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11 ドイツ実体維持論の転向 生産から分自己へ 189 

1 1 ‑5 

⑨ 

( 字 詰 n

総額実体維持概 念のもとでの分 配可能利益

i名目 i利 益

( 一 一 ー l

この帰属割当という手続が純額実体維持計算の最も大きな特徴となっている。帰 属割当規則としてケーネンベルグ (A.G.Coenenberg)は次の4つを挙げている

(Coenenberg  [1975J  S.117)

(a) 個別的確認 (Einzelnachweis)による帰属割当

すべての資産に対して、別々に、そのつど自己資本または他人資本、ある いはその両方が帰属割当きれる。

(b)  総資本による帰属割当

すべての資産が、総資産に対する自己資本および他人資本の割当(総資本 構成)に対応して、自己資本および他人資本によって調達されているという 仮定に基っーいて帰属割当される。

(c)  残余資本構成による帰属割当

まず、貨幣資産に他人資本が帰属割当される。それから、残りの資産につ いて、自己資本および残された他人資本の合計に対する両者の割当(残余資 本構成)に対応して自己資本と他人資本とで調達きれているとみなして帰属 割当される。その際、他人資本が貨幣資産を越えるということが前提とされ ている。

(d)  資産項目の貨幣性 (Geldcharakter)と期限性 (Fristigkeit)による帰属割 当

まず、貨幣資産に他人資本が帰属割当される。その後、他人資本がまだ残っ ていれば、それが、短期的に拘束された非貨幣性資産から、より長期的に拘 束された帰属割当規則のうち、 (a)は実際に適用可能な場合が限られると考え られる。したがって(b)(c)(d)が問題となるが、これらは1つの仮定に基づ いているという点で、棚卸資産の評価方法である平均法や先入先出法および 後入先出法等と類似性がある。

これらの3つの帰属割当規則を計算例によって説明しよう。計算例の条件を以 下のように設定する。

(イ) 当該企業が期中に費消した資産の取得原価を設備資産600GE 、棚却資産 600GE 、貨幣資産600GEの合計1800GEとする。

(ロ) 資産は自己資本600GEと他人資本1200GEとによって調達されていると

総資本帰構属成 による 当規則

残余資本属

割 による帰 当規則

'性項目の と期限 性による帰属 割当規則

仮定する。

11 ドイツ実体維持論の転向 生産から分配へー 191 

11‑6  純額実体維持計額算

による費用 名 目 資 本 維 持 額計算

による費用 帰属割当

設備資産 620  設 備 資 産 600 

1830  棚 卸 資 産 610  棚 卸 資 産 600  GE 

貨幣資産 600  貨幣資産 600 

設備資産 630  設備資産 600 

1845  棚 卸 資 産 615  棚 卸 資 産 600  GE 

貨幣資産 600  貨 幣 資 産 600 

11設備資産 660 

I  I 

設 備 資 産 600 

棚 卸 資 産 600  町 棚 卸 資 産 600

GE  │他人資本 1200

貨幣資産 600  貨 幣 資 産 600 

設備資産 棚卸資産 貨幣資産

d

200" ^ • , ^^^ , ^^^" 200 

1830=600+600 600 . ~~~ 0.1 +600+600 v • ~ , v v v , v V V x一一600 x.05+600  300

, , ^   .  , ^ ^ ^ ,   ^ ^ ^ , ,

300 

1845 = 600 + 600 x一一600" xv • ~ , 600 + V V V  , 6v V V "  00 x一一600 XO.05600

1860 600600X一一600 X0.1 +600  600 

付 各資産の期中の価額上昇率を次のように仮定する。

設備資産 10%  棚卸資産 5 %   貨幣資産 0 %  

以上の条件に基づいて(b)(c)(d)の各帰属割当規則を適用して当該期間の費用 額を求めると「図11‑6 

J

のようになる。なお、ここでも説明を明確にするため純額

実 現 収 益 再調達価額 取 得 原 価

図11‑7

総資本構成に 残 余 資 本 構 成 資 産 項 目 の 貨 よる帰属割当 に よ る 帰 属 割 幣 性 と 期 限 性 規則 当規則 による帰属割

当規則

人資本で調達き た資産の実現さ れた価額上昇分

自己資本で調達さ れた資産の実現さ れた価額上昇分

実体維持計算を損益計算として行った場合を仮定して費用額という表現を用いる。

「図11‑6 

J

で明らかなように、適用きれる帰属割当規則によって費用額が異な る。これは、次のような理由による。すなわち、純額実体維持計算の場合、費用 額は取得原価に基づく費用額に自己資本で調達された資産の実現された価額上昇 分を加えたものとなる。したがって、価額上昇率が高い資産に自己資本が帰属割 当されるほど費用額が大きくなる。

これとは逆に、先に明らかにししたように、他人資本で調達された資産の実現 された価額上昇分は利益の一部とみなされるので、価額上昇率の高い資産に他人 資本が帰属割当されるほど利益額が大きくなるo こ の 関 係 を 図 示 し た も の が

「図11‑7 

J

である。

「図11‑7 

J

で明らかなように、帰属割当とは、要するに資産の実現された価額 上昇分のうち費用となる部分と利益となる部分とを決定することを意味するo

これが一定の仮定に基づく帰属割当によって行われる以上、恋意性の介入は免 れない。の恋意性の介入の余地があるという点が純額実体維持計算に対する批判

11 ドイツ実体維持論の転向一生産から分配へー 193 

のーっとなっている (Hax [1977J  SS.182‑183)。

しかし、仮定に基づく計算という点では棚卸資産の評価等、現行の会計でも行 われているo したがって、そのことをもってして純額実体維持計算を完全に否定 することは妥当でない。ヤーコプス=シュライパーは、この問題は一度選択され た帰属割当方法の継続的適用の強制によって解決できるという見解を示している

(Jacobs und Schreiber  [1979J  S.192)。

6 イ ン フ レ ー シ ョ ン に よ る 資 本 需 要 填 補 に 関 す る 前 提

貨幣価値安定期には名目利益がすべて課税や利益分配によって企業外に流出し ても実体維持は保証きれる。しかし、インフレーション期には名目利益には架空 利益が含まれ、それが課税や利益分配によって企業外に流出するとその流出した 架空利益の分だけインフレーションによる資金調達欠陥(inflatorischeFinan‑ zierungslucke)が生じる (Mattey [1980J  S.245)。

従来の総額実体維持概念では、架空利益の流出を防ぐことによって、このイン フレーションによる資金調達欠陥が生じないようにしていた。つまり、実体維持 のための資金の源泉を収益だけに求めることが前提とされていたのである。この 前提は自己資本比率の増大という結果につながることになる。

一方、架空利益の流出による資金調達欠陥は、架空利益の流出を防ぐという方 法の他に外部資金によって填補することもできる。つまり実体維持のための資金 の源泉としては、収益だけが唯一のものではなく外部資金も考慮に入れることが できるのである。なお、エントレスの研究 (Endres[1967J)においても、実体維 持のため資本需要に対し、利益は唯一の資金源泉ではなく、外部資金と同様1つ

の資金調達方式にすぎないことが前提とされている。

純額実体維持概念では、インフレーションによる資金調達欠陥を、一部は収益 によって填補し、一部は外部資金によって填補することが前提とされているo こ の点が総額実体維持概念と純額実体維持概念との大きな相違点となっている。

純額実体維持計算を適用する場合には、外部資金の新たな導入という前提が満 たきれ、しかもそれが他人資本によるものであれば、資本構成は一定となるとさ れるo この点を計算例によって明らかにしてみたい。計算例の条件を以下のよう

に設定し、貨幣単位はGEとする。

(イ) 当該企業の時点 t。における貸借対照表

B/S 

to  自 己 資 本 資 産 50,000 

100,000 

他 人 資 本 50,000 

(ロ) 時点t。から tsまで各期とも、資産の再調達価額の上昇率は、 10パーセント とするO なお、実体維持計算で問題とされるのは物的資産なので、ここでは 単純化のためすべての資産が物的資産であるとみなす。

付各期とも、名目資本維持計算によって算定きれる名目利益は、期首の資産 総額の10パーセントとするo

(ニ) 純額実体維持計算の場合、他人資本で調達された資産の実現された価額上 昇分に相当する資金が、各期末に他人資本の形で外部から新たに導入きれる。

(村各維持計算によって算定される利益は、すべて期末に課税と利益分配に よって企業へ流出きれる。

以上の条件に基づいて総額実体維持計算と純額実体維持計算との5期間にわた る結果を示したのが「図11 8

J

である。

「図11‑8 

J

で明らかなように総額実体維持計算を適用する場合には、年々、自 己資本比率が高くなる。それは、以前他人資本で調達きれていた資産が徐々に自 己資本によって調達されることを意味する。

これに対して、純額実体維持計算では、外部資金で調達されている資産はイン フレーション期においても継続して外部資金によって調達されるということが前 提ときれている。そして外部資金が他人資本という形で調達きれれば、総額実体 維持計算を適用する場合のように自己資本比率は増大しないことになる。

総額実体維持計算を適用した場合と純額実体維持計算を適用した場合のそれぞ、

れについて、時点 tsにおける自己資本比率を求めると次のようになる。

総額実体維持計算を適用した場合の時点 tsにおける自己資本比率

11 ドイツ実体維持論の転向 生産から分配へー 195 

A + B   111.0日

一一一一一一 一一」ー

x

100=68. 95% 

C  165,110 

純額実体維持計算を適用した場合の時点tsにおける自己資本比率 A 

B  80,525.5 

一一一一一一一 一一一一一X100=50%

C  161,051 

総額実体維持計算の場合は時点 tsに50パーセントだった自己資本比率が時点 tsには68.95パーセントにまで増大するのに対して、純額実体維持計算の場合は常 に50パーセントで一定している。これは外部資金の新たな導入が他人資本によっ て行われるという条件が満たされる場合にのみ可能で、あるにせよ、純額実体維持 計算を適用する場合には、少なくとも総額実体維持計算の場合と比べて自己資本 比率の増大の度合いは小きいと考えられる。

こうした資本構成に現れる差異は、それぞれの実体維持計算の前提となってい る。インフレーションによる資本需要の填補の方法についての前提の差異による

160000  140000  120000  100000 

80000  己自 資 60000  40000  20000 

to 

図11‑8 

純額実体維持計算を適用

[一一額

総額実体維持計算を適用

(

一 一

t t t t t

ドキュメント内 市場経済の展開と発生主義会計の変容 (ページ 191-200)