V. 熟練度の違いによる動作特性比較実験 〜ハンドル操作成分比較〜
V.5. 第 V 章の結論
103 第Ⅴ章の参考文献
5-1) 関根 太郎 他:⻑江啓泰のバイクに乗るための ABC,啓正社,2015
5-2) 和歌山 利宏:ライダーのためのバイク基礎工学,株式会社 グランプリ
出版,1987
5-3) 根本 健:×ライディング 40,株式会社 枻出出版,1993
5-4) ホンダ安全運転普及本部:SAFETY RIDING 2 輪テキスト(指導者用)
服部印刷株式会社 ,2004
VI. 結論
本研究は二輪車の基礎運転能力向上のために必須である一本橋走行の効果的 な指導方法を検討するため,一本橋走行時のライダー挙動を明確にすることを 目的として,二輪車の一本橋走行実験をおこなった.
第 I 章では,二輪車運転時の交通事故の現状と二輪車運転能力向上に対して の現状の問題について述べた.特に二輪車の低速バランス走行の指導に関して,
ライダーと車体との関係性が明確になっていないため,指導するインストラク ターの経験が中心となった指導法になっているという問題を提示した.また,
その問題を解決するために,熟練ライダーが実施している安定した走行状態に おけるライダーの挙動を明確化する必要があるという目的を設定した.
第Ⅱ章では,第 I 章で述べた二輪車におけるバランス走行中のライダーと車 体の挙動を明確にするために,一本橋走行におけるジャイロセンサを用いた角 速度および加速度の測定法を検討し,確認をおこなった.
本章より得られた結果としては,熟練度によりライダーおよび車体のロール 挙動に差異を確認することができ,角速度を用いた測定法の有効性を確認する ことができた.また,⻑時間一本橋上で走行をおこなえていた熟練者の特徴と して,ライダーおよび車体のロール挙動が小さくなっていることが確認できた.
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が明確になり,この特徴的な挙動が低速走行をするために必要なバランス状態 を乱す原因となっていることが示唆された.
第Ⅳ章では,第Ⅱ章および第Ⅲ章の実験結果より明らかになった以下の2つ の課題
① 実験から得られた上体挙動の差異がパフォーマンスの違いによるものか,
個人差から生じているものかを確認する
② 訓練未経験者の挙動と訓練経験者との挙動の比較をおこない,差異を 明確にする
を解決するために,訓練経験の異なる 14 名の一本橋走行時のライダーと車 体の角速度成分の挙動測定をおこなった.
本章の実験結果から,パフォーマンスとなる一本橋走行の走行タイム別に下 位4名を初級車群,上位4名を熟練者群と分類した.両群を比較すると,初級
者群 15.5 ± 2.0s,熟練者群 61.5 ± 22.0sであり,検定の結果,両群に有意な
差を確認することができた.また,一本橋走行中のライダーの動作および車体 の挙動の特徴としては,初級者と熟練者ともに共通して車体のロール挙動を発 生させず走行していることが確認できた.また,熟練者の特徴として,ライダ ー頭部のロールを発生させない操作および動作をおこなっていることが明確に なった.
第Ⅴ章では,第Ⅳ章で得られたロール角速度以外の特性を明確にするために ハンドル操作データの解析をおこなった.
本章の実験結果から,
① 大きなハンドル転舵角領域を活用し走行する
② ハンドルの上下方向の荷重を活用し走行する
という2つの熟練者の特徴的な操作および動作を確認することができた.ま た,得られた実験結果を総合的に判断し,安定した一本橋走行をおこなうため に必要なライダーと車体の挙動の関係性を考察した.
以上のことから,本論文において従来明確になっていなかった,極低速走 行におけるバランスを維持および乱れの発生に対するライダーの操作および動 作について,パフォーマンスの高かった熟練者の一本橋走行から3つの特徴を 確認することができた.
① 頭部のロール動作を少なくしている
② 大きなハンドル転舵角領域を活用し走行する
③ ハンドルの上下方向の荷重を活用し走行する
また,これらの熟練者における特徴的な挙動から,ハンドルの上下方向の荷 重を活用した頭部ロールの抑制という,新たな知見を得ることが出来,今後の 一本橋走行指導の新たな方向性を示すことができた.
今回得られた指導の方向性をもとに,効果的に運転能力を向上できる指導 法を作り出していき,活用を実施していきたいと考える.その活用と共に,今 後は初級者から熟練者に成⻑していくまでの過程に現れてくる,それぞれの段 階ごとの特徴的な動きのメカニズムを明確にし,学習の効果,効率を上げられ るようにしていきたいと考える.
107 関連論文の印刷公表の方法および時期
※全文掲載
(1) 全著者名 横井元治,堀内邦雄,⻘木和夫
論文題目「自動二輪車の低速走行におけるライダーのバランス動作に関す る研究〜熟練度による上体動作の違いについて〜」
平成27年4月 人間工学,vol.51, No.2, pp.141-145.
(第 II, III 章の内容に関連)