処理 過程 にお ける 衡平 性確 保の 必要 性と 総合 評価 的均 衡性 判断 これ まで に見 てき たよ うに
、相 当性 的均 衡性 判断 と目 的的 均衡 性判 断に つい ては 紛争 処理 過程 にお ける 対抗 措置 の必 要性 との 間に おい て対 応関 係を 認め るこ とが でき たの に対 し、 総合 評価 的均 衡性 判断 につ いて はそ の適 用を 基 礎づ ける よう な必 要性 を、 平和 的紛 争解 決原 則を 構成 する 諸義 務か ら直 接に 見い だす こと は、 一見 した とこ ろ難 し い。 とは いえ
、総 合評 価的 均衡 性判 断が 対抗 措置 に関 して は適 用さ れな いと 考え るべ きで はな いで あろ う。 平和 的紛 争解 決原 則は 紛争 の解 決を はか る上 で、 紛争 当事 国に 対し 単に
﹁国 際社 会の 平和 およ び安 全﹂ を損 なわ
ない だけ では なく
、そ れに 加え て﹁ 正義
︵j us ti ce
︶﹂ を危 うく する こと のな いよ うに 要請 して おり
、そ れを 受け て マニ ラ宣 言で は友 好的 紛争 処理 手続 を通 じて
﹁衡 平な 解決
︵e qu it ab le se tt le me nt に︶ 努め る﹂ べき こと とさ れて い る︵ 第Ⅰ 部第
( )
c項
︶。 また 交渉 原則 宣言 では
、﹁ 交渉 が行 き詰 まっ た場 合に は相 互に 受入 可能 であ り、 かつ 公正 な解
208
決︵ ju st so lu ti on に︶ 向け た継 続的 な働 きか けを 可能 な限 りで 努め るべ き﹂ こと が求 めら れて いる
︵
( )
項g
。︶ この よ 2
209
うに 平和 的紛 争解 決原 則の 下で は、 その 基本 的な 要請 とし て平 和的 紛争 解決 をは かる 上で それ が衡 平性 を害 し、 ま た公 正性 を欠 くも のと なっ ては なら ない こと を求 めて いる
。 この よう な、 いわ ば﹁ 紛争 処理 過程 にお ける 衡平 性確 保の 必要 性﹂ は、 対抗 措置 との 関係 では 次の 二つ の規 範的 意義 を有 する
。 まず 当該 必要 性は
、対 抗措 置に 紛争 処理 過程 にお ける 衡平 性の 確保 をは かる 上で の一 手段 とし ての 性質 を付 与す るも ので あり
、そ の点 にお いて 対抗 措置 の正 当性 に関 する 一般 的基 礎と して の意 義を 有す る。 既に 見て きた よう に、 回復 不能 な侵 害結 果が 見込 まれ るよ うな 場合 にお いて も対 抗措 置の 行使 を認 めな いと すれ ば、 不当 に一 方当 事 国の 有利 に現 状の 維持 をは かる こと にな り、 その 点で 衡平 に反 する こと とな
( )
ろう
。現 状の 国際 紛争 処理 の法 構造 を
210
前提 とす る限 り、 紛争 処理 過程 を衡 平に 適う もの とす る上 では 対抗 措置 が一 般的 に禁 じら れて いる と考 える こと は でき ない ので あり
、そ のよ うな 意味 にお いて 現代 国際 法に おけ る対 抗措 置は その 一般 的基 礎を
﹁紛 争処 理過 程に お ける 衡平 性確 保の 必要 性﹂ に有 して いる とい うわ けで
( )
ある
。
211
他方 で、 この
﹁紛 争処 理過 程に おけ る衡 平性 確保 の必 要性
﹂は 単に 紛争 処理 過程 にお ける 衡平 性の 一要 素と して 対抗 措置 の余 地を 認め るに 留ま るの であ り、 その 具体 的な 行使 を積 極的 に基 礎づ ける もの であ るわ けで はな い。 む しろ それ は、 具体 的な 紛争 処理 過程 にお いて 対抗 措置 の行 使を 積極 的に 基礎 づけ る必 要性
︵友 好的 紛争 処理 手続 促 進の 必要 性、 係争 利益 保全 の必 要性
、特 定的 措置 実施 の必 要性 が︶ 認め られ る場 合で あっ ても
、対 抗措 置の 行使 によ っ
て逆 に衡 平性 が損 なわ れる こと がな いこ とを 要請 する もの でも ある とい う点 にこ そ、 その 重要 な意 義を 有す る。 そ れは
、紛 争処 理過 程に おけ る対 抗措 置の 行使 を一 般的 に基 礎づ ける と共 に、 具体 的な 紛争 処理 過程 の中 で認 めら れ る対 抗措 置の 積極 的な 必要 性を 共同 体的 観点 から 相対 化す るこ とを 求め るわ けで ある
。 対抗 措置 が一 般に この よう な﹁ 紛争 処理 過程 にお ける 衡平 性確 保の 必要 性﹂ に基 礎づ けら れる ので あれ ば、 たと え対 抗措 置の 行使 を基 礎づ ける 必要 性が 認め られ
、そ の限 度内 にあ ると 認め られ る︵
=相 当性 的均 衡性 判断 ある いは 目的 的均 衡性 判断 に照 らす 限り では 均衡 性に 適う もの と認 めら れる
︶と して も、 さら に当 該対 抗措 置は 衡平 性確 保の 必 要性 をふ まえ た総 合評 価的 判断 に照 らし ても なお 均衡 性に 欠け るも ので ない か否 かが 問わ れな けれ ばな らな い。 こ のよ うに 総合 評価 的均 衡性 判断 はい わば
、均 衡性 に関 する 加重 的あ るい は二 次的 な審 査と して の意 義を 有す るも の とし て適 用さ れる もの と考 えら れる
。
総合 評価 的判 断に 基づ く均 衡性 評価 のあ り方 この よう な観 点か ら総 合評 価的 判断 に基 づい て均 衡性 評価 を行 う上 では、﹁ 紛争 処理 過程 にお ける 衡平 性﹂ がど のよ うな 意義 を有 する のか
、ど のよ うな 考慮 要素 をふ まえ て均 衡性 を判 断す べき であ るか が問 題と なる
。平 和的 紛 争解 決原 則の 成立 過程 を振 り返 るな らば
、そ れは 戦間 期を 通じ て醸 成さ れた 意識
、す なわ ち﹁ 国際 社会 にお ける 平 和お よび 安全 並び に正 義﹂ の維 持と 実現 を単 に紛 争当 事国 間の みな らず 国際 社会 全体 の関 心事 項で あり
、国 際社 会 にお ける 共同 利益 であ ると する 意識 に同 原則 は支 えら れて いる こと がわ
( )
かる
。ま た現 在、 本原 則に つい ては とき に
212
学説 のみ なら ず国 家代 表か らも 強行 規範 であ ると 指摘 され るが
、そ れは 本原 則が そう した 共同 利益 の保 護と 実現 に とっ て基 本的 重要 性を 持つ もの であ るこ とを 示し て
( )
いる
。総 合評 価的 均衡 性判 断を 行う 上で は、 この
﹁国 際社 会に
213
おけ る平 和お よび 安全 並び に正 義﹂ の維 持と 実現 に認 めら れる 共同 利益 をふ まえ て考 慮さ れる べき 諸要 素が 特定 さ
れる こと にな る。 もっ とも
、も っぱ ら手 続的 観点 から 見る 限り
、例 えば 友好 関係 原則 宣言 やマ ニラ 宣言
、あ るい は交 渉原 則宣 言に おい ても
、主 権平 等や 内政 不干 渉原 則な ど国 際法 の基 本原 則の 尊重 に留 意す べき こと が示 され てい るに 留ま り、 そ れら は極 めて 一般 的な もの とな らざ るを 得ず 具体 性に 欠け る。 むろ ん、 こう した 基本 原則 を考 慮し ただ けで 衡平 性 に反 する と解 され るよ うな 場合 もあ りう るで あろ うが
、多 くの 場合
、そ うし た一 般的 な考 慮要 素の みに 基づ いて 総 合評 価的 均衡 性を 判断 する こと は難 しい よう に思 われ る。 逆に 言え ば、 それ らの 考慮 要素 に基 づく だけ で明 らか に 衡平 性を 害す る場 合で なけ れば 総合 評価 的判 断に 基づ いて 均衡 性に 欠け ると は評 価さ れず
、一 般的 には この よう な 観点 から の均 衡性 が問 題と され るこ とは ない と言 える
。 この 点は しか し、 対抗 措置 が行 使さ れる 際に 関係 する 法規 範あ るい は法 制度 がそ れ自 体も 共同 利益 の保 護に 関わ り、 その ため に考 慮さ れる べき 要素 を特 定し てい るよ うな 場合 には 異な りう る。 紛争 主題 がま さに そう した 法制 度 の実 施に 関わ って いた り、 ある いは 対抗 措置 がそ の実 施を 阻害 する よう な場 合に は、 対抗 措置 は当 該法 制度 を基 礎 づけ る共 同利 益の 保護 とそ の実 現と いう 観点 をも ふま えつ つ、 衡平 性を 害す るも ので はな いか 否か が問 題と され る こと にな る。 とり わけ 国際 河川 の衡 平利 用の 原則 に見 られ るよ
( )
うに
、衡 平性 の達 成を はか る上 で考 慮す べき 要素 が
214
具体 的に 特定 され てい るよ うな 場合 には
、そ うし た要 素に 対抗 措置 によ る対 処の 必要 性を も加 味し た上 で総 合評 価 的判 断に 基づ いて 均衡 性に 適う もの であ るか が問 われ るこ とに なろ う。 既に 見た よう に、 ガブ チコ ヴォ
=
ナ ジマ ロシ ュ事 件に おい て国 際司 法裁 判所 は、 総合 評価 的均 衡性 判断 に基 づ き、 ヴェ アリ アン トC は均 衡性 に欠 ける もの であ ると 判断 した。本 件に おけ る総 合評 価的 均衡 性判 断の 適用 が対 抗 措置 に関 する 均衡 性判 断と して 妥当 なも ので ある 理由 につ いて は、 少な くと も判 決の 文面 から は明 らか では なか っ たわ けで ある が、 上記 に示 した よう な総 合評 価的 均衡 性判 断に 基づ く均 衡性 評価 のあ り方 から すれ ば、 本判 決は 妥
当な 判断 を示 した もの と見 るこ とが でき る。 本件 にお いて チェ コス ロバ キア は既 に自 らが 負担 した 施設 の建 設を 終 えて いた にも かか わら ず、 それ に対 応す る施 設を ハン ガリ ーが 建設 しな いが ゆえ に経 済的 にも また 環境 的に も大 き な困 難に 直面 して いた わけ であ るが
、こ うし た状 況に おい ては チェ コス ロバ キア に回 復不 可能 な事 態が 生じ るこ と を避 ける ため の対 抗措 置に 訴え る必 要性 を認 める こと がで き、 ヴェ アリ アン トC もそ うし た必 要性 に基 づく 目的 的 均衡 性判 断に 照ら して 評価 する 限り
、正 当な 対抗 措置 と認 めう るも ので あり
( )
えた
。し かし
、ヴ ェア リア ント Cが 国
215
際河 川で ある ダニ ュー ブ川 にお ける 共同 利益 の実 現に 関わ るも ので ある 限り
、た とえ スロ バキ アと ハン ガリ ーと の 二国 間関 係に おけ る均 衡性 とい う点 では 適当 なも ので あっ ても
、そ れは また 国際 河川 の利 用に 認め られ る共 同利 益 の保 護と 実現 とい う観 点か ら求 めら れる 衡平 性を もふ まえ た上 で均 衡性 に適 うも ので なけ れば なら ない
。こ の点 ヴ ェア リア ント Cは
、も っぱ らス ロバ キア に有 利な もの とし て実 施さ れ、 ハン ガリ ーが 有す る利 用権 を剥 奪す るこ と とな って いる 点に おい て衡 平利 用原 則を 著し く害 する もの であ り、 たと えハ ンガ リー によ る条 約違 反お よび その 一 方的 放棄 とい う本 件に 固有 の事 情を ふま えて もな お、 均衡 性に 欠け るも のと 言わ ざる を得 ない と判 断さ れた わけ で ある
。
︵
︶ 拙稿
﹁前 掲論 文﹂ 前掲 注︵
︶二 一一 -二 三一 頁。 158
14
︵
︶ Ib id ., pp .2 24 -2 36 .
︵ 159
︶﹁ 友好 的紛 争処 理手 続︵ am ic ab le me an so fd is pu te ss et tl em en t︶
﹂と は交 渉を はじ めと する 関係 当事 国の 合意 によ って 紛争 の解 決を はか ろ う 160 とす る手 続の こと を言 う。 これ に対 し、 一方 当事 国が 自ら の実 力に 訴え るこ とに よっ て紛 争の 解消 をは かる 手段 を﹁ 強制 的紛 争処 理手 続
︵c om pu ls iv e/ co er ci ve me an so fd is pu te ss et tl em en t︶
﹂と 言う
。紛 争処 理手 続に 関す るこ うし た区 別は 二〇 世紀 初頭 まで の国 際法 学に おい ては 一般 に見 られ るも ので あっ た。 E. g. ,L .O pp en he im ,o p. ci t. ,s up ra no te 19 ,p p. 2 -51 . 今日 では
、﹁ 友好 的紛 争処 理﹂ と﹁ 平和 的紛 争処 理﹂ とは 同じ もの とし て論 じら れる こと が珍 しく ない が、 もと もと
﹁平 和的
﹂は
﹁平 時的
﹂ とい う意 味で あり
、そ れは
﹁戦 争﹂
=﹁ 戦時
︵戦 争状 態︶
﹂に 対す る対 立概 念と して 理解 され てい た。 例え ばマ ルテ ンス
︵F .d eM ar te ns
︶は
、