• 検索結果がありません。

第 8 章のまとめ

ドキュメント内 現代日本語の使役文に関する一研究 (ページ 149-152)

第 8 章 「V-サセテシマウ」

8.5 第 8 章のまとめ

本章では、「V-サセル」のテ形に補助動詞「シマウ」がついた「V-サセテシマウ」を対象 に、まず、どのような使役の意味を表すのか考察した。先行研究では、《非意図的な放任》

を表す場合、「V-サセテシマウ」の形で現れることが多いとしているが、本章で対象とした 用例から考えると、「V-サセテシマウ」は、《非意図的な放任》以外の意味を表すものも多く ある。とはいえ、「V-サセテシマウ」の場合、補助動詞「シマウ」がつくことによって、あ る程度意志性が弱まり、Vが意志動詞であっても意志的な動作を表しにくくなっているよう に思われる。そのことから、それぞれの意味において典型的な使役の意味とは異なる意味

(非意図性、無意志化)を帯びるようになり、他の形にはみられない《非意図的な引き起 こし》を表すものや、《非意図的な放任》を表すものがほかの形式に比べて多くみられるの だと考えられる。このことは「V-サセテシマウ」の V の語彙的な意味における分布ともか かわっており、Vに現れるものとして無意志的な動作を表すものが多かった。しかし、本章 での考察はまだ不充分なところが多く、特に補助動詞「~テシマウ」がもつ意味と使役の 意味と関連性について積極的に述べることはできなかった。今後の課題としたい。

◆第Ⅲ部のまとめ

以上、第Ⅲ部では、「V-サセル」のテ形に補助動詞がついた形、「V-サセテヤル/アゲル」 「V-サセテクレル」、「V-サセテオク」、「V-サセテシマウ」を対象に、どのような使役の意味を表 すのか、それと関連して各形式のV にどのような動詞が現れるのかみてきた。これらの形 はそれぞれ使役の意味として《許可》、《放任》、《非意図的な放任》を表す場合に多く見ら れる形として先行研究で指摘されているものである。そして本考察においてもほかの形式 にくらべると「V-サセテヤル/アゲル」「V-サセテクレル」に《許可》を表すものが、「V-サ セテオク」には《放任》を表すものが、「V-サセテシマウ」には《非意図的な放任》を表す ものの割合が高いのは事実である。しかし、いずれの形も、もっとも多いのは《引き起こ し》であった。

さらに、「V-サセル」動作の実現が誰のためであるのかという観点Ⅱから使役の意味を考

148

えると、「V-サセテヤル/アゲル」「V-サセテクレル」は《引き起こし》か《許可》かに関係 なく、《みちびきの使役》にかなり偏っている。そして、「V-サセテオク」の場合、《引き起 こし》を表すものは《つかいだての使役》に相当するものがほとんどである一方で、《放任》

を表す場合は《つかいだての使役》なのか《みちびきの使役》なのかはっきりしないもの が多かった。さらに、「V-サセテシマウ」に関しては、使役主体の働きかけが非意図的で、

かつ使役対象の動作が無意志的なものが多く、典型的な使役動作らしいものがそれほど多 くないこともあり、傾向を見いだすことはできなかった。

また、「V-サセテヤル/アゲル」「V-サセテクレル」、「V-サセテオク」、「V-サセテシマウ」

のVにどのような動詞が現れるのか考察した。各形式によるVの語彙的な意味による分布 をまとめると、次のようになる。

表 23:第Ⅲ部で考察した各形式におけるVの語彙的な意味による分布 形式

Vの語彙的な意味

「V-サセテヤル/

アゲル/クレル」 「V-サセテオク」 「V-サセテシマウ」

対象 変化

状態変化 ― (0.0%) ― (0.0%) 8 (4.0%)

位置変化 7 (0.9%) 2 (0.9%) ― (0.0%)

非対 象変 化

接触 17 (2.2%) 8 (3.8%) ― (0.0%)

生産 11 (1.4%) 4 (1.9%) ― (0.0%)

実行 49 (6.5%) 26 (12.3%) 4 (2.0%)

やり とり

情報のやりとり 85 (13.4%) 28 (13.3%) 6 (3.0%)

モノのやりとり 1 (0.1%) 4 (1.9%) ― (0.0%)

主体 変化

位置・姿勢変化 44 (5.8%) 19 (9.0%) 6 (3.0%)

状態変化 162 (21.4%) 27 (12.8%) 12 (6.0%)

社会的状態変化 29 (3.9%) 3 (1.4%) 20 (10.1%)

心理的状態変化 132 (17.7%) 39 (18.5%) 73 (36.9%)

生理的状態変化 45 (5.9%) 8 (3.8%) 46 (23.2%)

活動 142 (18.9%) 42 (20.4%) 20 (10.1%)

その他 13 (1.7%) ― (0.0%) 3 (1.5%)

合計 740 (100.0%) 210 (100.0%) 198 (100.0%)

各形式に共通して言えることは、まず、対象変化動詞が極端に少ないということである

149

(「V-サセテヤル/アゲル/クレル」では740例中7例(0.9%)、「V-サセテオク」では210例 中2例(0.9%)、「V-サセテシマウ」では198例中8例(4%))。またいずれの形式にも活 動動詞が比較的多く現れるのも特徴的である。また、やりとり動詞の場合、ほとんどが情 報のやりとりを表す動詞であり、モノのやりとりを表す動詞はほとんどみられない。これ らの形に共通してこのような偏りがみられるのはなぜなのか、このような偏りと使役の意 味がどのようにかかわっているのか考えなければならないのだが、今のところ結論付ける ことができない。

一方、各形式によって現れるVにそれほど目立つ偏りはみられないが、「V-サセテシマウ」

には次のような特徴がある。それは、他の形式に比べて心理的な変化を表すものと生理的 な変化を表すもの、すなわち無意志的な動作を表すものが多く、全体の半分(198例のうち、

心理的変化73例、生理的変化 46例の計 119 例)を占めている。「V-サセテシマウ」のV に無意志的な動作を表すものが多いということは、「V-サセテシマウ」が使役の意味として

《非意図的な引き起こし》や《非意図的な放任》を表しやすいということと無関係ではな いだろう。

150

ドキュメント内 現代日本語の使役文に関する一研究 (ページ 149-152)