な利 益侵 害の 排除 と均 衡性 判断 イラ ン政 府の 行為 が正 当化 され るか 否か に関 し、 裁判 所は 次の よう に述 べて いる
。
﹇外 交、 領事 関係 に関 する ウィ ーン 条約
﹈に は、 外交 特権 免除 を隠 れ蓑 とし て、 職員 が接 受国 にお ける スパ イ活 動あ るい は国 内事 項へ の干 渉と いっ た職 権の 濫用 に従 事す る場 合に 対す る明 示的 な規 定が 備え られ てい る。
…… 一九 六一 年外 交関 係に 関す るウ ィー ン条 約が
、第
条に おい て﹇ ペル ソナ
・ノ ン・ グラ ータ の通 告﹈ を規 定し てい る 9 のは
、ま さに その よう な外 交職 権の 濫用 に対 する 救済 を用 意す るた めで ある
。…
… つま り、 外交 関係 法は 自己 完結 的制 度を なし てお り、 一方 で外 交使 節に 供与 され るべ き施 設、 特権
、免 除に 関す る接 受国 の義 務を 規定 し、 他方 で外 交使 節職 員に よる 濫用 があ りう るこ とを 予期 し、 その よう な濫 用に 対処 する ため に接 受 国が とり うる 手段 を特 定し てい る。 これ らの 手段 はそ の性 質上
、実 に有 効で ある
。…
… 本説
示に つい ては
、制 度内 の違 反行 為に 対し て一 定の 対処 手段 が定 めら れて いる 場合 には まず それ らに 訴え るべ きで あり
、対 抗措 置制 度な ど一 般国 際法 上の 対処 手段 はそ の限 りで 排除 され る、 との 趣旨 であ ると 解す る見 解が 示 され てい る︵ いわ ゆる
﹁自 己完 結的 制度
( )
﹂論
。︶ こう した 特殊 な法 的効 果が 認め られ る根 拠と して は、 外交 関係 法の
121
重
( )
要性
、あ るい は紛 争処 理手 続の 実
( )
効性 など が挙 げら れて いる が、 いず れに して もこ れら の見 解は
、特 定の 救済 措
122
123
置を 備え た制 度と 一般 国際 法上 の対 抗措 置制 度を 対立 的に 捉え た上 で、 判決 の言 う﹁ 自己 完結 的制 度﹂ とい う概 念 によ って
、前 者の 優先 性と いう 制度 的特 徴が 示さ れた とす るも のと 言え る。 しか し、 本件 にお いて 裁判 所は
、あ くま でイ ラン には より 適切 な対 処手 段を 利用 する こと が可 能で あっ たと いう 事実 を指 摘す るに 留ま って いる 点に 注意 する 必要 が
( )
ある
。
124
本判 決が 問題 とし てい るの は、 イラ ンが 主張 する よう に外 交特 権を 隠れ 蓑と して 米国 が内 政干 渉お よび 非公 然活 動を 行い
、イ ラン の利 益を 重大 に侵 害し たと 仮定 した 場合 に、 イラ ンの 行為 がそ うし た事 態へ 対処 する 必要 性に 応 じた もの であ った と言 える かで あ
( )
った
。そ して その よう な事 態に 対し ては
、外 交関 係法 自身 によ って
﹁必 要な 防衛
125
手段
︵n ec es sa ry me an so f
( )
de fe ns e︶
﹂が 備え られ てい る以 上、 イラ ンの 行為 は本 件に おい て認 めら れる 対処 の必 要性
126
に応 じた もの では ない
、と した にす ぎな い。 実際
、裁 判所 は﹁ イラ ンは 利用 可能 な通 常か つ実 効的 な手 段に 訴え ず、 合衆 国大 使館 と同 職員 に対 する 強制 活動 に訴 えた と結 論す る以 外に ない
﹂と 述べ
、問 題と され る米 国の 行為 に 対す る対 処手 段の 選択 につ いて イラ ンが 誤っ てい たこ とを 問題 とし て
( )
いる
。
127
この よう な裁 判所 の判 示か らは
、外 交関 係法 がそ れ自 体と して 一般 国際 法上 の対 抗措 置制 度の 適用 を当 然に 排除 して いる との 判断 も、 また 外交 関係 法の 違反 に対 して は他 分野 に関 係す る対 抗措 置を とる こと が禁 じら れる との 判 断も 読み 取る こと はで き
( )
ない
。本 判決 が示 すの は、 イラ ンが 非難 して いる よう な米 国に よる 侵害 行為 への 対処 をは
128
かる ので あれ ば、 本件 の事 情に 鑑み て、 暴徒 によ る大 使館 占拠 およ び人 質行 為の 是認 とい った 外交 関係 法の 重大 な 侵害 に当 たる よう な措 置よ りも
、ペ ルソ ナ・ ノン
・グ ラー タや 外交 関係 の断 絶等 の措 置の 方が
、よ り﹁ 通常 かつ 実 効的 な手 段﹂ であ った
、と いう こと で
( )
ある
。つ まり
、イ ラン の措 置は 同国 が主 張す る目 的、 すな わち
﹁過 去二 五年
129
以上 前か ら続 く米 国に よる イラ ンの 内政 事項 への 介入
﹂の 排除 とい う目 的か ら見 た場 合に
、他 の実 効的 な対 処手 段 があ る以 上、 適切 では なか った とし たの であ る。 この よう に見 るな らば
、本 件に おい て裁 判所 は、 消極 的必 要性 基 準に 基づ く目 的的 均衡 性判 断に よっ てイ ラン の行 為の 適法 性を 判断 した と言 える
。 本件 にお いて 裁判 所は
、実 際に イラ ンの 主張 する よう な米 国に よる 内政 干渉 など があ った かに つい ては
、確 定的 な判 断を 示し てい ない
。し かし
、内 政問 題へ の度 重な る介 入と いう よう な重 大な 利益 侵害 行為 があ る場 合に は、 そ れへ の対 処と して 対抗 措置 に訴 える 必要 性を 認め るこ とが でき ると し、 その よう な必 要性 に応 える もの とし て行 使
され る対 抗措 置の 均衡 性に つい ては
、目 的的 均衡 性判 断︵ 消極 的必 要性 判断
︶に よっ て評 価さ れる もの とす る態 度 を示 した もの と解 され る。
︵三
︶ 一九 九七 年ガ ブチ コヴ ォ
=
ナ ジマ ロシ ュ( )
事件130
ઃ
対抗 措置 が問 題と され た文 脈 一九 七七 年に チェ コス ロバ キア とハ ンガ リー はダ ニュ ーブ 川に 水利 施設 とし てダ ムを 建設 し、 その 水流 を利 用・ 開発 する ため の協 定を 締結 した。一 九七 七年 協定 に予 定さ れた 事業 は、 両国 の共 同事 業で あり
、ダ ム施 設の 建設 は 両国 で分 担す るこ とと なっ てい た。 しか し、 一九 八九 年以 降、 ハン ガリ ー国 内で 本事 業が 環境 へ重 大な 被害 を生 じ させ ると いう 批判 が強 まり
、そ れを 受け てハ ンガ リー 政府 は予 定さ れた 事業 を一 時的 に停 止し
、協 定の 見直 しを 求 めて チェ コス ロバ キア と交 渉を 行う など した
。ハ ンガ リー は補 償を 提供 する こと など を提 案し たも のの
、チ ェコ ス ロバ キア は一 九七 七年 協定 に予 定さ れた 事業 の実 施を 求め た。 結局
、交 渉に よる 解決 は得 られ ず、 ハン ガリ ーは 一 九九 二年 に、 一九 七七 年協 定の 一方 的廃 棄を 通告 した
。 本稿 の観 点か ら重 要な のは
、こ のよ うな 事態 に対 して チェ コス ロバ キア がと った 措置 の許 容性 に関 する 議論 であ る。 チェ コス ロバ キア は、 ハン ガリ ーが 建設 する 予定 であ った ダム を機 能的 に代 替す るも のと して 別の ダム を自 国 領域 内に 建設 し、 暫定 的な 灌漑
・電 力設 備の 利用 を可 能と する 工事 を一 九九 二年 一〇 月一 五日 に始 めた
︵本 措置 は
﹁ヴ ェア リア ント C﹂ と呼 ばれ る︶
。ス ロバ キア の主 張に よれ ば︵ チェ コス ロバ キア は一 九九 三年 に分 離解 体し
、本 件に つ いて はス ロバ キア が継 承す るこ とと され た︶
、こ のヴ ェア リア ント Cは
、内 容的 には ハン ガリ ーが 分担 する はず であ っ た事 業に 相当 する 点で
﹁条 約の 近似 的適 用﹂ であ り、 ハン ガリ ー側 の条 約上 の義 務の 不履 行の ため にと らざ るを え なか った 措置 であ ると さ
( )
れた
。実 際、 スロ バキ アが ハン ガリ ーに よる 補償 の提 供を 拒否 して まで 一九 七七 年条 約の
131
実施 に固 執し たの は、 そこ に予 定さ れた 施設 の建 設と
、そ れに よる 電力 供給 とい うダ ニュ ーブ 川の 利用
・開 発を 確 保す るこ とこ そが 重要 であ った ため であ った
。 他方 で、 当初 の計 画が 未完 成の まま 放置 され た場 合、 経済 的に も環 境的 にも かな りの 損失 が生 じる こと も予 想さ れた
。こ のよ うな 状況 にお いて ヴェ アリ アン トC は、 それ らの 損失 が生 じる こと を可 能な 限り 防ぐ ため の措 置で も あり
、ス ロバ キア はそ れを
、﹁ 損害 の軽 減義 務﹂ の履 行と いう 形で 主張
( )
した
。
132
スロ バキ アが 対抗 措置 を主 張し たの は、 以上 のよ うな ヴェ アリ アン トC の性 格を 直接 的に 反映 した 主張 が認 めら れな かっ た場 合の 代替 的主 張と して であ った
。