(イ) 株主と債権者との利害衝突に対する株式法上の権限画定 (ロ) 大株主と小株主との利害衝突に対する株式会法上の権限画定
(ロ)
付 公開会社における株主と取締役会および監査役会との利害衝突に対する株 式法上の権限固定
ができる (Wagner[1976J S.490,なお、「図11‑3 Jは、 部分的に修正を加えたものである。)
ヴ、アグナーの図に筆者が
まず(a)と(b)については、債権者の利害は配当の上限をすることによって保護き れ、小株主の利害は最低配当の規定によって保護されている。「図11‑3
J
では、そのことがそれぞれ(イ)と(ロ)によって示されているo
したがってい)の公開会社における株主と取締役会および監査役会との利害衝突 については、「図11‑3
J
の(斗が利害衝突の範囲 (Konfliktbereich)として残る。しかし任意積立金の有高については、その取崩しの権限が取締役会および監査 役会にあるので、株主と取締役会および監査役会との利害衝突の範囲は、結局、
「図11‑3 Jの付で示きれた部分ということになる (Wagner[1976J S.490)。 この利害衝突の範囲を権限の範囲 (Kompetenzbereiche)に割当てるにあたっ ては、次の3つの可能性が存在する。
(1) すべての利益処分を株主総会に任せる。
(2) すべての利益処分を取締役会および監査役会に任せる。
(3) 株主総会と取締役会および監査役会との両者に、定められた部分について それぞれ任せる。 したがって 1つの妥協策 (Kompromis)を選択する。
第11章 ドイツ実体維持論の転向一生産から分配へー 187
当時西ドイツ株式法では(3)の方法が採られていた。すなわち、第四条において、
株主総会と取締役会および監査役会とにそれぞれ50%ずつ年度利益の処分権限が 与えられている。この規定によって取締役会および監査役会は、債権者保護のた めの名目資本維持の範囲を越えて任意積立金を設定する可能性を与えられている
(Wagner [1976] S.491)。
1965年の西ドイツ株式制定の際に、法律・経済委員会 (Rechts‑und Wirt‑ schaftausschus)によって実体維持積立金 (Substanzerhaltungsrucklage)の導 入が否認きれたのも、この第58条による取締役会および監査役会の利益処分権が 実体維持にとって十分なものとみなされているという理由によるとされている
(Wagner [1976] S.491)。
以上において実体維持を年度利益の分配との関連でとらえる場合、実体維持問 題が利益処分権に対する利害衝突と係わることが明らかとなった。すなわち、実 体維持をはじめとする一定の資本維持尺度の適用という問題は、現行の制度を前 提として年度利益の分パイとの関連でみる場合には、年度利益の一部を株主総会 の権限下に置くかそれとも取締役会および監査役会の権限下に置くかという問題 となる。そして、実体維持概念の適用は、年度利益のうちより多くの部分を取締 役会および監査役会の権限下に置くことを意味する。
実体維持概念に基づく架空利益の内部留保という問題は、究極的には、株主が 利益依存的配当 (gewinnabhangigeAusschuttung)に対する請求権の行使を差し 控える覚悟があるかどうかということに焦点がある (Danert日982]S.69)。この 観点からすると従来の総額実体維持概念では、結局、株主の一方的負担によって 実体維持を保証することが前提となっている。
つまり、総額実体維持概念では、資産の実現された価額上昇分について、自己 資本で調達されたものかあるいは他人資本で調達されたものかということに関係 なく、すべて架空利益とみなされて利益計算または利益処分の過程を通じて収益 から控除されるので、その分だけ株主に対する分配可能利益が削減きれるのであ る。
これを費消された資産の再調達という観点からみると、それに必要な資金をす べて収益から回収した内部資金によってまかな7ことが前提となっていることを
図11‑4
し一名目利益 資産に係る実現¥
した価額上昇分/
取 得 原 価
再 調 達 価 額
実 現 収 益
投下貨幣資本の回収部分
」一一、F一一J 、一一一一一一~一一一一一一~
販売時点 調達時点
意味する。つまり、実体維持に必要な資金の源泉を収益にのみ求めようとする点 に特色がある。以上の過程を示したのが「図11‑4
J
である。これに対して、純額実体維持概念では資産に係る実現した価額上昇分のうち、
自己資本で調達きれた資産については収益から控除されるが、他人資本で調達さ れた資本については利益の一部となる。したがって、その分だけ総額実体維持概 念の場合と比べ分配可能利益の削減の度合が小さい。そして他人資本で調達され た資産の実現された価額上昇分について生じる資本需要は、外部資金によって墳 補することが前提ときれているo これを図示したのが「図11‑5
J
である。以上の点から純額実体維持概念は、内部留保指向的な利害関係者と利益分配指 向的な利害関係者との聞の分配妥協 (Ausschuttungskompromis)として総額実 体維持概念よりも優れていると主張されている Oacobs [1979J S.163)。
このように純額実体維持概念は年度利益の分配という側面から根拠づけられる。
つまり、現行の制度を前提とした補助計算として展開きれている純額実体維持概 念は、実体維持という観点から株主総会と取締役会および監査役会との妥協点を 画定する際野基準としての性格を持つといえよう。
先に触れたように、西ドイツ株主法では年度利益の処分権は、株主総会と取締
第11章 ドイツ実体維持論の転向 生産から分自己へ 189
図
1 1 ‑5
⑨
( 字 詰 n実
「一一一一一ー一一一ーー一一ー一一一
総額実体維持概 念のもとでの分 配可能利益
i名目 i利 益
( 一 一 ー 一一l 再