処理 の促 進と いう 目的 を考 慮し つつ も、 先行 行為 と対 抗措 置と の比 較を 論じ たも のと して 説明 され てき た。 しか し本 判決 にお いて 裁判 所は
、対 抗措 置が 必要 と認 めら れる 状況 とし て紛 争 処理 を促 す必 要が ある 場合 と、 回復 不能 な事 態を 回避 する 必要 があ る場 合と いう 別個 の文 脈を 区別 して 均衡 性を 論 じて いる こと に注 意し なけ れば なら ない
。以 下、 それ ぞれ の文 脈毎 に、 裁判 所が どの よう な均 衡性 判断 を示 した の かを 検討 する
。
紛争 処理 の促 進と 均衡 性判 断本件 にお ける 一つ の争 点は
、フ ラン スが 交渉 に応 じて おり
、ま た仲 裁へ の付 託に 同意 して いた にも かか わら ず、 米国 が対 抗措 置に 訴え るこ とが 認め られ るか 否か であ った
。米 国は この 点に つき
、本 件紛 争に つい て仲 裁手 続を 実 際に 進行 させ る上 では 必要 なも ので あっ たと 主張 した
。フ ラン スも 本件 を仲 裁裁 判へ 付託 する こと には 同意 して は いた もの の、 いま だ具 体的 な付 託合 意の 締結 には 至っ てお らず
、そ うし た状 況に おい ては 対抗 措置 に訴 える こと で フラ ンス に迅 速な 紛争 処理 に協 力す るよ う働 きか ける 必要 があ った とい うわ けで
( )
ある
。
105
この 点に つき 裁判 所は まず
、﹁ 対抗 措置 の意 味は 均衡 性の 枠組 みの 中で 慎重 に評 価さ れる 必要 があ る﹂ とし
、﹁ そ の目 的は 当事 国間 の平 等を 回復 する こと
、そ して 受け 入れ 可能 な解 決に 到達 する こと をそ れぞ れが 望み なが ら交 渉 を続 ける こと を促 すこ とで ある
﹂と 指摘 した
。そ の上 で、 米国 が予 定し てい た措 置は
、﹁ 消極 的な 形で 当初 の立 場 の対 称性
︵s ym me tr y︶ を回 復す る﹂ もの であ った とし
、こ の点 にお ける 米国 の主 張を 是認
( )
した
。
106
判決 の文 言か らも わか るよ うに
、上 記の よう な判 断を 下す に際 して 裁判 所が 相当 性的 均衡 性判 断に 依拠 して いた こと は明 らか であ る。 裁判 所は 交渉 の促 進と いう 目的 をそ れ自 体と して は考 慮し てお らず
、米 国に よる 対抗 措置 が あく まで 当事 国間 の平 等性 を回 復す るも ので ある こと に注 目し てい る。 相手 当事 国が 条約 に反 する よう な措 置を と るこ とに より 当事 国間 の利 益の バラ ンス が害 され た状 態で 交渉 を行 うと すれ ば、 交渉 に臨 む当 事国 の立 場は
、侵 害 行為 を行 う国 にと って 有利 とな る。 それ ゆえ に、 相手 国の 利益 を同 程度 に侵 害す るこ とに よっ て、 消極 的な 形で で はあ るけ れど も紛 争当 事国 間の 平等 性を 回復 し、 その 結果 とし て交 渉の 促進 を期 待す るこ とが でき るよ うに なる
、 とい うわ けで ある
。 この よう な判 断は
、対 抗措 置が 紛争 処理 の促 進を はか るた めに 必要 とさ れる 場合 であ って も、 そう した 目的 をふ まえ た目 的的 判断 によ るの では なく
、あ くま で当 事国 間に おけ る利 益バ ラン スの 回復 とい う相 当性 的判 断に よる べ きも のと の判 断を 示し たも のと 言え る。
それ では
、本 判決 はど のよ うな 基準 を考 慮し て本 件に おけ る対 抗措 置の 相当 性を 評価 した ので あろ うか
。こ の点 につ いて フラ ンス は、 同国 によ って 拒否 され たの はい まだ 運航 され てい ない 業務 であ る以 上、 米国 が実 際に 運航 中 の業 務の 停止 を求 める こと は経 済的 に不 均衡 であ ると 主張 した
。こ れは
、協 定上 認め られ た権 利行 使の 結果 とし て 得ら れる 利益 を基 礎と して 相当 性が 評価 され るべ きと した もの と言 える
︵損 害基 準︶
。そ れに 対し て米 国は
、措 置 の対 象と され たロ サン ゼル ス= パリ 路線 の運 航は パリ
=米 国西 海岸 路線 の運 航と
﹁法 的に 同等
︵e qu iv al en ti nl aw
﹂︶ であ ると
( )
した
。こ れは もっ ぱら 権利 の内 容に おけ る同 等性 を主 張す るも ので あり
、前 章に おけ る整 理に した がえ
107
ば、 相互 性︵ re ci pr oc it y︶ を基 準に すべ きこ とを 主張 した もの と言 える
。 経済 的観 点に 立つ かぎ り、 本件 にお いて はフ ラン スの 主張 する よう に現 に運 航さ れて いる 路線 の停 止に よっ て被 る損 失の 方が 大き いも ので ある こと は明 らか であ った こと から す
( )
れば
、本 判決 は米 国の 主張 を認 め、 相当 性を もっ
108
ぱら 法的 に、 つま り相 互に 相手 国に 保障 した
︵も のと 期待 する こと が正 当に 認め られ る︶ 権利 の間 に認 めら れる 相互 性を 基準 とし て評 価し たも のと 解す るの が妥 当で ある
。
અ
回復 不能 な事 態の 回避 と均 衡性 判断 本判 決は また
、第 三国 にお ける 機種 の変 更を 伴う 運航 の拒 否に よっ て米 国が 陥る こと とな った 状況 に着 目し つ つ、 次の よう にも 述
( )
べる
。
109
裁判 所の 見解 では
、国 家間 紛争 では 関係 する 事業 者の 被っ た侵 害︵ in ju ri es
︶だ けで なく
、違 反が 主張 され たこ とか ら 生じ る原 則問 題の 重要 性を 考慮 する こと が重 要で ある
。本 件に おい ては
、予 定さ れた 運航 を停 止さ せら れた ため にパ ン ナム 航空 が被 った 損失 を、 対抗 措置 の結 果と して フラ ンス の指 定事 業者 が被 った であ ろう 損失 と比 べる だけ では 十分 で
はな い。 フラ ンス 当局 が第 三国 にお ける 機種 の変 更を 禁じ たと きに 当事 国が とっ た、 問題 とさ れる 原則 につ いて の立 場 の重 要性 をも 考慮 に入 れる 必要 があ ろう
。 裁判
所が ここ で言 う﹁ 原則 問題
﹂と は、 直接 的に は、 米仏 間で 争わ れた 第三 国に おけ る機 種の 変更 を伴 う乗 り入 れを 行う 権利 の存 否に 関す る問 題で ある
。こ の権 利の 存在 をめ ぐる 問題 は協 定上 何ら 明示 的な 規定 がな かっ たこ と から 生じ たも ので ある が、 これ は空 の自 由を 求め る米 国の 政策 と、 領空 主権 を根 拠と して 他国 の航 空業 務の 権利 を 制限 する こと を望 むフ ラン スの 政策 との 対立 を背 景と して
( )
いた
。実 際、 こう した 航空 協定 の曖 昧さ は、 空の 自由 を
110
主張 した 米国 とそ れを 制限 的に 捉え る英 国と の妥 協と して 成立 した バミ ュー ダ協 定、 そし てそ れを 範と した 諸国 際 航空 協定 につ いて 従来 から も指 摘さ れて きた 問題 であ った
。そ れゆ えに 航空 協定 に明 記さ れて いな い航 空業 務を
、 米国 のよ うに 許容 的に 解釈 する か、 それ とも フラ ンス のよ うに 制限 的に 解釈 する かは
、空 の自 由と 領空 主権 の調 整 とい うま さに 国際 航空 法制 度の
﹁原 則﹂ に関 わる 問題 であ った わけ で
( )
ある
。
111
原則 問題 がこ のよ うな 意味 であ ると して
、そ の﹁ 重要 性﹂ を考 慮す るこ とが どの よう な意 味を 持つ のか が問 題と なる
。こ の点 に関 して 学説 は、 それ を物 理的 に解 する 見解 と、 規範 的に 解す る見 解と が見 られ る。 まず
、物 理的 に解 する 見解 によ れば
、本 判決 はあ くま で損 害を 基準 とし て均 衡性 を判 断し てい ると され る。 本判 決が 原則 問題 に言 及し た際 に意 味し たの は、 米仏 間の 航空 協定 に類 似し た協 定が 米国 と多 くの 第三 国と の間 で締 結 され てい ると いう 状況 にお いて は、 本来 は二 国間 の問 題で ある 協定 違反 が第 三国 をも 含め た他 国に 大き な影 響を 及 ぼし
、そ れに よっ て非 常に 大き な損 害が 生じ ると の見 込み が考 慮さ れた と解 する わけ で
( )
ある
。
112
他方
、規 範的 に解 する 見解 によ れば
、均 衡性 評価 の際 に考 慮さ れる のは
、関 連す る法 制度 にお いて 問題 とさ れる 規則 に認 めら れる 重要 性で ある とさ
( )
れる
。問 題と なる 法制 度の 基本 原則 であ るか 否か など の規 範の 法的 性格 が考 慮
113
され たと の趣 旨で ある
。問 題と され る規 範が 重要 性を 有す るも ので あり
、そ の侵 害あ るい は違 反に よっ て重 大な 事 態が 生じ るこ とが 均衡 性判 断に おい て考 慮さ れる べき こと を主 張す るも のと 言え る。 これ らの 見解 はも っぱ ら均 衡性 判断 にお ける 考慮 要素 に着 目す るも ので ある が、 その よう な観 点か ら見 る限 り、 いず れが 適切 な理 解で ある のか につ いて
、判 決の 抽象 的な 文言 から 確定 的な 結論 を得 るこ とは 難し い。 しか し、 本 件に おい てど のよ うな 判断 態様 に依 拠し て均 衡性 が判 断さ れた のか とい う観 点か ら、 本件 の生 じた 一九 七八 年当 時 の国 際航 空法 制を めぐ る事 情を 考慮 しつ つ本 判決 を見 るな らば
、本 件で は第 三国 がフ ラン スの 態度 に倣 うこ とに よ って 米国 の主 張す る権 利が 規範 的な 実効 性を 失う 恐れ があ り、 そう した 事態 の発 生を 防ぐ こと
︵係 争権 利の 保全 を はか るこ と︶ を目 的と する 目的 的均 衡性 判断 によ った もの と解 され る。 一九 七〇 年代
、特 に米 仏航 空業 務協 定事 件の 起こ った 一九 七八 年当 時は
、前 年の 一九 七七 年に 米英 間で 第二 バミ ュー ダ協 定が 締結 され るな ど、 本件 の直 接の 争点 とな った 国際 航空 に関 する 法制 度の 見直 しが 行わ れて いた 時期 で もあ
( )
った
。こ の第 二バ ミュ ーダ 協定 締結 直後
、米 国内 では
、当 該協 定の 制限 主義 的な 内容 に対 し強 い非 難が 向け ら
114
れた
。そ れに 応え るか たち で米 国は
、一 九七 八年 一月 に規 制緩 和に 積極 的な 航空 交渉 の方 針を 明ら かに し、 それ を 基礎 に各 国と の航 空協 定改 正・ 締結 交渉 を進 めた
。 この よう な状 況に あっ た一 九七 八年 当時
、米 国が 国際 航空 に関 して どの よう な関 係を 他国 との 間に 設定 する か は、 単に 相手 国と の間 の問 題に 留ま らず
、他 の同 様の 航空 協定 を米 国と 締結 し、 また 締結 を予 定し てい る他 国に と って も重 要な 関心 事項 であ った とい える
。裁 判所 が﹁ 航空 業務 のネ ット ワー クは 極め て微 妙な シス テム であ り、 そ れに 対す る侵 害は 広範 かつ 予見 でき ない 結果 を生 じう る﹂ とし たこ とは
、以 上の 事情 に照 らし た場 合、 重要 な意 味 を
( )
持つ
。 こ 115
のよ うな 当時 の微 妙な 状況 に鑑 みる なら ば、 他国 もま たフ ラン スに 倣い
、第 三国 にお ける 機種 の変 更を 伴う 乗