d i n g )

によればこの例外規定は、

1

つの抜 け道として多くの経営者の目に映り、その後何年かにわたって新たに多くの金融 子会社が誕生するに至った。しかも新たに設立された金融子会社の規模は、時が たつにつれてますます大きなものとなっていったという(高橋訳

[ 1 9 9 1 J1 3 0 ‑ 1 3 1  

頁)。こうした状況について、

1 9 7 8

年以来非連結子会社が急増し続けたことを

FASB

も認めている

( F ASB [ 1 9 9 1 a J   p a

r.

1 8 )

このように、連結に関わる問題が、具体的にはオフバランス金融の問題である ことが指摘されているが オフバランス金融問題の根底には経済自体の大変化が 存在する。すなわち、

ARB

5 1

号が公表きれた後、企業は様々な事業ラインに分 岐し、また、多くの外国市場へ参入した。従来は非金融業であると考えられてき た多くの金業が、ファイナンス、保険、不動産、リース及び投資銀行といった金 融サービスへと多様化し、他方、それより多くの企業が、主として非金融企業の ままで、以前には親会社叉はその現存する子会社によって遂行されていた金融活 動を行うために別個の子会社を設立した

( F ASB [ 1 9 9 1 a J   p a

r.

2 8 )

その結果、支庖及び部門を持つ単一会社として設立きれたものであっても、あ るいは、親会社及び子会社として組織されたものであっても、単一企業内に多種 多様な活動が一般的に行われているような経済へと移行した。その結果、ある企

ドキュメント内 市場経済の展開と発生主義会計の変容 (ページ 138-188)